【3行要約】 ・『チームプレーの天才』著者の沢渡あまね氏は、組織と個人が対話しながら共創する新しい目標設定のあり方が求められると指摘します。
・沢渡氏は「価値判断を捨て、相手を受容する対話力」と「短期・中長期の目標を分けて設計する」ことの重要性を説いています。
・マネージャーは、メンバーの意外な強みを見出し、目標達成に必要なリソースを提供しながら、柔軟に目標を修正していく勇気が求められます。
前回の記事はこちら 目標は押し付け合いではなく「対話と握手」から
──不確実性が高い時代においては、硬直化した目標設定がキャリアのリスクにもなり得るという話をうかがいました。それでは、これからの時代に求められる目標設定はどのようなものになるでしょうか?
沢渡あまね氏(以下、沢渡):(スライドを示して)これからの目標設定のあり方を図にしたのが
『チームプレーの天才 誰とでもうまく仕事を進められる人がやっていること』の中でも出したこちらです。
これは組織と個がそれぞれお互いの事情だとか、あるいは「この仕事を通じて、あなたにどうなってほしいか?」「この仕事を通じて、あなたにどんなキャリアの可能性とか、成長の可能性があるか?」を示しながら対話する。
個も「自分がどのようなプロになっていきたいか?」「自分がどんなロールモデルを描いていくか?」というものを、組織と対話しながら握手していく。この目標設定の仕方に変えていかないといけない。押し付ける・押し付けられ型、その場しのぎのきれいな作文をさせるやり方では意味がないという話ですね。

──沢渡さんの支援している企業で、実際にこのスタイルのマネジメントの導入事例があるのでしょうか?
沢渡:そうですね。キャリアに関する対話を、(例えば)上長とメンバーの1on1を行うようになった企業もあります。さらには「そもそもこの会社や、部署、チームでは、どんなキャリアパスがありえるだろうか?」というキャリアモデルをマネージャーたちが描いて、それを基に「この部署では、こんなキャリアの可能性があるのか」とメンバーに理解してもらうケースとか。
「今の仕事はさまざまあるキャリアのモデルの中のここにいて、この仕事を体験することによって、こっちに行く可能性があるのか」みたいな、未来の対話をしていくことによって、いい目標設定をしたりとか。組織と個の双方がハッピーになるような目標設定をし始めている会社もあります。
目指すキャリアの未来をすり合わせる
──なるほど。確かにそういうものが可視化されると、目標に対しての納得感が生まれます。
沢渡:そうですね。今までは会社側が敷いたレールで、複数あったとしても「必ずそこに乗りなさい」だったんですけども。「こういうレールもある」「もしかしたら、こういうレールもあってもいいんじゃない?」というものを、組織と個が会話しながらすり合わせをしていくということですよね。
このようなことをやるだけでも、従来の目標管理のやり方もまた中身が変わってきます。単なるやらされ感の作文イベントではなく、本人も組織も納得感のあるやり方に変わっていくと思います。
(先ほどのスライドを示して)ちなみに、斜め上に丸があるじゃないですか。これ、上が時間軸として未来なんですよ。組織も個も、より高みを目指して、より高いところで握手していく。このような押し付け合いでも馴れ合いでも譲り合いでもない目標管理設定が求められると捉えています。
良い目標作りには「対話力」が必要
──先ほど「マネージャー側とメンバー側との会話をしていくことが重要だ」というお話もあったと思うのですが、マネージャーがメンバーと対話する際に気をつけるべきポイントは何でしょうか?
沢渡:これはまさに『チームプレーの天才』の中でも定義した対話力です。
いったん違いを受け入れる、受容することが、マネージャー側にもメンバー側にも求められます。これを「受容力」という言葉で(本の中に)入れています。「対話とは何か?」と言うと、いったん「良いか・悪いか」の価値判断を捨てる行為です。
例えばですよ? 目標設定の場において担当者(メンバー)が「2025年の目標は新規顧客の受注を20件獲得することです」と言ったとしましょうか。
それに対して、いきなりマネージャーが「20件? 少ないからダメだ」と、言ったとします。これは対話になってないんですよ。価値観の押し付けなんです。20件が多いか少ないかって、この時点でまず価値判断が入っていますよね。
相手の事情を聞き、お互いの背景を理解し合う
沢渡:さらには、それがダメかどうかというのは、組織の一方的な押し付けでしかないわけなので、押し付けるコミュニケーションになっているんです。対話とは、まず相手を受容する。「あ、そういう考え方もあるんだ」と。さらには「なぜ、そう考えたか?」、この背景を聞き合う行為です。
「あなたに期待したいのは20件ではなく、こういう背景があるから、むしろその倍の40件を目指したい」と。(メンバーは)「40件ですか。でも先輩(の目標)は20件なので、難しいと思います。不安があります」。これは不安という気持ちを伝えているだけなので、状況を発信しているだけです。
「では、〇〇さんとチームを組んでサポートするので。それであれば、いけそうですか?」なのか、あるいは対話を通じて「じゃあ30件にしましょうか」なのか。
このように、お互いの事情を伝え合って合意形成をしていく。そのためには基礎的な対話力とか、メンバーも言われるだけではなくお互いが発信して、リスペクトしながら合意していく「リスペクティング行動」というものが求められるわけですね。
これがまさに共創型のコミュニケーションであり、押し付ける・押し付けられることでキャリア不安を煽るものではない、共創の呼吸での目標設定と言えると思います。