【3行要約】
・スタートアップスタジオ「Musashino Valley」にて、佐藤勝彦氏の著書
『AI独学大全』SBクリエイティブ)の出版記念イベントが開催されました。
・AIが思考の壁打ち相手になる時代、単なる省力化ツールとしてではなく創造の共同作業者として活用できるかが問われています。
・佐藤勝彦氏は「AIファーストで仕事をしても楽になるわけではなく、本質的な思考に時間を使えるようになる」という視点を提示しました。
佐藤勝彦と伊藤羊一が特別対談
伊藤羊一氏(以下、伊藤):これ、テーマは決まっているんでしたっけ?
佐藤勝彦氏(以下、佐藤):「AIは思考の最高の壁打ち相手となりますか?」っていう話。
伊藤:OK、わかりました。ちょっと佐藤さんに論戦を挑みたいなと。
佐藤:はい。僕は今日、覚悟を決めてまいりました。
伊藤:僕、ピラミッドストラクチャーをグロービス(オリジナルMBAプログラム)で、38歳ぐらいの時に学んだんですよ。「これ、すげぇ! みんな早く言ってよ」って思って。それまでは頭の中が、もうウニみたいだったんですよ。
佐藤:(笑)。
伊藤:その後にどうしたかっていうと、3、4年、ひたすらピラミッドストラクチャーを作り続けた。そうすると、ピラミッドストラクチャーがものの5分とかで作れるようになるわけです。それはある意味、仕事力なんですよ。
企画とかも、ラフなたたき台は5、6分で作れちゃうから、ババババババッて会議の中でやって、「こういうことがあって、こういうことがあって、つまり、早くて安くてうまいから、吉野家は最高なんですよ」みたいなことがパッと言えるようなった。それはけっこう、仕事力と直結すると思っていて。
佐藤:そうですね、はい。
伊藤:その力って、やはり自分で考える訓練をしないと鍛えられない。でも、ChatGPTとかと話していると、いきなりすごいものが出来上がるじゃないですか。
佐藤:一発でできます。
伊藤:そう。ビジネス的には「それ、どうなの?」と。つまり、鍛えられていない人でも、答えめいたものがすごく出せるじゃないですか。そのことについては、佐藤さんってどう思われているんですか?
佐藤:ありがとうございます。絶対にそう来ると思っていたので、もうAIと乱打戦をやってきました。
伊藤:おぉ。
AIファーストでも楽をしているわけじゃない
佐藤:主軸としては3つぐらいあるんですけど。1つ目は、「まずAIファーストでいいんじゃない?」っていうところ。
今までの僕の人生を踏まえたら、1週間タコ部屋に詰められて研修の資料を作っていました。例えば「企画提案書を作る」(という場合)でも、けっこうな妥協を持って土日も返上して、翌週の商談に挑むことがありました。
これが今じゃ、30分ぐらいでできて、1週間を煮詰める時間に使えるようになった。僕が申し上げたいのは、AIファーストになったからといって楽しているものはぜんぜんなくて。
もともと要らない作業に1週間かかっていたのを30分で仕上げて、煮詰めたいところの時間を、余裕を持って取れるようになったという構造変化が僕に起こっていることは、声を大にして言いたいです。
伊藤:でもそれって、佐藤さんにそういう素養が元からあるからじゃない?
佐藤:というところが2個目に言いたいところで。
伊藤:おぉ、なんだか仕込んでいるみたい(笑)。
(会場笑)
AIに個の変数=バイブスを注入する
佐藤:とある人に、「それ、素養ですよね?」って言ったら、「センスじゃない?」って言葉が返ってきて、それも確かに一理あるなと。
センス、素養。そういった人としての軸ができているか、できていないかによって、当然扱い方が変わります。素養がない人だったら、30分で「ヤベェ、楽できた。1週間遊ぼう」となるだけなんです。
世の中の全員がそうなのかっていったら、そんなに捨てたもんじゃないはずだと性善説で考えております。性悪説で考えるかどうかは人それぞれだと思うので。
伊藤:それ、性悪説で考えると何がどうなるんですか?
佐藤:そこの部分で楽しないように、僕の伝達の仕方も「30分でできますよ」ではなくなりますね。3つ目です。さっきも少し触れたんですけど、(AIに)むちゃくちゃ変数を入れてください。
要はAIが知らなそうなことを入れてください。僕は講義の中で、ぱっと見て「この人、ヤバそうだな」と思う人には、「足りないです。AIの知らないあなたを語り尽くしてください。もっと自分の生きてきた志、思い、情念。バイブスが足りていないんです。(AIと)シンクロしていません」って言うんです。
僕はこれを最近「バイブス」っていう一言でまとめています。そうすると、やはり(バイブスを)持っている人のほうが多いんです。
自分の生きてきた証しをログしているのか
伊藤:それは自分自身のこと?
佐藤:自分自身のことや生きざま。僕の講座を受けて、「俺も本を書きたい」みたいな人もいるんですけど、そういう人って人生談を語らせてもあまりおもしろくなかったりするんですよね。そこに絶対的な差は生まれます。
さっきも羊一さんが連呼していましたけど、自分の生きてきた証しをちゃんとドキュメントとして残しているか、残していないか。僕は一言(で言えば)、これが素養だと思いますね。
伊藤:それは超大事だよね。
佐藤:はい。なのでこの3つがそろえば、別にAIファーストにやっても問題がないと思う。僕の主張でございます。
伊藤:違う気がする。
佐藤:違う気がする?