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「管理職は罰ゲーム」は本当か?(全5記事)

管理職は“何をマネジメントすべきか”を見極める 惰性の管理業務を防ぐチーム運営の秘訣

「管理職なんて罰ゲームだ」という声を耳にしたことはありませんか。責任ばかりが重くなり、やりがいある仕事から遠ざかる立場だと捉えられてしまうことも少なくありません。 しかし実際には、マネジメントはチームの成長を後押しし、組織の生産性を高めるための創造的な仕事です。昨今はマネジメントに対する誤解や先入観によって、その本質が見失われているのかもしれません。

今回は、プログラミング言語「Ruby」の生みの親、まつもとゆきひろ氏にお話を伺いました。「管理のための管理」を手放し、プロダクト開発とチーム運営に必要なスキルの要点と具体策を語ります。
まつもとゆきひろ氏:プログラミング言語Rubyの創始者。Rubyアソシエーション理事長。ほかネットワーク応用通信研究所フェロー、OSS Vision社CTO、福岡県Ruby・コンテンツビジネス振興会議会長など肩書多数。

「管理のための管理」になってはいないか

——「管理職は罰ゲーム」という風潮が生まれる背景には、どのような要因があると考えますか? また、この風潮をどう捉えていらっしゃいますか?

まつもとゆきひろ氏(以下、まつもと):管理職の仕事、つまりマネジメントが実際のソフトウェア開発と比較してまったく魅力的(楽しそう)に見えないからだと思います。

日本語の「管理」は「統制やルールの徹底」などがイメージされますが、英語でのManagementには「目的実現のために、うまくやる」というニュアンスのほうが強いと聞いたことがあります。

このズレの結果、(少なくとも日本では)管理職の仕事が「管理のための管理」、「結果的に開発の足を引っ張る行為」ばかりのように見えるからではないでしょうか。

未来を予測する能力もプロダクトマネジメントのスキル

——ご自身のキャリア戦略において、マネジメント経験をどのように位置づけていますか?

まつもと:マネジメントには多岐にわたる業務があり、その中には「ビジネスのためにやむなく導入した必然性の薄いもの」から、「良いプロダクトを作るためには必須のリーダーシップ」までさまざまなものがあります。しかし、マネジメントする側も、される側も、更には経営陣まで各種マネジメントを区別しないため、さまざまな不幸が生まれていると思います。

——マネジメント業務を通じて得られた、最も価値のあるスキルや気づきは何ですか? また、それは現在どのように活かされていますか?

まつもと:ふだんはオープンソースソフトウェアのリーダーとして振る舞っていますが、良いプロダクトとしてのOSSを開発するためには、時として強いリーダーシップが必要です。

ユーザーの要望を理解し、未来を予測し、方向性を定めるのは重要なプロダクトマネジメントです。これなしにはOSS活動は迷走してしまいがちです。

〆切直前に問題が発覚した苦い経験

——管理職として直面した課題と、それをどのように乗り越えたか、具体的なエピソードを教えてください。

まつもと:後輩にソフトウェア開発を依頼し、毎週進捗チェックをしていましたが、プロジェクト管理にあまり関心がなかったので形式的なチェックだけですませていました。後輩からも毎週、(進捗は)順調だと聞いていました。

ところが、〆切直前になって「間に合いそうにありません」という話になって大パニックでした。聞けば少しずつ遅れが溜まっていたが、残業や休日出勤で取り返せると思っていた(から黙っていた)のだそうです。急遽開発を手伝ったものの結局間に合わず、客先に謝りに行ったりと大変でした。

たとえ遅れるにしても、もっと早く報告があればできる選択肢も多かったことでしょう。風通しの良いコミュニケーションは大切だと痛感した事件でした。

——これからマネジメントに挑戦する方、または現在悩んでいる管理職の方へのアドバイスをお願いします。

まつもと:マネジメントとしてひとくくりにされている各種業務のうち、どれが本当に必要で、どれが効果的で、逆にどれはただ惰性のために行われているのかを見わけてメリハリをつけることで、もしマネジメント業務を任されてもクリエイティブで楽しい働き方ができると思います。

プレイヤーとしてのキャリアに必要なのは信頼資本

——専門性を深めるキャリア戦略において、組織やチームとの関わり方をどのように工夫されていますか?

まつもと:信頼関係が大切だと思います。それぞれが業務において信頼に足るプロフェッショナルとして振る舞うことが期待できる時に、チームとして十分な力を発揮できることでしょう。

——マネジメント経験を積まずに影響力を発揮し、成果を上げるために意識していることがあれば教えてください。

まつもと:特にプロジェクト管理に伴って発生しがちな「管理のための管理」をできるだけ排除することで、本当に大切な仕事に集中できると思います。

——将来的にマネジメント職への転換を検討する場合、どのような準備や心構えが必要だと考えますか?

まつもと:上で述べたようにマネジメントと言ってもさまざまです。自分に求められているものが「開発の気持ちのわかるマネジメント職」(プロジェクトマネージャなど)なのか、「開発の一部を担うマネジメント職」(プロダクトマネージャなど)なのか、あるいはそれらとは別の何かなのかをきちんと認識することで、良い働きができることでしょう。

管理職にまつわる誤解やマネジメントへの不安を乗り越えるには、特別な才能ではなく意識の切り替えと実践の積み重ねが欠かせません。
まずは「任せる勇気」や「方向性を示す姿勢」といった小さな実践から取り入れてみましょう。その一歩が、あなた自身と組織の未来を大きく変えるはずです。

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