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だかぼくオープンイベント AIが進化しても、私の居場所は残るのか?(全2記事)

仕事でAI活用することの思わぬリスク 気づかないうちに依存している人が失う「能力」 [1/2]

【3行要約】
・AIの普及で人間の能力が衰えるという懸念がある一方、人間独自の「非認知能力」がより価値を持つ時代になっています。
・研究によると、AIに依存しすぎると内発的動機や創造性が失われる傾向があります。
・目的設定、内発創造性、価値判断、社会的知性といった非認知能力を高め、AIと共鳴できる人間になることが、これからの時代に求められています。

残念ながら「AI導入の試み」は、80〜95%失敗している

斉藤徹氏:AIの普及が加速してますね。より一層、人間力が問われる時代になりました。一方で、企業がAIの導入に失敗しているというニュースがいくつか出てきていますね。(失敗している企業は全体の)95パーセントというのもあれば80パーセントというのもある。

それらの記事に共通するメッセージは、組織のカルチャー問題です。AIが成果をもたらすのは、社員が前向きに学習できる時だけ。好奇心を奨励するリーダーはAI導入の試みを改善できるはずだ。人間側の要因を無視して何かAIを入れようとしても、そういう試みは空回りし続ける。このことに企業サイドも気づき始めました。

AIの時代だと、AIばかりにフォーカスされる。でもコロナの時も、オンラインは確かに便利だけれども、結局僕たちはリアル体験の尊さはすごく感じましたよね。AIも同じです。AIはもちろん便利なんだけども、その中でAIにできないこと、人間独自の価値が際立つと思います。

これから人とAIがシームレスに協働して、人間に求められる役割が変わってきますね。AIができることはどんどんAIがやるようになります。この変化と葛藤の中で、僕たちはどういうふうにAIと向き合えばいいのかを考えていきたいと思います。

AIによって衰える人間の能力

例えばAIはめちゃくちゃ便利なんですよ。こういう便利なツールが出るとどうなるか。電卓が登場したら、人間の暗算する能力がかなり衰えましたよね。ワープロが出たらもう本当に漢字が書けなくなりました。カーナビが出る前は僕も随分地図を見られていましたけど、今は地図を見ること自体、超面倒くさいですよね。

じゃあ、人工知能が登場したらどんな能力が衰えるのか。AIは、今お話ししたツールよりも無限に近い可能性を感じさせてくれるだけに、懸念も無限に近いところがあるんですよね。計算能力とか漢字を書くのはまだなくてもなんとかなるけど、もっと核心的な、人間として大切なことを失っちゃうんじゃないか。

では「もっと大切なものって何だろう?」ということで、人間が持つ汎用的な能力を体系化して4分割してみました。

まず、認知能力があります。これは教育機関において数値化できるような、テストができるような能力ですね。まず子どもは一番最初に読むとか書くとか、そういったことを学びますよね。

その基礎となる認知能力が身に付いたら、続いて考える能力ですね。基礎を使って深く考える能力。学習するための中核となる能力、これを養っていく。一方で、テストで点数が出せない能力がありますね。認知能力が知的な能力、頭の能力だとすると、心の能力みたいなもの。EQ(Emotional Intelligence Quotient)とも言われます。

心の能力も、基盤と中核がある。基盤になっているものは、まずメタ認知、客観的に自分を見て、物事に主体的に取り組めるかどうか。失敗した時に失敗から学んで物事をやり抜けるかどうか。他者のことを理解して信頼関係を築けるかどうか、もしくは問題が起きた時に解決できるかどうか。そのような基礎的な能力があります。

その上、例えば僕たちがビジネスで使っている汎用的な能力と言えば、「何のためにこれをやるんだ」と目的を設定したり、もしくはめちゃくちゃ一生懸命に内発的動機から追求したり、もしくは価値判断も非常に難しいですよね。それからやはり人と人の関係で、共感から価値を生むみたいなこと。これらは職場でとても大切な能力です。

でも、なかなか数値化は難しい。評価基準をつくっても、実際には評価しにくいようなものです。でもこういう汎用的な能力こそ、ビジネスでは非常に重要になります。

AIに代替されない「非認知能力」

さて、表に戻ると、まず左下の「基盤となる認知能力」。これはもうAI以前にかなり代替が進んでいます。AIで代替が進み始めているのが、左上の「中核となる認知能力」。考える認知能力のところ。この代替が進んできており、これからもすごく進むと思います。

一方で、右下の「基盤となる非認知能力」。これはどこまでいってもAIは代替できない人間独自の能力だと思います。そして、右上の「中核となる非認知能力」。これも実はAIが代替しにくい能力です。つまり、認知能力のほうは代替できるんだけれども、非認知能力のほうはなかなか代替しにくい。今日は、こういうお話をしていこうと思います。

なんでもかんでもAIができるわけじゃない。「特定のAIの能力があまりにも高いから、なんでもできるんじゃない?」と思っちゃうけど、実はできないよねと。

それを全部(AIに)任せちゃうと、こんなふうになるよね。「全部任せちゃおう」みたいな感じでAIに依存すると、こういうふうに表情も乏しくなってしまう。これは「Gemini」が作ってくれたやつですけれども。

こういうふうになるのは実験でもわかっている。中国で行われた3,500人を対象にした大規模な実験では、AIにいろいろ要約とか得意なところを任せたら、作業のスピードが30パーセントもアップしたんだけど、その後「AIなしで自分でやって」と言われたら、すごくやる気がなくなってしまったんです。AIに一時的に任せていたのは良かったんだけど、それが人間のやる気を失わせてしまった。

AI活用の代償

それから、これはクリエイティブ分野で、5.3万人を対象にした研究ですけど、AIに任せるとクリエイターの投稿数はすごく増えて評価も高まったんだけども、時が経つにつれて、似たような感じの作品ばっかりになってしまった。こういうふうに「AIを使うと楽になるから、もうなんでも任せちゃえ」みたいな感覚になっちゃうんですよね。そうすると、人間が本来持っていた内発的動機とか創造性を失ってしまうことがわかっているんです。

でも、この研究で大切なのはここからです。すべての人間がそうかというとそうじゃない。もともと独自性のある表現。つまりさっきの図でいくと、非認知能力が高くて、仕事そのものに積極的に向き合っていた一部のクリエイターは、実際にさらに新しいもの、もっといいものを作りたいという感覚でAIを使っていたんですね。

彼らはAIに任せて答えを出すというよりも、AIと一緒にいろんな試作やチャレンジをして、その中から価値あるものを見つけ出す。そのための参謀としてAIを使っていたということがわかっています。

死活的に重要なのは、これだと思いますね。AIには代替できないもの。基盤としての非認知能力。これを失ってしまうと、AIに依存した人になっちゃう。でも、この基盤となる非認知能力が高まると、人間が価値創造の主導権を握ることになって、人とAIの強みを活かしたコラボができるようになるということです。

「社会人としての基礎力」とは

そうすると、こんな感じになりますね。非認知能力が高くて、AIとパートナーのようにコラボレーションできる人。自分が価値創造のリードをしながらAIと共創できる人のことを、今日は「AIと共鳴できる人」という表現をしたいと思います。

ちょっと深くなっちゃうのでさらっといきますけれども、「基盤となる非認知能力」は4つの分野に分かれると考えてます。「自分」に向けたものと「他者」に向けたもの。「認識と「行動」とわけて、四象限で捉えます。

まずは自分と向き合う力です。自分の内面をメタ認知して、「自分は今こういう状況だな」ということがわかるような力。それから、今度は他者のことを理解できるような力ですね。(他者も)人生の主人公で生きる人間として見て、他者の視点から世界を見られるような力です。

それから、実際の行動になってくると、自己実現に向かう力。それから、他者との問題を解決して、どんどん価値を生み出していくような力ですね。こういう力が、社会人としての基礎力となるものです。

この「基盤となる非認知能力」を体得していろんな経験を乗り越えていくと、この「中核となる非認知能力」ができてくる。この能力も、AIが代替することは非常に難しい。

まずは主体的になって、その上でこの4つの非認知能力を付けましょうよというのが後半のテーマの1つなんです。いろいろ調べて、4つあることがだいぶわかりました。

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