【3行要約】・AI研究者たちが『ドラえもん』のキャラクターから選ぶ理想の同僚像からは、彼らの研究哲学と協働スタイルが見えてきます。
・牛久氏はドラえもんを、大澤氏はジャイ子を選び、両者とも「のび太タイプ」と自認する共通点から独自の研究観が明らかに。
・日本のAI研究の強みは「物に心を感じる」文化と言語感覚にあり、インタラクション分野でこそ日本らしさを活かした勝ち筋があります。
前回の記事はこちら 牛久氏と日焼けドラえもんの友情出演
司会者:ありがとうございます。そうしたら牛久さんも前に出て座っていただいて、このまま休憩なしでそのままパネルディスカッションに移っていけたらと思います。あと、会場の方は見られると……オンラインの方は見えていないと思うんですけど、実はあそこに、牛久さんの同僚の方がわざわざハワイから持ってきてくださった日焼けしたドラえもんがいます。
というところで、ちょっといつもより映えている感じのパネルセッションでやれたらなと思っていますので、よろしくお願いします(笑)。
牛久祥孝氏(以下、牛久):厳密には(僕はハワイには行っていません)。ICCVというコンピュータービジョンの国際会議がハワイで先月あったんです。僕も行く気満々で「あぁ、久しぶりのワイハだぜ!」って思っていました。そうしたら、(仕事を置いてハワイに)行ったらぶっ殺されそうなぐらい仕事が増えてしまって、行けなくて涙をのんでいたら、哀れに思った同僚が買ってきてくれたお土産です。
いやぁ、マジでかわいい。これで僕の心はだいぶ晴れました。ということで友情出演していただいています。
一緒にチームをつくるなら、誰と組む?
司会者:ありがとうございます。ちょっとせっかくなので、今日は基本、会場から(質問を)多く取りたいなと。僕もちょっと怖くて、僕ばかりが質問ができないような感じもちょっとあるので、3問ぐらい聞いて、会場からも取れたらなと思っています。
ここにあるとおり、「ドラえもん好きなAI研究者たちによる未来トーク」というところがあるので、(質問としては)ドラえもんが1つ、研究が1つ、未来が1つぐらい聞けたらなというところです。ぜんぜん、どら焼きを食べながらやっていってください(笑)。
『ドラえもん』にはのび太やしずかちゃんなどいろんなキャラクターが出てきます。お二人は研究もやられつつ自身で会社をやられているという経験もあります。
というところで1個目の質問は、「『ドラえもん』に出てくるキャラクター・人物から1人(選んで)、一緒にチームをつくるとしたら誰?」で、ちょっとその理由もうかがえたらなと思います。研究でも事業でもどちらでもいいですけど、一緒にやるキャラクターと、その理由をうかがえたらなと思います。
ドラちゃん、ドラミちゃん、ミニドラ 「助けてもらえる相手がいい」
牛久:じゃあ、僕から。大澤先生は引き続きどら焼きを楽しんでください。結論としては、僕は1位ドラちゃん、2位ドラミちゃん、次点でミニドラです。全員人間じゃなくて申し訳ないんですけど、僕がのび太くんキャラなので、助けてもらわないといけないかなと。でも、(自分も相手も)抜けている人同士みたいな関係がたぶん僕は一番安心して仕事を頼めるところがあるので、ドラちゃんかなと。
とは言いながら、ドラミちゃんのような優秀キャラだと、それはそれでありがたい。あと(ミニドラ)は「ドララー!」だけ言っていて癒されると。それはそれで効果があるかなと思いました。
司会者:ちょっとあまりわからずで聞いちゃうかも。出木杉くんやしずかちゃんとか、優秀なキャラもいるじゃないですか。
牛久:はい。
司会者:ああいうのじゃなくて、「ドラ」側を言ったのって何かあるんですか?
牛久:そうですね。まぁ、しずかちゃんもありだなと今思いましたね。出木杉くんは、ちょっとでき過ぎなので、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」という感じがちょっとあります。そうですね。しずかちゃんでもいいと思います。
ジャイ子 「作品への愛がチームの基盤になる」
司会者:大澤さんはどうですか?
大澤正彦氏(以下、大澤):ジャイ子。
司会者:ジャイ子!? おぉ。
大澤:ジャイ子ですね。
司会者:その理由は?
大澤:クリエイタータイプの人と組むのが好きなんです。やはりその人がつくるものに対する愛みたいなものがチームプレイの基盤になることが多いからです。僕も一瞬のび太だと思ったけど、「違うなぁ」と思ったんですよね。僕も(牛久さんと)一緒の理由でのび太くんタイプだと思います。やはり今の自分も、自分で全部できたことってほとんどない。
いろんな人と組んで、その人の作ったものの最初のファンに自分がなる。それを一緒に広げていきたいし、その人の作品が認められるようになったらいいよねという発想(でジャイ子を選んだ)かなと思います。なのでジャイ子の漫画が世の中に広まるみたいなことも一緒にやりたいし、その才能が『ドラえもん』を広げていくことにつながったらすごくいいなと思います。
司会者:ありがとうございます。ちなみにもう少し、ジャイ子のどのあたりがクリエイターっぽいのかを……。
大澤:ジャイ子って漫画家を目指しているんです。
司会者:はい、はい。
大澤:それで、ジャイ子は漫画をいろいろ書いていて、その作品を出したりしているわけです。そういう、自分の道を決めていて、自分の作品や作ったものを世の中に広めていきたい、みたいなところがすごくいいかなと。
意外な共通点は「のび太タイプ」 支援ではなく“最初のファン”になる
司会者:ありがとうございます。聞いてみてちょっと意外だと思ったのが、お二人とものび太くんタイプだと。逆に、やりたいことはすごくはっきりしているのかなと思ったりもしました。どちらかと言うと、そういうクリエイター気質みたいな人を支援したいという側面がけっこうあったりするんですか?
大澤:「支援したい」というのが自分の仕事の何パーセントかわからないです。けれども、自分がいいと思っているものが鳴かず飛ばずになっていたら悲しいです。自分が好きだなと思える人や作品と一緒に仕事をしながら自分の夢もかなえばいいな、みたいな。だから、世界中の全員の夢をドラえもんつくりに変えたいわけじゃないです。
僕らは研究センターとかでよく言っているんですけど、「100人で100人の夢をかなえる」みたいな組織がいいなと。100人の100個ある夢のうちの1つが「ドラえもんをつくる」で、お互いにそれぞれの夢を持っているんだけど、ちゃんとつながり合って協力し合うから、僕も含めて全員の夢がかなうみたいなのが、ありたい姿です。
「AI研究×日本」 日本だから伸ばせる勝ち筋はある?
司会者:ありがとうございます。そうしたら次は、ドラえもん(をつくるということ)で、「AI研究×日本」みたいな質問もちょっとできたらなと思います。やはりけっこうこういうAIコミュニティにいると、フィジカルAIや、ある種、人工知能の感情みたいなところでも、けっこう「日本と他で違うなぁ」みたいなのがあります。
そういった中で、やはり日本でAI研究をやるから可能性があるところとか、「こうなってほしいな」みたいな日本がやるべき研究とかも、せっかくなのでぜひお二人から一言ずつ聞けたらなと思います。いかがでしょう?
劣後する領域もあるが、インタラクションは強みになり得る
牛久:僕から答えると、やはりAIロボットの話が日本は劣後している一方で、けっこうインタラクションの分野は存在感があると思っています。なので、そういう強みは活かしてほしいなと。役人の方々が大好きな勝ち筋というものも、そこにあるのかなと。
あとはやはり人間味も備わっている(という)暗黙知的な部分も含めた職人芸的なところが日本人の強みなので、それをいかにロボットに移していくか、ロボットを通じて次の世代に移していくかが重要だと思っています。そういう意味でも、やはりインタラクションはすごく大事だなと思っているんですよ。それがそのまま勝ち筋だし、他の勝ち筋を広げるキーワードになっているような気がしております。
司会者:ありがとうございます。
日本の強みは「機械に心を感じる」前提 文化と言語が研究を押す
大澤:まったく同じ意見です。インタラクションだなと思っています。例えば、Human-Agent Interactionという国際会議があるんですけど、それとかは年によっては採択される論文の過半数が日本だったりする。(ただ、)年々難易度が上がって、2025年はついに30パーセントの採択率を切ったんですけど、(まだ)日本の存在感がかなりあります。
RO-MANというロボットインタラクションの会議でこの間オランダへ行ってきたんですけど、それも投稿数の1位がアメリカ、2位が日本ですね。ただ、採択率でいうとやや弱るところもありました。
研究としていいものがあるから、それをしっかり最後まで仕上げるだけの体力という意味では、若干心許なさを感じなくもないんですけど、アイデアの生まれ方やセンス、発想とかでは圧倒的だなと思うんですね。
「それは何でだろう?」という話もよくあるんですけど、そもそも「機械に対して心を感じる」みたいな、その前提を置くと日本が圧倒的に強くなっちゃうというのがあります。やおよろずの神とか、付喪神とか言ったりすると思うんですけど、物に心を感じるのを文化として強く持っているというのもあります。
例えば、アメリカからの留学生と議論をしている時に「このHAI(Human-Agent Interaction)(の分野において日本の論文)でよく使われている『人目を気にする』をうまく英語にできないんだけど、『人目』って何?」って言われたことがあります。「確かに『人目を気にする』の『人目』に対応する英語って何だろうね?」という話になりました。よくわからないんですよ。
だから、言語としてもよくわからない感覚をやれと言われてもわからないという意味では、やはり日本人的な感覚がそのまま研究に直結しているんじゃないかという話をよくしています。だから、もう本当に僕らもここが勝ち筋だと思っているので、その勝ち筋をちゃんと殺さないようにしたいですね。
ファミレスとかで、ロボットがご飯を運んでくるじゃないですか。「あれは日本だから受け入れられたのかね?」みたいな話がよくあるんです。「ロボットが通るから道を空けてあげなきゃ」と擬人化をすることによって成立するわけですね。あれがただの機械だったら「機械なんだから、ちゃんとお前が動いて避けろよ。お前が待てよ」ってなるじゃないですか。「お前が」って言っている時点で僕は擬人化しているのかもしれないですけど。
でも、ああいうロボットが海外メーカーから出ているのは、「日本がんばれ!」と思うところです。市場として日本が使いやすいだけで、作ったのは海外になるのか、ちゃんとその感覚の強みを活かして日本が自分たちのビジネスとして大きくできていくのかも、注目のポイントかなと思います。