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堺大輔氏インタビュー(全3記事)

数字目標が“目的”になってしまう時 チームラボが示す「追わせない」目標設定

【3行要約】
・組織拡大とともに数値管理や評価制度の導入を求められがちですが、本来の価値創造から遠ざかってしまう企業が後を絶ちません。
・チームラボでは1000人規模でも売上目標なし、役員が全員現場に入り直接評価する独自の経営スタイルを貫いています。
・数字に引っ張られない組織運営の秘訣は、全員が現場で物作りに携わり、具体的なアウトプットで実力を判断する文化にあります。

売上目標はクオリティ追求の妨げになる

――売上・利益などの数値目標を「会社として」置かない方針になった経緯を教えていただけますか。

堺大輔氏(以下、堺):私たちは創業してから20数年になりますが、当初からその方針です。本当に最初は大学院生の時に会社を始めたので、「何か物を作ろう」「作ったものが世に出たらいいね」というところからスタートしました。

その延長でずっと来ているというのが大きいポイントです。たぶん一番根本的には、いいクオリティのアウトプットを出して、それが世界に出ていき、それを見た人たちがまたお願いしたくなる、来たくなるといった考え方がまず一番強いです。それが根本になります。

もう少し補足すると、最初の頃は、先ほど言ったように私たち全員が工学部のエンジニア出身なので、営業とかがよくわからなかった、というのがあるかもしれません。めちゃくちゃエンジニア文化なので、それが大前提かもしれないですね。

「作ったものがなんとかなる」と無邪気に信じていたというのがあると思います。それで無理やりにでも、その方針であり続けられた。それをそのまま生かし続けるんだったらいいな、というのでずっと来ているのはあるかもしれません。



――これまでに、社内で「やはり数字の目標も必要では」といった声が出たことはありますか。出たとしたら、どう整理してきましたか。

堺:組織の拡大などよりも、クオリティの高い良いアウトプットが世界に出ていくことのほうが目的なので、物がたくさん出たほうがいいのか、それとも1つですごく強くなっていくほうがいのかも、あえて定義していません。

本当に長期的な目線では、ある程度はあるかもしれませんが、目の前のアウトプットのクオリティを上げることが、結果として未来につながると思っているところもあります。

ただ、例えば5年後の売上目標があった時に、目の前で作っているプロダクトのクオリティで動きが変わるかというと、なかなか日々の行動に結びつきにくいですよね。だから、日々の行動に落ちるかたちになっていたほうがいいかなと思っています。

数字はすごくわかりやすいですよね。でも、「クオリティが高い」ということを「数字で言って」と言われてもなかなか難しいじゃないですか。しかも、すごく多様な軸、いろんな意味でのクオリティの高さがあります。全体的に高いほうがいいとか、どこかに特化したからいいとか、物によってかなり違うと思っています。

それと、売上という1つの大きな数字だけがあると、どうしてもみんなそちらに引っ張られると考えています。ですから私たちは、クオリティの高いものを作ることを一番に重要視したいんです。売上ではなく、プロジェクトのクオリティ、作品のクオリティ、仕事のクオリティを上げることを第一に考えよう、というのがポイントです。

――その方針を続けられている支えは何でしょうか。「いいものを出したい」という思い以外に、制度や構造として支えているものはありますか。

堺:そうですね。本当にシンプルに、無邪気に聞こえるかもしれませんが、それだけです。


アートもソリューションも、価値基準は「クオリティ」ただ一つ

――アート部門とソリューション部門があるとおうかがいしました。部門が違っても「クオリティ」を判断する基準や言葉は共通なのでしょうか。

堺:はい、そうです。麻布台ヒルズのチームラボボーダレスや新豊洲のチームラボプラネッツなどで、自分たちのアート作品を作って人に来ていただくというのがアートでやっていることです。

クライアントワークでは、例えばりそな銀行さんのアプリを作っていたり、ららぽーとのアプリを作っていたり、いろいろなWebサービスを作ったりしています。現在世の中にダウンロードされて、使われているアプリに限っても、1億7,000万ダウンロード以上あります。

――売上の目標は置かないとして、会社の健康状態を確認するために、利益や稼働状況、継続の状況など、最低限追っている数字はありますか。

堺:数字としての目標はないです(笑)。ただ、1つのプロジェクト自体で、例えばどれだけ利益が出るかというのは当然見えるので、そこだけは見ています。それも「絶対何パーセント以上じゃなきゃダメ」というのが明確に決まっているわけではないです。

――数字の目標を置かない前提で、メンバーは日々、何を拠り所に判断して走り続けるのでしょうか。モチベーションの源泉を教えてください。

堺:全員とは言いませんが、うちの会社に入ってくれている人たちは、基本的に自分とチームのメンバーが作ったものが世の中に広がって、使ってもらったり楽しんでもらったりするのが好きな人たちだと思います。

もちろんお金(給料)も大きな理由ですよ。だけど、お金だけで入る人たちはたぶんうちには入ってこないと思うんです。お金だけを稼ぐのであれば、違う業種・業態もあるでしょうし、違う会社さんもあると思うので。だからといって、うちが低いとかではないと思いますけど。


「ものづくりの人しかいない」から成り立つ文化

堺:バックオフィス的なメンバーは本当に30人もいないんです。90何パーセントの人たちは、何かしら物を作っている人なんですよ。ちなみにマーケティング部門もなければセールスの部門もないので、本当に全員がものづくりをしている人たちなんです。だからなおさらそういう文化が成り立つと思うんですよ。

他社だと、セールスがいて、マーケがいて、広報がいて、エンジニアとかデザイナーがいて、そのパワーバランスによって文化が変わってくると思うし、役員や創業者がどういう文化かによっても変わってくると思います。これはもうシンプルに、創業した私たちのバックグラウンドや、メンバーを集めてきた経緯を含めて、本当にリアルにものづくりの人しかいないんですよね。だから成り立っているんだとは思います。

一般的には、「いや、もういいじゃん。数字上げてこうよ」みたいな話になると思うんですけど。

――そこも不思議だなと思っていて。ものづくりから始まったとしても、だんだん「とはいえ数字……」というふうに変わっていきやすいというか。

堺:そうですよね。たぶんある程度大きく関わっているのが、私たちが本当に完全にプライベートカンパニーであることです。誰からも投資も受けていないですし、株も本当に役員しか持っていません。

今のところ、株式公開をするとか、外部から人が入るというのもあまり考えられないですね。だから、外から何か言われる、ということがない。数字ってさっきも言ったとおり、わかりやすいものです。外部の方は「もっとクオリティ高いもん作れよ」というより「数字上げてこいよ」と言いやすいじゃないですか。株主の利益にもなりますし。

会社ってもっと複雑で、大きな因子だと思います。それがなかったら会社として死んでしまう。生き残るための大きなファクターである一方で、もっといろいろな要素で会社として生き残っていると思っていて。

私たちは、それが「いい物を作る」とか「クオリティが高い」だったんです。全役員も含めて、そういうことを決めるメンバーが現場にいるから、解像度がある程度高いと思うんですよ。

何が起こっていて具体的にどういう提案をして、どういうプロセスで進めているか。実際アートだったら作品作りの中にも入っていますし、私自身もソリューションとクライアントワークの中に具体的に入っています。お客さんとの向き合い方だったり、アートの場合、来てくれている方がどういう反応しているかも、現場で見えている。そんな中で、数字とクオリティのどちらが重要かなと思った時に、私たちはクオリティだと。

特に営業も、プロモーションもおらず、アートだったら実際に人に来ていただいたり、クライアントワークだと営業はない中でお仕事をいただき続けている。最初はもちろん、わけわからずがむしゃらにやっていただけですが、自分たちがなぜ仕事をもらえているかというと、自分たちが出したアウトプットが評価していただき、期待いただいているというのを経験していました。

ラッキーだったという話かもしれませんが、ある意味、成功体験なんです。それを、じゃあそのままでも大丈夫かな、と思ってやり続けているのかもしれないですね。

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