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森本千賀子氏インタビュー(全2記事)

成功者でも「計算通りのキャリア」を歩む人はごく少数 転職か残留か、その判断軸とは

【3行要約】
・キャリア選択の自由度が増す「リミットレス時代」で、多くの人が選択肢の多さに迷い、自分に合った道を見つけられずにいます。
・2,000名以上の転職支援経験を持つ森本氏は「現在は副業解禁やリモートワーク定着により、キャリアの選択肢が無限に広がっている」と指摘。
・特にZ世代には「川流れキャリア」で20代の厚みをつくり、自分軸が見えてきたらバックキャスティングへ切り替える二刀流が有効だと語ります。

※この記事にはプロモーションが含まれています

新時代の転職は「リミットレス」に

——森本さんは、新著『リミットレス時代の転職術 「選ばれる人」の新常識』を出版されましたが、なぜこのタイミングでこのテーマを書かれたのでしょうか? 2,000名超の転職に携わって来られた中で、ここ数年の転職市場の変化をどう感じていらっしゃいますか?

森本千賀子氏(以下、森本):新卒でこの世界に飛び込み、気づけば30年超が経ちました。かつては“1社の名刺=自分の看板”という時代で、終身雇用が王道でしたが、今は違います。副業の解禁、リモートやハイブリッドの定着、そしてAIの急進化——キャリアはまさに“リミットレス”です。

例えば副業が解禁されて、誰もが自由に職場以外に自分自身のやりたいことを実現したりできるようになっています。

あとは、コロナ禍以降リモートワークが定着しましたよね。出社に戻っている会社もありますが、それでもハイブリッドでやっているとか、子どもが病気になった時や家の用事がある時にはリモートワークができるとか、働き方も多様化しています。

それから、もともとはメンバーシップ型雇用で「ジョブローテーションは当たり前」だったところから、ジョブ型雇用が進んできています。

10人いれば10通り、登れる山もルートも無数にある時代です。だからこそ情報があふれ、選べない悩みも増えました。今回の書籍は、その迷いを“主体的な選択”へと変えるための羅針盤です。自分の意思でキャリアのハンドルを握る力を、一冊に凝縮しました。

——従来の働き方やキャリアの築き方から自由度が高くなったぶん、どうやって自分の道を選んでいいのかわからないという方も多そうですね。

森本:そうですね。自分がやりたいことがあった時に、どういう山の登り方が最適なのか。
大事なのは「どの山を、どんな歩幅で登るか」を自分で決める眼差しです。受け身の“配属”から、能動の“選択”へ、キャリアの主語を「会社」から「自分」に戻すための実践書として、この本を書きました。

Z世代のキャリア観は「短期目線」と「社会貢献」

——これまで、実際にZ世代の方からどんなご相談がありましたか? 

森本:私自身は、本業ではどちらかというとエグゼクティブやハイクラスの方々、CxOと言われる方の転職支援をさせていただいています。ただ、うちの長男がちょうど今大学4年生で、同級生たちはちょうど2025年就職活動ということで、何十人とキャリア・メンタリングをさせてもらっています。いわゆる新卒の就職活動の今の現状とか、彼らがどういうことで悩んでいて、どういう軸で選んでいくのかというのを目の当たりにしています。

あとは、本業以外のところでいろんなコミュニティに所属しています。その中で、まさに20代とか入社して間もない人たちを含めたZ世代の人たちのキャリア相談とかメンタリングをやってほしいということで、接点を持つことはけっこうありますね。

長男世代を含め、Z世代と日々向き合う中で実感するのは、“長期固定”より“まず一歩”ということです。骨をうずめる発想ではなく、20代をどうデザインするかにフォーカスしています。そして価値観の核は「社会性」と「自分らしさ」。出世や年収だけでなく、意味合い・貢献・共感を重んじるのが彼らの強さです。

一方で「じゃあどの業界・職種がそれを叶えるの?」が曖昧になりがちなんですね。だから私たち大人の役割は、理想を現実の“選択”に橋渡しすることだと考えています。

——確かに「自分らしい生き方がしたい」と思っても、「じゃあ、自分らしいってどういうことか」「どんな仕事が向いているか」は難しいですよね。

森本:まさに“具体化”が鍵です。言語化→仮説→小さな試行——この反復が自分軸をくっきりさせます。

——新卒社員が早期離職をしてしまう問題もよく言われていますよね。

森本:早期離職は“失敗”ではなく“軌道修正”です。情報の非対称や視野の狭さが前提なら、違和感の修正は自然な行為です。大切なのは「なぜズレたのか」「次は何を検証するか」を言語化し、同じ理由で迷わないこと。感情で辞めるのではなく、学びに変えて次の一歩を踏み出すことが大事です。Z世代はその切り替えが速いので、1〜2ヶ月でのピボットも珍しくありません。スピードよりも“質の高い検証”を意識してほしいですね。

——Z世代自身も、3年経たずに離職することをネガティブには捉えていないんですね。

森本:はい。大事なのは「短期離職=軽い」ではなく、「短期でも深い学びを回収できたか」。経験の長さより、省察の深さがキャリア価値を決めます。

「向いている仕事」を見つけるには

——自分の向いている仕事を見つけるにはどうしたらいいのでしょうか?

森本:自己分析だけでは限界があります。なのでまずは事実の棚卸しからです。学生時代も含め、時間を忘れて没頭した瞬間、人から褒められた場面、ワクワクや達成感が動いた出来事を挙げ、共通するキーワードを抜き出します。

同時に、人はメタ認知が難しい。年齢に関係なく自分を客観視するのは至難です。だからこそ第三者のフィードバックを取りにいくんです。副業、ボランティア、プロボノなど小さな挑戦で接点を増やせば、「あなたはこういう時に強い」「この役割が活きる」といった示唆が集まり、“向いている”の輪郭が立ち上がります。

転職か残留か、その判断軸とは

——自己理解と他者からのフィードバックの両方が必要なんですね。そもそも転職するか会社に残るか迷っている時の判断の軸はありますか?

森本:その場合は、二軸で整理します。1つは改善余地。上司や制度への不満は、転職しても再発しがちです。まず関係性の再構築や異動の打診など、社内で打てる手を尽くします。もう1つは成長感です。学びの勾配を感じない、やり切ったと実感できるなら、環境を変える選択を検討する価値があります。

この二軸(改善可能性×成長感)で現状/理想/ギャップを言語化すると、モヤモヤが意思決定に変わります。

——「なんとなく転職したい」というモヤモヤを言語化してみるのが大事なんですね。

森本:はい。転職は期待値とリスクの両面があります。人間関係はゼロからになりますし、理想郷も保証されません。その前提で「それでも越える価値があるか」を自分の言葉で確かめることが重要です。

——確かに。「とにかく転職したい」と焦っていると見落としがちな点ですね。

多くのエグゼクティブが実践してきた「川流れキャリア」

——書籍の中で特におもしろいなと思ったのが、キャリア形成においては、「川流れキャリア」と「バックキャスティング」の2つがあるというお話です。詳しくお話しいただけますか?

森本:川流れキャリアは、目の前のミッションに最善で応え続けることで流れが太り、やがて大海へ至るスタイルです。バックキャスティングは「将来こうありたい」という像から逆算し、必要な経験を設計していくやり方です。どちらも有効ですが、入口は川流れであることが多いですね。

——理想から逆算してキャリアを選んでいくという方法はよく聞くのですが、書籍の中で書かれていた、「エグゼクティブの方は川流れキャリアで来た方が多い」という話は意外でした。

森本:多いです。計画通りに進むキャリアはごく少数。でも、(エグゼクティブのような成功されている方とそうでない方の)差は何かといったら、目の前に与えられたミッションや仕事への向き合い方が違うんですよね。

同じタスクでも「嫌々やる」か「期待超えを狙う」かで成果は変わります。主体性と成果が次の機会を連れてきて、川幅が広がっていきます。

20代は「川流れキャリア」で厚みをつくる

——「この仕事は難しそうだからやりたくないな」「うまくいかないから逃げたいな」という時に転職を考える方も多いと思いますが、そういう時こそやり切ることが大事なのでしょうか。

森本:そうなんですよ。やり切りは最強の通行手形です。逃げの選択は選択肢を狭めます。一方で、やり切った経験は選べる立場をつくります。もちろん、会社の事業特性やポジション構造が将来像と合わないなら、成果を土台に外へ踏み出すのは建設的です。

——なるほど。そう考えると今の会社にとどまって、自分のポジションの仕事を一生懸命やることも大事ですね。

森本:大切です。ただし、成果が報われない設計(年功一律・昇進固定)が続く環境は、舞台を変える検討余地があります。そして20代はまず川流れで厚みをつくり、「起業したい」とか「会社の社長をやりたい」といった、やりたいことの輪郭が見えてきた時点でバックキャスティングで狙い撃つ二刀流が有効です。

——川流れでキャリアを積み上げつつ、自分軸が見つかったらバックキャスティングで未来を設計するというふうに切り替えるんですね。ありがとうございます。

森本:はい。足元の最善×未来の設計。流れに委ねるのではなく、流れを掴み、設計する——これが今の時代の勝ち筋だと思います。

関連サイト:『リミットレス時代の転職術 「選ばれる人」の新常識』 森本 千賀子/著(日経BP 日本経済新聞出版)

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