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中尾隆一郎氏インタビュー(全3記事)

「誰の評価になるか」でチーム内でギスギス… 「個人目標」がチームの協力関係を阻害する

【3行要約】
・目標設定は自律的な行動を促す仕組みですが、多くの企業で形骸化し「意味がない」と感じられています。
・中尾隆一郎氏によると、目標がメンバー自身のものになっていない、リアリティやワクワク感が欠けているのが原因の1つです。
・効果的な目標管理には、チーム全体のゴールを明確にし、個人ではなくチーム単位での評価を取り入れることが重要だと指摘されています。

目標設定は本当に必要なのか?

——今の時期、1年間の「目標設定」をする企業が多いですが、そもそも目標設定は本当に必要なのでしょうか。

中尾隆一郎(以下、中尾):「目標設定はなぜ必要なのか」という問いにお答えします。資料にわざわざ「本当の」と書いてあるのは、世の中の目標設定が必ずしもそうなっていないことがあるからです。目標設定は、メンバーが自律して動くための仕組みであり、私の言葉で言う「自律自転」を促すものだと考えています。

目標を設定する最大の意義は、チーム全体がゴールを把握していることです。ゴールがわかっていると、行動や判断がシンプルになります。ゴールに近づくための業務はするけれど、関連しない業務はしない、という判断がしやすくなるのです。

ゴールが曖昧だと、「この仕事はやるのかな、やらないのかな。上司に相談しよう」という話になります。上司もゴールが曖昧だから判断できず、「じゃあ、やっておく?」となって、本来しなくていい仕事までやってしまうわけです。

——なるほど。適切な目標設定がされていれば、メンバーも上司も「やるべき仕事」が明確にわかるから、判断に迷うことがなくなるんですね。

中尾:そうです。逆説的に言うと、目標設定しているはずなのに、やるかやらないかがよくわからない、曖昧だとするならば、それは本当の目標設定ができてないと思ったらいいと思います。

「目標設定がしんどい」理由

——「目標設定がしんどい」「意味がない」という現場の声に対して、どんな要因があるとお考えですか。

中尾:いくつもあると思いますが、やはり「私たちのゴール」になっていないんだと思います。「自分で決めたんじゃなくて、会社が決めたんだ」と捉えてしまう。

そもそも目標を決めていないよりは決めたほうがマシですが、「何のためにやるのか」「どういう意味があるのか」が不明確だったり、「そんなの絶対無理だ」「荒唐無稽だ」と思うものだと、自分ごとに感じられません。

例えば目標設定を登山に例えると、「どの山にいつまでに登るのか」ということです。僕たちが登ろうと思っている山は、富士山なのかエベレストなのか、もっと低い山なのか。山の高さが目標の数値みたいなものです。

そこにいつまでに登るのか。5年後なのか、今年なのか、3ヶ月後なのか、1ヶ月後なのか、今日なのか。それがわからないと、「山に登るぞ!」と言っていても「どの山でしたっけ」という話になります。

つまり、目標設定の中で「今期の話をしているのか」「今月の話をしているのか」がわからないと意味がないんです。

——なるほど。目標設定で「いつまでに何をやるのか」が明確にわかるようにしたら、メンバーも自分ごととして主体的に取り組めそうですね。

リアリティとワクワク感がなければメンバーは動かない

中尾:そうですね。リーダーは目標設定にリアリティを持たせることが大事です。例えばあるリーダーが「エベレストに登れたらかっこいいぞ」と。でも、「どうやって登るのか」というリアリティがない。こういう目標設定は意味がありません。

僕は富士山にも登ったことがないので、「エベレストに登れ」と言われたら「いやいや、ちょっと無理です」となってしまいます。うちのリーダーは何を言い出したんだ、としらけてしまいますよね。

でも、「今まで日本で3番目の山に登っていたけれど、次は2番目の山に登ろう」と言えば、「できるかもしれない」とメンバーもがんばれる。2番目の山と3番目の山の難しさの違いを調べて、「自分はどういう技術をつけないといけないのか」がわかれば、相互にシミュレーションができて、チームが動き出すのです。

加えて、「この山に登ったらこんな達成感があるんだ」とか「こんなワクワクしたことがあるんだ」みたいなことをメンバーに伝えられたら、さらにやる気になるかもしれませんね。

形骸化する目標設定の罠

中尾:だから、メンバーが「意味がない」と思ってしまうような目標設定は、目標が曖昧だったり、達成基準が不明確で、達成できるイメージが持てなかったりします。

それからよくあるのは、会社のビジョンやミッション、パーパスとまったく関係ない目標を設定していたり。会社としては顧客第一志向と言っているのに、現場では「お客さんを騙してでも売ってこい」となっている状況ですね。

「現実はそんな甘くないんだ」とか言う人もいますが、経営者がビジョン・ミッション・バリューと現場の目標をつなぐ努力をしていないだけ、(経営側の)怠慢だと思うんですね。これをつなげられないんだったら(パーパスを)言うなよ、と思います。

「個人目標」がチームの協力関係を阻害する

——メンバーのやる気を引き出すような目標設定をするには、具体的にどうしたらよいのでしょうか。

中尾:まず、そもそも目標をどの単位で作るのか。個人ではなく、チームで目標を作ったらいいと思うんです。「チームみんなでやろう」という話だったら、まだ「がんばろう」と思う人は増えますよね。

しかし、よくある例としては、チームの目標を無理やり個人に振り分けているようなものです。チームの目標を個人単位にするというのは、本来分けられないものを分けることになります。

例えば、営業パーソンには営業数字がありますよね。Aさんと私が2人で協力して営業したのに、この数字は私だけにつけるとなったら……Aさんは不公平に感じますよね。

でもチーム全体で評価すると言ったら、Aさんは私を応援するし、私もAさんを支援します。でも、ここで無理やり個人の評価に分けると、私とAさんは協力しなくなります。

だから、本当は2人で協力してやっているんだったら、ダブルカウントにすればいいんです。ところがそれをやると、「フリーライドする人が出てくる」と言う人がいる。

——自分の成果ではないのに、できる人のおかげで評価される人も出てきますよね。

中尾:そう。でもどっちが大事かという話で、「どっちの評価になるか」でチーム内でギスギスするよりは、フリーライドのほうがマシだと私は思いますけどね。

——マネージャーが正当に評価しないと不公平感が出てしまいそうな気がして……。でも全員が納得できるように評価付けするのは、すごく難しいですよね。

中尾:そもそも正当に評価ができると思っていることが間違いです。なぜならば、分けられないものを分けているから。みんな、無理やり成果を分けようとして、間違ったことをしているんですよね。

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