【3行要約】 ・ 転職を前提としたキャリア設計が当たり前になった現代、マネジメント層はそれを踏まえたマネジメントが課題となっています。
・「転職のプロ」として有名な戸塚俊介氏は、、部下の市場価値を高める仕事の与え方が信頼構築につながったと語ります。
・同氏はキャリアに悩む若手世代に対し「悩んでいるなら転職活動を」とすすめ、選択肢を明確化して自分の立ち位置を客観視することが成長への第一歩だと指摘します。
前回の記事はこちら マネジメント層は若手世代にどう向き合うべきか
——今、若手世代にとっては転職を前提としたキャリア設計が当たり前になっています。そのような状況で、マネジメント層が部下に向き合う際に大切すべきポイントは何でしょうか。
戸塚俊介(以下、戸塚):僕は、その子の市場価値が上がるような働き方とか仕事の振り方をするようにしていましたね。だからこそ、転職活動も許容していました。「今のあなたが決まる会社はどんなところだろう」みたいな。
なんていうのかな、メンバーの中には、わりと自分のスキルに自信がある人もいるわけですよ。でも、実際には井の中の蛙の状態だったりする。そういうのをちゃんとわからせてあげるという意味でも、「いいと思う。じゃあ、実際に転職活動を考えてみたら?」っていう(笑)。
それで(実際にやってみて)「けっこう厳しかったっす」みたいな結果だったら「こういう仕事ができるようにしたら、もっといけると思う。だから、次の仕事としてこんなものを振るから、こうやったらいいんじゃないのかな?」っていう話をすると、部下にとってもすごく納得感があるので、しっかりやるわけですよ。
なので、その人のキャリアを上げるようなコミュニケーションや仕事の振り方をしてあげるのが大事かなと思って、僕はそうしてました。
納得感が部下を動かす
——すごい。自分の市場価値を意識させることで部下の意識が変わったり、成長したりするんですね。
戸塚:別に、積極的に転職活動にトライさせているわけではないですよ(笑)。というのも、部下に仕事を振った時に、「もっとこういう仕事をやりたい」みたいに、いろいろ言われることもあると思うんですよ。
——はい。
戸塚:「そういう仕事をやりたいんだったら振るけど、本当にできますか?」という話をすると、「やってみます!」みたいになるんですけど、結局、できない。その結果、「でも、そういうことをやらせてくれる会社がありそう」みたいな、転職活動の話をしてくるわけです(笑)。
そういう時に「じゃあ、今のあなたが実際にその会社の面接を受けたら、本当に内定をもらえるだろうか?」と声をかけて、(自分の市場価値を意識させる)経験を通じて、初めて現実を知ったりする。
やっぱり、上司の言われた通りに動いて、実際に市場価値が上がれば辞めないんですよね。他社のほうが年収高かったりしたら辞めちゃうこともありますけど、基本的には「あの人の言われたとおりにやったら、実際にこうなるんだな」という納得感のある経験が、マネジメント層に対する信頼につながってくるので、そういうマネジメントもありなのかなぁと思います。
だから、このやり方はちょっと特殊な事例ではあると思います。結果的に離職防止や成長支援につながった例がある、ということですね。
「目の前の仕事で成果を出しましょう」
——マネジメント層は、求職者の履歴書を見る機会も多いと思います。戸塚さんのようにポジティブな転職で目標に向かって進んでいる方と、明らかにネガティブな方がいると思いますが、ぱっと履歴書を見た時に、両者を見極めるポイントはありますか。
戸塚:僕はやっぱり、転職理由と退職理由にすべてが詰まってると思うんで、そこを見ますかね。あとは年収じゃないですか。年収がどんどん下がっているのか、横ばいなのか。ここが判断ポイントである気がします。
社格が下がっても年収が上がっているなら、「けっこうがんばってるんだなぁ」と思いますけど、社格も年収も下がって、さらに役職も下がっているなら、少々注意したほうが良いかもしれません。
——ありがとうございます。それでは、自分のキャリアに自信が持てないような若い世代の方に、どんな言葉をかけますか?
戸塚:「目の前の仕事で成果を出しましょう」ですかね。もう、それ以外ないと思います。
——数値目標の達成とか、具体的なものが見えてくると、目の前の景色も変わってくるということでしょうか。
戸塚:そうです。「あ、自分はこういうことが嫌なんだな」とか「こういうことがやりたかったのかもしれない」っていうことは、結局のところ、やりきってみて初めてわかることのほうが多いと思うんです。