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岩崎由夏氏インタビュー(全2記事)

キャリアは“ちょっと好かれるの積み重ね”で決まる 成果を左右する、履歴書に書かれない評価の育て方

【3行要約】
・AI時代において最も強いのは、信頼され、選ばれる“人間力”を持つ人だと岩崎由夏氏は語ります。
・キャリアの分岐を決めるのは、スキルよりも「うっすら好かれているかどうか」の差。
・同氏は、Z世代へのメッセージとして「目の前の仕事で結果を出し、フィードバックを武器にせよ」と語りました。

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AI時代に強いのは「人間力」

——「弱いつながりの人との関わりが将来の選択肢を広げる」というお話がありましたが、Z世代はコロナ禍も経験する中で、人と会うこと自体をとても大きな出来事として捉えがちなのかなとも思います。この世代特有の特徴については、どのように見ていますか?

岩崎由夏氏(以下、岩崎):例えば「初めまして」で飲みすぎて仲良くなったり、朝まで一緒にカラオケしたりした人って、何年経っても「あの時カラオケで一緒だったよね」という口実で話せたり、ビジネスのお願いができたりするんです。

そういう関係が少ないのは、人生における「見えない資産」を減らしているなと思います。私たちの世代は、飲みすぎて誰かに運んでもらったり、知らない先輩の家に泊まったり……そうした一見失敗とも取れる経験が腐れ縁のようなつながりになっていました。

こういう「一見意味のないつながり」が生む「なんとなくこの人好きだな」という人が多ければ多いほど、人生は豊かになるんじゃないかなと思います。



——あまり「失敗してはいけない」という意識や、「変なところを見せちゃいけない」という気持ちが働いてしまって、泥酔するまで飲むことができないのかな、という気もします。

岩崎:私もさすがにこの年齢になると体力が持たないし、理性も働くので、翌日のために早めに帰るようにしていますけど。やっぱり若いうちにしか、体力的な無理は効かないんですよね。だからこそ、若いうちにやりきっておいたほうがいいなと思いますね。

特に今はAIの時代です。だからこそ、賢いことはおそらくAIに取って代わられてしまうと思います。

そのような世界では、意思決定者に良く思われていて「お願いします」と言った時に「まぁ岩崎さんが言うなら」と言われるような人間が、AI時代において最大に強い人なんですよね。

Z世代の中でも、それができる人は必ずいます。妙にコミュニケーションがうまい人や、距離感が近くて「今度飲みに行こうよ!」と言える人は、これからの時代に本当に強いと思います。

私たちの世代は、コンサル思考やロジカルシンキングといったものが流行し、左脳的に強い人が多く活躍した時代でした。2010年代後半までは、そうした人たちがキャリアで最も強いとされていたんです。

一方で、私の友人にシンちゃんという人がいます。会った人はみんな彼を好きになり、2回目に会う時には自然と「シンちゃん」と呼んでしまう。そんな圧倒的に人に好かれるタイプです。

これからの時代は、「よくわからないけど、シンちゃんが言うなら……」と周囲に思わせられるような、人の心を動かせる人が勝っていくのだと思います。

——これからは“シンちゃんのような存在”が強い時代になる、というお話でしたが、岩崎さんもそういう要素を意識してキャリアを築かれているのでしょうか?

岩崎:かなり意識しています。正直、人と話すのは苦手ですし、本当は家から一歩も出たくないんです。

ですが、やはり今はそういう時代ではないと思います。意思決定をするのは結局人間です。その意思決定者とどれだけつながっているか、そしてそうした人たちにうっすらとでも長く愛され続けているかが、これからのビジネスパーソンにとってのマストスキルだと考えています。ですから「苦手だな」と本音では思いながらも、意識的にいろんな人に会うようにしています。

——今お話ししている中では、真逆の印象があったので意外です。

岩崎:努めてそういうキャラクターを演じていますが、それはかなり左脳的にやっています。努力の領域でしたが、今になって効いてきた感覚があります。

本当にこれからはネットワークの時代だと思います。変な人脈作りではなく、どれだけうっすらと自分のことを好意的に思ってくれる人が世の中にいるかが、その人のキャリアを左右する時代です。

キャリアだけでなく、仕事の成果にも直結します。それこそ某社のCMの「つながってるなら言ってよ~」ではありませんが、やはりつながりのある人のほうが圧倒的に強いんです。


信頼を積み上げる人がフリーでも社内でも強い

——AIも出てくる中で、結局は人間力が試されていくんですね。

岩崎:自分のことをうっすら好意的に思ってくれている人を、どれだけ持てるかが大事なんです。例えばフリーランスはこの傾向が顕著です。「フリーになりました」と発信した瞬間に知り合いから一気に連絡が来て、「もう受けきれません」と、営業しなくても仕事が埋まってしまう人。

一方で「営業しなきゃ!」と初対面の人に「私はこういうことができます」と必死に売り込まないと仕事がゲットできない人もいます。フリーランスのように自分一人の名前で戦う世界は、その違いがとてもわかりやすく表れます。

——社内でもそういうことはありますよね。何かトラブルが起きたら「〇〇さんを呼んでおけばなんとかなる」という雰囲気の人。

岩崎:会社内でもありますよね。「何かあったら〇〇さんに言おう」と思われるのか、「あの人、担当だけどなんとなく話しかけたくないな」みたいに思われるのか。

やっぱり裁量が大きかったり、難易度が高かったり、会社の明暗を分けるようなおもしろい仕事って、必ずそういう信頼されている人に回ってきます。そして結果を出し、さらに次のチャンスにつながるという正のループに入るわけです。

一方で「あの人が話し始めるとなんだか嫌な気分になる」「急に休むことがが多くて期限を守らないことが続く」という印象を持たれてしまう人に大事な仕事は任されません。そうなると、おもしろくない仕事ばかりが回ってきて、負のループに陥ってしまう。転職をせずとも、社内で大きく分岐していくんです。

——転職にかかわらず、働く中でというところですね。

岩崎:そうですね。転職もあくまで人生のスナップショットに過ぎません。だからこそ「1.1倍で好かれ続ける」のか、「0.9倍で『なんかあいつ嫌だな』と思われ続ける」のかで、その後の積み重ねが大きく変わってきます。0.9と1.1の差でも、10年後にはもう取り返しがつかないほどの差になるんです。

もちろん本来は良くないのですが、採用の際に現場が「できれば若い人がいい」と希望を出す背景には、「まだ取り返しが効く」と考えているからだと思います。だからこそ、20代のうちに積み上げておくことが本当に大事。30代から巻き返すには相当な覚悟が必要です。


成長に不可欠なのは「フィードバック」

——では今の会社に残る選択をしたとして、キャリアを設計していくために必要なことはなんだと思いますか。

岩崎:フィードバックだと思いますね。「フィードバックが一切ないなら転職しなさい」とよく言います。

ポケモンとかゲームでも進化させたい時って、「レベル何以上で」「どんな石を持っていて」みたいな要件があるじゃないですか。人間も同じで、その“進化条件”がわからないとレベルアップできないんですよ。

その要件を教えてくれる仕草こそがフィードバックだと思っています。例えば「まだリーダーシップが足りないね。リーダーシップはこういう行動をすれば身につくから、やってごらん」と言ってくれる人がいれば、未来はリザードンになれるんですよね。

でもルールブックが存在しない、あるいは見えない、誰も教えてくれない状態だと、遠回りしてしまう。上司が内心「この人はあまり使えないな」と思っていながら、何のフィードバックもしてくれなければ、その人はそこに何年いても成長できず、気づいた時には取り返しがつかなくなることだってあるんです。

なので、キャリアを設計する上で重要なのは「フィードバックを自分から取りに行くこと」です。もらった時に心を折らない。「ぜんぜんできてないよ」と言われたら、それはチャンスなんだと捉えないといけません。

「次にこの階段を登れば、こうなれるんだ」と教えてもらっているのに、「怒られた!」と思って落ち込んでしまう人が多いんですよね。いやいや、それはむしろラッキーじゃないですか。

ここで大きな分岐が生まれます。「これ、2点だよ」と言われた時に、「じゃあこれとこれを直したら何点になりますか? わかりました。明日までに60点にします!」と動ける人と、「2点って言われた……もう無理。明日会社休もう」となってしまう人。その差は、あっという間にとんでもなく開いてしまいます。

だからこそ、フィードバックをもらいにいくこと、そしてもらった時に「喜ばしいことだ」と思えること。この姿勢は、どんな会社にいても普遍的に大事なことだと思います。

「自信がない」と悩む前に働こう

——自分のキャリアに自信が持てなかったり、「将来が見えない」と不安を感じている若者に、どんな言葉をかけますか。

岩崎:そんなこと考えている時間があるなら、とにかく働いたら? といつも思うんですよ。

私自身も昔、南場(智子)さんに「どうしたらいい経営者になれますか?」と相談したことがあります。その時に南場さんから返ってきたのは、「ベクトルが自分に向いているうちは無理だね」という言葉でした。

——へー。

岩崎:これは私にとって、かなりの金言でした。南場さんにこんなふうに言われたら、正直かなりきついんですけどね。

でも、本当にそのとおりだと思っています。事業や結果に向かって全力で取り組んでいると、「将来はどうなるんだろう」とか考える余裕なんてなくなるんです。もちろん、すでにトラブルに巻き込まれていれば対処が必要かもしれませんが、漠然とした未来への不安や自信のなさは、結局のところ足元がむしゃらに戦うしかないんですよね。

「大学に行けるかなぁ」と言いながら勉強していない人が志望校に合格するはずがない。「この大学に行くんだ!」と決めて必死に勉強している人だけが合格できるんです。だから、「自信が持てない」と言っているくらいなら、とにかく働け、ですね。


Z世代へのメッセージ「結果にコミットせよ」

——Z世代が自分の意思でキャリアを選び取っていくために、今この瞬間からできる一歩はなんでしょうか。

岩崎:「まずは目の前の仕事で結果を出すこと」です。これは世代を問わず普遍的だと思います。 人生や仕事を楽しんでいる人たちは、結果にコミットして成果を出し、周囲から信頼を得て、その信頼によってさらに成果を出しやすくなります。そうした正のループに入れるかどうかが大切なので、一生懸命に結果を出しにいきましょう。

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