【3行要約】
・eスポーツがオリンピック競技化される中、日本市場の成長ポテンシャルを活かしきれていない現状があります。
・新聞配達で旅費を稼いで全国大会を制した中野氏ら4人の起業家が、32年間の業界変遷を踏まえて課題を議論。
・1兆円市場実現への課題と、プロ選手育成の新しいアプローチについて語りました。
eスポーツ業界の最前線を走るゲストの紹介
おりぴぴ氏(以下、おりぴぴ):こんにちは。初めまして。よろしくお願いします。本日モデレーターを務めさせていただきます、おりぴぴと申します。
本当はお呼ばれしてそのあたりの席でゆっくり座っていようと思ったら、諸事情により急遽モデレーターを務めることになりました。ちょっと緊張しているんですけども、みなさんとお話しできることをすごく楽しみにしているので、よろしくお願いします。
ではまず、「日本のeスポーツシーンが1兆円規模になるには」というテーマについてお話しいただくみなさんに自己紹介していただこうと思います。高島さん、よろしくお願いします。
高島稜氏(以下、高島):株式会社FENNELというeスポーツチームをやっております。本日はいろいろとお話しできればなと思っております。お願いします。
おりぴぴ:では、mittiiiさん、よろしくお願いします。
mittiii氏(以下、mittiii):現在、株式会社NERDERという会社でCEOをしています。(スライドに)mittiiiという名前について書いてあるんですけど、芸名みたいなものです。自分ももともとプロゲーマーとして活動していて、その芸名がmittiiiということで、mittiiiと名乗らせていただいています。本名は、浦東大路です。いろいろeスポーツのことを話せると思うので、本日はよろしくお願いします。
(会場拍手)
おりぴぴ:では最後、中野さん、よろしくお願いします。
中野サガット氏(以下、中野):はい。実は京都でスタートをしたのですが、REVOというeスポーツのチームを運営しています、中野サガットと申します。4時間前にこの話をいただきました。おりぴぴさんから電話がかかってきて「3時に京都に来れる?」ということで呼び出されて、今ここに座っています。よろしくお願いします。
(会場拍手)
おりぴぴ:はい。その呼び出しをしたおりぴぴです。私もeスポーツのイベント制作運営を行う、アテナ機関というところの代表を務めています。
「ESL FACEIT Group」というところに所属している時から、eスポーツの公式大会の運営などを務めてまいりました。今はどちらかというとコミュニティに根づいたイベントの制作・企画をしています。よろしくお願いいたします。
すごく遠いところから集まったメンツもいながら4人で話していくんですけれども、本日のテーマは「日本のeスポーツシーンが1兆円規模になるには 新世代のスターたちが形成する産業を知る」というところで、ゲーム・eスポーツというワードを、最近は聞いたことあるという方も多くいらっしゃるかなと思います。そのあたりについて深くお話を聞いていきたいなと思っています。
本日のディスカッションテーマは、日本とグローバルeスポーツ市場について。今と昔であったり、日本と世界の違いについて。そのあとeスポーツ市場をもっと大きくするためにどんなことをしていけばいいのかというところ。さらにその収益源を増やすには何が必要か。
いったんこういったディスカッションテーマを用意しているので、みなさんとお話ししていきたいと思います。
「eスポーツ」という言葉がない時代、全国制覇した中野氏
おりぴぴ:それではまず、日本とグローバルのeスポーツ市場について、日本と世界の違い、今と昔の違いについてです。それこそ中野さんは何年からですかね? まだeスポーツというワードが世に知られていなかったであろう時からeスポーツに関わっていらっしゃると思いますが、今と昔でどういった違いを感じられますか。
中野:今年(2025年)47歳になるんですけれども。今から32年前、1993年の『ストリートファイター』という格闘ゲームをみなさんご存じですか。それの『ストリートファイターIIターボ』というスーパーファミコンのこんなカセットの全国大会で優勝しました。これ、ちなみに名刺入れなんですけどね。
当時は、『ストリートファイター』というゲームが流行り出した頃で、日本一になったんですが、今みたいにeスポーツという言葉もなくてプロゲーマーという存在もなかったので、ただのゲームオタクという扱いでした。
昔は、ゲームセンターに人が集まってそこで対戦するという文化だったので、今みたいにオンラインでつながって、しゃべりながら一緒にゲームするという時代ではなかったですね。
新聞配達で旅費を捻出、中学生・中野氏の執念と情熱
中野:さっそく、その市場という部分について話したらいいんですか?
おりぴぴ:好きなことを話していただいて大丈夫です。
中野:好きなこと。ありがとうございます。
おりぴぴ:実はすごい経歴をお持ちの方なんですよ。なので、昔話から(笑)。
中野:昔話、ちょっとしちゃっていいですか?
おりぴぴ:はい! ぜひお願いします。
中野:中学生の頃『ストリートファイター』というものが世の中に出てきた時に、全国大会があるということが発表されました。発売してから40日後に全国大会の決勝があって、それまでに全国のおもちゃ屋さんとかで予選がありました。当時僕は福井県に住んでいて、14ヶ所の予選会場に行って全部優勝して荒らしていました。
東京の両国国技館で全国大会があったんですが、うちは両親が別居していて、私は4人兄弟の末っ子でめちゃくちゃ貧乏だったので、「国技館に行きたい」と母親に言うと、「そんな金あるか!」と「あほか!」と言われまして。ちょっと挫折しかけました。
どうやったら行けるかを考えました。中学生なんでアルバイトはできないんですが、新聞配達はなぜかできたんですよね。新聞配達所に行って「配達させてほしい」「アルバイトさせてほしい」と言ったら「明日から来い」って言われて。
朝早く起きて新聞配達を一生懸命やって、お金を貯めて、夜行バスで東京まで行ったら日本一になっちゃったという経歴が一応あります。
そんな当時からやっているんですけれども、再来年からはeスポーツがオリンピック競技に正式に決定ということで、おそらくまだ(eスポーツを)ご存じでない方も多いと思いますが、これからもっともっとeスポーツはメジャーになってくると思います。
オフライン練習場をもっと増やしたほうがいい
中野:(昔と今の)違いというと、やっぱり先ほど言ったように、今はオンラインが主流になっているんですが、昔はオフラインで、ゲーセンとかで会う人としか対戦ができませんでした。今、ゲームセンターがどんどん減ってきていますが、世界大会など大きな大会は必ずオフラインで行われるので、その環境に慣れるという意味でも、オフラインの練習する場所をもっと増やしていったほうがいいんじゃないかなぁと思っています。
おりぴぴ:そうですね。mittiiiさんはそれこそ選手としてもプレイされていた経歴があるかなと思います。やはりオフラインで練習するのとオンラインではけっこう違ったり、逆に「オフライン練習場欲しいな」とか、そういうところってあったりするんですか。
mittiii:そうですね。オンラインの場合は、自宅という閉じられた空間の中で、ヘッドホンをつけて部屋を暗くし、ゲームに没頭できる環境が整っているので、集中力を極限まで高めて自分のパフォーマンスを最大限に引き出すことができます。
一方で、競技の場となると、実際に会場でヘッドホンをつけてモニターを見て対戦するというところで、集中力がかなり削がれると思います。そうした環境に慣れることはけっこう必要で、僕自身もできるだけオフライン環境に近いかたちでの練習を重ねてきました。
おりぴぴ:高島さんもチームをお持ちということで、やっぱり選手の方にはできるだけオフラインで練習環境を置いてほしいなぁとか(思いますか)。
高島:そうですね。FENNELというeスポーツチームが、日本で初めてゲーミングハウスを設立しました。選手が住む環境と練習する環境を大きく分けて通い制にしてみたいな、いわゆるプロ野球でいうキャンプ場と自宅が違うみたいな構造を、投資してちゃんと作ったのは、やはり僕らの競技成績にもすごく大きく影響があったなぁと思っています。