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『AI独学 超大全』出版記念セミナー(全4記事)

考えを整理する時は「結論・根拠・例えば」を立てる 伊藤羊一氏が語る“結論を出せる人”の思考法 [2/2]

あえて“思考が戻れない”ようにする

「紙に書く」というのは戻れるんですよ。戻れるから、書いたり消したりしながら、「うーん、永遠にまとまらねぇ」みたいな感じになるんです。

そうじゃなくて、口頭で話をする。ChatGPTにバンと打ち込むと、一度言ったらもう戻れないんですよ。だからそういうかたちで口に出してかたちにするといいと思うわけです。

これがモヤモヤである限りは、もう全部(まとまらないん)ですよ。だけど口に出すと、ひとまず思考がまとまる。それを繰り返しやっていくと、だんだん「自分が考えていることはこういうことか」と思考がまとまってきます。口に出してみるといいんですね。

書いたり、壁打ちしたり、とにかく「こういうことか」っていう。だから佐藤さんが「ChatGPTや生成AIに話をする時には口に出すといいよ」と言っていたのは、そのとおりだと思っています。

つまり、こうやって「書いて、構造化して、ぶっ込む」ではありません。「私はこう思うんですよね。こうなんですよね。結論はこうなんですよね。これをこんな感じでやってほしいんですよね」と口に出すことによって、自分が考えていることがパンパンとまとまっていくんです。

それをChatGPTに持ってくるかたちでやるのがいいんじゃないかなと思います。そうやって口に出しながら思考をどんどん構造化していくといいんです。

壁打ちと1on1は「違いがある風」?

(では、壁打ちと)雑談の違いとは何か。雑談に目的はないわけですね。そりゃそうですね。「今日は暑いね」とか「いや、急に寒くなっちゃったね」とか「そうだね」とか「気分はどう?」とか「普通」とか言っても、これに結論はないわけですよ。

(壁打ちは)そうじゃなくて、(スライドを示して)こっちが壁打ちをする側で、こっちがされる側だとしたら、こうやって行ったり来たり、やり取りをしながら結論に向かって登っていくということかなと思うわけですね。

(次に、壁打ちと)1on1の違いです。本を書く時に「1on1との違いって何ですか?」と言われたので、一応「1on1との違いは『違いがある風』です」みたいな感じでちょっと書いているだけです。基本的には1on1も壁打ちもあんまり変わらないですよね。

強いて言えば、1on1はキャリアとか悩みとか事業とかについて話をするんだけど、壁打ちは何でもいいんですよ。例えば、「今ちょっと自分のモヤモヤを解決したい」とか「ここから1年、何をやるか決めたい」という、何でもいいから話をするのが壁打ちかなと。これはあんまり(明確な違いがあるわけではなく、結局は)同じということですね。著者が嘘を書いたみたいな感じです。

(会場笑)

「1on1との違いは何ですか?」って言われて、最初は「同じです」と言っていたんだけど、「言葉が違うから、違うでしょう」ということでちょっと書いてみた。そんな感じですね。

壁打ちは投げかける側が主役

(次に、壁打ちと)ブレスト(ブレインストーミング)の違いです。これは明確に違っています。ブレストと壁打ちは行為としては同じなんだけど、ブレストは3人なら3人で同じ目的に向かっていくわけですよ。これがブレストなんです。

けれども、壁打ちっていうのは(スライドを示して)こっちの人だけがその感覚で目的に向かっていきます。こっちは壁なので、「この人のためのブレスト」みたいな感じだと思います。「こっちの人は壁になってください」という感じかな。そんなことをダラダラと話しながら目的に向かっていくのが壁打ちかなと思います。

いずれにせよ、「考える」とはどういうことかというと、「結論を出す」ということなんですよね。だから結局、ChatGPTと会話するのも結論を出したいから、みんな(言葉を)投げるわけですよね。

「結論を出す」とはどういうことかというと、「結論」と「根拠」と「例えば」で構造化して、「要するに結論はこうだよね」みたいなことを出すのが「考える」ということですよね。

その時に、さっき佐藤さんの話にも出てきましたけど、僕らは具体の世界を生きているわけですよ。「今日、私は三鷹にいる」「今日、私は過激派のアジトみたいなMusashino Valleyなる場所にいる」。

(会場笑)

「今日、私はトイレに行くのに迷った」みたいなね。「今日、なぜか佐藤さんの話の後に、Oasisのジャージを着た伊藤なる人物がしゃべっているのを聴いている」とかね。

そういう具体の積み重ねで人生はできているわけですよ。それだけだと意味がないわけですよ。今の話だけを聞いても、「つまり今日はイベントに出ているのね」ぐらいなことしかないわけなんです。

けれどもそれを、いろんな具体を削除したり、「これとこれは共通項がありそうだな」とまとめたりしながら抽象化していく。抽象化とは共通項を探すことですね。そうしながらこういうことを構造化していきます。そんなことかなと思う次第ですね。

考える上での3つの問い

(スライドを示して)これはちょっと壁打ちとは違うかもしれないですけど、僕は常に(物事を)考える上で「3つの問い」というのを自分に課しているわけですよ。

それは何かっていうと、「WHY?」、「なぜ?」というものと、「SO WHAT?」、「それで?」というものと、「TRUE?」、「本当に?」というものです。壁打ちをしている時も、別にしていない時も、何かを考える時には常にこの3つの問いを自分に出しています。

「WHY?」とは何かというと、抽象度(が高いところから具体に行く時に使う問いです)。「今日、ウザい」みたいな具体に対して、「なぜ? 物を食い過ぎちゃったかな?」と「WHY?」で聞くわけですよ。だから抽象度が高いところから具体に行く時には「WHY?」という(問いを出します)。

「こういう具体があった」「こういう具体があった」「こういう具体があった」と具体だけを出すと、何も思考がまとまらないわけですよ。それを構造化する時には「SO WHAT?」、「それで?」と考えるわけですね。

だから、具体と抽象を行ったり来たりしている時には、僕は常に自分で「WHY?」「SO WHAT?」と言いながらここを考えています。

AIだけではなく、人とも壁打ちをする

「TRUE?」というのは、そもそも具体と根拠と結論を出す時に、いったんこうやってまとめてみると「うーん、なんか違うな。そもそもこれでいいんだっけ?」と思ったりするので、「そもそもこれでいいのか?」っていう問いも出すということです。それを「TRUE?」と言っています。ということで、壁打ちする時に限らず、考える時にはこんなことを考えてみてくださいねということですね。

いずれにせよ壁打ちというのは、自分の頭の中でモヤモヤ、グジャグジャしたノイズみたいなものがいっぱいある時に、人やChatGPTと話しながら、それを構造化していくプロセスなんですね。そうやって企画や原稿などで自分の主張をまとめていくんですよね。

要するに、自分1人で悩まずに人と話しながら思考をまとめてゴールに向かっていこうとする時に、壁打ちというのは素敵な手段となります。それをChatGPTとかでもやってみてください。でも、ChatGPTとだけじゃなくて、人とも壁打ちしながら自分の思考を進めていってください。これが『壁打ちは最強の思考術である』の内容でございます。

これは増刷したんですけど1回で終わっていまして、あんまり売れていないんです。でも、それはなんでかというと、これはマジで感じるところなんですけど、内容がイケていないんじゃないんです。

壁打ち文化がない会社は意外と多い

こういうところにいらっしゃる方は日常的に壁打ちをやられており、身近な方が多いと思います。(世間の)みなさんの中でも壁打ちが身近であればいいんですけど、いろいろ話を聞いてみますと、「そもそも壁打ちみたいなことはやらず、自分で考えてしまう」と。

(会社の人に「壁打ちをしませんか?」と)聞くと、「そんなもん、自分で考えろ」って言われるとか。それから、もう自分たちが個人商店みたいなものだから、あんまり人に相談する文化がないという会社が恐ろしく多いんですよ。だから、まだ壁打ちというのがあんまり身近なものじゃないので売れないのかなって勝手に想像しています。

そうかどうかは知らんけど、この本は読んでも読まなくてもいいし、図書館で読んでいただいてもいいので、なんせ、ぜひ壁打ちをして(ください)。

あと、石川明さんという方が『すごい壁打ち』っていう本を書いています。それでもいいので読んでいただいて、「ダラダラやりながら思考を構造化していく」ということをやってみたらいかがでしょうか。

ということで、私からは以上でございます。ありがとうございました。

(会場拍手)



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