会議が長引いたり、決まったはずのことが動かなかったりするのは、参加者の意識が低いからでも、進行役のスキルが足りないからでもありません。その停滞を引き起こしている真の原因は、会議の「設計」そのものにあります。会議を単なる時間の消費ではなく、次のアクションを加速させる「判断の場」に変えるためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。そこで今回は「良い会議をつくるためにやっていること・やめたこと」をテーマに、ログミーBusinessアンバサダーのみなさんにインタビューを行いました。
第2回は、株式会社明治クッカー代表取締役の西原亮氏です。
西原亮氏:株式会社明治クッカー代表取締役。2013年に元コンサルタントとして家業の牛乳宅配会社を継ぎ、10年で売上・従業員数ともに700パーセント成長を実現。著書の『コンサル時代に教わった 仕事ができる人の当たり前』は15万5,000部のベストセラー。
会議の序盤で発言しやすい空気をつくる
——会議の運営において、かつてやっていたが「やめたこと」はありますか?
西原亮氏(以下、西原):「忌憚なく意見をください」と言うのをやめました。
一見すると相手を想ってる風に聞こえるんですけど、これ最悪の言葉なんですよね。上司と部下にはパワーバランスがある以上、部下は「言ったら評価を下げられるかもしれない」「恥をかくかもしれない」と思ってるんです。しかも会議って大勢の前じゃないですか。そんな場で「忌憚なく」と言われても、言えるわけがない。
実際、ある企業の会議で支店長が「忌憚なく意見を出してくれ」と言ったんですが、結局、支店長が9割以上しゃべっていて、現場メンバーの発言は5パーセント程度でした。あとから支店長に聞いたら「言えないのは現場が悪い」と。でもこれ、完全に上司の勘違いなんですよ。
今はその代わりに、会議の序盤で「はい」か「いいえ」で答えられる問いを3回ほど投げかけて、まず発言回数を意図的に増やすようにしています。発言を重ねると心理的安全性が自然と高まるので、そこから初めてオープンな議論に移る。この仕組みに変えてから、参加者からの発言量が格段に増えました。
「なぜ今日はこの議論をするんですか?」
——会議に関する「失敗エピソード」を教えてください。
西原:コンサル時代、念願叶ってクライアントとの会議でファシリテーターをやらせてもらえた時の話です。毎週のようにプロジェクトリーダーに「やらせてほしい」と懇願して、ようやく機会をもらったんですね。
いざやってみたら、開始5分でクライアントの役員に「西原さん、なぜ今日はこの議論をするんですか?」と聞かれたんです。会議のゴールは設定していたものの、なぜこの議論が必要なのかという「背景」を深く理解していなかった。まったく答えられず、即座に上司にファシリテーターを交代させられました。
恥ずかしいことに、そこから2ヶ月間、毎回同じ質問をされては答えられず交代する日々が続きました。この経験で学んだのは、「ゴール設定」だけでは不十分で、「なぜ今日この議論をやるのか」という背景まで言語化しなければいけないということです。今は会議の冒頭に必ず「何が終わったら終わりなのか」を参加者全員で確認してから始めるようにしています。これが僕にとっての会議の鉄則ですね。
——会議を生産的にするための工夫・習慣はありますか?
西原:会議は全部「30分一本勝負」にしています。
以前は自分の会社で毎月10以上の定例会議に出て、毎週約20時間を会議に費やしていたんですよ。現場に出る時間はなくなり、考える余力もなくなり、トラブルが起きてまた会議が増える……という負のループにはまっていました。
そこで3つの改革をしました。まず「報告だけの会議」「上司が9割しゃべる独演会」「目的不明の定例」をすべて廃止しました。報告はチャットで十分です。
次に、残った会議は全部30分で設計。1時間の枠を取ると人は無意識に1時間使おうとするんですが、30分と決めると全員が事前に準備せざるを得なくなり、議論の密度が格段に上がりました。
そして3つ目。空いた時間で月1回「自慢する会議」を開いています。お弁当を囲みながら、この1ヶ月の自分の成果を堂々と自慢し合うんです。ふだんはドライに効率化しつつ、月に一度はウェットに称え合う。このメリハリがチームの絆を保つカギだと思ってます。
曖昧な発言を具体的に言い換える“翻訳”で議論が進む
——発言が出ない・意見が偏る場面での場の動かし方はありますか?
西原:「翻訳」するようにしています。質問ではなく、翻訳です。
例えば参加者が「もっと相手のことを思って施策を考えたほうがいい」みたいに抽象的な発言をしたとしますよね。ここで「相手のことを思うってなんですか?」と質問で返すと、これは詰問になるんですよ。相手は言葉に詰まります。
そうではなく、「取引先の予算に合わせてプランを用意するということですか?」と、こちらが具体的に言い換えて返す。すると相手は「そう、それです!」となる。ファシリテーターの本当の役割は「進行役」ではなく「翻訳者」なんですよね。参加者が言語化できないことを、代わりに具体化して投げ返す。これをやるだけで、議論のスピードが一気に上がります。
会議は組織の映し鏡
——会議を上手に進めたいと思っている若手・リーダー層へのアドバイスをお願いします。
西原:まずは会議の冒頭で「何が終わったら終わりなのか」を一言宣言してください。これだけでいいです。
断言しますが、ほとんどの会議でこのゴール定義がされていません。「営業定例」「企画検討会」みたいなタイトルはあっても、「何が決まったら終わりか」を全員が共通認識として持っている会議って、驚くほど少ないんです。ゴールが明確になれば、参加者は自然と集中するし、終わりが見えるから30分でも密度の高い議論ができます。
もうひとつ、若手の方にぜひ伝えたいのは、「会議に呼ばれた以上、あなたにも発言する責任がある」ということです。僕自身、コンサル1年目に会議で「議事録を取る役割なので……」と逃げたことがあるんですね。リーダーから「お前のValueは何だ?」とこっぴどく叱られました。傍観者にならないでください。会議は組織の映し鏡です。会議が変われば、チームが変わります。まずは明日の会議で、最初の一言を変えてみてください。
——西原さん、ありがとうございました!
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