1月に掲げた意欲的な目標も、通常業務が本格化する1月末には、日々の忙しさに埋もれてしまいがちです。「今年も目標を達成できそうにない」という挫折感を抱く人も多いかもしれませんが、目標達成に必要なものは意志の強さだけではありません。
目標を単なる絵空事ではなく「自らを動かす仕組み」へ変えるためには、どのようなマインドセットが必要なのか。今回は、コミュニケーションプランナー / メディアコンサルタントの松浦シゲキ氏にお話を伺いました。ログミーBusinessアンバサダーの実体験からひもとく、目標との向き合い方を紹介します。
松浦シゲキ氏:デジタルメディアの専門家。ハフポスト日本版 創刊編集長、スマートニュース ディレクター、デジタルマーケティングカンパニーMOLTSを経て2023年に独立し、複数のデジタルメディアの支援を行う。
その目標は判断を減らしてくれるのか
——目標を立てる時、「これだけは譲れない」と思っている軸や価値観はありますか?
松浦シゲキ氏(以下、松浦):目標について考える時、自分がよく思い出す場面があります。それは、年初に目標を立てた直後は前向きなのに、数週間後には「忙しくて回らなくなっている人」を何人も見てきた、という光景です。
その時に共通していたのは、目標の内容が悪いわけではない、という点でした。むしろ正しいし、意識も高い。ただ、その目標が「日々の判断」に落ちていなかった。やるべきことは書いてあるのに、「今日はどうするか」「今は何を優先するか」を決める助けになっていない。
そこから自分が大事にするようになった軸があります。それは、その目標は判断を減らしてくれるかという視点です。目標があるのに毎回迷うなら、その目標はスローガンであって、装置になっていない。
だから目標を立てる時は、「これを置くことで、今日は考えなくてよくなることは何か」を確認します。逆に言うと、判断を増やす目標は採用しない。努力を促すための言葉より、迷いを減らすための設計。そこだけは、今も変わらず重視しています。
「自分は意志が弱い」と決めてしまう前にすべきこと
——過去に陥った「目標設定の失敗」を教えてください。
松浦:よくある失敗は、「正しそうな目標を置いたのに、動けなくなる」ことです。内容としては間違っていないし、方向性も合っている。でも、なぜか続かない。その結果、「自分は意志が弱い」と結論づけてしまう。
このパターンを振り返ると、問題は目標の高さではなく、設計にあります。目標に向かう途中で、どれくらい判断が発生するのか、どれくらい生活を侵食するのか。そこを見ずに目標だけを置くと、実行段階で負荷が一気に噴き出します。
この失敗から学んだのは、「人を変えようとする前に、構造を疑うべきだ」ということです。続かなかった事実は、性格の問題ではなく、設計上のズレを示している。その前提に立つようになってから、目標設定に対する見方が変わりました。
——目標が未達成だった時、どう振り返っていますか?
松浦:未達成の時にまずやるのは、「評価」をしないことです。できなかった理由を、能力や覚悟の話に直結させてしまうと、振り返りが止まってしまいます。
代わりに見るのは、「どこで判断が詰まったか」「どの前提が現実と合っていなかったか」です。予定していた頻度は適切だったか。割り込む要素を想定できていたか。そこを一つずつ整理すると、未達成は失敗ではなく、設計の検証結果だと捉え直せます。
この見方をすると、未達成は恥ずかしい出来事ではなくなります。次に同じ目標を置くなら、どこを変えるかが具体的に見えるからです。振り返りは反省会ではなく、設計のアップデート。その位置づけを崩さないようにしています。
目標から一旦距離を置く選択肢もある
——焦りや自己否定に陥らないために、心がけていることはありますか?
松浦:意識しているのは、「ズレる前提で考える」ことです。計画どおりに進む前提で目標を置くと、少し崩れただけで焦りが生まれます。だから最初から、「想定どおりにいかない日がある」ことを織り込んでおく。
また、「ゼロか百か」で考えないことも重要です。完全に止まっているように見える時期でも、判断材料は増えているし、選択肢は整理されています。そのプロセスを切り捨てない。
焦りや自己否定は、事実よりも解釈が先行した時に強くなります。だから感情の前に、構造を見る。何が重かったのか、どこに無理があったのか。そこに目を向けることで、必要以上に自分を責めずに済みます。
——意図的に「目標を持たない期間」について、どう考えていますか?
松浦:目標は、常に持ち続けるものだと思われがちですが、そうとも限らないと思っています。目標が機能するのは、それが日々の行動や判断と噛み合っている時だけです。噛み合わなくなった目標は、指針ではなくノイズになります。
そういう時は、一度距離を取る選択肢もある。何を達成するかではなく、どこで引っかかるか、何に違和感を覚えるかを見る期間です。数値や期限から離れることで、判断のクセや負荷の正体が見えやすくなります。
目標を持たない期間は、何もしない時間ではありません。次に置く目標の精度を上げるための観測期間です。その認識があれば、目標から一時的に離れることに、後ろめたさは不要だと思っています。
——松浦さん、ありがとうございました!
目標達成において大切なのは、気合で乗り切ることではなく、挫折しにくい仕組みと、自分を動かす納得感を設計することです。
目標との向き合い方を少し変えるだけで、日々の業務が成果へのステップへと変わります。まずは小さな一歩から、あなただけの目標達成ストーリーを再構築していきましょう。
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