【3行要約】・「部下に主体的に動いてほしい」と願うマネージャーは多いものの、実際には指示待ち社員に悩むケースが少なくありません。
・高橋一雄氏は、部下が動けない理由は「何をやったら良いのかわからない」ケースが多く、上司側も任せきれない不安があると指摘します。
・上司は適切なサポートと仕組みづくりを通じて、ゴール共有・行動イメージ・進捗管理の3ステップで部下の主体性を引き出すべきです。
前回の記事はこちら 部下の主体性を引き出すための3つのステップ
——ここからは、部下の自主性を高める方法についてうかがいます。Z世代は成長意欲が強いというお話でしたが、「言われたことをやるだけ」の指示待ち部下に悩むマネージャーも少なくありません。部下に自主的に行動してもらうために、どんな声かけや行動を取っていけばいいでしょうか。
高橋一雄氏(以下、高橋):そうですね。部下が主体的に行動できないのは、もちろん意識の問題もあると思いますが、何をやったら良いのかわからないというパターンもけっこう多いのではないでしょうか。逆に上司側の目線からいくと、「この人に任せてうまくいくんだろうか」というところがネックで任せられないというのがあると思います。
やはり「勝手に動いてね」「主体的にやろうね」という丸投げで、部下の主体性を引き出していくのは難しいです。もし放っておいても自分で考えて成果を出せる部下がいるなら、その人は偶然“今は部下”なだけで、本来の実力的には自分と同等ということだと思っています。でもそのような存在はかなり例外です。
なので普通は「自主的に動こう」と声をかけるだけでは動けないという前提で考える必要があると思っていて、主体的に動けるように、上司がフォローしたり、任せ方を工夫したりすることが必要だと考えています。
その上で意識していることは大きく3つあります。1つ目は、ゴールの部分や目標の部分をちゃんとすり合わせること。これがスタートラインとして大事です。「主体的に動いてね」と言っても、どの方向に向かうべきかが解像度高く設定されていないと、どっちに行けばいいかわからなくなります。
なので、まずやってほしいことの先にあるゴールや目標を、正しく認識してもらうことです。動いてくれないという場合、そもそもマネージャーが思っているゴールとメンバーが思っているゴールに乖離があって、メンバーの中ではすでにゴールに達しているという状態のことも多いです。
2つ目は、ゴールや目標を共有した上で、メンバーが「その実現のために何をすべきか」をイメージできているかを確認します。まったくどうしたらいいかわからない状態で放置しても成果は出ません。なので、まずちゃんとイメージができる状態を作るところまでは、絶対に介入するようにしています。
部下に丸投げはNG…適切な介入の仕方
——介入の塩梅としては、タスクの具体的な手順とかも伝えていますか。
高橋:その人のスキルや経験によりますが、大枠として「こういう方向性でやっていけばいいんだな」というのがイメージできるところまではやります。どこまで介入するのかを本人のレベルに合わせて調整するのが重要だと思います。
介入しすぎると、言われたことだけをやるかたちになってしまいますし、介入が弱すぎると何をやったらいいかわからず動けなくなります。なので最初の1歩までは伴走する、という感じですね。その上で、実際にはイメージ通りにいかないことや、もっと具体化して行動に落とし込んでいかないといけないところは絶対にあるので、そこでちゃんと主体性を発揮していける状態を作ります。
——大枠のイメージがつくまでは介入するけど、しすぎないようにする、というバランスがすごく難しいなと思います。どのように保っていますか。
高橋:基本的には、すごくヒアリングします。ゴールが決まったら、「これに対して今どういうふうにやっていくの?」とか、「こういう時どうするの?」「こういう問題が起こると思うけど、これに対してはどう考えてる?」というのを、最初の任せるタイミングで聞きます。
あとは、進捗確認のタイミングで状況が変われば動きも変えないといけないので、その状況変化の中でどうしようと考えているのか。そもそもイメージとして持っているのかを確認しながら、「どこまでイメージできているか」を聞いて確認していく感じです。
聞いていくと、「あ、そこは考えてなかったです、考えます」となることもあれば、考えたけどどうしていいかわからない、ということもあります。前者の場合は考えてもらえばいいですが、後者のような場合は自分が入ってフォローしていくかたちです。

——任せるといっても全部を丸投げするのではなく、ゴールまでの道筋を本人に確認して、気づいていない部分をサポートしていくんですね。
高橋:そうですね。それから3つ目は、成果や進捗を後追いできる仕組みを必ず持つことです。部下に任せられないというのは、任せてちゃんと成果が出るか不安だという点がネックだと思います。そのために、進捗や成果をできるだけ定量的に把握できる仕組みを作るようにしています。
例えば、KPIを定量化して、目標に対して今の進捗がどうなのか、デイリーでわかる状態を作ってから任せるとか。進捗の部分だったら、タスクの進捗状況を週に1回の定例ミーティングで必ず報告してもらうようにして、何かあったらそこで介入できる状態を作っておく。そういったセーフティネットを作ることで、思い切って任せられると思います。
プロジェクトの停滞がなくなる「進捗報告」のルールづくり
——成果や進捗を後追いできる仕組みについてですが、なかなか部下から報告が上がってこなかったり、悪い報告を後回しにしてタスクが滞ってしまうこともあると思います。どんなふうに共有してもらう仕組みを作っていますか。
高橋:進捗を確認するという観点でいくと、基本的に「この項目で報告してね」と全部決めます。
例えば、成果の部分が前週比でどのように変化しているのか、目標達成に対して何パーセントいっているのか。そして前週との差分が絶対あるじゃないですか。それに対しての要因を必ず書いてもらい、その要因に対して次の1週間でどういう打ち手を打っていくのかを書いてもらう。というかたちで、「この項目とこの項目を報告してください」と最初に必ず決めています。
——その報告はどのくらいの頻度でしてもらうのですか?
高橋:案件によりますね。任せる前に、「もし自分自身がこの案件をやるとしたら、どこを押さえながら進めるか」をまず考えるんです。その押さえるべきところがちゃんと確認できていれば、この案件は進んでいきますよね。
なので、「この観点で進捗が確認できるように、ここを報告してね」と指定します。内容によってどのスパンで確認する必要があるかも違うので、自分がこの案件を進めるならどれぐらいのスパンで確認するか、ということも踏まえて頻度を決めます。
——部下に任せるにしても、「自分がやるとしたらどう考えるか」を踏まえた上で任せているんですね。
高橋:そうです。それをやっておかないと、メンバーが気づけていないことに、こちらから気づけないと思うんです。それでメンバーができなかったとしたら、マネージャーの責任です。メンバーが気づけていない部分に対しても気づけるような仕組みを作っておくことは、すごく重視しています。
これができるので、ガンガン任せていける部分もあると思います。どんどん任せていけるからこそ、メンバーの主体性が発揮されていく。あまり「主体性を発揮しろ」と言いつつも、ぜんぜん仕事を任せていけないと、発揮するものも発揮できない部分もあると思うので、ここはセットなのかなと思っています。