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「管理職は罰ゲーム」は本当か?(全5記事)

管理職は仕事を振るのではなく“お題”を渡す 仲山進也氏が教える、部下の強みを活かすマネジメント術

「管理職なんて罰ゲームだ」という声を耳にしたことはありませんか。責任ばかりが重くなり、やりがいある仕事から遠ざかる立場だと捉えられてしまうことも少なくありません。 しかし実際には、マネジメントはチームの成長を後押しし、組織の生産性を高めるための創造的な仕事です。昨今はマネジメントに対する誤解や先入観によって、その本質が見失われているのかもしれません。

今回は、仲山考材株式会社代表取締役の仲山進也氏にお話を伺いました。仲山氏が実践と探究を重ねてきたのは、「管理する」のではなく「人と人が夢中になって協働できる環境をどう整えるか」という視点です。分断を超えて共創を生み出すためのリーダーシップやチームビルディングの工夫を伺いました。

前回の記事はこちら
仲山進也氏:仲山考材株式会社 代表取締役/楽天グループ株式会社 楽天大学学長。著書に『アオアシに学ぶ「答えを教えない」教え方: 自律的に学ぶ個と組織を育む「お題設計アプローチ」とは』(小学館)ほか。

分業体制が“分断状態”になってしまっている

——「管理職は罰ゲーム」という風潮が生まれる背景には、どのような要因があると考えますか? また、この風潮をどう捉えていらっしゃいますか?

仲山進也氏(以下、仲山):これは「賞味期限の切れた分業体制」が、組織に「分断」をもたらしているのが根本的な原因だと考えています。

かつては効率的に機能していた分業体制が、変化の流れのなかで「新しい問題」が起こると賞味期限が切れるわけです。A部署とB部署ですり合わせが必要な問題なのに、部署間で連携が取りづらくなっているとか、分断していると機能不全に陥ります。その結果、新しい問題や変化への対応が遅れ、そのしわ寄せがすべて管理職に集中してしまう。この状況が、「罰ゲーム」と呼ばれる風潮を生んでいるのではないでしょうか。

それだと誰もハッピーにならないので、僕は「すこやかに働ける人」を増やすためのチームづくりとかコミュニティづくりを探究しています。具体的には「雑な相談(ザッソウ)」ができる関係性を組織のなかに増やしていくことで、つながりの豊かなコミュニティにしていくのが大事かなと。

「マネージャー白旗宣言」をした過去

——ご自身のキャリア戦略において、マネジメント経験をどのように位置づけていますか?

仲山:僕はマネジメントを「部下の管理」という意味ではなく、「なんとかいい感じにすること」だと捉えています。この視点だと、部下を持つことだけがマネジメント経験ではありません。ちなみに僕は、楽天大学という新規事業を立ち上げる際にプレイングマネージャーとしてキャパオーバーになって、「マネージャー白旗宣言」をした経験があります。2001年のことです。そこでプレイヤーに専念して以来、「部下なし」のキャリアを進んできています。

そんな話をすると、よく「チームビルディングを教えてるのに、なぜ自分で部下を持たないのか」と聞かれます。でも実際、プロジェクトベースで仕事をする時に、フラットな関係性から「なんとかいい感じにする」ためには、チームビルディングの知見がとても役に立つんです。むしろ、上下関係があるほうが「チーム化」が促されにくくなる面があります。

なので、僕にとって「人と人が協働して、正解のない物事をなんとかいい感じにする」というマネジメントのスキルは「ずっと探究したいもの」という位置づけです。

知らないと言える「愚者型リーダーシップ」の効果

——専門性を深めるキャリア戦略において、組織やチームとの関わり方をどのように工夫されていますか?

仲山:「ファシリテーター型リーダーシップ」という考え方を大事にしています。「ファシリテート」とは「促進する。容易にする」という意味です。僕の場合は「分断された状態でがんばろうとするのではなく、みんなでわちゃわちゃ試行錯誤するうちに、うまくいく共創のカタチが見つかる」ような仕事をファシリテートできたらと思っています。

その際のポイントは「賢者だと思われると失敗」なことです。なんでも知っていて答えをくれる人だと思われると「どうしたらよいか指示をください」という依存を生んでしまうので、「僕は知らない」と言える「愚者風リーダーシップ」が大事になります。

ところで、専門性を深めるって「自分一人でこもって磨く(一匹狼スタイル)」みたいに思われがちですよね。その点、「専門性を深めるほど、組織やチームがうまくいくようになるという専門性」は、ここで質問されている専門性とは違う気もしますが、どうなんでしょうか(笑)。

管理するのではなく、夢中にさせる

——マネジメント経験を積まずに影響力を発揮し、成果を上げるために意識していることがあれば教えてください。

仲山:僕が大切にしているのは、「夢中(フロー)」と「自己中心的利他」という考え方です。自分が「やりたくて」「得意なこと」を夢中でやっていると、お客さんやチームメンバーが「喜んでくれる」という状態。これが軌道に乗ると、「その活動(アクティビティ)に混ぜて」とか「一緒にこんなことやらない?」というお声がかかるようになります。

そこから一緒にチームビルディングを進めつつ、共創的に成果を上げられるようになると、仕事をするたびに「仲間」が増えていくので楽しいのです!

“自分にリーダーはムリ”と考えていた社員に変化が

——将来的にマネジメント職への転換を検討する場合、どのような準備や心構えが必要だと考えますか?

仲山:一般論として、マネジメント職に就くなら「部下の管理」という考え方を捨てることが重要だと思います。「自分がプレイヤーにならない場合」のマネジメントは「メンバーが夢中になって働ける環境を整えること」です。

具体的には、「いかに仕事をよいお題(アクティビティ)にして渡せるか」という「お題設計アプローチ」の腕を磨くのがオススメです。詳しくは『アオアシに学ぶ「答えを教えない」教え方』に書きましたので読んでいただければと思いますが(笑)、そのための準備としては、まず自分自身が夢中になる経験を積むことかなと。

自分が夢中になったことがないのに、人に夢中になってもらうのは難しい。だから「夢中体験のストック」を多く持っておくことが、実はマネジメント職への一番の準備になるんじゃないかと思っています。

なお、僕が長らく関わっている株式会社ヤッホーブルーイングでは、お題設計アプローチの勉強会をやり始めたところ変化が現れました。

部署(ユニット)のリーダーは立候補制なのですが、あるメンバー(女性)が「リーダーはみんなを引っ張っていかなければならないと思っていたから『自分にはムリ』と思っていたけど、みんなによいお題を提供できればよいんだ、ということがわかったので立候補しました」と。うれしい出来事でした!

管理職にまつわる誤解やマネジメントへの不安を乗り越えるには、特別な才能ではなく意識の切り替えと実践の積み重ねが欠かせません。
まずは、自分自身が「夢中になれる体験」を意識的に積み重ねてみてください。その実感こそが、仲間を巻き込み、チームに活力を生み出すための土台になります。完璧な答えを示すのではなく、「よいお題を渡す」ことを意識するだけで、マネジメントの見え方は大きく変わるはずです。

ログミーBusinessでは、マネジメントスキルをはじめ、キャリア形成やチームづくりに役立つ記事を数多く掲載しています。ぜひ他の記事もお読みください。

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