【3行要約】・AI時代に「価値を生む人」と「淘汰される人」。その決定的な違いは、能力の差ではなく「始める力」と「続ける力」にあるといいます。
・THE GUILDの深津貴之氏は、AI社会を最終的に規定するのは物流であり、人間の役割は「AIに揺らぎを与えること」であると指摘します。
・都市の価値や資本主義の前提が激変する未来において、私たちはどのような「種」を蒔き、新しいインフラの上で行動すべきなのでしょうか。
前回の記事はこちら 時代はエージェントAIからフィジカルAIに向かっていく
田中邦裕氏(以下、田中):やはり、フィジカルAIみたいなところに(向かっていると思います)。いわゆる「エージェンティックAIから、フィジカルAIになるだろう」と言われているのは、まさしくそうで。AIがコモディティ化して、当たり前になったインフラの上に何を乗せるか。
例えば家事ロボットなのかもしれないし、工作用の単純作業ではなくて、いわゆる汎用型のロボットなのかもしれない。もしかしたら物流の自動化ロボットなのかもしれないなと思います。
深津貴之氏(以下、深津):そういう意味だと、僕はなんか30年か、もうちょっと先かはわからないですけど。中長期で最後の最後に来るのは、わりと物理アセットを持っている人が強い時代に回帰するか。めちゃくちゃ物流網を持っていますとか、駅前にビルを持ってますといったアセットを持っている人が、AIに積んでいく時にやはり強くなってくる気はするんですね。
田中:そうですね。あとは、そのルールすらもAIで変わってきて、例えば駅前のアセットよりも湖の前のような、箱根みたいなアセットのほうが……。
深津:あー、そうそう!
田中:そのほうが実は単価が高くなって。
深津:海の横みたいなところですね。
全人類がリモートワークになったら都心の意味もなくなる
田中:そうです、そうです。要は駅近という感覚すらもなくなるかもしれないですよね。
深津:それは結局、全人類がリモートワークになったら、都心というものの意味がなくなっちゃいますもんね。
田中:そうなんですよ。あとは通勤するにしても、駅まで自動で送ってくれるようになると、要はバス停とかが関係なくなるわけですよね。だから、そういう意味で「地球を最適化させていった時に、新しいインフラは何なのか?」。
例えば、デジタルライフライン全国総合整備計画というものがあるんですけども。要はAIとかITネイティブな社会を作るために道路を作り替え、センサネットワークを作り替え、標識を作り替えるというプロジェクトを国が主導してやっているんですね。
だから、これが整った時点で、いわゆるデジタルのインフラをある程度国が物理的に作りつつも。その上で、物理的に何かをしている人たちが一番儲かる世界があるかもしれないわけですよね。
深津:確かにそうですよね。そうなると、普通の既存産業、既存アセットを1回リセットするみたいな感じになりますもんね。
田中:そうですよ。駅前の価値が残るのか、なくなるのか。よくわからないですよね。
最後の最後にAI社会を規定するのは「物流ネットワーク」
深津:ちょっと歴史の教科書とかを見ながら「蒸気機関がモーターに切り替わった時に、何が起きたっけ!?」みたいなものを確認しなきゃいけなくなりますね。
田中:そうですね。ちなみに工場ができたことで、通勤というのが発生したらしいですね。通勤が生まれたことで、汽車とか鉄道が発展して。
深津:交通網ね。
田中:その時に時計が正確になったそうですよね。要は、時間どおりにみんなが集まると。だって昔の江戸とかは、夕方になったらカンカンカンと鳴らしていたわけですよね。
深津:「今度」って。「今度っていつ!?」みたいな。
田中:そう(笑)。今度がね(笑)。それが定量化されたのが資本主義の始まりの時期でもあるわけじゃないですか。でもそのスタートって、やはり蒸気機関を始めとした、いわゆる工場ですよね。だから、それと同じようにAIによって、根本的に何かが変わるというところが、実はビジネスの種になってくるんだろうなとは思いますよね。
深津:それでおそらくそういう時に、自分だと歴史的制約か物理的制約がやはり大きくなると思うので。最後の最後に、その時のAI社会を規定するのは物流。
田中:なるほど。
深津:分散投資できるかどうかは、その土地に消費財が届くかどうかに規定されるみたいな感じになってくるので。物流ベース、あるいは人口ベースで考えると未来予測がしやすいのかなと。
食料を始めとした物流・移動手段・通信ネットワーク
田中:確かに。それでいうと、グリッドとネットワークの考え方がけっこう重要です。アメリカだとオフグリッド生活というのが流行っているんですよね。要は電気って、自分で発電して自分で使えるようになっているじゃないですか。昔みたいに大きい発電所から持ってくる必要がなくなってきている。浄化槽の性能もめちゃくちゃ良くなったり、排水から飲み水を作れたり。
そもそもネットワークの必要性がなくなっている中で、「どのネットワークが必要か?」というと、1つは物流のやつですと。
深津:物流ですね。特に食料ですね。
田中:そうなんですよ。食料を始めとした物流ネットワーク。あとは人が動くためのネットワーク。まぁこれは鉄道だったり運輸だったりするんでしょうけど。あとは通信ネットワークですね。逆説的にいうと、その3つがあったら、人間は本当に困らなくなるということですよね。
深津:そうですね。そこ以外の部分に根差したものがAI時代にルールが大きく変わっちゃう可能性が起きそうということですね。
田中:それで電力プラントに関しては、各家庭に送るというよりは、インダストリーのためだけに発電所があるようなことになるのかもしれないし。あとは自動車を充電させるためだけとか。ただ、自動車も自動運転になったら、勝手にどこかに行って充電してくるから。今までみたいに電柱でどこかに持ってくる必要すらなくなりますよね。
深津:そう。僕、自動車とかはたぶん、将来は人が保有するんじゃなくて、投資信託とか金融商品に近い感じになると思うんですよね。
田中:今のMobility as a Service。
深津:そう。自動車REITみたいなところにお金を投げておくと、みんなのお金で自動車を買って町中を走らせておくので。無理矢理入りますし、使いたい時に使えますよみたいな。
田中:そうですよね。
深津:NOT A HOTELの自動車版というか。
地球の資源が尽きる前に宇宙に行けないと、文明は「おしまい」
田中:そうですね。それでいうと、将来の人口の話があったんですけども。どうしてもこの世界に上限があるのが資源ですよね。だって人口が今は80億人弱で、これから120億人ぐらいをピークに減ると言われています。あと1.5倍を支えるだけの資源が必要ですけど、それが足りないと考えると、資源をシェアするしかないわけですよね。
深津:そうですね。結局、地球資源が切れる前に地球を脱出できないと、超AIを作ろうが何しようがそこで人類の限界が来ちゃいますからね。
田中:要は宇宙に行く材料すらなくなっちゃうわけですからね。
深津:そう。材料が残っているうちに宇宙に行けないと、文明がそこで「おしまい!」ってなっちゃう。
田中:そうですね。おまけに建設機械がなくなっちゃうと、今は掘りやすいところに鉄なんかはもうないので。
深津:なので一度滅びちゃうと、5万年後に新しい知的生命が出ても、そもそも材料がないから文明が発達しないみたいなね。
田中:そうなんですよ。工場圏みたいなところは全部我々が使い尽くしているわけなので。そういう意味でいうと、やはり資源をいかに守っていくかみたいなところ。今はSDGsなんて言われてますけれども。なんかAIによってもう少し地球と共生するような。なんかすごい、いい話になってきましたけども。
AIが地球の資源を管理し、人類の無駄遣いを防げないか
深津:そう。究極的には国連が持っているAIみたいなものとかが、資源分配管理をしっかりやるといったことが、中長期で起きてくるとうれしいなと思いますね。
田中:なるほど。それを誰が管理するかは、なかなか(笑)。
深津:そう。個々の人間はたぶん管理できないから、もう「人類が使っていいのは、これぐらいです!」っていうお小遣い帳みたいな感じで、資源を管理してくれないと(笑)。
田中:AIに(笑)。
深津:そう。資本主義に任せると、みんな結局、無計画にずいぶん使っちゃうと思うので。
田中:あぁ、なるほど。じゃあ、ちょっとそろそろ3つ目ですね。「既存産業に迫るビジネス……」。まぁ、これはだいぶ話がなされましたよね。
深津:ちょいちょい話しちゃいましたね。
「何かを始める人」か「何かを続けられる人」に
田中:その中で、やはり人材はどうなるんですかね? 1つの説では働かなくていい人と、働く人に分かれるみたいなこともあるじゃないですか。どういうふうに思われますか?
深津:いろんな人とかビッグテックの人にも聞いたんですけども。わりと僕の中で答えの1個になっているのが、「何かを始める人」と「何かを続けられる人」が、ファイナルアンサーに近いところにあって。
田中:なるほど。何かを続けられる人。
深津:そう。要は超AIをみんな与えられても、ほとんどの人はネコ動画を見たり、ソーシャルゲームを見たりして、何も始めないとか。AIに「大変ですよ」とか言われて「じゃあ、やめよう」となる人の中に、あえてやるという人と、あえてバチバチにやっている中で5年間やり続けるみたいな。
その2つさえしっかりしておけば、資金調達でも意見の修正でも、実際のオペレーションでも、最後はAIがなんとかしてくれるというのが、究極系になる気がするんです。
「悪いAI」は、設計上マジョリティにはなりにくい
田中:えー! AIが悪いことをしない前提なんですかね。
深津:AIも悪いことをすると思うんですけども。悪いことをするAIは、設計上そんなにマジョリティになりにくいとは思うので。
田中:なるほど。じゃあ、だいぶAIに依存するけれども、悪いAIを排除しながら(笑)。
深津:悪いAIは(笑)。社会的に何か悪いAIが1個生まれても、100万台のいいAIが速攻で対処するような感じになってくるというんですかね。
田中:人間の免疫系に近いものですかね。
深津:近い感じ。
田中:なるほどね。じゃあ、AIウイルスが入らないようにしないといけないですね。
深津:AIウイルスは……。そうなんですよね。だから徐々に増えていくかもしれないけれども。スタート地点で、たぶんこの世にあるAIの中で悪いAIといいAIが100万:1とかだと思うので。この比率が結局維持される。よほど変な、すごい戦争が起きるとかがなければ、この比率が維持されるから、悪いAIがそんなに広まらない気がするんですよね。
経営にAIを入れる会社・入れない会社で業績に差がつき始めるのが3年後
田中:なるほどね。そんな中で先ほどかなりドラスティックな社会の変化の話をしましたけれども。「現実的に3年、5年とかで既存のビジネスにどういう変化が生まれるんだろうか?」というところについて、何かご意見ありますか?
深津:僕自身で言うと、3年ぐらいだと経営にAIを入れる会社と入れない会社で業績に差がつき始めるのが、それぐらいの時間タームかなと思いますかね。
田中:そうですね。そもそもやはりアメリカに行って感じたのは、AIデータセンターがめちゃくちゃ伸びているということと、雇用をどんどん減らしているということですよね。LinkdInとかを見ていると、けっこう外資に勤めている方の退職コメントを最近見るようになってきたんですよ。本当に静かにリストラが始まっているんだと感じていて。
日本ではそういう兆しがあまり見えないところから言うと、少しアメリカの状況とのギャップは感じますかね。
深津:そうですね。日本は高齢化社会かつ人口減少があって、これがAIに対してポジティブに働いているところがありますよね。
田中:そうですよね。そもそも人が減っているから、AIに代替してもらってもかまわないみたいな。
深津:そう、そう。一番わかりやすい問題だと、すべての会社にエンジニアを入れようとすると、日本のエンジニアが足りないみたいなものは。
田中:そうですね(笑)。
深津:もう物理的に解決できないから。それを解決するだけでAIが必要みたいな。
田中:そういう意味でいうと、「2025年の崖」問題は、AIによって解消するのかもしれないですね。
深津:ある程度はいけそうな気がしますよね。
AI時代の人間の仕事は、AIに揺らぎを与えること
田中:なるほどね。そっか。ありがとうございます。これがたぶん最後の問いだと思うんですけども。まぁ……。人間は結局何なんでしょうね?
深津:僕は、AI時代の人間の仕事は、AIの未探索領域に飛び込むようなことが仕事になったり。
田中:それ、起こるんですかね?
深津:あるいはAIの統計的な、中央の答えに外側のノイズをぶち込むみたいな。なにかAIに揺らぎを与える機能みたいな。
田中:うーん。それで言うと、最近Artificial Lifeという、ALIFE(人工生命)がすごい流行り始めているじゃないですか。いわゆるシンギュラリティに対するプルラリティ(社会的差異を超えたコラボレーションのための技術)みたいなもので。
それこそ国内外の著名な方々がやられていますけれども。AIが単一のものになるのか、多様性を生むのか。どう思われますか?
深津:個人的には多様性を生むかなと思います。
田中:なるほど。僕は、よくそれで海外の人と話をして思うのが、やはり東洋的な感覚みたいなものが、コンピューターサイエンスの中でよく言われるけれども。「ほんまかいな!」と思っていたんです。
やはり単一のとか、唯一のみたいなシンギュラを求める考え方と「いや、いっぱいあるよね」みたいな。神さまが「唯一か多様か?」というのがあるんですよね。
AIが生成者でもあり学習者でもある未来とは
深津:そうですね。僕はけっこう、歴史とか今までの経緯を見て考えるタイプなんですけど。歴史的に、完全にシンギュラな社会制度でも、物理制度でも、会社制度でも、中長期・長期で生存できたものが基本的にないので。
田中:なるほど。
深津:歴史的に見ると、ほぼあらゆる分野で分散されているもののほうが、生存率が高い。そうすると、AIもそっちの可能性が高いかなという考え方をしていますね。
田中:そうですね。なんかもう本当に、AIが学習するデータが今のところはWebからは食い尽くされている中で。AIが生成者でAIが学習しているって、僕はBSEみたいな肉骨粉の問題を思い出すんですよね。
深津:あぁ、そうですね。統合し始めるとそういうのができる。
田中:そうなんですよ。統合し始めて多様性をなくしていった時に、人間もいわゆる近親相姦と言われる、近くの種で交わることによる多様性のなさが生存を脅かすみたいな話があるじゃないですか。だから法律でも禁止されていたりもするわけですけれども。
そういうAIの単一性みたいなものが起こす、AIの崩壊みたいなものもやはり背景としては起こりますよね。
深津:背景としては起こると思います。僕個人は、けっこう多様性のあるAIによるグリッドみたいな感じで最後は解決するんじゃないかなとは予測していて。100万AIがあって、100万AIをTPOに合わせて10万AIぐらいを選出して、それをグループで固めて1AIとして機能してみたいな感じというんですかね。
田中:あぁ、社会そのものみたいですね。
深津:社会そのものです。
単一のAIが一強の世界ではなく、みんながAIを作る世界に
田中:ソーシャルですね。だから私が思うのは、やはりそこが1つの勝ち筋というか。勝つというか、勝ち負けの世界じゃなくて、みんなが残る世界なのかなと。単一の大きいAIが「もう、あんなの無理!」というのが、今席巻しているけれども。
ただ、みんながAIを作るということによる多様性で、本当に人間社会が生き残る道は、みんながAIを作っている状態になるかもしれないですね。
深津:まぁ結局、先ほどの超企業、超国家、超独裁者のどれも歴史上は長続きしていないので、そういうかたちになるんじゃないかと思うんですよね。
田中:なるほどね。ありがとうございます。
深津:ありがとうございます。
田中:ということで、最後に一言ずつメッセージということで。いかがでしょうか?
深津:そうですね。僕自身もいろいろと気づきをいただいて勉強になったんですけれども。イベントの時に毎回僕が締めで言う言葉で言うと、結局こういう話を聞いても、みんなわりと始めないので。
田中:なるほど(笑)。
深津:先ほどの「とりあえずみんな始めよう」「口に入れてみよう」「続けてみよう」みたいなことを強くおすすめしますと言うことが多いです。
田中:ありがとうございます。実際にそこにブースも出てますから。まずは使ってみるぐらいのところからでもできると思いますので。ぜひ、AIを利活用するだけじゃなく、作るぐらいの勢いでですね。みなさんとともにAI社会を渡り歩ければと思っております。では、2番目のセッションは、これで以上とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
(会場拍手)
深津:ありがとうございます。
司会者:登壇者のみなさま、ありがとうございました。