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高橋一雄氏インタビュー(全3記事)

タスクの最初の2割はマネージャー、残り8割は部下が担当 チームで成果を出す「任せ方」の極意

【3行要約】
・「自分でやったほうが早い」と部下に仕事を任せられないマネージャーは多いですが、チームの成果最大化には適切な任せ方が不可欠です。
・高橋一雄氏は「業績が教育の犠牲にならないよう、業績を最優先しながら育成を進める」ことが重要だと指摘します。
・マネージャーは全タスクの最初の2割を自分で担当し、残り8割を部下に任せることで、効率的にチーム全体のパフォーマンスを高められます。

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マネジメントの絶対条件

——部下が失敗するのが不安で任せられなかったり、「自分でやったほうが早い」と巻き取ってしまいたくなるマネージャーも多いと思いますが、高橋さんはどう思われますか。

高橋一雄氏(以下、高橋):僕は任せられる部分は任せてしまいますね。任せるのが怖いというのもあまりなくて、怖くない範囲で任せています。

——例えば「このままだと失敗しそうだな」と思ったら、積極的に介入していく感じでしょうか。

高橋:度合いによりますが、前提として「業績が教育の犠牲にならないように」とは必ず思っています。マネージャーの視点から言うと、業績を伸ばし成果を残していくことが目的であって、そのための手段の1つがメンバーの育成だと考えています。ここが逆転してしまわないように、というのはマネジメントをしていく上での絶対条件だと思っています。

その上で、許容できる失敗と許容できない失敗があると思います。許容できるところは任せていきますし、ちゃんと状況確認をしていないと、思ったより失敗していて業績に影響が出てしまうこともある。なので、ちゃんと確認できる体制を作り、万が一失敗してもセーフティネットがあるので大丈夫、という状態にしています。

任せるのが苦手な方って、A・B・C・D・Eっていうタスクがあったとして、A・Bは部下に任せる、C・D・Eは自分がやるみたいな割り振り方をする印象があります。それって、けっこう難しいと思うんですよね。

要はその1個の案件に対して、全部まるっと自分でできる部下じゃないと渡せない。僕のイメージで言うと、A・B・C・D・Eとタスクがあった時に、全部のタスクの最初の2割は横串で自分がやっていって、残りの8割の部分は部下に任せるという感じです。

そうすることによって、すべての案件に部下に関わってもらいつつ、自分自身はより多くの案件に携わることができる。ボトルネックをしっかり押さえていくことによって、チームとして大きい成果を残していけると考えています。

メンバーに結果を出させることが最優先

——部下との関係性づくりにおいて意識していることはありますか。

高橋:これはちょっと実力不足もあると思いますが、僕はあんまりやっていないんです。マネジメントにはピープルマネジメントと業務のマネジメントがありますが、僕はまず業務のマネジメントをちゃんとやることが大事だと思っています。

人のモチベーションマネジメントをどれだけがんばっても、結局業務のやり方がぐちゃぐちゃだったら、やる気はあっても成果は出ないという話になっていきます。そうではなく、「この目的に向かってこのKPIを追っていけば、自分のがんばりが会社全体の売上利益につながる」という道筋を作ることに意識を注いでいます。

それによってモチベーションが上がっていくと思うので、僕はまず業務マネジメントをきっちりして、メンバーにちゃんと結果を出させることを一番重視しています。

——きちんと成果を出させることでメンバーの自信がついて、次の挑戦につながったりするわけですね。

高橋:そうですね。もちろんそれだけではないと思いますが、ビジネスをやっている以上、プロとして結果を出すことは必ず避けて通れない部分です。他の部分がどれだけ満たされても、結果が出ない、成長しないとなると、短期的にはがんばれても、ずっとその状況でがんばり続けるのは難しいと思います。

逆に、自分がやったことに対してどんどん結果が出たり、それに伴って成長実感が持てたりすると、さらにモチベーションにつながります。とはいえ人間は感情で動く部分もあるので、そこを切り捨てているわけではないですが、優先順位としては、業務のマネジメントをきっちりやって、メンバーのがんばりを結果につなげやすい環境・状況を作ることです。

結果が出せない部下に伝えていること

——なかなか結果が出ない部下に対しては、どんなふうにフィードバックしていますか。

高橋:人によりますが、「この目標に向かっているけど全然ダメです」という場合、たぶん目標設定が高すぎるか遠すぎるということが多いんです。なので、もっと手前にステップを置いてやっていきます。

そうすると、最終的な目標には到達できなくても、その手前のステップに対しては「確実に前に進んでいるよね」と、本人にも実感してもらいやすくなります。本人はずっと目の前のことに向かってがんばっているので、それを客観的なマネージャーの視点から見て、「例えば3ヶ月前と比べて、ここは前こうだったけど、こうなっているよね」と状態の変化を言語化して伝えてあげます。

そうすることで、大きい結果が出ていなくても、その人の中の「自分比」での変化を実感できると、「じゃあもっと次はこうしていこう」というかたちになっていくので、そのへんは個人に合わせてやっています。

目標設定で「ワクワク感」を持たせる

——なるほど。最後に、部下の主体性を高めるという点で、他に意識していることはありますか。

高橋:主体的にやりたくなるためには、やはり「おもしろいな」「ワクワクするな」という感情を作ることがすごく大事だと思っています。つまり「やりたいからやる」という状態を作ることです。なので、目標を下ろす時に、「これ、いけたらすごいよね」というワクワク感をちゃんと作ることを意識しています。

このワクワク感にはいろいろな種類があると思いますが、僕は特に「組織効力感」という概念を大事にしています。「この北の達人というチームだったら成し遂げられそうだよね」「このチームとやったらいけそうだよね」という感覚です。

「自分たちだったらこれもやれそうだよね」という感覚を共有していくことは大事ですし、今の世代の特徴として、納得感のない中で押しつけられることには冷めやすいと思うんです。

一方で、チームの中で自分の存在意義を感じたいという欲求はけっこうあると思います。一人ひとりの役割を明確にしつつ、「このチームであればこういう未来が見えそうだよね」というところは大事だと思っています。

部下が目標設定の「背景」を知ることが大事

——ワクワク感のある目標を作るためのポイントはありますか?

高橋:自分だけで目標を決めるのではなく、メンバーと一緒に決めています。決まった目標がドンと降りてくると、「重いな」となるじゃないですか。でも、目標を決めていく段階で「過去にこういうことができてたよね」「じゃあもっといけるんじゃない」というかたちで一緒に作っていくと、その目標を自分ごと化しやすい。それに、「自分たちだったらこれに挑戦していけるんじゃないか」という感情になりやすいんです。

会社としての大きい目標があり、それがチームの目標に細分化されていきます。部署全体の目標ならマネージャー陣と僕で、それをさらに商品ごとの目標に落とす時には、その商品のチームメンバーを巻き込みながら作っていく。そうすることで、自分ごと化しやすくなります。

そうするとメンバーとしても、目標設定の背景がわかるじゃないですか。これがわからないとけっこう辛いと思うんです。いきなり目標だけドンと来て「どうするんだ」という感じだとしんどい。なぜその目標なのか、「こういうステップでいったら行けそうだよね」というところも含めて目標設定ができると、みんな動きやすいし、ワクワクするのかなと思います。

——目標にも納得感を持ってもらうことが、部下に主体性をもって動いてもらうために重要なんですね。高橋さん、ありがとうございました。

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