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Keynote: Jennifer B Wallace(全5記事)

「迷惑をかけたくない」はなぜ危ういのか 人を孤立へ向かわせる関係の変化 [1/2]

【3行要約】
・便利さと引き換えに「つながり」を失っているという問題が、今、多くの人に影響を与えています。
・ジャーナリストのウォレス氏は「現代はサービスの外注化が進み、身近な人に頼る機会が急速に失われている」と指摘します。
・「頼り合う」小さな行動こそが関係の土台であり、まず身近な人に声をかける習慣を意識的に取り戻すべきです。

前回の記事はこちら

頼られることは、つながりを生む大切な土台である

Jennifer B. Wallace(ジェニファー・B・ウォレス)氏:そして、ここから最後の要素、「自分は頼られていて、必要とされていると感じられること」に入ります。

いろいろな意味で、私たちは昔ほどお互いに頼り合わなくなりました。そして、それこそが私自身が最も強く懐かしく思う部分でもあります。

私が覚えているのは、旅行に出掛けると、近所の人が家に入って金魚に餌をやってくれたり、嵐のあとには家の様子を見に来て、電気がついているか確かめてくれたりしたことです。

でも、時代は変わりましたよね。私は、人気の家事代行のような仕事を受けるアプリで副収入を得ている女性に話を聞きました。

最初私は、彼女に来る依頼の多くは、引っ越し後の荷ほどきを手伝うとか、重い家具を運ぶとか、そうした大がかりな仕事だろうと思っていました。でも彼女は首を振って、「違う」と言いました。

一番多いのは、盗まれないように荷物を家の中に入れておいてほしい、といった小さな頼みごとなのだそうです。例えば、パートナーが留守で、自分は妊娠中だから体調を崩すリスクを避けたくて、猫のトイレを掃除してほしい、といった依頼です。

私は思わず考えてしまいました。その荷物をガレージに入れてくれる近所の人はいないのだろうか。仕事帰りに5分だけ立ち寄って、その妊婦さんの猫の世話を手伝ってくれる友人はいないのだろうか。

私たちは、外に頼ることに慣れすぎてしまったのかもしれません。そして、友人や家族の負担になることを恐れるあまり、まず身近な人に声をかける前に、お金を払って頼むことを選ぶようになってしまったのです。

でも、一見とても小さく見えるこうした頼みごと、こうした「頼っているよ」という合図は、小さなものではありません。それは、健全な支え合いの関係を築くための土台です。

友情が生まれるのは、こういうところからです。チームが結びつくのも、こういうところからです。近所の人たちが地域を作るのも、こういうところからです。

いろいろな意味で、私たちは便利さと引き換えに、つながりを手放してしまった。自分が何に同意しているのかもよくわからないままに。


少しの不便を受け入れることが、関係を深めるきっかけになる

誤解しないでください。私は便利さが大好きです。締め切りで忙しい時、食べ物を届けてもらえるのは、本当に命綱です。

でも、私自身の生活の中で起きていることにも気づきました。こうした効率の良さに囲まれているうちに、私は「ちょっとした面倒」に対して寛容でなくなっていたのです。他人と一緒に生きていく中では避けられない、日常のちょっとした不便さに対してです。

私が取材したある女性も、最近同じような葛藤を感じたと言っていました。彼女は新しい家に引っ越したばかりで、知り合いの何人かが、土曜の午後にリビングのペンキ塗りを手伝おうかと申し出てくれたそうです。

すてきな申し出ですよね。本当に気前のいい申し出です。なのに、彼女の最初の返事は「いいえ」でした。「ありがとう。でも大丈夫」。

迷惑をかけたくなかったし、あまりよく知らない人たちと1日中一緒に過ごすことになるかもしれない、その気まずさも避けたかったのです。

でも、私たちがあれほど懐かしんでいる「つながり」は、まさにこういう瞬間の中で築かれるのだということを思い出してください。

彼女の最終的な返事は「はい」でした。そして、そのペンキ塗りのあと、私は彼女にどうだったか尋ねました。

「すごく楽しかった」と彼女は言いました。「お互いのことを知ることができたし、笑って、音楽をかけて、最後は新しい庭で一緒に昼ごはんまで食べたの」。

立ち直る力は、人との深い関係の中で育つ

こうした健全で支え合う関係を築くことは、ただ気分をよくしてくれるだけではありません。私たちを、もっと強くしてくれるのです。

何十年にもわたる研究が示しているのはこれです。私たちの立ち直る力は、孤立の中にはありません。自分1人をいたわることだけで、立ち直る力を作ることはできません。

それは人間関係の上に成り立っています。自分は大切な存在で、感謝され、支えられ、頼られているのだと思い出させてくれる、深くて心を養ってくれる関係の上に成り立っているのです。


人を傷つけるのは、無視や切り捨てのメッセージである

そして、大切な人たちの中に「自分は大切な存在だ」と感じられる土台を育てるのと同じくらい大事なのは、その感覚を傷つけてしまうものに気づき、そこから守ることです。

それは時に、とても小さなかたちで起こります。パートナーが話しているのにスマホを見続ける。友だちとの約束をまた断る。そんなことです。

また別の時には、もっと大きなかたちで起こります。上司がチームの前であなたを怒鳴りつけたり、取引先の前であなたの意見を退けたりする。

あるいは、今実際に起きているように、もっとひどいかたちで表れることもあります。一斉送信のメールで解雇を知る。話し合いではなく、アカウントを止められたり、入館証が使えなくなったりして、自分が切られたと知る。

こうした瞬間は、「あなたはここでは大切な存在ではない」という非常に強いメッセージを送ります。つまり、「自分は大切な存在だ」と感じられることには、人を守る面と、それが失われた時に深く傷つける面の両方があるのです。その感覚がある時、私たちは守られる。けれど、それが奪われる時、私たちは深く傷つきます。

 心理学者たちは、この状態にも名前をつけています。それは、無視されたり、退けられたり、取るに足らない存在として扱われたりすることで、「自分は大切な存在ではない」とはっきり感じさせられる状態です。

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