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伊達洋駆氏インタビュー(全3記事)

職場での感謝はチャットのスタンプで片付けない 社員同士の良い関係性をつくる影響力の身に付け方

【3行要約】
・業務効率化が進む現代の職場では、デジタルツールによる簡便な感謝表現が人間関係をドライにしてしまうリスクが高まっています。
・伊達洋駆氏は、特に人と人との間での依頼と実行の場面では、スタンプ機能などではなく 言葉で感謝を伝えることの重要性を強調しています。
・「聞き役」になる、自己開示する、当事者意識を持つなど、一般メンバーでもできる小さな行動が、職場の横のつながりを深める鍵となります。

前回の記事はこちら 

組織の空気感を作る“言葉の力”

——職場では、社員同士のポジティブなフィードバックが意外と行われていない現状があるというお話がありました。職場での横の連携を円滑にするために、伊達さんは社員のみなさんに対してどんなことを行っていますか?

伊達洋駆氏(以下、伊達):感謝が大事ですよね。例えばSlackだと、スタンプで簡便に「ありがとう」と言うことができます。ああいうのって組織の雰囲気を作ったり、文化を醸成していったりする時には非常に重要なんです。

けれども、例えば「AさんがBさんに頼みました」といった、人と人との間で依頼がなされて、実行してくれた場合。こういう時にはスタンプではなく言葉で伝えたほうが効果的です。

——スタンプで簡便に片付けてしまうという問題は確かにあるかもしれないですね。

伊達:すべて言葉で言うのは、それはそれで冗長になってしまうので控えたほうがいいと思いますが(笑)。けれども、少なくとも感謝とか、その依頼を受け取ったかどうかについては、明確に言葉で表現していくことが重要ではないかなと思います。

そうしないと、結局先ほどのジョブ・クリープというか、やってもらって当たり前という認識になってしまいます。「この人が自分の資料を作ってくれるのは当たり前」「頼んだらやってくれるのは当たり前」みたいな感じになってしまうと、関係性があまり深まっていかないわけですよね。

自分が管理職になっても使える技術

——コミュニケーションが効率化される一方、社員同士の関係性がドライになってしまうのはデメリットで、すごくジレンマがありますね。

伊達:そうですよね。だから、頼まれた側は資源を提供しても「よかった」と思えなくなり、自分の貢献が大事にされていないと思ってしまう。それって関係性にとってはすごくひびが入るというか、ポジティブな出来事ではないんですよ。

なので、そうした人間関係を円滑化するような感謝や、それこそ最低限のコミュニケーションというのは、むしろ非常に重要になってきているのかなと思いますね。

上司・部下関係でもまったく同じことが言えます。例えば下から「こういうことをやってください」「やったほうがいいと思います。なぜならこうだからです」と、下から上を説得的に動かしたとしますよね。(動かすだけ)で終わりだと駄目なわけです。

——動いてもらった後のフォローと言いますか。

伊達:そうです。その時に「こういうことをしていただいてありがとうございました」「こういうところで助かりました」「前に進むようになりました」「効率化しました」「成果が出ました」とか、そういった、どういうプラスが生まれたのかまで含めてきちんと伝えていくことが、いずれにせよやはり重要かなと思います。

——確かにそうですよね。ちゃんとそういったポジティブフィードバックをする習慣を身につけておくと、後々管理職になった時にも有用なのかなと思います。

伊達:はい、自然にできるようになっているでしょうし。非常に有用だと思います。

話を聞くことも大事なアクション

——先ほど、Slackでの組織文化の醸成のお話がありました。若手ビジネスパーソンの方の悩みとして、同僚や管理職に言いたいことがあるんだけど言いにくい空気があると思います。

そうすると当然、横のつながりを作るどころではなくなってしまうのですが、そういった職場の雰囲気を変えるための行動にはどんなものがあるんでしょうか?

伊達:一般メンバーでもできることで1つ言うと、話を聞くということだと思いますね。

いろいろな人の聞き役になって質問する。例えば「これについてどんな考えがありますか?」とか、そういった感じで話を聞く。当たり前なんですけど、聞かれたら言いますよね(笑)。自分が言わなくたって、誰かから質問されて無視はしないわけですよ。「これについてどう思いますか?」と言われたら、何かは答えますよね。

質問をする役割というか、聞き役を買って出ることはできるんじゃないのかなと思いますね。

——確かにそうですね。何かを変えようと思う時って、能動的なアクションを連想してしまいますけど、相手の思っていることを引き出すことが、職場の雰囲気にも影響を与えるんですね。

伊達:そうです。そうするといろいろな人がいろいろな意見を言ってくれたり、アイデアを出してくれたりしやすくなり、(関係性の距離感が)少しずつ近くなってくると思います。それが1つですね。

失敗した経験の共有が安心感を作る

伊達:もう1つが、最初は小さいレベルでいいんですけど、自己開示をしていくことです。大きな失敗だと心理的なハードルが高いと思うので、例えば「ちょっと失敗してしまったんですけど」みたいな感じで共有する。

それは非常に重要な一歩で、そうすると、周りの人も「この場では失敗を共有してもいいんだ」と思うわけですね。つまり「自分に一見不利になるような事柄であっても言ってもいいんだ」と思いやすくなります。

——それなら、特にスキルや役職がなくてもやりやすいですね。

伊達:簡単にできますね。むしろ若い時のほうが慣れない仕事が多いでしょうから、失敗する可能性はあって当然なので「そういう時にこういう失敗をちょっとしてしまって」みたいなことは言いやすいと思います。

そして、それこそ聞き役をプラスして、「○○さんはこういう時、どうされていますか?」みたいな感じで聞いたら、何か言ってくれますよ。「言いたくありません!」みたいに返されることはないと思うので(笑)。

——確かに。ちょっと年齢を重ねてくると、それこそ新卒社員にアドバイスを求められると、ついいろいろと話したくなっちゃうみたいな(笑)。

伊達:うれしいですよね(笑)。質問されると、頼りにされていると思いますし。だから、それはけっこう重要な役回りではないかなと思いますね。

影響力は身に付けるのではなく蓄積するもの

——それでは最後に、職場の横のつながりを活かしていくために、「マネジメントされる側は、ここだけは押さえてほしい」というポイントについて教えてください。

伊達:1つはパワーの話ですね。横の関係では、立場によるパワーがすごく通用しにくいので、それ以外の種類のパワーの源泉を持っておく必要があります。でも、それって一朝一夕には身につかないものなんですよ。

専門性によるパワーや人望、思いやりといったことによるパワーは、初対面の場合や、仕事を始めたばかりだといずれも無理なんです。

これらは蓄積していくものなので、いろいろなかたちでそのパワーを少しずつ蓄積していくことが非常に重要になってくる。誰もが専門性だけで動いてくれるわけではないので、そういうレパートリーを持っていると資源を動かしやすくなります。

「いや、あなたと私の仲じゃないですか」といった感じで動かしていくことが必要なケースがありますよね。だから、そういういろいろな動かし方のレパートリーを持っていると強いので、パワーのレパートリーを増やしていくことは重要かなと思います。

上司だけで実現できるものなんてない

伊達:もう1つが、当事者になることがすごく重要だと思うんですよ。

——当事者ですか?

伊達:例えば心理的安全性1つを取っても、上司が醸成してくれるものと捉えていると、(心理的安全性のあるチームにすることは)基本的には無理なんです。

上司だけで作るものなんて1個もないんです。上司が言うだけでチームのメンバー全員が命令に従うわけじゃないですし、立場による影響力で、人間の心の隅々まで完全に統制できるわけではありません。

そうするとやはり、協力が必要なわけですよね。協力とは、要するに当事者になること。ある目標に対して向かっていくという時に「自分はどういう貢献ができるのか」という発想を持たないとうまくいかないんですよ。

この発想はけっこう大事です。自分がその問題を解決しやすくなるのはもちろんのこと、そのプロセスを通じて関係が深まります。あと、先ほどの互恵性もけっこう作動してくるというか、「自分はこういうことを提供できました」となると、向こうからも感謝されるでしょうし。

当事者意識を持つことが連携力につながる

伊達:あるいは、やっている中で誰かから何かを提供してもらうこともあると思うんですよ。そうすると感謝を表明すれば関係ができてきます。一緒に取り組む仲間、当事者という意識で仕事に取り組んでいくことが重要ではないかなと思います。

当事者意識ってよくできた言葉です。そもそも職場にいるということは当事者ですよね。例えば、そこで何もしないというのも当事者としての1つの行動なんです。「自分はこれに対して距離を取る」という行動を当事者として取っているわけですね。

当事者意識とは、その問題や目標に対して自分なりのあり方で積極的に関与していこうとすることです。なので、例えば先ほどのような「感謝を述べる」ということでももちろんOKです。

「問題や目標に近づいていくために、自分なりにできることはないだろうか?」ということを考えていくのが重要だと思います。それがいろいろなものを引き連れてきますね。そうしたことをやっていくと、今まで話したようなもの(社員同士の横のつながり)が表れてくると思います。

——伊達さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!

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