【3行要約】
・ビッグテックに淘汰される企業と、生き残る企業。その命運を分けるのは、GAFAMが「ついで」で解決する課題を追わない戦略にあります。
・THE GUILDの深津貴之氏は「2〜3年昼寝をしていれば解決する問いにコミットすると吹っ飛ぶ」と、AI時代の独自の生存方法を指摘。
・AIが「問題そのものを発生させない」究極のUXへと進化する中で、リーダーが描くべき新たな成長モデルと、人間の真の役割を提示します。
起業家でエンジェル投資家の深津貴之氏
司会者:田中さん、よろしくお願いします。
田中邦裕氏(以下、田中):はい。よろしくお願いします。深津さんもずいぶん前からお付き合いがある中で、何回か登壇もさせていただいて。
深津貴之氏(以下、深津):そうですね。ご一緒させていただいております。
田中:いつもXでも、すごく本質的なことを書かれているので、私もよく拝見しているんですが。まずは、ぜひ深津さんから自己紹介をいただければと思います。よろしくお願いします。
深津:はい。僕は株式会社THE GUILDという会社で、いわゆるお客さまと一緒に伴走しながら、サービス設計や新規事業のグロースなどのお手伝いをするデザインファームのようなことをやっています。みなさんもご存じのようなサービスでいうと「note」というサービスのCXOをやっていたり。
最近ですと、弁護士ドットコムさんの「リーガルブレイン」という、法務用のAIシステムであったり、いろいろなもののお手伝いをさせていただいております。
田中:起業家という立場とアドバイザー的な立場と両方あるんですね。
深津:そうですね。お仕事としてはアドバイザー、あるいはストラテジー策定に近くて、それにエンジェル投資家っぽいことが混じっている感じかなと。
田中:そう、エンジェル投資家ということでも(ありますね)。私もエンジェル投資をけっこうやるんですが、そういう意味で、この5年でけっこうスタートアップの環境も変わったと思います。
深津:えぇ。
ビッグテックが「ついで」でやることといかにぶつからないか
田中:最近のスタートアップについて、どうお考えですか?
深津:いやぁ……今よりも手前の部分のスタートアップの会社さんが、みなさんけっこうAIと競合して、いったん設計変更みたいなものが必要になってきているのが大変そうだなと。
田中:そうですよね。それこそノーコードツールと言われたものも、コードがそもそもAIで生成されるようになっちゃったので、存在意義をなくす可能性がある。
深津:「それGeminiでできるじゃん」とか「ChatGPTでできるじゃん」みたいになっちゃうことが多いんですよ。
田中:だから、AIサービスもそうですよね。「独自のAIを出しました!」と言っても、Geminiに実装させちゃったりしてね。
深津:そうですね。
田中:NotebookLMも、みなさんご存じだと思いますけど。ビックリしましたよね?
深津:そうなんですよね。なので、出資先のお客さんにもよく「ビッグテックが2年、3年後についででやってくるようなこととぶつからないようにするのがすごく大事」という話はするんですよね。
田中:そうですよね。僕が不思議なのは、それでも残る会社とビッグテックに潰される会社と両方あるじゃないですか。
深津:えぇ。
残れる会社・潰される会社の違いは
田中:それこそ、サイボウズさんとかのスケジューラーとか、ビッグテックがやってきてもいまだにすごく成長をされていたり。残っている会社・残れる会社と、ダメになっちゃうのって、どういう違いがあると見ていらっしゃいますか?
深津:そうですね。最初に「ダメになりやすい会社」でいうと、そういうビッグテックの生成AIの弱点を見つけて「このAIはこれができない! だからこれをやっちゃいます!」みたいな感じ。例えば「ハルシネーションを起こさないAIを作ります!」とか。
こういうのは、僕はお客さんによく「2〜3年昼寝をしていたらGAFAMが解決する問いを、自分たちでがんばってコミットすると吹っ飛ぶ」と言うんですよね。
田中:なるほど(笑)。
深津:逆に生き残りたい……。生き残りやすい会社のタイプはいくつかあるんですけど。一番わかりやすいのは、ものすごく泥臭いところをやっていて。
GAFAMの中で優先順位が低かったり、細部が細かすぎて「そこをやるより先に、金融とか遺伝子をやらなきゃ」みたいなことをやっている時に、なんか特定のissueをめちゃくちゃ極めることは、1個の生存方法かなとは(思います)。
田中:なるほどね。そういう意味だと、マスが大きいと相手もやってくるし、ソフトウェアで解決するものって容易に真似されやすいし。
深津:そうなんですよね。
田中:エンジニアリングは向こうのほうが強いですもんね。
深津:なので「AI決済」みたいなものが一番危険な臭いがします。
田中:あぁ……AI決済。ちょっと具体的な例が出ちゃって、AI決済されている方には恐縮ではありますけれども(笑)。確かにそうですよね。
究極のAIのUXは「そもそも問題が発生しない」レベルに
田中:そんな中で、実は先ほど申し上げたように、前回ご一緒させていただいたセッションは2023年の北海道のNoMapsだと思うんですけども。当時と現代の差分や、「この2年ですごく進化したよね」というところを、ぜひ専門家としてお聞きしたいんですけど、いかがでしょうか?
深津:どうでしょう。ちょっと「専門」というのもあれなんですけども。やはり一番大きな流れは、エージェントとかの流れに近いと思います。昔の生成AIはチャットに完全に縛られて、一問一答みたいな感じのものがメインだったんですけど。
田中:そうですね。はい。
深津:それが順番に、一問でマルチステップ作業して報告するとかになっていて。これから先はお願いするんじゃなくて、勝手に仕事をしてくれると思っています。
田中:向こう(AI)が。
深津:UXデザインについて、「デザインレベルで生成AIとかインターフェイスは、どう変わるの?」と聞かれる時によく答えるのが、「究極のAIのUXは、そもそも問題が発生しない。なのでユーザーは気づかない。終わり!」みたいなことになっていくと思うんですよね。
田中:じゃあ、問題解決型思考が通用しない。
深津:問題が発生しないので解決型までいかないかもしれない(笑)。