1月に掲げた意欲的な目標も、通常業務が本格化する1月末には、日々の忙しさに埋もれてしまいがちです。「今年こそは」という決意が挫折に変わりそうな時、私たちはつい「自分の意志が弱いからだ」と自らを責めてしまいます。しかし、目標達成への苦手意識の正体は、個人の能力ではなく、実は「目標との向き合い方のタイプ」の不一致にあるのかもしれません。
今回は、組織論のスペシャリストとしても知られる仲山進也氏にお話をうかがいました。 「新年の目標は立てない」という仲山氏が、目標設定への苦手意識を克服するマインドセットを語ります。
仲山進也氏:仲山考材株式会社 代表取締役/楽天グループ株式会社 楽天大学学長。著書に『組織で自分らしく成果を上げる25のトレーニング ネコトレ』ほか。
「目標に取り組めない自分はダメだ」と思い込んでいた過去
——1月に意欲的な目標を立てても、通常業務が本格化する1月末には日々の忙しさに埋もれてしまうという方が多いです。「今年こそは」という決意を挫折させずに成果へ繋げるためには、どうしたらよいでしょう?
仲山進也(以下、仲山):え、ぼく、1月に目標とか立てないタイプなんですけど……。
なので、ご質問の趣旨に沿わないかもしれないですが、思っていることをお話しします。
ぼくは「自分で目標を定めて、それを達成するために努力や対策をする」というのがニガテです。でも、巷の自己啓発書などを読むと「夢や高い目標を掲げて努力し、困難を乗り越えて達成する」というのは成功法則として常識らしいので、それができない自分はダメな人間だと思っていました。
ところが、ある時読んでいた本にこう書かれていたのです。
「人には、目標達成型と展開型の2タイプがある」
展開型は、目標達成型とは逆で、ゴールやプロセスをあらかじめ計画せずに、「今ここ」に夢中になって取り組んでいるうちに流れに運ばれて、気がついたら「思ってた以上におもしろいところにたどり着いてしまった」という現象が起こり得るようなタイプだというのです。2つのタイプは、どっちがいいとかではなく、どっちでもいいのだと。
それを読んで「自分はまさに展開型だ! 夢とか目標がないからダメ人間、というわけじゃなかったのか!」と、自分を認めてもらえた気がして、一気に力がわいてきたのでした。
「頼まれていないのにやってしまうこと」を考える
——「展開型」について詳しく聞かせてもらえますか。
仲山:展開型の作法の中から、3つお話しします。
① ”やりたいこと”の解釈を変える
②自分で目標を立てるのがニガテなら、他人に立ててもらう
③ROI(コスパ・タイパ)を短期的に測定してはいけない
です。まず、「① ”やりたいこと” の解釈を変える」について。目標設定する時には「やりたいこと」を考えますよね。目標を立てて挫折する人は、たぶん「やったことがないけど、やってみたいこと」を目標にしているはず。それだと一歩目のハードルが高めだし、やり始めたとしても三日坊主で終わりやすい。
——まさに年始の目標で挫折するパターンはそうですね。展開型だとどうなるのでしょう?
仲山:展開型は「ついやってしまっていること」を大事にします。自分にとって「やらないと気持ちわるいこと」をベースに考えるんです。例えば、キレイ好きな人というのは、部屋が少しでも散らかってきたら気持ちわるいと感じるので、片付けてしまうわけです。
そういう「頼まれてもいないのにやってしまっていること」を「どのレベルまでやってみようか」と考える。おすすめなのは、「まわりの人たちが喜んでくれるまでやってみる」という基準です。それをおもしろがってやると、いつの間にか力がつくと思います。
チャレンジングな目標を立ててくれる人を見つける
仲山:次に「②自分で目標を立てるのがニガテなら、他人に立ててもらう」。
ぼくは目標のことを「成長加速ツール」だと考えています。目標がないと成長が遅くなるので、目標はあったほうがよい。
ただし、ぼくみたいに「自分で目標を立てる」のがニガテな人は、無理に自分でがんばろうとしてはいけません。そうじゃなくて、誰かに目標を立ててもらえばよいのです。大事なのは、「目標を立てるのは誰か」ではなく、「達成グセをつけること」。目の前にゲームを置かれたら、なんとか試行錯誤してゴールにたどり着くまであきらめないマインドを育むことです。
——確かに、目標設定できない人は、立ててもらえばよいですね。
仲山:というわけで、ぼくからお題として「ついやってしまっていることを、まわりの人たちが喜んでくれるまでやってみる」をお渡ししますので、今までやってきた感じで淡々と、今まで以上にやりすぎてみてください。
「自分は展開型だ」と思ったとしても、その人に流れが来てうまく乗れるかどうかは、「成長度合い・成熟度合い」に比例すると思いますので、チャレンジングな目標を立ててくれる人を見つけて達成グセをつけていってください。
短絡的なKPI主義に要注意
仲山:最後が「③ROI(コスパ・タイパ)を短期的に測定してはいけない」です。
「流れに運ばれる」のをジャマする呪文があります。「ROI(費用対効果・コスパ・タイパ)」です。この3文字の呪文を唱えると、あっという間に何も展開しなくなります。
——でも、ビジネスの現場だとその呪文、そこら中で唱えられてますね。
仲山:そこで大事なポイントは次の2つです。
行為と結果のタイムラグをどれだけ長く見られるか(中長期の成果を待てる余裕)
「風が吹けば桶屋が儲かる」的な、豊かな因果関係をどこまで見抜けるか(短絡的ではない因果の視点)
言い換えると、「今うまくいっているのは、2年前の仕事の成果が出ているからだな」と思える感覚が大事です。
一見不可能な目標を達成できた経験
——何か具体的なエピソードはありますか?
仲山:ぼくはたまたま転職して入った20人の会社が、数年で数千人(20年で3万人)になる体験をしました。そこで起こったのが……最初に「これやって」と言われた目標が「え、無理じゃない?」と思うような高さで、でも試行錯誤しながら工夫するうちになんとか達成できた、という成功体験を得ました。
すると次に、難易度が上がったお題(また無理っぽいやつ)が出て、また試行錯誤するうちになんとか達成。
するとさらに難易度が上がった無理っぽいお題が……という繰り返しなのですが、最初は「無理じゃない?」と思ったことを3回達成できたという体験をすると、もう次から「何を言われてもできるかもしれない」と思えるようになってしまって、お題が出たら「ま、やってみますか」となるわけです。まわりの同僚も含めて。
答えではなく課題を与える「お題設計アプローチ」という手法
仲山:そこに新入社員がきて、一回目のお題を聞いて「え、無理じゃない?」と言うのですが、すでに多数派になっているまわりの人(3回成功体験した人)たちが「ま、やってみますか」とわちゃわちゃし始め、その流れに巻き込まれるうちに新人が「できた!」という1回目の成功体験を積みます。
それが3回繰り返されると、その人はもう「え、無理じゃない?」と言う新入社員に「ま、やってみますか」と言う側になっていく。
これが「イノベーションを起こし続ける組織文化」ができていくプロセスでした。どんなお題がきても「できる気がする」「できる気しかしない」という意識を共有している状態になっていったのです。この体験はぼくにとって最高レベルの学びになっています。
もし1回目で「そんな目標、無理だ。パワハラだ」と言って取り組む気をなくしていたら、その先はなかったことになります。もっとも、お題を出す側のセンスは大事なので、そのあたりを昨年出版した
『アオアシに学ぶ「答えを教えない」教え方』の中で「お題設計アプローチ」としてまとめています。
——仲山さん、ありがとうございました!
仲山氏が語るように、「ついやってしまうこと」を周囲の喜びに繋げ、短期的なコスパに縛られず試行錯誤を繰り返すプロセスこそが重要なのかもしれません。
目標との向き合い方を少し変えるだけで、日々の業務が成果へのステップへと変わります。まずは小さな一歩から、あなただけの目標達成ストーリーを再構築していきましょう。
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