【3行要約】 ・400社以上の組織開発を支援してきた沢渡氏は、目標を自分ごと化するには「越境と共創」が重要だと指摘します。
・目標達成できなくても「失敗」というレッテルを貼らず体験として蓄積し 振り返りから学びを得ることで、次のキャリアや道が生まれると語ります。
・また、「今年こそ目標に向けてがんばりたい」という読者へのアドバイスとして、日常に小さな変化を加える「景色を変える習慣」をおすすめします。
前回の記事はこちら 同僚や外部の人の目標設定から「おもしろみ」を学ぶ
——先ほどは目標設定に関して、マネージャー向けのアドバイスをいただきましたが、メンバー自身が目標をもっと自分ごと化するためにできることは何でしょうか?
沢渡あまね氏(以下、沢渡):さまざまな人と対話したり、さまざまな体験をしたりして、その仕事を自分ごと化できる着眼点や、仕事のおもしろみを発見してほしいと思います。
(そのためには)「同僚はどう目標設定しているんだろう?」「世の中の人はどう目標設定して、どう仕事をしているんだろう?」といったことを見たり、対話したりすることです。

——そのおもしろみを見つけるためのコツはありますか。
沢渡:「この人はこういうところに仕事のおもしろみを見つけているんだ」「この人はこの仕事のテーマに対して、こう自分の成長を意味付けしてドライブをかけているんだ」といったように、さまざまな仕事との向き合い方の着眼点のバリエーションが増えるだけでも、自分ごと化した目標設定はしやすくなります。
これもまさに越境と共創が大事なんです。自分1人で頭を抱えてパソコンに向き合っていても、腹落ちする目標設定はできないと思うんですよね。
なので、社内外の人と対話したり、いろんな本を読んだりして、インプットのバリエーションと多様性を増やしていくことで、さまざまな目標設定のパターンや着眼点を仕入れてほしいと思います。
目標達成できなくても振り返りと学びが重要
——目標設定によくある課題が、目標を達成できなかった時の対処です。取るべき行動や、あるいはやってはいけないNG例があればお聞かせいただけますか。
沢渡:勝手に黒歴史にしてすべて忘れ去ること。これが一番良くないです。
——振り返ることが重要なのですね。
沢渡:これは組織にとっても個人にとってもそうです。何が成功で何が失敗かという話にもすごく関わるのですが、短期で見たら失敗かもしれません。しかし、中長期でやり抜いたり、その体験を活かしたりしたら、それは単なる通過点でしかないんですよ。もっと言ってしまえば、学びでしかないんです。なので、「諦めたら試合終了」です。
一度落ち込んでもいいんです。お酒を飲みまくってパーッと忘れてもいい(笑)。喉元過ぎれば熱さを忘れると言いますが、私は「喉元を過ぎた後に、熱さをゆっくり思い出そう」ということで、必ず振り返りをします。この
『チームプレーの天才 誰とでもうまく仕事を進められる人がやっていること』でも、振り返りのデザインについてしつこく言っています。
沢渡 あまね 著/下總 良則 著『チームプレーの天才』ダイヤモンド社 刊 失敗というレッテルを貼る行為自体を見直す
沢渡:必ず振り返りをして、そこから何を学んだか、組織に還元できる知見は何か、自分として学んだことは何か、という点に考えを変えていく。そうすると、それがフローではなくストックになり、「自分はこのやり方で、こういうことを学んだ。この学びを活かせます」と言えたりすれば、次のキャリアや道が生まれるじゃないですか。武器になるんですよ。
ですから、忘れずにきちんと振り返りをして意味付けをし、次は勝ちにいく。あるいは、意外なフィールドでその経験が役に立つかもしれないので、景色を変えて勝ちにいこう、ということです。
——失敗した時ってどうしても自分の中で記憶にふたをしたいという思いもありますが……。
沢渡:ちょうど先週土曜日に、共著者の下總良則先生と私とダイヤモンド社の編集の石井一穂さんで『チームプレーの天才』の読書会を行ったんです。その時のトークイベントで非常に盛り上がった話の1つがそれです。
——失敗に対するお話ですか?
沢渡:その時は、「失敗を許す文化」の話になったんです。「失敗を許す文化って大事だよね。でも、なかなかないよね」という話があったので、私は「そもそも失敗かどうか。成功か失敗かということ自体が価値判断なので、その価値判断の呪縛を捨てましょう」という問いを投げかけました。
あくまで体験として蓄積することの効果
沢渡:例えば目標100億円に対して未達だったから、その組織においては失敗と言われるかもしれない。でも、「100億円近くを売り上げたなんてすごいね」と、成功だと思う人もいるわけで、「その体験、どうやったの? 聞かせてほしい」という人がいるかもしれないですよね。
なので、成功か失敗かというのは、そもそも価値判断でしかないんですよ。ですから私は、「失敗を許す文化」自体が、そもそも「あなたはがんばったけど失敗だったよね」と一方的に失敗のレッテルを貼っている、悪気はないけれども無礼な行為だなと思っています。
であれば、成功か失敗かではなく、そこにある事実に目を向けましょう。そこにはただ「体験」したという事実がありますよね。
その体験から何を学んだか、どんなものを身に付けたか、どんな武器を手に入れたか。これらをとにかく蓄積していけば、成功だからと有頂天になる必要もないし、失敗だからと落ち込む必要もない。体験が資産として増えました。これに、組織も個人もきちんと向き合ったほうがいいと思います。
——すごく個人的な話なのですが、先日私の会社で上半期の振り返りがあり、「ここはうまくいかなかったな」と少し落ち込んでいた部分がありました。今のお話を聞いて、少し前向きになれたような気がします。
沢渡:そういう意味では、成功・失敗にかかわらず、やはり体験が多い人は引き出しが増えます。もちろん、その引き出しを使う能力は必要ですが、その能力さえ鍛えれば、人材価値はめちゃめちゃ高くなりますし、組織の価値も高くなります。
打席に3回しか立たなくて全部ホームランを打つ人と、100打席立ってホームランも打つけれどバントもできて、時にはフライを上げて失敗した人もいる。どちらのほうが信頼できるかといったら、私は後者な気がするんですよね。「ホームランじゃなくても、意外と地道に出塁できるんじゃないか?」といったやり方も知っているほうが、引き出しが多いので強いかもしれないですよね。
明日からできる「景色を変える」習慣
——それができるのも、目標を設定して挑戦したからこそですよね。ありがとうございます。最後に、「今年こそ目標に向けてがんばりたい」と思っている読者に向けて、明日からできるちょっとした行動を教えていただけますか。
沢渡:大きな変化の時代です。AIなどが勢いを増してきて、非常におもしろい時代でありながら、ともすればキャリアに対する不安も大きくなっている時代だと思います。そんな時代だからこそ、ぜひ「景色を変えていこう」というキーワードを伝えたいと思います。
そのためには、例えば1日1個新しい情報を得てみる、あるいは何か行き詰まりを感じたら、今までとは違う人と対話をしてみる、今までと違う体験をしてみる。
この「景色を変える習慣」が、みなさんの新たな発見や、「自分は意外と、ここに向いているかもしれない」「こういうやり方だったら自分が活きるかもしれない」といった意外性の発見につながります。
その発見が新たな原動力をあなたにもたらしてくれると思いますので、ぜひ景色を変えていきましょう。そのために、1日1つでもかまいません。1ヶ月に1回でもかまいません。ふだんと違う行動をしてみてはいかがでしょうか。
——今までのやり方を少し変えてみたり、行ったことがない場所に行ってみたりとか、そういったイメージでしょうか?
沢渡:そうですね。そうすると、意外な突破口が見つかります。その引き出しをたくさん持っておくと、進まない自分から、前に進める自分になると思います。景色を変える習慣を、ぜひ。
——沢渡さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!