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松浦シゲキ氏に聞く情報整理と業務効率化のコツ(全2記事)

仕事のメモはすべてGoogle Keepに集約→Notionで清書 メディアのプロが実践する、抜け漏れを防ぐ情報整理術 [2/2]

紙のノートや手帳類を使わない理由

——情報整理のテクニックとして、紙のノートに書き出す人も多いと思います。松浦さんはアナログツールは使用されないと聞きました。理由について教えていただきたいです。

松浦:結局、(私の仕事は)最後のアウトプットが全部デジタルなので、インプットがアナログだと、それをデジタル化しなければいけない手間があります。その手間をあまりかけたくないんですよね。手を動かしたほうがインプットにはいいというのは気持ちとしてわかりますし、私も昔はそのタイプでした。でも、整理整頓の時間やコストを考えると、アナログからデジタルの変換は効率が悪かったんです。

——自分の業務内容を意識しながら、自分なりのやり方を探していく必要があると。

松浦:ベン図とか、グラフィックレコーディングとか、よくありますよね。書きながら思考を広げていくタイプの人には、それが正しい仕事術なんだと思います。ただ、私は先ほど言ったようなストーリーにしてしまったほうがいいタイプなので、アナログである必然性はないなと思います。

作業の“ステップ数”を意識できているか

——世の中にはいろいろな業務効率化の仕事術が溢れていますが「多くの人は、ここを間違えているんじゃないかな?」と感じるポイントはありますか?

松浦:結局、人それぞれインプット、アウトプットの効率化の方法があると思うので、一概に否定できるものではないと思っています。

ただ1つあるとすれば、「作業のステップ数を軽減する方法を考えているか?」と聞きたいですね。作業のステップ数とは、例えば(情報を)アナログからデジタルに移すとか。あるいは「あのツール使って、次はこのツール使って」みたいな状況ってよくあるかと思います。

音声の文字起こしで言うなら、文字起こしツールと整理ツールを別々に使うのではなく、ある程度一括でできるものがあるならそっちを選んだほうがいい。たとえ多少機能が合わなくても、頼れるところは機械にバンバン頼ってしまったらいいのに、と思う時はあります。

トライアンドエラーを重ね、Google Keepに集約

——クオリティを追求するあまり、手数が増えてしまっている人もいます。

松浦:質を高めるための過程をいかにスムーズに動かせるかが、結果的に質を良くすると思っています。ステップ数や手段が多くなっていると、「逆に、もっと(業務工程の)細かいところにこだわったほうが、結果的には良いんじゃないの?」と思ったりします。

——効率化しようと思って失敗したエピソードはありますか?

松浦:失敗というかチャレンジですが、音声メモはまだうまくできていません。(情報の)入力ステップ数はもっと効率化できると思っていて、「キーボードを打つより、口でしゃべったほうが早くないか?」という。しゃべった内容がメモ書きになって、それが最終的にタスク化されればいいのですがうまくいかないんですよね。

過去に音声メモで記録しようとしたけれど、保存場所が散らかってしまうなど、いろいろなトライ&エラーがありました。結局、「シンプルにメモ書きして、どんな環境下でもGoogle Keepを起動できるようにしておけばいい」という結論になってしまいました。

AIは80点の下ごしらえに過ぎない

——情報整理のトピックで言うと、今はAIが欠かせません。大量の情報を集めるハードルは下がった一方で、それらを仕事に活かせていない方も多いと思います。

松浦:活かし切れていないのは、結局のところ集まってきた素材を調理し切れていないだけの話だと思っています。すばらしいお肉や野菜がそろっても、調理方法を知らなければおいしいご飯は作れないですよね。今だったら、「その情報の扱い方や切り方、その他諸々を同時並行で磨いておいたほうがいいんじゃないの?」と思います。

(情報自体は)生成AIに聞けば容易に集めてくれます。結局、集めてきた情報を処理するのは誰かというと、自分です。処理の工程も含めてAIに頼ることになりますが、AIは平均点か、せいぜい80点くらいの答えしか出してくれません。

自分の知らないジャンルで80点の答えを聞くのは悪いことではないですし、自分も聞いています。でも、自分が知っている話を聞くかというと、そうではない。これは自分のほうが上だと思えるくらいの専門性があるなら、その知見や考えをちゃんと磨いておいたほうがいいと思います。

専門性がなければただの“作業者”になってしまう

——ご自身の専門分野のアウトプットは、AIに任せない。

松浦:そうですね。ベースにはもちろん生成AIを使っていいのですが、最後のアウトプットのところに、「自分はどんな切り口を持っているのか?」という話が大事だと思っています。

例えば、メディアの話だったら、「それはソーシャルか?サーチか?能動的か? 受動的か?」といった、自分ならではの思考の方程式、アウトプットの方程式がきっちり固まっているので、そこに沿うかたちで最後の処理をします。そうすると、自分の言葉と自分のフレームワーク(を持った出力)になります。

——若手のビジネスパーソンにとっては、専門性を身につけることが、AIを活用する上での武器になっていくのですね。

松浦:武器になるというか、それを持っていないとただのワーカー、オペレーターになってしまいます。自分ならではのアウトプットをどういうかたちで身に付けるかが今後問われているのではないでしょうか。そこは、いろんな経験値があるシニアのほうが有利ではあるので、若手はそれを身に付けるのが大変な時代なのかなとも思います。

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