【3行要約】
・次世代CTOが集結するピッチコンテスト「Startup CTO of the Year 2025」にて、スタートアップの最前線で活躍する5名のCTOが自身の取り組みについて紹介します。
・株式会社PeopleX CTOの橘大雅氏は「生成AIという大きな波こそスタートアップの勝機」と語り、コンパウンドスタートアップからAIテックカンパニーへの転換を決断しました。
・同社は対話AIを軸としたマルチプロダクト戦略で、日本発グローバルプロダクトの実現を目指しています。
デジタルヒューマンのあいさつからスタート
司会者:持ち時間は6分間でございます。それではよろしくお願いします。
橘大雅氏(以下、橘):よろしくお願いします。では、まずはこちらをご覧ください。
(動画が再生される)「はじめまして。私はデジタルヒューマンの黒須ミライです。本日は、(Startup)CTO of the Year 2025にお越しいただきありがとうございます。それでは、PeopleXの発表をどうぞご覧ください」
橘:ご紹介にあずかりました、PeopleX CTOの橘です。先ほどの動画は、私たちの対話AIにおけるデジタルヒューマンとして活躍している黒須ミライさんからのあいさつでした。今回のピッチは、「技術を深めて、事業を広げる」。これをテーマに発表させていただきます。
まず、この数字をご覧ください。1.5兆円。これはSaaSの国内市場規模。48兆円。これはトヨタ自動車の2024年度の売上です。自分自身、共同創業するにあたり、「なぜスタートアップをするのか」を自問自答し続けました。今日はその答えを発表します。

1年半前に創業してから、毎月のようにプロダクトをローンチする。事業を開始する。時には企業を買収する。そんな慌ただしい日々を送ってきました。もともとPeopleXは5年で20プロダクトを作り、あらゆるHRの困りごとを解決する、壮大なコンパウンドスタートアップとして始まりました。
コンパウンドスタートアップからAIテックカンパニーへの転換理由
橘:しかし、創業から1年。AIテックカンパニーへの大きな転換を行います。それはなぜか? 生成AIという大きな波。このゲームチェンジこそ、スタートアップ最大の勝機だと考えているからです。

AI以前を思い返せば、YouTubeはたった3人で創業し、1年で世界の覇権を取りました。生成AIでは「Cursor」が数十人の従業員で評価額は1兆円を超え、世界の開発を支えている。いつの時代もスタートアップがゲームチェンジャーとなり、大きな市場を切り拓いてきました。
私たちPeopleXは、「AI面接」を最初のAI事業として参入し、結果としてリリースから5ヶ月で、市場認知ナンバー1(※1)を獲得するに至りました。そこに至る技術的な軌跡をご紹介します。
マイクロサービスからモノリスへ。通常は逆のルートをたどる。では、なぜこれを選んだのか? コンパウンドスタートアップを始めた時、CEOから「5年で20プロダクトを作ってほしい」というオーダーが来て、創業から1年経たずして、こうした複雑なマイクロサービス構成となりました。
市場を制覇するサービスのコアバリューはシンプル
橘:しかし、AIプロダクトはどうか? 非常にシンプル。マイクロサービスがいいか、モノリスがいいか。決してそんな二元論ではない。私は、アーキテクチャは市場が決めるものだと確信しています。新世代のプロダクトが出てきた時は、コアバリューが際立ち、機能はシンプルです。
思い返せば、みなさんが使っているLINEやInstagramが登場した時も、コアバリューに特化していた。最初から複雑な機能もアーキテクチャも必要ありません。生成AIのようなまったく新しい市場だからこそ、そう感じています。
私たちは価値のセンターピンを面接体験と捉え、海外の製品でもやらないような3Dアバターを組み込み、ビッグテックの対話AIを使わず、自前の対話AI制御を行っていく。こうした取り組みは、GMO AI&ロボティクス(商事)さまの対話エンジンに採択されるほど高い評価をいただいています。
CTOとして最も大事にしているのは、「技術を深めて、事業を広げる」。こうした相矛盾する2つの概念を両立させること。そして、それが企業の競争力を作っていくと考えています。
対話AIを軸にしたマルチプロダクト戦略の狙い
橘:対話AIを軸としたマルチプロダクト化を進め、「AI受付」「AIロープレ」と、次々とプロダクトをローンチし、ユースケースが広がることで対話AIがより深く進化していく。そして、これが事業を強くし、新たな事業を生み出していく。

CTOとは、「技術と経営の好循環を生み出していく」ことこそが最大の技術戦略であると考えています。そして、PeopleXの行動指針。「歴史に残る偉大な成功を目指す」。今年(2025年)10月にはベトナム進出を決め、すでに販売を開始しています。日本スタートアップの悲願であるグローバルプロダクト化を目指し、強くて深いプロダクトにするため、技術的な挑戦を続けています。

あらためて、なぜスタートアップをやるのか? その答え合わせです。生成AIという、ゲームチェンジを切り拓く存在。技術を深めて、事業を広げる。その矛盾を解決する。スタートアップの悲願、グローバルプロダクトを目指す。こうした挑戦は大企業ではなく、自ら会社を立ち上げ、開発組織を作り上げたからこそできるチャレンジです。
これからもPeopleXは、技術を深めて、日本社会をワクワクさせるような未来を作り上げる技術者集団であり続けます。ご清聴ありがとうございました。
(会場拍手)