【3行要約】・サクセッションプランの重要性は認識されていますが、実際に効果的な育成システムを構築できている企業は限られています。
・元カゴメCHROの有沢氏は、従来の階層別研修では経営人材は育たず、選抜型アセスメントによる育成が必要だと強調。
・経営者は部門を超えた人材活用と、失敗を恐れない挑戦機会の提供により、イノベーション創出型人材を育成すべきです。
前回の記事はこちら育成の基本原則有沢正人氏:実際に経営人材の育成でカゴメといすゞでやり方が違うので、お話をさせていただきたいと思います。まず、(スライドを示して)そもそも「Corporate Governance(コーポレートガバナンス)コード」ってみなさんご存じだと思うんですけど、Corporate Governanceコードの補充原則の4-1の③。「最高経営責任者の後継者計画を作れ」って書いてあるんです。
4-10の①に「報酬・指名の諮問委員会を作れ」って書いてあるんですよ。4-14で役員のトレーニングで、関西弁でいうと「しばく」っていうんですけど、「鍛えろ」って書いてあるんですよ。だから後継者育成をやらなきゃいけないって、Corporate Governanceコードに書いてあるので、上場企業では当たり前です。
非上場の企業でもこれをやらなきゃいけないというのは、当たり前ということですね。例えば育成の基本原則というのは、どうですかね。この育成の基本原則を社長とかトップマネジメントと、CHROとかとみんなで協議する。
「うちの会社はどういう人を経営人材で育てたいか?」というと、ここに書いてあるのはカゴメの経営者なんですけど。やはり当事者としてカゴメの経営を捉えて、経営を担っていく力と、大事なのは意欲と、覚悟と、自律性を重んじる。
だから本人が「やりたくない」と言ったら、社長にならなくてもいいんですよ。役員にならなくてもいいんですよ。「どうぞ」ということです。それが不利益と思うことはありません。ということを育んでいくことが大事です。これをよりどころとして、経営人材を作っていく、この基本原則を作ることはまず大事なので。
後継者の育成
ここをトップの方と、今日お聞きになっているみなさんが「どれだけ養成員としてアグリーできるか?」が大事だと思います。例えば、サクセッションのプロセスは、だいたいこんなイメージですね。大事なポジションを選定します。人事、CHRO、あるいは営業部長とか、〇〇支店長とか、〇〇工場長とかです。大きいところの人たちの、大事なポジションを選定して、その後継状況を可視化します。
「どうするか?」というと、今の現任者に「今すぐ、2・3年後、5・6年後の後継者は誰か?」を複数挙げさせます。その時に「一応有効なのは何か?」っていうと。昔僕はやったんですけど、自部門からの候補者は半数を超えないってやると、けっこう効果があるんですよ。なぜかというと、だいたいこういう時って自部門の人ばかり上げるんですよね。
そうすると、部門最適な人ばかり残るんですよ。コーポレート人材を作りたいんだったら、他の部門を見れる人。だからわざわざ後継者は他の部門の人も入れてくださいっていうかたちにすると、効果があります。あとは大事な人材要件とか、スキルとか、能力を明確に、キャリアパスは「今したい」ということを考えて、今の人材を可視化する。
人材開発委員会というのは、いすゞにも人材委員会ってあって、社長、副社長、専務、会長、私でなっているところなんです。それと外部の社外取締役の人と報酬指名諮問委員会の人と運営します。ここで基本的に議論をして、候補者を決めて、育成に入るというプロセスです。(スライドを示して)この1から7のプロセスが、こんな感じでサクセッションのプロセスを回すことは、ものすごく大事になります。
上にいけばいくほど、研修は厳しくなる
現任者、人材開発委員会でまずキーポジションを作って、次に基準に沿って後継者を聞いて、それが2・3年、5・6年、あるいは10年後の話を聞く。それで事務局、人事部がだいたいあるんですけど、事務局で整理して、人材開発委員会に上げて、報酬指名諮問委員会で認めてもらう。言葉は悪いですけど、ここで社外取締役の方を利用しない手はないですよ。
この方々はいろんな知見をお持ちなので。この候補者が本当に、いすゞならいすゞの会社の、将来役に立つか、あるいは将来このポジションに相応しいかを、マーケットの感覚で見てもらうことは大事です。閉じたかたちにしちゃうと、元の木阿弥なんです。だからせっかくそこまでいったのに最後そこだけ閉じちゃうと、タレントマネジメントシステムを使っても本当に意味がないです。そこは、気をつけていただきたいなと思います。
前の会社も、今の会社もそうなんですけど、上にいけばいくほど、研修は厳しくなります。中長期、短期、今すぐ後継者ってあって、その他にいろんな研修があります。この中で、階層別研修とか、こういったのは基本的に私はやっていません。
階層別研修って、意味がないとは言いませんけど、候補者の育成においては正直「意味がある」とは思わなかったです。「時間の無駄」とは思いませんけど、そこに力を入れるよりも、選抜型のアセスメントとかを入れた、いわゆる育成の研修のほうがいいと僕は思います。
特に役員には厳しくやらないとダメ
これは前の会社なんですけど、役員が第3クールまでいて、第1クールで、法務・企業とか経営戦略・マーケティングとかですね。これは役員になって勉強して、社外取締役の方も出られたんですよ。(スライドを示して)「これは何の写真か?」というと、意味があります。これはマーケティングの本部長が、マーケティングの先生に、関西弁で言うとしばかれている状況ですね。立ち往生しているところなんですよ。
これはだいたい土日でやるんですよ。役員研修はどこの会社も土日でやるケースが多いんです。木曜日かなんかに、マーケティングの本部長に「土曜日にマーケティングの研修があるから、お願いしますよ」って言ったら「俺、マーケティングなんかわかっているから出なくてもいい?」とか言われたので、「お願いです。出てください」とか言いながら、カチーンときて。
このマーケティングの先生は一橋大学の藤川(佳則)先生という有名な先生なんですけど、「マーケティングの本部長は、特にしばいてください」って言いました。これはマーケティングの本部長が、マーケティングの藤川先生にロールプレイをやって、立ち往生しているところですね。私は性格が悪いのでスクショに撮って、まったく見えもしないみなさんにお見せするという、非常に悪辣三昧なことをやっています。
これぐらい役員は厳しくやらないとダメだということなんです。これは人的資本経営を担う役員に必須なことだと思って、僕はずっと今までやってきました。これは、実はいすゞの考えなんですけど、そもそも経営戦略と人事戦略をともに目指しています。経営トップとして一応合意していることが、人財を社内外から発掘して活用するためにタレントマネジメントがあるということです。
日本のジョブ型は「仕事の内容」と「報酬」が一致しないことが多い
それで我々が実現したいのは、やはり先ほどお話ししたとおりで、個人の成長が会社の成長につながる。つまり、個人のマーケットバリューが上がると、会社のマーケットバリューが上がります。それと同時に、みなさんの企業がどういう海外比率があるかは存じ上げませんが、グローバル企業としてのいすゞなので、意思決定を迅速にやるということ。
それと、職務と報酬をあらかじめ明確にする。これは大事なんですよ。仕事の内容と、報酬が一致しないことがものすごく多いです。日本のジョブ型って、誤解を恐れずに言うと、職能資格制度の上に乗っかったジョブ型ってものすごく多くて。仕事は明確になっているケースは多いんですけど、職能がね、ピッタリになっていないケースが多いんですね。
そこはレンジ級とか幅を広げて見ていることで、なんとか耐えしのいでいますけど「本当にそれでいいのか?」って、やはり思っています。正しく人を評価して、グループ全体で活用するということなんですけど。だいたい、このタレントマネジメントを作って、サクセッションを作ると、「そのサクセッションを、どれぐらいからやるんですか?」と、言われます。
今のいすゞは、だいたい29歳ぐらいから始めます。これね、早くやって「やりすぎ」なことはないんですよ。あとでお見せする、3段階のサクセッションをやっていて、実はカゴメでも3段階でやっていました。(スライドを示して)いわゆる縦軸は戦略軸で、横軸はマネジメント軸なんですけど、戦略を専門にやる人もいれば、マネジメントを専門にやる人もいます。