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『AI独学 超大全』出版記念!伊藤羊一 × 佐藤勝彦 特別対談(全4記事)

AIで“答えめいたもの”が出せるのは良いことか? 佐藤勝彦氏・伊藤羊一氏が語るAIを活用できる人の条件 [2/2]

熱量をどう鍛えるのか

伊藤:あのね、僕は昔から佐藤さんのことを存じ上げているわけですよ。ガジェットをね……。

佐藤:かばんに詰めて、売り歩いていました。

伊藤:そう。ガジェットの魅力を語りまくるわけですよ。その感じは今も変わらないんですよ。だから、AIの魅力を語りまくるわけ。つまり、生成AIが出てくる前から、佐藤さんにはそこの力があった。

佐藤:ベースとしてね。

伊藤:それは普通の人にはできない。僕にもできない。「そのバッテリーの何がすごいんだっけ?」みたいな(ことを聞かれたら)、僕なんかは「うーん、わりと軽いよね」ぐらいにしか思わないのを、もう「このバッテリーが!」みたいな感じでね。

佐藤:製作者の思いを語るみたいな?

伊藤:そうそう、その熱があるから、生成AIについても、「このGoogleスプレッドシートがね」って語るわけですよ。

佐藤:そこで、3つ目のバイブスじゃないですか。自分のフツフツと湧く思いの強さみたいなことがあれば……。

伊藤:そうそう。だから、思いの強さをどうやって鍛えてきたかっていう話なの。

佐藤:そこ? なるほど。

自分の中に“渇き”があるか

伊藤:つまりね、僕は今でこそ、なんだか主張があって「俺はこんなことを考えている」って言っている風ですよ。でも、昔はそんなことまったくなくて、「何を考えているかわかりません」「上司にめっちゃ怒られます」みたいな。

佐藤:そんな時代があったんですか(笑)。

伊藤:本当。それで俺、26歳の時にメンタルやられちゃったもん。日本興業銀行っていうところにいたんですよ。もうさ、「お前、本当にいる意味あるのか?」とかってね。もう、みんなめっちゃ怖いんですよ。東大とか京大とか一橋とかの人ばっかりで、なんかもう「怖っ!」みたいな感じで。

だから、「考えてこい」って言われるわけですよ。何をするかわからなかったけど、でも「うーっ!」となって、結局は何も出てこないんですよ。で、怒られる。

グロービスに行って初めて「考えるってこういうことか」って学んだわけですよ。それがなんで僕の学びになったのかっていうと、もうめちゃめちゃに苦労したわけです。

三日三晩考えて、(取引先の)会社が潰れそうなのをどうやって本部に説明するかとか。もう土日でも先輩に電話して、「どういうふうに書いたらいいですか?」みたいな。それでも、「お前が自分で考えろ」って言われて。

こういう苦行をしろとは言わないけど、そういうことがあったから、やはり喉が渇いていて、グロービスの模擬授業に行ったんですよ。しょせん30分の授業ですよ。でも、ChatGPTに出会ったかのごとく、ウルトラ、ヤバかったんですよ。「考えるってこういうことか!」ってなったのは、渇いていたから。

仕事で“マジで泣いた”経験

伊藤:だから、佐藤さんも生成AIに出会って、「これか!」ってなったのはなんでかっていうと、たぶん渇いていたからだし、バイブスがあったからですよね。それを持たないでいきなりその世界に突入したら……。

佐藤:あぁ、そこは一緒です。

伊藤:でしょ?

佐藤:ただし、人は変われる、育成できる。そこは後発的にも鍛えることができると僕は思っています。羊一さんからも「結局、育成の20年選手だから、脈々とその血がある。その素養がちゃんと磨かれているところに佐藤さんの絶対的なベースがある」っていう話はよく言われます。

じゃあ、それがみなさんにないかっていったら、社会に出ている以上、何かしらそういうところは当然あると思います。

伊藤:そう。いや、だからね、2種類あって。AIファーストでいっていい方は、仕事をやって、もうマジで泣いたことが何度もある。

佐藤:条件ね(笑)。

伊藤:「俺にこういうものがあったら最高なのにな」とか、めっちゃ怒られたとか、めっちゃうまくいったとか。自分が「こういうことをやりてぇんだ」っていうのを曲がりなりにも、苦しみながらやってきたとか。「あの時はうまくいかなかった」っていう方は、もう、なんというか、(AIに)溺れてください。

佐藤:(笑)。

AI活用に必要な、思考を磨き上げるスキル

伊藤:今までの苦労が氷解します。

佐藤:鍛錬ができる本。

伊藤:渇いているから。もう苦しんでいるから。でも、そうじゃない状態の人は、やはり……。

佐藤:もっと考える?

伊藤:とか。じゃあ、「NotebookLM」にいろんなものをボコボコ投げ込むわけですよ。でも、本当はいい情報と悪い情報ってあるじゃないですか?

佐藤:そう。僕は純米大吟醸って言っているんですけど(笑)、磨き上げる。

伊藤:そうでしょう。でも、AIだとわりと、ぶっ込んじゃえばいいじゃないですか。ソーシングっていうか、そこの力がない人は鍛えておいたほうがいいと思いますね。

佐藤:でも、それはすごくいいテーマですね。僕は今、10人、20人の講座を受け持っているんですけど、ベースの能力として、(思考を)磨き続ける人。けっこう職人気質の人のほうが向いているかなと思っているんです。

これ、営業なのか、事務職なのか、クリエイティブ部門の方なのかっていうのはわからないですよ。磨き続けられる人の特徴って、何か職種、役職、ないしは、生きてきた年輪で向いているっていうのはあるんですか?(磨くスキルが)ない人が考えるきっかけになる、何をすればいいかのところ。

未知の世界に飛び込む行動力が重要

伊藤:それはいろいろあると思うんですけど、例えば、これをやるためにはやらなきゃいけないっていう夢が生まれたみたいな。

佐藤:強烈な何か?

伊藤:そう。強烈な何かができた人は、もう四の五の言わずにやるじゃないですか。あとそういうのがなくても、例えば自然と練習ノートみたいなのをつけているような、学んだことを振り返っている人。無意識のうちに振り返りができる人は、「この回転をこんなふうにやってみたらどう?」って、チョチョチョってやると、もうシューッとなるっていうね。そのどっちかじゃないですかね。

佐藤:けっこう前者のエピソードって、羊一さんの本でも僕の本を読んでいても、最初に出てくるんですけど。僕の場合は、羊一さんと出会うちょっと前の2、30代前半の頃に、同じ共通の知人で八子(知礼)さんっていう強烈なコンサルタントと出会うんですよ。

僕は中小企業の出なもんですから、何億円を片手でやるシニアコンサルタントの仕事なんて目の前で見たことがなかったんですよね。幸い、一部上場の大手通信会社に出向でお話をさせていただく機会があって、そこで8年ぐらい畑を耕していたんですけど。

コンサルタントの、もう一瞬にして僕の提案書とか企画書にロジカルな赤入れをしてくるさまに、「世の中は広過ぎてヤバい。中小企業の端くれでいたら、僕は沈没して終わってしまう」と、強烈な劣等感に見舞わされたんですよ。

それで、八子さんが「コミュニティを作るからユーも来なよ」っていうことで(笑)、行ってみたら、もう世界が全部違っていた。

そういう畑の違うところに自分から飛び乗っていかないと見える世界線も変わらないし、強烈な体験も得られないのかなと思いました。

AIスキルの前に、初期衝動があるのか

伊藤:いや、そうだと思いますよ。ただそれってね、別にAIは……。

佐藤:関係ない。関係ないです。

伊藤:関係ないんです。だから僕らは、AIというとんでもないものが出てきて、「ヤベェ」とか言って。

佐藤:「ヤベェ」と。脊髄反射ですね。

伊藤:サム・アルトマンが2025年の春かちょっと前に、深夜に毎日アップデートしている時があったじゃないですか。

佐藤:今も毎日ですよ。

伊藤:今もですか?

佐藤:深夜2時に発表会ですよ。昨日だって深夜2時でしたからね。

伊藤:あれでもう、付いていくのが大変になって、「じゃあ、何かあったら佐藤さんに聞こう」という感じで僕は努力を諦めているんですけど。

佐藤:(笑)。

伊藤:みなさん方は、それに付いてくるのってけっこう大変だと思うんですよね。

佐藤:もう狂気ですよね。

“やりたいことファースト”でAIを活用する

伊藤:そこでちょっと考えたほうがいいのは、バイブスとか夢とか成し遂げたいことが先なのか、AIが先なのかっていうこと。

僕らはつい、今の事務処理とか、議事録を楽にしようとか。LINEヤフーの社員とか、みんなマジでAIの勉強とかしている。「そんなのできないのに、もう毎日やっているでしょう」とか、いまだにみなさん言っているわけですよ。それ、つらいよなと思うんだけど。

僕はやりたいことファーストで、「その道具としてのAIだ」っていう意識をちゃんと持ったほうがいいと思うんです。僕で言うと、学校の授業とか、けっこうAIと話しながら作っているんですよ。AIがなかったら、もうたぶん無理なんですよ。

佐藤:回せないですよね。

伊藤:一方で、レポートの採点はまだ、ちょっと信頼が置けないんですよ。なので、そこはまだら模様になるけど、やりたいことに対してAIを使うということ。佐藤さんがAIの使い手なのは、前提としてのやりたいこととかバイブスがあるからであったり、基本的な考える力なりがあるからであり。

そこは別に、「そこからやりなさい。AIはその後です」じゃなくて、AIができなかったら何もできないじゃなくて、まずやりたいことをやる。その手段がAIだっていう順番があると思っておいたほうがいい。

佐藤:それは確かに。


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