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阿部圭司氏インタビュー(全3記事)

部下のためらいが招くすれ違い 「配慮はしても遠慮はしない」働き方

【3行要約】
・上司に質問するのを遠慮する部下が多いが、阿部圭司氏は「配慮はしても遠慮はしない」姿勢が重要だと説きます。
・テキストコミュニケーションでは誤解が生じやすく、トーンが固いと怒っていると誤解されるため、早めに口頭での対話に切り替えることが効果的です。
・部下は質問をためらわず、上司は丁寧に応える関係性を築くことで、ズレを早期に修正し、無駄な努力を防ぎ、互いの成長につながります。

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配慮はしても遠慮はしない

—— 部下側からすると、プレイングマネージャーのように業務もマネジメントもやっている上司はすごく忙しそうで、「こんな質問を今投げかけたら申し訳ない」「また仕事を増やしてしまうんじゃないか」と思いがちかなと思うのですが。

阿部圭司氏(以下、阿部): いい質問だと思います。ぜんぜんいいんです。部下は聞く権利を持っていますし、上司はそれに答える義務があると思います。

間違ったことを1ヶ月間寝かされたあとに回収するより、わからない時に「わからない」と言ってもらったほうが楽じゃないですか。取り返しのつかないことになっているより、取り返しがつく状態で教えてもらったほうが、上司としては結果的に仕事が増えないからです。

それに、上のレイヤーになればなるほど、ほかの人がまだ「問題だ」と気づいていないことに先に気づけるようになります。

「今は表面化していないけど、これ半年後に爆発するな」とか、そういうやつです。上の人が先に手を打っておくと、現場から見ると「なんで今それやるんだろう」「何も起きてないのに」と思うかもしれませんが、そのチームでトラブルが起きないのは、その予防が入っているからなんです。みんなは気づいていない。だけど上司だけは気づいている、という状態ですね。

だから「忙しそうだから聞くのは悪いかな」と部下が遠慮してしまうと、その上のレイヤーで見えているものを部下が一生受け取れないままになるんです。もったいないですよね。

なので部下からしたら、テキストだけではわからないことがいっぱいあるので、できるだけ一次情報を取りに行くのが大事だと思います。「こんなこと聞いたんですけど、具体的にどういう意図がありますか?」とか。フランクにどんどん聞いてほしいですね。本当にわからないことがあったらすぐ聞いてほしいし、困ったことがあったらすぐ言ってほしいです。


テキストで噛み合わない時の切り替えサイン

—— テキストだけだと温度感が伝わりづらい場面もあります。Slackやメールのやり取りは、どの段階で口頭に切り替えるのがいいでしょうか。

阿部:テキストって読み手が読みたいように読むじゃないですか。Slackでもメールでも、ちょっと語尾が固いだけで「なんか怒ってる?」ってなるんです。実際はぜんぜん怒ってないのに。「○○。わかりました。」みたいな一文だけでもうぷんぷんしてる感じが出るんですよ(笑)。

でも会って話したら「いや全然怒ってないよ、ただ確認しただけ」ってことがほとんどで。だからテキストだけで全部済まそうとしないほうがいいですね。

僕らは2ちゃんねるでインターネットを学んだ世代なので、テキストで炎上しないラインがだいたいわかるように育ちました。「ここまで書いたら燃えるな」とか。でも、今の若い子は最初からインターネットの世界にいるからこそ、逆にその“行間の処理”が苦手な時がある。だからこそ、「これ燃えそうだな」「トーンがかたいな」って思ったら、テキストを続けるんじゃなくて口頭に切り替えたほうが早いです。

実際、社内のやりとりを見ていて「あ、これ片方イラッとしてるな」と思ったら、裏でカットインしている上司は多いですよ。片方だけに「それでキレんなよ」「相手、最近入った子だから歩み寄ってあげて」みたいな感じで送る。表では言わないけど、テキストのトーンでだいたいわかりますよね。そうやって先に火を小さくしておくと、チームで大きなトラブルにならない。

でもみんな1日〜2日、ひどいと1ヶ月ぐらい寝かせるんですよね。寝かせると複利が効いて、問題が大きくなる。だから場合によっては1on1も、1ヶ月に1時間より、1週間に1回15分のほうが回収が早いことだってある。間違った努力をしていてもすぐ方向修正できますから。


ズレは早期回収が命

—— 部下の方の中には「どこまで質問していいのか」「これを質問したら怒られるんじゃないか」と思ってしまう人もいると思います。上司は「どんどん聞いていいよ」とは言っているけど部下が聞いてこない時は、どうすればいいのでしょう。

阿部: 質問をすることに関しては部下は全く気にしなくていいです。間違った方向に努力していたら本人もしんどいじゃないですか。そのまま1ヶ月走ったら「全部無駄だった」となってキツくなる。「配慮はしても遠慮はするな」と言っていて、聞き方の配慮は大事です。すごく忙しそうな時にいきなり質問を投げることに申し訳なさはあるかもしれませんが、聞かないことで最終的に上司の仕事が増えるなら質問は早いほうがいい。

コミュニケーションが遅くていいことは何もないです。みんな走っているので、ずれたら早く戻す。遠慮していると自分の成長も止まっちゃう。もったいないですよね。

だから上司が忙しそうでも、自分の成長のために働いてるわけですから、そこはちょっとエゴで行ったほういい。それに、そんなに「聞かれて嫌だ」という上司はいないと思いますよ。さっき言ったことを翌日また聞かれたらちょっとイラッとはしますけど(笑)。1回なら全然いいです。毎日同じことを聞かれたら「おい!もうメモれよ!」とはなりますけど、基本はなんでも聞いてほしいと思っています。


理由なき仕事が通りにくい時代

—— 上司との関係も、仕事観も昔とは少し違ってきたのかなと思います。特にZ世代など、若い世代は会社への帰属意識が低い傾向があると言われていますが、その中でのマネジメントのやり方は変わってきているのでしょうか。

阿部:そんなに変わらないと思いますよ。Z世代といっても人によって違いますし。ただ、昔より「意味のないことをやらせる」のは難しくなったな、とは感じます。「なんだこの仕事」というやつですね。ああいうのをやってもらうには、今はけっこう筋の通った理由が必要になりました。

逆マネジメントより直球で聞く

—— そうやって「理由がないと動けない」人が増える中で、部下の側から上司に働きかける考え方も出てきています。上司をコントロールするのではなく、上司が動きやすくなるように配慮する「逆マネジメント」という言葉もありますが、それについてはどう思われますか。

阿部:それ自体はすごくいい部下ですよ。すごく助かります。ただ、「部下のポジションでそんなことできるのか」とは思います(笑)。

原則としては解像度が低いから部下なわけですよね。少なくとも上司のほうが会社や仕事に対する解像度が高いから上司なわけで。そうなると、その下のラインで「上の人の気持ちが本当にわかるのか」というと、これは勘違いだと思いますね。わかったふうになってるだけ。

まあでも、自分が操れている感覚で楽しくできるなら、それはそれでいいと思います。悪いことじゃない。けど上司は「いや、もうちょっと考えているぞ」と思っていると思います(笑)。

究極的には「どう動いたら一番助かりますか」と聞いちゃえばいいんですよね。「何も言わずに健やかに成果を上げてくれたら、もう何も言うことはないです」と言われたら「じゃあそうしますね。わからない時と迷った時だけ聞いていいですか」で済みます。

意外と上司も今「どこまで言っていいのかな」と思っているので、部下からなんでも聞いてくれたほうが助かるはずですよ。大事なことはやはりコミュニケーションですね。

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