【3行要約】 ・キャリアビジョンを問われる「Willハラスメント」に悩む若手ビジネスパーソンは多く、「やりたいことがない」という悩みが深刻化しています。
・ポジウィル株式会社代表取締役の金井芽衣氏は、一見成功しているビジネスパーソンでも自信がない現状に衝撃を受けたと語ります。
・金井氏は「WillがなくてもCANを磨こう」と提案し、自分の強みを1つでも磨き上げることが、キャリアの安定につながると助言しています。
前回の記事はこちら 初出版のきっかけになった疑問
——今回の特集テーマ「Willハラスメント(やりたいことがない若手ビジネスパーソン)」に関連して、金井さんの初の著作『夢や目標もやりたいこともないんですが、後悔しない仕事の選び方教えてください(仮)』が2026年1月に刊行予定とうかがいました。こちらを執筆された動機について教えていただけますか。
金井芽衣氏(以下、金井):「『POSIWILL CAREER』が売れますように」というのもあるんですけど(笑)。でもやっぱり、やりたいことも目標もない人があまりにも多かったからですね。

——それって金井さんからすると「なんでだろう?」みたいな感じだったんですか。
金井:そうですね。「POSIWILL CAREER」の事業をやる前に、今の株主のVCのところで「10分で無料でキャリア相談に乗ります」ということを2週間ぐらいやっていたんですよ。
その時に、東大卒の三菱商事の方とお話ししたんです。その方が、「自分に自信がない」「夢も目標もやりたいことない」「このままでいいのかわからない」って言っていて。「あなたがそんなことを言わないで!」と思ったんですよね。それがけっこうな衝撃で。
“実績があるのに不安な人”がいることに気づく
金井:私、学生時代の友だちもギャルが多かったりとか(笑)。チアリーディング部だったんですけど、帰国子女の子が多かったこともあって、「ウチら最強!」って感じだったんですよね。(前職の)リクルートでも基本的に「俺らイケてる!」思っている人とつるみ続けてきたので。
——なるほど(笑)。
金井:リクルートでは法人担当だったので、お客さまも社長が多かったんですね。中小企業担当の時もありました。経営者の方ってやっぱり「やるぞ!」みたいな感じの人が多かったので、それまでの人生で「自分に自信がない人」とあまり接点がなかったんです。ネガティブな話とか、「私できないかも」っていうのをぜんぜん聞いたことがなかったんですよ。
——へえ〜。おもしろいですね。
金井:例えば、私が短大時代に養護施設に実習に行った時とかに(目にしたような)、「親の環境が」とか「お金がなくて」とかいうことで自分の存在価値がわからなくなってしまうケースはあると思うんです。

東大を出て商社に入って、年収も2,000万円ぐらいもらっているのに、どうしてそんなに自信がないのって。日本の中でもトップオブトップなわけじゃないですか。そういう人たちに「今までの人生でずっと悩んでいるから、引き続きお金を払うので相談に乗ってください」って言われて。今振り返ればですけど、事業のきっかけにもなったと思います。
なので、私はとにかく不思議だったんです。「わかりません!」みたいな(笑)。その気持ちが今回の書籍にもつながりました。
エッセイのように、キャリアの悩みに寄り添う
——そのような疑問が出発点ということですが、キャリアのヒントになる一冊として、本書ならではの読みどころを教えていただければと思います。
金井:わりと女性的なイメージなんですよね。例えば、北野唯我さんの
『転職の思考法』などって、「市場のロジックの中でこういうふうに動いたほうがいいよ」という話だと思うんです。
私は「理論的にはこうしたほうがいい」ということを、エッセイみたいな感じをベースにして書きました。そういった「感性を大事にしたい」とか、「どんなふうに生きたらいいのかわからない」っていう抽象的な悩みがある人に向けた本になります。なので、「着実にマーケットを見て、うまくキャリア設計していきたい」っていう人よりも、その前段階で漠然と悩んでいる人に読んでほしいなと思いますね。
——読者が共感できるようなタッチ。
金井:そうですね。でも、実例を用いてって感じですね。
若い人が自信を持てないのはなぜか
藤井創(以下、藤井):(同行していたログミーBusiness編集長がインタビューに参加)すみません、せっかくなんでちょっと私からも……。先ほど自分に自信がない人の話がありましたけど、私もいろいろとインタビューをした時に、やっぱり「若い人は自信がない」「失敗したくない」という話をよく聞くんですよね。
そういう人たちがCANというか、自分で何ができるかを探すために、どんなアドバイスをしてあげればいいのかなと思うんですよ。
金井:まぁ、失敗するしかないですよね。失敗しないで何かを得られると思っていることが逆にすごいなって思いますけどね。
(一同笑)
失敗しないことなんてないですよね? 日常茶飯事というか、「失敗しないでうまくいったことなんてないけどな」って思います。
藤井:そうですよね。私もそう思うんですけど(笑)。
あとは、Willを聞いてもあまり出てこないとか。結局、なんでWillを聞くかっていうと、その人がやりたいことがわかれば「そのために、こうしてみるのはどうですか」ってアドバイスができるじゃないですか。でも、与えられた仕事はするけれど、やりたいことを聞いても特にないとか。そういうものなんですかね。
金井:「え~? 自分の人生じゃん?」って思いますけどね。
(一同笑)
会社から与えられた目標は自分のWillに当てはめる
金井:(私だったら)「与えられたことだけやっていて楽しいの?」って聞きますね。例えば会社からもらった目標だとしても、私はそれを置き直したほうがいいと思っていて。
振ってきたものを(そのまま)Mustに入れようとすると、あまり気持ちが乗らないんですよ。「自分のWillに置き換えたほうがいいよ」って話をしていて。「どんな自分になるんだろう」とか、「どんな力がつくんだっけ」というふうに落とし込まないと、上司に言われてやっている感じになるじゃないですか。「それって自分の人生のためになるんだっけ?」って思うんですよ。
藤井:なるほど。「こういうことをやりたい」って言ってもらったほうが、「任せたいな」と思うんですけど。
金井:確かに。いや、必要であれば、ぜんぜん私たちが(サポートに)入りますよ?
(一同笑)
「欲を出す練習」が必要なのでは
金井:でも、難しいですよね。今の若い人って欲を出せないんですよ。たぶん欲を出すことが恥ずかしいと思っているのかなと思うんですけど。

今の50~60代の人たちって、「お金持ちになりたい」「モテたい」「いい車に乗りたい」「いい時計が欲しい」とか、あるじゃないですか。
でも今はシェアサービスとかもあって、すごく高いものを買わなくても満たされていると思うんですよ。フリーランスで月30万円ぐらい稼いで田舎に移住することもできるじゃないですか。日本ってご飯もおいしいし。
だから私たちは「欲を出す練習をしましょう」ってけっこう言うんですよね。欲を出さないと「(目標を)叶えたい、がんばろう」ってあまり思えないんじゃないでしょうか。
藤井:確かに。欲が出ている感じがあまりないですよね……。ありがとうございます。すみません、私の相談になってしまって(笑)。
(一同笑)
できることを磨き、自分の強みを自覚すること
——それでは最後に、「Willがない自分はだめだ」と焦りを感じている方に向けて、アドバイスを一言いただければと思うんですけども。
金井:そうですね。「WillがなくてもいいからCanを増やそう」だと思います。自分ができることが増えてくると自信になると思うんですよ。なので、原石をちゃんと磨いていく。それはけっこうテーマな気がしていて。
若手であれば特にそうだと思うんですけど、「(自分には)ちゃんと光っているものがあるな」って自覚していると、他が石だとしても「仕方ねえ」って思えるんですよ。
たくさん光っているものを持っている人は少なくて、磨ききっている石が1~2個あるだけで、その人の人生はけっこう安定すると思うんです。
なので、ちゃんと磨く、磨く作業を怠らないのが大事なんじゃないかなって私は思っています。
——日々の仕事の中で目標を設定しつつ、自分のCANを磨き続けることが大切だということですね。金井さん、本日はありがとうございました!