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阿部圭司氏インタビュー(全3記事)

「上司ガチャ失敗」と嘆く前にできること 配属運に振り回されないための考え方

【3行要約】
・「上司ガチャ」に一喜一憂するビジネスパーソンが増える中、「悪い上司」から学ぶ価値が見直されています。
・阿部圭司氏は「悪い上司ほど部下が伸びる」と語り、反面教師としての価値と強い成長動機が生まれる理由を解説。
・上司との関係改善には、まず評価制度を達成し、積極的に質問して学びを得る姿勢が鍵となります。

「悪い上司」も「いい上司」と同じ価値を持っている

——「上司ガチャ」という言葉が、広まっていると思いますが、この現状をどのように考えられますか。

阿部圭司氏(以下、阿部): 言葉が少し強いですが、上司からすれば「部下ガチャ」もありますからね。

—— そうですよね(笑)。

阿部: ええ(笑)。一緒ですよ。もちろん「いい上司・悪い上司」というのはあると思いますが、どちらも同じなんです。みんな「いい上司がいい」と言いますけど、その「いい」の定義ってかなり難しいですよね。優しいとか、仕事を手取り足取り教えてくれるとか。でも、そういう「いい上司」が本当に良い上司なのかは長い時間軸をかけて見なければわからない。

ただ優しいだけで、言いたいことがあっても「言ったら嫌われるかも」と思って言わないだけかもしれない。一方で、すごく厳しい上司の下で育ってよかったという人も大勢います。なので「いい上司・悪い上司」の定義は本当に難しい。結局、自分に都合のいい上司を「いい上司」と言っているだけなんじゃないでしょうか。

だから、どちらも一緒なんです。一般的に言われる、本当に優しくて仕事もできる「いい上司」は、そのまま真似をすればいい。そうすれば少なくともその人のポジションまでは行けるわけですから、すごくわかりやすい「いい上司」ですよね。

 一方で「悪い上司」も、実は同じ価値を持っています。というのは、「その人と同じことをしなければいい」んです。

——反面教師のような感じですか。

阿部: そう、反面教師です。悪いところを真似しないというのも、実は教育なんですよ。だから「どちらも一緒」と言っているんです。すごくデリカシーがないとか、言い方がきついとか、「有休を取ります」と言ったら「なんで休むの?」と聞いてくるとか、デリカシーがないですよね。

でも、自分が上司になった時に「そうしなければいい」だけ。ものすごくいいサンプルじゃないですか。いい上司はそのまま真似すればいいし、悪い上司はその逆をすればいい。反面教師になれば、実は同じことなんです。

これは僕の経験則なんですが、「いい上司」につくのはただただ運がいいだけなので、そのまま真似すればいいと思います。でも、正直に言うと「悪い上司」についた人ほど伸びやすいな、と感じることはあります。


悪い上司ほど部下が伸びる理由

——悪い上司についた人ほど伸びやすいのはなぜでしょうか?

阿部:反面教師のほうが、目的に対しての強烈な臨場感があるからでしょうね。あとは悪い上司についた時って「できれば最短で離れたい」じゃないですか。悪い上司から最短で離れる方法、それは出世することなんですよ。

嫌だから、ものすごくがんばる。そうすると、あっという間に追い抜いていく。そういうのを何度も見てきているので、「果たして“いい上司”は本当にいい上司なのかな」というのは、僕は今ものすごく懐疑的です。

もちろん、新入社員の人にそういう話をすると「とはいえ……」ってなるんですけど(笑)。

——そうですね(笑)。

阿部: 気持ちはすごくわかりますよ。でも冷静に考えると、嫌な上司と四六時中一緒にいるわけじゃないですよね。毎日お昼を一緒に食べなきゃいけないわけでもない。飲み会もたまにあるかもしれませんが、そんなにしょっちゅうあるわけでもない。そう思えば、大したことないです。

「最短で離れる」は出世の近道

——もう「学ぶ場」だと思ってしまえばいい、ということですね。

阿部: そうです。「この上司、アホだな」でいいと思うんですよね。僕はずっとそうやって見てきたので、「悪い上司だから嫌だ」と思ったことはそんなにないです。さっさとがんばって自分が上がってしまえばいいわけですから。

仕事って、自分の目的を達成するためにやるものですよね。その会社に何かしらの目的があって入るわけですから。そうなると、上司がどうであれ、極端に言えば関係ないんです。上司が優しいとか優しくないとか、ちょっと考えすぎなんじゃないかなと思ってしまいますね。

日常を学ぶ場に変える視点

——とはいえ「上司が悪いんだ」と言いたくなる気持ちも少しわかるなと思っていて。それで終わらせないために、まず何を見直すべきだと思いますか。

阿部: 悪い上司と噛み合わない時にまず見るのは、評価制度です。たいてい定量の評価制度がありますよね。まずそれを取りきる。ここが取れていないのに「上司がこうだから」と言っても通りません。

定量が取れていれば、多少噛み合わなくても上の人は見ていますし、異動や昇格でその上司から離れる道も出てきます。だから一番早いのは、とっとと成果を出して離れることです。愚痴る時間があるならそっちにエネルギーを使ったほうがいいと思います。


評価制度を攻略する

——マネジメントされる側には、どのような主体性が求められると思いますか。

阿部: 話しかけることじゃないですかね。「嫌だ」と言って距離をとっていても、何も教えてもらえなくなっちゃうだけなので。例えば、上司が自分には良くわからない選択肢を取った時には「なんでそういう選択肢を取るんですか」と直接聞いたほうがいいんです。

その論理が間違っていたとしても「あ、この人はこういうやり方なんだな」と反面教師になる。そこで「違いますよ」と否定しても、何もいいことはないじゃないですか。

だったら「あぁ、そういう考え方ね」という感じで、自分なりのやり方で成果を出せばいい。上司が言ったとおりにやっていなかったとしても、評価制度を達成していたら、それはもう上司の手柄ですから。

主体性の第一歩は自分から聞きに行く

——先ほどの反面教師というところで、上司に対して「アホだな」と思っていてもいいというお話でしたが、やはり信頼関係のようなものは一定必要なのかなと思います。そこはどうでしょうか?

阿部: 技術的な信頼は最低限必要ですよ。でも「人としての信頼関係」が本当に必要かというと、仕事ができていればいいわけですよね。別に一生の友だちを作りに来ているわけじゃないので。

「この人のためなら」はもちろんあると思います。でもそれも結局、評価制度ですよ。「何も言わなくてもこいつは評価制度を達成する」とわかれば、上司は基本的に何も言いません。放っておいたら勝手に伸びるなら、それは最高の部下ですから。

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