【3行要約】・AIエージェント活用が注目される中、日本企業の導入率は20数パーセントと遅れが目立っています。
・ソフトバンクの孫正義氏は、社員1人に1,000本のAIエージェントを配置する「千手観音プロジェクト」を発表。
・月40円で24時間稼働するエージェントによる、生産性向上と業務自動化について語りました。
前回の記事はこちら 10億エージェントの実現に向けた3つの鍵
孫正義氏:昨日の夕方、ソフトバンクグループの幹部のみなさんといろいろな議論をしたんですね。進捗報告でしたが、10億いけそうです。うれしかったです。
みなさん、10億本のAIエージェントを作るって簡単じゃないですよ。我々最初は「社員1人あたり100本エージェントを持たそう」「作ろう」「自分の業務を分析させてそれぞれの社員に発案してもらって作ってもらおう」と言っていたんです。甘かったですね、甘かった。
社員に一人ひとりに「100本作ってください」「それでエージェントを作ろう」と(言っていました)。でもそうじゃないと。社員1人あたり1,000本だと。1,000本ぐらいはエージェントを作らないと。
人間って案外複雑な思考をやっていて、いろいろな判断をしていて、いろいろな交渉をしているので、社員1人あたりやっぱり1,000本ぐらいないといかんのじゃないかと。
技術部門が作るんじゃないです。一般社員も含めて1人あたり1,000本エージェントを年内に作ろうとしたら、大変なんですね。そこで3つの段階で、1,000本以上を達成しようと考えています。
1つは、エージェントOS。1,000本のエージェントが暴走してバラバラに動いたら、仕事になりません。
自分自身に部下が1,000人いて、新卒の社員にも1,000人部下がいると想像してください。これがバラバラに動くと、仕事はめちゃめちゃになります。オーケストレートして、共存・協調するかたちでないといけないんですね。ですからエージェント同士を連鎖させるOSが必要になります。
次に、このエージェントをどんどん作るための道具立てが必要になります。エージェントを作るための道具立てです。
3つ目は、エージェントが自らエージェントを作り出すことです。社員に「1人あたり1,000本作ってください」と言っても、先ほどお話ししたように、それは簡単なことではありません。そこで、エージェント自身が子エージェントを作り、その子が孫エージェントを、さらにその孫がひ孫エージェントを生み出していく、という仕組みを作ります。
会議や日常業務から自己進化するAIへ
そして、日常の中で我々の社員が会議に参加していたり、電話をしていたり、メールをしている状態を自動的にマルチモーダルで捉える。つまり、「耳と目で参加しながら」、その情報を取得していきます。その上で、社員が今、何をゴールとしているのか自動的に判断していきます。
例えば、プロジェクトではガントチャートを使いますよね。ガントチャートには、スケジュールとゴールがそれぞれ細かくずらっと記載されています。自分自身の進捗状況だけではなく、プロジェクトチーム全体の進捗を日々チェックしあう中でいっぱい出てくる問題を解決しなければいけません。
強化学習によりエージェントが自ら考え進化する
それを解決をするためにエージェントにReinforcement learningということで、強化学習を入れていくわけですね。エージェントの最先端の使い方は、この強化学習にあります。
エージェントがエージェントをプログラムするのではなく、エージェントが自らそのゴールに向かって、自らの思考体系を進化させていくわけです。この鍵になるのは報酬です。
ゴールの明確化と報酬の体系の明確化が強化学習の基本的な考え方です。エージェントが自ら考えるプロセスを進化させていくのですが、その強化学習のゴールと報酬をエージェントが自ら獲得します。
今まではゴールと報酬を人間が指示していたんですよ? そうじゃなくて社員が会議をしていたり、プロジェクト管理をしている様子をエージェントが横から覗きながら、自ら強化学習のゴールと報酬を設定して、その進捗をチェックします。
つまりエージェントが自ら自己増殖と自己進化をやっていくんです。これはもう私自身が特許を出したので、単なる真似はだめなんですけども。
……ということで、今それを全部門に広げようとしていて、10億エージェントはおそらく達成できるはずということで、それができた後にエージェント同士がどう作用するか、どう仕事を進化させるかということを楽しみにしています。