【3行要約】・ログミーBusinessアンバサダーの株式会社明治クッカー代表取締役 西原亮氏の新刊
『コンサル時代に教わった 仕事ができる上司の当たり前』(ダイヤモンド社)が2026年4月26日に発売されました。
・「あいまい言葉の撤廃」など、新任リーダーが等身大のまま部下の自発性を引き出すための技術を解説します。
・部下のモチベーションマネジメントに対する考え方や、AI時代に求められるリーダー像など、幅広いトピックについて話をうかがいました。
前回の記事はこちら 新任リーダーにおすすめしたいマネジメントのテクニック
——本書は「上司の当たり前」として51のテクニックを紹介していますが、マネジメント経験が浅い方、新任リーダーの方におすすめしたいテクニックを教えていただけますか。
西原亮氏(以下、西原):新任の方におそらくお伝えできるとすると、まずは3つぐらいかなと思っています。

まずは徹底的に「あいまい言葉」をやめること。形容詞や副詞、「早く」「なるべく」といった言葉を使わず、明確に数字で決める。第1章に書いてあるんですけど、あいまい言葉は自分への優しさであって、決めることからの逃げになってしまうんです。「なるべく早くやってね」とか、あとは語尾で「○○かもしれないね」とか。
世の中の会議のほとんどは、この「あいまいなズレ」を修正するために行われています。部長が、「デザインがちょっと、なんだかいまいちだな」って言われたから、部長の「いまいち」をなくすために、「こんなのどうですか?」という会議をやっているとか。でも、言葉を定義するトレーニングをすれば、会議は減り、みんなの自由な時間が増えます。
2つ目は、「監視者」から「支援者」になることです。これね、めちゃめちゃ大事なんですよ。マネジメントはイコール監視だと思っている人も多いですが、それでは部下は動きません。僕がやっているのは、1週間に1回だけ「終了状態」を握ることです。
月曜日の指示の出し方で「監視」から「支援」に変わる
——終了状態を握るとは、どういうことでしょうか。
西原: 「今週の金曜日に、何が終わっていたら『今週はよくやったね』と言えるか」を、月曜日に合意するんです。例えば「クライアントとの日程調整が終わり、資料のドラフトが完成していること」とか。
終了状態を握っていくと、「それが終了できるように上司として何か僕が手を差し伸べるポイントはありますか?」っていうふうになるんですね。残タスクを残さないようにしてあげるとか、邪魔になっている障害を取り除いてあげること。
そうすると、1回1回「これ、どうなっているの?」って監視する必要がなくなるんです。これは(管理職になったら)マインドとして変えてほしいですね。
3つ目は「部下への指示を絞る」こと。中間管理職は上からいろいろ言われるので、何でもかんでも部下にお願いしたくなります。だけど、上司と部下の良い関係性って、部下が上司から頼まれた任務を果たして「よくやりましたね」となる連鎖だと思うんですよ。
そのために、最初はめちゃめちゃに絞る。例えば僕がよく言っているのは、「まず、今週はこれだけのミッションを達成して」というように、「だけ」っていう言葉を使うのは、実務上でめちゃめちゃ大事なんですね。
小さな成功体験の積み重ねが自走を生む
西原: 実際に(私の部下でも)牛乳配達の営業がうまくいかないメンバーがいたんです。今週は新規の営業を10件取らなきゃいけないけれど、「1件か2件しか取れません」みたいな人がいました。その時にずっと監視(の姿勢)になってしまうと、マイナスの差分ばかり見えて、「営業を取りながら配達もして、お客さんフォローもしてね」って言ってしまう。それは難しいんですね。
なので、営業活動においては「お客さんに健康問題で何が困っているのか。これだけを聞き出して。それだけやればいいから」というところからやっていく。
それができるようになったら、次にクロージングをかける。というふうに、一つひとつの段階で「だけ」「だけ」「だけ」と渡していくと(仕事の成果が)めちゃめちゃ変わるんですよ。
——言われる側もすごくわかりやすいですし、行動しやすいですね。
西原:そうそう。階段を1段ずつ、「これだけ」「これだけ」と渡していくことです。部下が「自分は上司から頼まれた任務をクリアできている」という実感を持てれば、もっと貢献したくなって、自然と自発性が生まれてくるんです。
他人のやる気は測定不能という前提
——部下の自発性の話で言うと、本書の「部下のモチベーションを上げるのではなく、下げないようにする」というパートが印象的でした。ただ、実際にはミスなどでモチベーションが下がってしまう場合もあると思います。そういった時には、どのような声掛けを行うべきでしょうか?
西原: これ、昔だと「大丈夫?」と声をかけたり、「元気がないね」と言ったりしていたんですけど、今はもうやめちゃったんですね。
もちろん、人間ですから「今、へこんでいるかもしれないな」というのはわかるんですよ。でも、一方で僕らが大切にしなきゃいけないのは、「他人のモチベーションは絶対に測りようがない」ということなんです。これを前提として持っておかなければいけない。
「心のメーター」は他人には測定不能なんです。だって、「がんばります!」と言っていた新卒の子が、次の日に「辞めます」と言ってくることなんて余裕でありますから(笑)。
それに対して「雰囲気が悪そうだけど大丈夫?」「つらそうだけど?」と声をかけてしまうと、何が生まれるか。自分がしょげていると上司が優しい言葉をかけてくれる、という構図になってしまって、結果的に「かまちょ」的な、甘える人ができちゃうんですよね。
部下に振り回されないための境界線
——モチベーションを上げようとすることが、逆効果になることもあるのですね。
西原: もう1つ、モチベーションが上がったように見えても、実はその人が家に帰って家族と喧嘩して、次の日にグロッキー(状態)で来ることだってあるわけです。プライベートという、僕らがコントロールできない変数も関わってきちゃう。モチベーションの源泉は人それぞれなんです。
なので、基本的にはモチベーションを「足し算で上げる」ことはしません。そうではなく下げる要因を除いていくことがすごく大事なんです。具体的には、行動に対してフィードバックをしていくことに尽きます。そうしないと、上司側が「俺、3時間も話を聞いてあげたのに、なんで変わらないんだよ」ってなっちゃうんですよ。結局、期待した効果が得られないんです。
だから、例えば営業結果がダメだったとか、バックオフィスで重大な請求書の発行ミスをしてしまったとか、そういう事実に対して「大丈夫だよ」と励ますのではなく、「今回の行動の原因を見つけて、また起きないように改善策を一緒に検討しましょう」と伝える。これは「支援」なんです。「まずはそこだけ守ればOKだよ」と。
——感情を盛り上げようとするのではなく、具体的なアクションの支援に留めるわけですね。
西原: そうです。原因が起きた行動を見つけて、一緒に改善策を作ってあげる。ここまでにとどめておいて、感情を盛り上げようとしてはいけない。そうしないと、部下に振り回されちゃうんですよ。
「昨日あれだけ話を聞いてあげたのに、ぜんぜん元気がないじゃん。何これ? やってやったのによ!」みたいなね(笑)。僕自身、昔はすごくそうなっていたんです。
でも、そういう「モチベーションを上げる努力」をやめてから、自分の気持ちも落ち着いてくるんですね。それが、最初に言った「上司自身の機嫌を一定に保つ」というサイクルにもつながってくるんじゃないかなと思っています。
牛乳屋の現場で学んだ対話の真髄
——本書はマネジメントのテクニックをわかりやすく紹介していますが、これまでに挙げていただいた例のように、人間の気持ちというか、部下や上司自身の心情をとても重視されているところが印象的でした。
西原:ああ、そうですか。
——西原さんの、相手の心情を尊重する姿勢はどういった経験から生まれたのか、ぜひ聞かせていただければなと思いました。
西原:これは本の中に書いてあるわけではないんですが、やはり牛乳屋さんは配達する人がいないと事業が成り立たない労働集約型の仕事なんですね。新規採用もなかなかできないし、給料もすぐには上げられない中で、今いる人たちになんとか動いてもらわないと生き残れなかったわけです。
年配の方の中には、僕が生まれる前から社員さんだった人もいたんですよね。なのに僕が今までのやり方を否定した結果、最初は真っ向からぶつかっちゃって。僕がやってほしいことと真逆なことをやり出すんですよね。「お客さんを増やしてほしい」って言ったらお客さんに他の販売店を紹介しちゃうとか。
でも、本人の欲求がどこにあるのかを突き詰めると、やはり今までの経験を否定されたくない(ということだったりします)。そんな人を動かすために、コンサルの時のようなロジックよりも、「その人たちが気持ち良く動いてもらうためにはどうしたらいいのか」(という発想)が大前提としてありました。
仮に自分のほうが上司でも「知恵を貸してください」というスタンスにして伝える。注意が必要な時は、敬意と指摘と期待を込める「サンドイッチ」にする。これは日本人らしい、等身大のコミュニケーションとして大切にしています。だから、(相手の心情を尊重する姿勢は)やらざるを得なかったという(笑)。
AI時代こそ、上司は「等身大」で語る
——最後に、AI時代のマネジメントについてもお聞きできればと思います。昨今はAIに悩みを相談する方も増えていますよね。そのような中で、AIではなく「あなたに相談したい」と思われる上司になるためには、どういったアクションを取っていくべきなんでしょうか。
西原: AIにできないことで言えば、一番大きいのは「一緒に行動してあげること」です。現状、AIでも資料作成などはサポートしてくれますけど、僕が言う「監視者ではなく支援者になる」という観点に立った時、一緒にお客さんのところに同行したり、謝りにいったりすることまではできないわけです。こういった泥臭いプロセスは、絶対に(人間の役割として)残ってきます。
あともう1個、AIを頼るんじゃなくて上司を頼る時のポイントで言うと、AIはあくまで参考情報を返してくれたり、相談に乗って良い答えを導いてくれたりする存在じゃないですか。でも、それを実現するためのアウトプットというのは、最後は本人がやらなきゃいけない。だからこそ、さっきの「一緒に行動する」という話に戻るんです。
——なるほど。AIでもできることの、その先があるということですね。
西原:そして最後はやっぱり、「この人のために貢献したい」と思わせられるかどうか。これは人間でしかできないことですよね。
そのために、僕は常に「等身大で語る」必要があると言っています。「僕はこれができる。これはできない。だけど今はこういうことにチャレンジしたい」という、自分の「できること」「できないこと」「チャレンジすること」を、常に上司から部下に共有していく。それをやったほうがいい、と伝えていますね。
——西原さん、本日はありがとうございました!