組織が社員に対してできる“AIへの関心の育て方”　「個人の在り方」を受け入れながら変化を促すアプローチ [1/2]

目標・方向性を決める時は「頭に残りやすくする」ことも大事

桐谷豪氏（以下、桐谷）：あと思ったのが、ちょっと文脈がズレるかもしれないですけど、先ほどのメッセージングの話で、「いついつまでに、この数字をやるぞ」って、すごくわかりやすいコンセプトを作るみたいなものとかもやっていらっしゃったじゃないですか。

ああいうのは僕もけっこう意識していたりするので。プロジェクトのネーミングの話とか、数字をボーンと言ってみるみたいな話とか。そういうのをきれいにやっている会社さんはめちゃくちゃやっているなという感じはするので。

AI導入という観点じゃないかもしれないですけど、ああいうのもけっこう意識していたり、コンセプトメイキングみたいなものとか、ネーミングみたいなものとかやったりするんですかね？

大野峻典氏（以下、大野）：うちは明確にそうしていますね。振り子で言うと、あえてわかりやすく頭に残りやすくするみたいなことが、目標とか方向性を決める時は大事だったりしますね。

桐谷：なるほど。

AIに興味がある人を採用することが今後より重要になる

桐谷：逆に僕らはAIそのものを事業に使っていくみたいなものとか、組織的にも「チームとして使っていきましょう」みたいなものとかをやるんですけど。

Algomaticさんは他の会社を支援する立場でもあると思うんですが、「このあたりが難しな」とか、逆にすごくAIオリエンテッドな組織にガラッと変わっていく会社とかって、どういう特徴があるのかみたいなものって、どうですか？

大野：僕的に方法はいくつかあると思っていて。まず、元も子もないですけど、最も根本的にというか根治療できる方法は採用。やはりAIを使う人は使うんですよ。興味がある人は興味がある。

桐谷：おっしゃるとおり（笑）。

大野：なので、採用というレバーが動かせるんだったら、これは大事だと思います。例えば新しい技術が出てきたら比較的若手の方がそういう技術をうまく使って、使いこなして深掘ってくれてみたいなのって、今までの歴史もずっとそうだったじゃないですか。

なので、年齢がどうかは置いておいたとしても、そういうものに興味のありそうな、好奇心旺盛な方に入っていただくことがこれまで以上に大事になるんだろうなと。

強制的に成功体験を積ませる方法もある

大野：もう1個は、強制的に成功体験を積ませるみたいなのもある気もしていて。

桐谷：ほう、おもしろいですね。

大野：『HUNTER×HUNTER』で、念能力を早く習得させるために、念能力者が普通の人に念を送り込むみたいなのって、知っていますか？

桐谷：わからない（笑）。

大野：わからないか。念というエネルギーみたいなものなんですけど、それを発揮している状態にすると、習得が早くなるみたいなやつがあって。『NARUTO』とかは読んでいますか？

桐谷：読んでいないです（笑）。漫画はダメかもしれない（笑）。

大野：『NARUTO』で言うチャクラみたいな感じなんですけど、そういうスーパーパワーみたいなものを送り込んじゃう。

桐谷：パワー、「気」みたいなやつですね（笑）。

大野：そうです。イメージ的に、まずは走っている自転車に乗せちゃうみたいな。「バランスの取り方、こんな感じか」みたいな。うまく操縦されている状態を強制的にそこにぶち込むというか。そういうのもある気もしますね。

もう少し一般常識的にわかりやすいところでいくと、人って変化するのが嫌じゃないですか。化学物質が活性化エネルギーを超えないと活性化しないというか、化学反応が起きないみたいなのと一緒で。でも1回そっちに行くと、逆に言うと戻りもしなくなりますね。

桐谷：なるほど。

大野：そっちのほうがいい状態だと知るので。なので、そのジャンプだけを強制的に体験させるというのは、僕はけっこうあるんじゃないかなという気もしていて。

これもすごく地味ですけど、そういうAIサービスを強制的に入れる。ハンズオンでもいいので、使える人が隣で1回使ってみる。「この業務だったらこれが使えます」みたいなのとかは、まあまあやりやすいんじゃないかなという気もします。

使ったことがないと永遠に広がらない

大野：ただ、うちはすごくAIネイティブというか。事業自体もそうだし、採用の時点でそういうのが好きな人ばかり集まっているので、新しく入ってきた方とか、キャッチアップするタイミングとかは、一緒に横で作業したりすることもあるっちゃあるんですよ。

そういうのを何回かやっていると、念を出す感覚がわかるようになるので。「こんな感じか」みたいな。経営トップの名言みたいな話よりも、すごくボトムアップっぽい、現場でできそうな話で言うと、そういうのもありますね。

桐谷：とりあえず、アポドリを使えと（笑）。

大野：はい。営業活動でアポドリを使ってみる。使ってみて、「アポドリって、こんなにいい提案をするんだ」みたいなのを見ると、僕もどんどん思い浮かぶようになるんですよ。「こうも使えるかもしれない」とか。

桐谷：そうですよね。

大野：「このサービスでも、この事業でも、アポドリを導入したらこういけるかもしれない」みたいな。別の視点が開けて、つながるんですよ。新しいヒントみたいなものが。

桐谷：わかります。

大野：そういう感覚もありますよね。もっとみなさんにわかりやすいように言うと、ChatGPTを使っているだけで、「こう使えるかも」みたいなものって広がりますよね。でも、使ったことがないと永遠に広がらないみたいな感じかもしれないですね。