【3行要約】 ・サイバーエージェント AIドリブン推進室室長の峰岸啓人氏が「技育祭2025【秋】」に登壇し、同社が取り組んでいる施策について紹介しました。
・2023年には全社員向けAIリスキリングを実施し、役員も含めた6,247名が合格するなど、組織全体でAI活用を推進しています。
・ AIドリブン推進室の設立など、単なる研修を超えた取り組みで、エンジニアとAIが協働する革新的な開発組織への変革を目指しています。
前回の記事はこちら 技術カンファレンスなど多彩な社内イベントを開催
峰岸啓人氏:(サイバーエージェントの人材育成施策の話を受けて)このような機会提供をたくさん設けているのですが、世の中の流れや社内の変化に合わせてアップデートしています。
(スライドを示して)CA BASE CAMPは社内限定の技術カンファレンスです。CADCとあるのは、社外向けのカンファレンスです。AI Fesは、AIに特化した学会のようなもので、各事業部や部署でポスターを貼り、いろいろなノウハウを共有したりする機会です。
(スライドを示して)「M」と書いてあるのは「M-Power」という、マネジメントの育成機会というところで、マネジメントのノウハウなどを総合職、エンジニアクリエイター職の関係なく学んで実践する場になっています。
右側の四つは少し変わったというか、特殊な取り組みです。左下に「ca(か)ぞくの日」と書いてありますが、「か」が「ca」になっています。サイバーエージェントはよく名前をつける時にこの「ca」を使いたがるんですけれども、家族の「か」を「ca」にして「ca(か)ぞくの日」としています。
これが何かというと、 小学生のお子さまがいるパパママ社員を対象に、みんなでサイバーエージェントの会社に来てもらおうというものです。会社でパパとママがどういうことをやっているかを知ってもらう体験型のブースなどを用意しました。
私の妻はサイバーエージェントの社員ではないですし、子どもはまだ1歳なのですが、仮にこれに参加したとしたら、「サイバーっていい会社だね」と家族からも応援されるような機会になったと思います。
AIドリブンな組織を目指す
このような育成カルチャーや機会提供をずっと続けてきて、会社もありがたいことにどんどん成長しています。先ほど1998年設立と言いましたが、創業来27期、増収を継続していて右肩上がりです。左側が24年度の決算で、まだ25年度は締まっていないので見通しになっていますが、今のところ順調に伸びています。

(ここまで)サイバーエージェントのカルチャーみたいな話をしましたが、今回の本軸である「AIドリブンな組織を目指す」というところをお話ししていきたいと思います。
今言った育成カルチャーや機会提供は、めちゃくちゃ大事だと思っています。しかし、このAI時代においては、機会提供を今まで通りにやっていたらたぶんダメで、会社として本気でAIに向き合っているかどうかが大事だと思っているんです。
私も15、6年前に就活をしていましたが、最後はサイバーエージェントか楽天かで迷っていたんですね。楽天とか言ってしまって大丈夫ですよね。はい。どこの会社に行くか、最後は悩むじゃないですか。その時に私が何で決めたかというと、自分の力では変えようがないことが秀でている会社に行こうと思ったんです。
みんな会社に入って成長したりといろいろあると思いますが、成長はある程度、自分の努力で何とかできる部分もあります。私がサイバーと楽天で悩んだ時、やはりサイバーの面接を通じて一番気楽に、自然体でいられたんですよ。なので、会社で働く人や文化は大事だなと思いました。そこは自分が入っても変えられないところだからと思ってサイバーに入社し、もう気づいたら14年目です。
賞金1,000万円の社内コンテストを開催
楽しく働かせてもらっているんですけれども、要は「会社として本気でAIに向き合っているか」という点です。みなさんが入った会社で「AIに本気で向き合ってください」と言われても、さすがに難しいじゃないですか。
なので、育成カルチャーや機会提供は大事ですし、会社として本気でAIに向き合っているというところは、めちゃくちゃ大事なんじゃないかなというお話です。
それを踏まえてサイバーの話をさせてもらいますが、2023年、2年前の話です。ChatGPTなどがぐわーっと来ていた時に、もう取り急ぎ「早く早く、どんどんAIに参入していくぞ」というところで、いろいろな企画を行いました。
AIのガイドラインを策定したり、生成AIの活用アイデアを募る社内コンテストを実施したりしました。これを見てください。小さいですけど「賞金1,000万円」と書いてあります。優勝者には1,000万円を与えるぐらい本気で会社として取り組んでいました。あとは「AIオペレーション室」という新しい部署を立ち上げました。
そして2023年11月、「リテラシー向上」と赤枠で囲っていますが、すべての社員向けの生成AIリスキリングを実施しました。ここで私のプロフィールに戻ります。(2021年に)「リスキリングセンター立ち上げ」とありますが、これはAIの流れが来る前から立ち上げていたプロジェクト組織です。ここでやったことが、2023年12月の「For Everyone」というリスキリングと、1月からやっている「For Developers」になっています。
役員含む全社員にEラーニングを義務化
この会社の取り組みについてお話しします。そもそも、このリスキリングをなぜ行うかというところですが、サイバーエージェントには「あした会議」と呼ばれる経営会議があります。これは社長を除いた役員がリーダーとなって、活躍しているメンバーをドラフトして5、6人のチームを作ります。
サイバーエージェントの「あした」、要は未来を考えて事業提案や制度提案、課題解決などを2週間かけてブラッシュアップして、最後に社長へ提案します。そして決議されたら実行までやっていくのが「あした会議」です。
そのエンジニア版とクリエイター版のあした会議が「CA BASE SUMMIT」というものなんですけれども、この大きい写真で立っているのが私です。この時に提案した案で最高得点を取ったのが、生成AIのリスキリングで、「やろう」ということになりました。

ここで6,247名が合格した「For Everyone」は、社員全員に「受けましょう」というものでした。まずはAIが出始めなので、法務的なところやセキュリティ的なところからという、けっこうベース的な話をしました。
動画のコンテンツは、社内ポータルサイトへ展開しました。ここに映っている人は社員です。動画の制作は外注しましたが、中身のコンテンツは社内の有識者を募って作りました。ホームセキュリティやAI周りなどの有識者が、自分たちで講義をする内容です。

それをミニテストやまとめテストの形式にして、Eラーニングシステムで展開し、全員必修で受けてください、と。これのポイントは、本当に会社として本気で取り組むというところで、CA BASE SUMMITの決議の時に、ここを握ることが絶対的なポイントでした。
これはエンジニアだけではありません。総合職もクリエイターもです。なんなら役員も全員受けてくださいというのを握って、藤田社長がOKと言ったので実行したのです。しっかりと各管轄で「どこまでまとめテストに合格していますか?」というのを追いかけたりしました。
この右側にあるのは全部、うちの役員と執行役員の顔なのですが、この花丸がつくまで「ちゃんと受けてください」と、役員会の資料に毎週差し込むんですよ。これ、最終的に全員受けてもらったので花丸がついてますけど、ついていない時とかは「お前、まだやってないの?」みたいなのを役員会で言い合って、全社員7,000名弱が受けきったというところになっています。
エンジニアとAIエージェントが協働する組織へ
あとは「for Developers」で言うと、これはエンジニア向けで、ちょっとレベルが上がったカリキュラムになるんですが、Eラーニングと開発演習をやりました。Eラーニングはそのまんまですけれども、実際に開発演習はチームを組んでAI機能のテーマを与えられて、それを実装して、実際に手を動かすところまでやって全体発表を行いました。

こういうリスキリングも行ったんですけれども、さらに、私は2016年からなので2018年新卒からずっとエンジニアの採用に携わってきましたが、先ほどのCA BASE SUMMITでAIドリブン推進室を設立することになり、新しいミッションをやることになりました。8月からで、ホヤホヤです。
これはミッションとして、「エンジニアとAIエージェントが協働する革新的な開発組織」を掲げています。最初の導入で「今後のAIの変化はすごいよね」という話をさせてもらいましたが、会社としても、しっかりと向き合う専門の組織を作ったということです。
「エンジニアとAIエージェントが協働し、革新的な開発組織へアップデートすると同時に、次のAI時代でも活躍できるエンジニアへの変革を支援する」というミッションで立ち上げています。
これが設立されたのが、先ほど言った技術者版あした会議であるCA BASE SUMMITの、忘れもしない7月18日金曜日です。実は私はこの会議にメンバーとしては参加していなかったんですけれども、当日の朝の9時半に他のチームのメンバーにと呼ばれて、「ちょっと、みね。新しい組織を立ち上げよう。みねを責任者として提案するわ」と。
僕は一言。「はい、お願いします」と。それだけで提案して。やはり今回のCA BASE SUMMITはAIの案がめちゃくちゃ多かったんですよ。確か14案ぐらい決議されたんですけど、そのうちの半分の7案ぐらいがAI周りでした。その7案全部をやる組織として「AIドリブン推進室」を立ち上げ、峰岸を責任者にする、という会社としての意思決定がなされました。
ということが行われて、今はこういうキャリアになっています。AIドリブン推進室のやっていくこととしては、AI時代における育成と機会提供になっています。