2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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濱口秀司氏(以下、濱口):やっと1番目のテーマですね。イノベーションについてお話しましょうということですね。
まずその前に、イノベーションって一体何ぞやということを定義しないと取り扱いができないです。ちょっと考えてみてください。
例えば、これWikipediaでさっき引っ張ったんですけれども、Wikipediaで見ると何かいっぱい書いてますわ。
で、もう読んでもしょうがないからぐにゃっとしときますけど。
イノベーションの定義をしてくださいっていうと、これできないです、はっきり言って。昔に別の講演で言ったことがあるんですけれども、学者の数だけイノベーションの定義があると。もしくはビジネスマンの数だけイノベーションの定義があると。ある人は「永続的うんちゃらかんちゃら」って、ある人は「顧客のエクスペリエンスが」って、もうね全然定義できないです。
ただ僕の経験上、定義はできないんですが「この要件を満たしているとイノベイティブである」というものがあります。それが何かというと、何かよくわからないんだけど、棒で突き刺すと形が見えてくると。「あ、イノベーションの形だ」というような感覚ですね。棒は100本も200本もいらないです。大体というか、僕の経験上3本突き刺したら、大体それがイノベーションかどうかわかります。そのお話をします。
3つありまして、1つめが、当たり前なんですけど「見たこと、聞いたことがない」。非常に当たり前です。でも、僕がポケットからぴゅって出した時に、皆さんが「わ! それ見たことあるわ! 聞いたとあるわ!」と言ったら、もうその時点でイノベーションじゃないですね、やっぱり。
2番目。ビジネスやってるんで、実行可能じゃないといけないんです。例えば「よし、このマイクを並べて、今から皆で月へ行きましょう」って言ったら、「おお! 聞いたことねえよ、そんなの!」って。でも、実行可能じゃないですよね。2000年経ったらできるかもしれないですけど、ビジネスで与えられた5年とか10年であれば実行不可能ですよね。だから、ビジネス上では実行可能であるアイデアであるというのが重要です。
3番目が「議論を生む」です。そのアイデアを目の前に出した時に、議論が生まれると。英語で言うとcontroversyですね。「あ、俺大好き、これ!」という人に対して、「絶対反対!」と。もしくは「え、こんなことやっちゃったらどうなんの!?」みたいな、「危険がすごく大きいよ!」みたいな。「いや、いいじゃないか」と意見が分かれると。これが実はイノベーションの匂いですね。
例えば、全員が賛成しているっていうのは絶対イノベーションじゃないですね。2万人に聞いて、2万人とも反対しているのもイノベーションじゃないですね。実はこの2つの意見が対立している状態というのがイノベーションですね。なぜそうなのかは後で説明します。よろしいでしょうか。
イノベーションの定義が仮にこれでできたとします。「これとは違うんだ」っていう方は後でディスカッションしましょう。
やり方ですね。やり方のヒントは、実は1番目にあります。なぜかというと、見たこと聞いたことがないものを作らなきゃいけないわけで、これがやり方のヒントですね。
見たこと聞いたことがないっていうのは、結局人間の脳みそなんですね。人間の脳みそが「おぉ、それ見たことないぞ、聞いたことないぞ」と判断するわけですね。で、実は人間の頭の中には一定の先入観だとか、難しい言葉で言うとパラダイムとか、考え方があるんですね。「これはこう考える」と。
例えば、マイクをイノベーションしようと思ったら、エンジニアであれば、ぱっと見て「部品が全部で7つでできてるから、それを200個にしてみよう! それは変だぞ!」みたいな。もしくは、それがユーザーリサーチの企画者であれば、マイクの持ち方、置き方みたいなものを研究しながら考えるだとか。
実はあるそういう考え方があるんですね。もし僕があるアイデアをその考え方に近い状態に沿って出すとどうなるかっていうと、「おぉ、見たことある、聞いたことある」と。当たり前ですよね。じゃあ、イノベイティブな脳を作ろうと思ったら簡単で、そのバイアスに対抗するものを作ればいいんです。アイデアを生みだそうとする考え方、システムと反対側のもの、もしくは違った角度のものを放り込めば「ええー!?」と思うと。これすごく簡単ですね。
ですから、何をしなきゃいけないかというと、バイアスを壊すことです。
これ非常に深い話です。この話だけで何時間も話ができて、手法論がいっぱいあるんですけど、でもイノベーションの一番重要なもの、一番重要なステートメントは、バイアスを壊すことです。
それは自分のバイアスかもしれないし、人のバイアスかもしれないし、ライバルのバイアスかもしれないし、コンシューマーのバイアスかもしれないし。バイアスを壊すことです。
これ実は人間との戦いです。人間っていうのは、脳との戦いです。自分の脳と他人の脳との戦いです。消費者の脳との戦いです。
で、バイアスが外れるから、バイアスをぶっ壊すから、もしくは、こうだと思っている規定の概念から離れるから、そのアイデアを実行しようと思うと、実は読めなくなるんですね。
普通の、自分の知ってるとおりのことが起きると思うと、大体数字で読めるんですよね。「あ、売り上げこれくらいだ」とか、「これならお客さんに受け入れられる」と。それと違う発想だから、読めなくなるんです。読めなくなると、不確実性が上がるということですよね。不確実性に関しては、人間は合意できないんですよね。
例えば、僕がこのマイクを投げるのを死ぬほど練習して、大学の先生をいっぱい集めて力学も勉強して、マイクを投げてそこの壁に当たって跳ね返ってきて僕の額に当たる確率みたいな。これを全員合意することは不可能ですよね。だから、不確実なものは合意できないから、だから議論を生むんですね。
もともと、皆が持ってる共通のバイアスから離れれば離れるほど議論は深くなります。議論は対立します。誰もそこにパラダイムを持ってないから。
少しバイアスを壊すという概念を、具体例で感覚的に皆さんに掴んでもらおうと思います。ケース1。
仮に、コンセプチュアルにアイデアが4つあります。ではバイアスを崩してみましょう。こんな感じです。1、2、3、4って。これ1つ1つのアイデアです。これバイアスを崩せないですよね。例えば1つ1つのアイデアを聞いても、これ崩せないんですね。
仮に、これをある特性で並べたらこんなふうに並びましたと。アイデアそのものの話はしてないです。ある特性に基づいて並べると仮想曲線が見えますよね。
「あ、これってトレードオフなの?」みたいな。「皆のアイデアは、bを取るとaを失うし、aを取るとbを失うというアイデアに沿って皆考えてるの?」と。
こういうのありますよね。商品開発やった時に、aをやるとbは絶対入らない、bをやるとaが入らないみたいな。もしくは企業でも、ビジネスネゴシエーションで、aを取るとbは失うみたいな。これ、結構ビジネスの中だとか、普通の生活でもありますね。
そういうふうなカーブがもし見えたら、これは論理的にバイアスを壊すことができますよね。
例えば、こんなアプローチができます。
それがそうなら、極端にAに行こうと。普通の人が考えるよりも、極端にBを忘れてAにいこうと。もしくは極端にBに行こうと。こういうのができますよね。
もう1つは、バイアス曲線の上で中庸をいくと。うまーく組み合わせると。日本人が得意ですね。バランスを取った商品みたいな。これできますよね。これ2つめのアプローチです。
3つめは、バイアス曲線が見えているので、壊しちゃえと。これ意味、何かわかんないです。でも普通はAとBが取れないのに、とにかくA、B取る形に持っていこうと、こういう議論ができますよね。
この中でイノベイティブなのは何かというと、Dです。なぜかというと、所詮エクストリームなAを作っても、それを誰かに見せた時に、それが根源的なバイアスであれば、「ああ、極端パターンね」と、「知ってるよ」と思いますよね。
それから中庸パターンを作っても、「ああ、そこのバランスを頑張って取ったのね」と。「知ってるよ」と。「見たこと、聞いたことあるよ」「想像の範囲だよ」と思うんですね。
ところが、このトレードオフがすごく深いバイアスで、全員信じてて、壊すというアイデアを持ってくると、「ええー!?」となるわけです。これが、1つの事例です。
何かというと、「見えないものは破壊できない」ということです。バイアスを探っても、例えば空気を壊すとかできないです。何か形にしないと、見えるようにしないとバイアスは壊せないと。
で、次のケースいきましょうか。
「桃太郎を破壊せよ」と。桃太郎っていう物語ありますよね。これを今から破壊してくださいという議論をしようと。
そしたら、「桃から生まれた桃太郎だから、じゃあ林檎太郎にしようか」という人もいますよね。「いや、どんぶらこと川から流れてくるから、じゃあ逆にロケットエンジンつけて、川上に飛ばして壁に当たって桃太郎が生まれてくる」みたいに血まみれになってみたいな、そういう発想はありますよね。でも、それが本当に桃太郎という物語を破壊してるかどうか、わからないですよね。
で、こういうアプローチがあります。例えば、桃太郎はヒーローものだと。ヒーローものだと。よくよく見てると、雉とか猿とか、そこら辺の奴らと複数チームになっていると。
これに対して、僕が良く知っているヒーローものは1人なんですね。じゃあ、1人対複数で、桃太郎はそのヒーローモードで言うと複数、チーム戦なんだなと。
仮にですね。ヒーローものだから、勧善懲悪だと。桃太郎はさすがに鬼退治にいって、宝物をせしめて、おじいさんとおばあさんを幸せにすると。勧善懲悪でいいものですね。鬼が悪者ですよね。
最近聞いた話では、仮面ライダーがそうじゃないらしいですね。最近の新しいやつは。なんか苦悩するらしいですね、良いものと悪いものの間を。グレーであると。
これで、実はヒーローものの簡単なモデルができて、これ正しいかどうかわからないんですよ。でもロジカルに何か見えてる。で、桃太郎はどこにいるかというと、もちろん左上で、勧善懲悪で複数だと。ここまで見えたとしましょうか。こういうの破壊できるんですね。
新桃太郎は、鬼を退治して、船に乗って、おじいさんとおばあさんのところに戻っていってると。戦場でいきなり雉に飛びかかって焼き鳥にして食ったと。これは、崩れますよね。「え、あいつ1人だったの、実は?」と。そして、「え、あいつ良い者じゃないの? 宝物は持って帰ってるけど、仲間食っちゃってるよ?」みたいな。これ破壊されてますよね。だから、実は構造化するっていうのはすごく重要なんですね。
ポイントは「構造なきものは破壊できない」。だから、バイアスを崩していこうと思うと、アイデアを見てもしょうがないんです。その背後にあるものを、何とか視覚的に構造化して壊せるようにしないといけないということですね。
もうちょっと行きましょうか。これは僕がやったケースですね。1999年に、カジュアルデータマネジメントのバイアス。例えばフロッピーディスクがありますね。「データちょうだい?」「はい」って渡してますよね。「添付」とかいうのをやってますよね。99年です。
これのバイアスが何だったかと。これがその時に書いたチャートです。
1つがデータサイズ。データがでっかい、ちっちゃいですね。もう1つがexperience、体験として、Tはタンジブルです。要は触って分かる。「俺フロッピーディスク持ってる」「俺のデータ」「あ、踏んだ」「踏まれた、俺のデータ」と。わかるというのと、感じられないと。
例えば「ファイル添付してメールで送ります」。何も感じないですよね。サーバーに入れたら何も感じないですよね。
で、この時、実はこれUSBのフラッシュドライブのケースなんですけれども、クライアントも、Zibaのチームも、ブレストすると全部この話になるんです。
どういうことかというと、データサイズはどんどん大きくなっていくと。だってデジタルカメラの性能は上がっていくし、パワポにどんどんいろんなもんくっつけるし、フロッピーに入らねえと。
でも、その時言われたのは、これおもしろい話なんですけど、今は皆さんああいうものを使ってるから当たり前だと思うんですけど、当時ディスカッションすると「絶対にもうワイヤレスになる」と。IR(赤外線)で飛ばしたり、インターネットに載せたり、とにかくそんな物理的に「はい、どうぞ」なんて、フロッピーディスクっぽいものとか、コンパクトフラッシュにいちいち入れてなんて、あり得ないよという話なんですね。
これ見たら構造化されてますよね。じゃあ、これと違う矢印を作れって言ったら、こうなりますよね。
疑問として「本当にそうなの?」と。やっぱりデータが大きくなって5年後も10年後も「あ、それ俺のデータ」ってポケットに入れて持ってるという人間らしい感覚というものがなくなっちゃうんですか? というところが、実はUSBのフラッシュドライブの始まりです。
で、この後実はモデルはいっぱいあります。これ以外に、例えばテクノロジーのモデルも触ってますし、実はマーケティングのモデルも触ってるんですね、これね。でも、それは皆が考えてるバイアスを全部切り崩していって組み合わせています。だから、ああいうふうに立ち上がってるんですね。で、USBのフラッシュメモリと。
「人々の発想のバイアスを狙うべし」ですね。USBのフラッシュドライブは、チームメンバーがこう考えていると、こうやってアイデアを作るんだと思っているバイアスを探っていると。
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