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沢渡あまね氏インタビュー(全3記事)

“昭和型の目標設定”を続ける企業のリスク 答えのない時代に問いを立てる共創型マネジメント [1/2]

【3行要約】
・目標管理制度は多くの企業で形骸化し、マネージャーとメンバー双方が「単なるやらされ感のイベント」と感じる状況になっています。
・400社以上の組織開発を支援してきた沢渡氏は、組織と個人の関係性が変化し、共創型の仕事のやり方が必要な時代になっていると指摘します。
・組織と個人が合意して高みを目指す目標設定へと変革するには、チームメンバーの持ち味や能力を組み合わせた共創が重要になります。

組織開発の専門家が見た“目標管理の形骸化”の実態

──沢渡さんは組織開発の専門家として、多くのクライアントの組織作りをサポートされています。

沢渡あまね氏(以下、沢渡):そうですね。(実績は)400社以上です。

──その中で、目標設定や目標達成に関する不満や課題の声でよく挙がるものはありますか?

沢渡:ありますね。まずマネージャー側から出てくる話ですと、目標に対してメンバーが「動機付けを行いづらい」「期待する行動を取ってくれない」などがあります。さらには「項目が細かすぎて、目標管理そのものの負担が大きい」という声も聞かれます。

一方でメンバー側からも、「そもそも何を目標設定にしたらいいのかわからない」「結局、目標が上からの一方的な押し付けで、やらされ感しかない」「目標が高すぎたり漠然としすぎたりして、何をしたらいいのかわからない」という声もあります。

マネージャーとメンバーで共通しているのは、やはり「目標管理が形骸化していて、単なるやらされ感のイベントにしかなっていない」ということです。ある意味、人事部門からやらされるから、“仕事ごっこ”と化しているパターンもあります。

上層部のOKをもらうための目標設定になってしまう

──メンバーからすれば「マネージャーから言われて」、マネージャーからすれば「さらに上から言われて」という状況になっていると。組織開発の支援を行う中で、実際にそういった状況を目にする機会はありましたか。

沢渡:ありますね。私も大企業出身ですし、大企業の顧問先も多いのですが、特に期の変わり目に多いです。マネージャーとメンバーの対話で「とりあえず、いついつまでに目標管理システムに登録しないといけないから。何か作文しておいて」「はい、わかりました」みたいな会話があったりします。

あるいは「その内容だと、あなたがチャレンジしたことになりそうにないから、もっとチャレンジ感のある文章を書いてくれよ」と。こうなると、何とも「お遊戯会」のような「仕事ごっこ」感が滲み出てきてしまいますね。それでいいのかと。私もよく講演や書籍で言ったりしているのですが、「私たちは作文をしているのではない。ビジネスをしているのだ」と問いたくなります。

──上層部のOKをもらうためだけの目標設定になってしまう。

沢渡:そうなんです。いかに「がんばった感・チャレンジしている感を出すか」という作文行為だけに費していて、結局は身が入りません。あるいは、ある意味で人事への「猫だまし」をするための仕事ごっこしか起こらない状況は非常に良くないですが、さまざまな職場で行われていますね。

組織と個人の関係性が変わりつつある

──そういった時、目標設定の仕組みそのものを変えていくことが必要なのでしょうか?

沢渡:そうですね。そもそも目標設定に至る前に、組織のあり方と個人のあり方。もっと言ってしまえば、組織とそこで働く個がどのように手を握りながら、お互いに成長していくか? という対話が欠かせないと思っています。

今日お話したいのが、まさに「過去の目標設定のあり方と、これからの時代の目標設定のあり方は、そもそも違う」ということです。さらには「目標設定というビジネスイベントを通じて、どのようにアップデートをしていくか?」という話になります。

過去の目標設定は、どちらかと言うと会社・組織の一方的な合理性だけをメンバーに押しつけるような「やらせる型」でよかったと思うんですね。これはなぜかというと、いわゆる終身雇用が前提で、(人材の)流動性もあまりありませんでした。

基本的に会社から言われたことをこなしていれば、それにより一定の職位も給料も上がり、やりたい仕事もできて、ご家族ともども一生幸せな生活を送れるモデルだったわけですね。

──いわゆる「昭和型」と言いますか。

沢渡:そうです。ところが今は変化の時代です。私たち自身もアップデートしていく中で、当然、(人材の)流動性も高くなり、同じ会社に一生勤めるとは限りません。

少子高齢化の中で定年も延長されることで、新卒入社したての人と、60歳を超えた方がチームを組んで仕事をしたり、時には社外のビジネスパートナーと一緒に成果を出していくことになります。すなわち同質性が低い、同じ環境ではあるとは限らない人たちと一緒につながって、共創型の仕事のやり方で組織を運営していく必要があります。

そうなると、マネジメントのやり方そのものを変質させていかないといけません。目標管理においても、単に会社の押し付けで何か答えを出させていくやり方では機能しなくなりつつあるという話だと思うんですね。

答えのない時代に硬直した目標設定は機能しない

沢渡:もう1つ加えて言うと、このような変化の時代において、過去に答えがあるとは限らないテーマに向き合う機会って増えていくと思うんです。

例えば「デジタルツールを使って新たな商材を作ってください」とか「デジタルツールを使って、顧客との新しい関係作りを試してください」って言われた時に、新しいツールの中にはまだ世に出て浅いものもありますから、そもそもどのような使い方があるのかさえも良くわかっていない。

どんな変化を世の中にもたらすのかわからないものって、たくさんあると思うんですね。組織にも世の中にも答えがないかもしれない。そこに対して「そもそも、最初からガッチリとした目標を設定できますか?」「それを押し付ける・押し付けられることに、意味がありますか?」という話になっていくわけです。

「1ヶ月で進捗を出しなさい」「1年で成果を出しなさい」と言われても、言わば、“無理ゲー”になるパターンもあるということです。ある意味、未知のテーマと渡り合っていく仕事のやり方が求められていると思います。

──確かにそうなると、目標設定という考え方自体を改める必要がありますね。

沢渡:そうですね。(スライドを示して)これは私も講演などでよく使うのですが、言わば、世界の組織構造やビジネスモデルが左から右に変化していくという話です。

組織の中に答えがあり、上が決めたことをきちんとやらせる型のマネジメント「だけ」ではうまくいきません。もちろん全部が全部ではありませんが、左側のやり方で答えを出してきた組織や地域、業界においても、右側のようなやり方「も」そもそも取り入れていく必要があります。これは丸と丸が矢印で相互につながっていますね。

──確かに、双方向の関係性になっています。

沢渡:個と個、チームとチーム、組織と組織。あるいは組織の中に答えがなければ組織を越えて、越境する。例えば他部署、他社、他業界、他地域であるとか。このような人たちとつながって、ともに問いを立てながら、ともに答えを出していく。

過去に答えがないもの、組織の中に答えがないものに対して、つながり合って答えを出していく越境型、共創型の呼吸が求められています。とは言え、組織は急には変わらないし、私たちも急には変わらないので、徐々に右の共創型のチームプレーに慣れていかないといけない。場合によってはトレーニングを施していかないと、組織としても停滞してしまうリスクが高いと言えると思います。

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