【3行要約】・一生をかけて一つの正解を探す研究者と、AIが導いた数千の候補から選ぶだけの人。その圧倒的な成果の差はどこにあるのでしょうか。
・さくらインターネットの田中邦裕氏とnoteの深津貴之氏は、AIの探索力を「力技」と表現し、人間は選ぶ側に回ると指摘します。
・AI自体で稼げる期間は長くないとされる中、将来的に技術がインフラ化した後の「基盤の上で何を乗せるか」という生存戦略を提示します。
前回の記事はこちら 人が一生かけてやっていた研究をAIが1時間でやる時代に
田中邦裕氏(以下、田中):もう1つ聞きたいのが、最近「Science for AI」と言われる、AIに対する科学ですよね。それは本当にすごく進んでいるわけですけれども。一方で「AI for Science」で、サイエンスをAIで変えていく流れもあると。今まで研究時間で一生かけてやっていたものを、AIが1時間とかでやったりする時代になるじゃないですか。
だから、ノーベル賞級の研究がめちゃくちゃたくさん出てくるようになってくると、人間の研究がまったく変わるということですよね。
深津貴之氏(以下、深津):そうですね。そこは大きく変わると思います。やはりまだ現段階だと「AIに研究させても、既存のものしか思いつかないんじゃない?」という空気があるんですけれども。それも結局やり方次第ですよね。
田中:そうですね。
深津:一番わかりやすい例だと、極論、地球にあるすべての最新レポート・論文を読んじゃって、その論文全体から見て、これからトレンドになりそうな場所は優先順位が高いので集める。
その中でまだ議論されていないものをリストアップして、そこに取り組んでいくようなことをやっていくだけで、新規性をAIが知らなくても、まだ見ぬ人類の新しい発見なんて数百、数千と勝手にボコボコ見つかっちゃいますからね。
AIが見つけた「正解っぽい道」の中から人間が選ぶ
田中:確かにそうですね。よく言われるのは、工学博士であれば工学的に発見されてないことは多いけども。文学博士とかだと、文学的にってなかなか難しいんだけれども。まぁAIであれば「文学的にここの範囲で研究されてないところはどこ?」と探してきてくれますよね。
深津:探してくれますよね。その時に一番強いのは、AIの経路の探索力だと思っています。この世のほぼすべての問題って結局、経路探索っていうんですか?
田中:そうですね。
深津:正解に至る、無限に大きい分岐ツリーの中から正解の道を探すということだと思うんですけど。人間はがんばって数個の道を検証するのが限界なのを、AIはスイッチを入れておけば、3,000とか5,000の経路を全部舐め尽くしてくれる。
田中:そうですね。ずっとやってくれますからね。
深津:そう。そうすると人間だったらがんばって運が良くないと出会えないところをAIは力技で解決できるので。だから究極、人間のほうがクリエイティビティがあるにしても「AIで正解っぽい道を見つけたリストの中から人間が選ぶだけで、劇的に成果が変わるんじゃないか?」と思うんですよね。
田中:確かにそうですね。だって、それこそ発表の文章なんかも、最近はAIにいろいろ生成してもらっている人も多いと思いますけども。今までは試行錯誤しながら文字選びなんかをしていたのが、現代はAIが作ってきてくれたものをチョイスするだけなんですもんね。
深津:そうですね。
70億人の人生データを集められれば、人類の悩みや問いの解決策に
田中:なるほど。あともう1つ、そもそもWebや研究論文のデータをすべて(AIが)食い尽くしているという話がありましたけども。それこそ、先ほどのまだ計測していない紫外線や天気といった、さまざまなフィジカルデータをどんどん学習させていくと、人間が気づいていないことにも気づくようになるのかなと。
深津:気づくようになります。あとは、これから人生データセットみたいなものがまだまだ埋まっていて。それの取り合いになると思うんですよね。
田中:ヘルスケアデータとかということですか?
深津:ヘルスケアも一部なんですけど。GoogleとMetaが、ちょうど眼鏡(スマートグラス)を出し合っていると思います。要は一人ひとりの人生を全部記録しておけば、それはデータセットで、「これから70億個あるよね。しかも毎年増えて更新されるよね」というものが、まだ未活用領域になっている。まぁ「それをどれだけ集めるか?」というのはあるんですけど。
70億人の人生データを集めて、共通化して普遍化すれば、人類の悩みや問いの大半は「こうやって、こうやって、こうやれば、だいたい何とかなるんじゃないですかね?」みたいなところが見えちゃうと思うんですよね。
田中:なるほど。それがいい人生なのかわからないですけどね(笑)。
深津:そうそう。
田中:人類補完計画ですからね。