日本のAI利用に対するサム・アルトマンの反応
平:あとはいわゆる、AIのところだけやってもなかなかうまくいかないんです。AIと言っても、人によってどこまでAIと言っていくかわからないんですけど。
だから、半導体もデータセンターもクラウドも、いわゆるLarge Language Model(LLM)、その上に載るアプリケーションとか。さらに言うと、ゲームとかコンテンツなんかはうち(日本)は強いから、そのへんも最大化していく。レイヤーでどう縦で切るのか横で切るのかは別として、そこで両方支援をしていかなければいけないです。
それで、ChatGPTがちょうど出てきた月に、僕は松尾さんのセッションを見ていたんだけど、2023年にすぐプロジェクトチームを作ったんです。その後すぐにサム・アルトマンさんも日本に来てもらって、岸田(文雄)さんと会談してもらったんだけど。
あの頃はやはり……あのね、国民のみなさんは(ChatGPTを)使うのが早いんですよ。すぐ使い始めます。
木嵜:はい、使っていますね。
平:サム・アルトマンさんもそう言っていました。ただ、企業が遅いんですよ。特に大企業。それはまたやり方を考えなければいけないし、松尾さんからいろいろとアドバイスをもらいたいと思うんだけど。
AIを行政に“縦・横”にフル実装
平:政府は一応、ものすごい勢いで入れていこうと。私はここでセッションをやって、その後、10月1日にデジタル大臣になったので、その時にデジ庁で言ったのは、行政は「AIフル実装だ」と。それで、行政はデジタル・ガバメント、ガバメントクラウドときているので、次は政府AI(ガバメントAI)、政府の業務を応援する、いろんな支援をするAIを入れましょうということ。

今、実際にデジタル庁ではいろんな業務を支援するAIを入れています。ベースはAnthropicだったり「Gemini 2」だったりするんだけど、国産も選べるようにしていきます。
それを各種役所に、ガバメントソリューションサービスという環境整備ですよね。やはり政府は安全性が重要。その環境が整い、ガバメントソリューションサービスを実装した役所からデジタル庁のAIを使えるようになるので、これで政府にAIがワッと入っていきますね。
さらに言うと、1,700の自治体は20の業種を標準化して、このガバメントクラウドに上げることになっています。さらに、ほかのところでやってうまくいった、「デジタルマーケットプレイス」という仕組みがあります。
行政に役立つアプリケーションをデジタルマーケットプレイスに上げて、そこからカセットを抜いて挿すように、任天堂のゲームみたいな感じで(アプリケーションを)取ってこられるんですよ。
先ほどの20業種以外も、そこにAIのアプリケーションを載せようと思っているので、それを取って、ガバメントクラウドを挿してもらえると、今度は自治体にも一気に広がるんですよね。だから縦・横で行政にAIをフル実装しようと思っています。
行政向けのソフトウェアって、今までは事業者さんが自治体ごとに営業しなきゃいけなかったと思うんですけど、今はデジタルマーケットプレイスに載せれば、一気に横展開する可能性がある。
AIのアプリケーションも、いわゆるSaaSの形式のアプリケーションだと今は、行政向けに広がる、ビジネスチャンスのある環境になりつつある。もうほぼほぼ整備できていますけども、そんな感じです。
ネーミングに苦言も?
木嵜:これは平さんだからできると思っているんですが、どうですか? 国の議員の方全体だと理解しています?
平:ガバメントクラウドとかデジタルマーケットプレイスとか、私が名前を付けたんじゃないんですよね。私の前のデジタル大臣が名前を付けたんだけど、やはり説明すると、すごく文句を言われますよね。
木嵜:怒られるんですか(笑)。
平:「何を言っているのかわからない」と怒られますし、やはりわかりにくいとは思います。ただ本当にクラウドにしたいという方は、デフォルトをクラウドにしておいたので、私がやっているサイバーセキュリティも、AIの実装もやりやすくなってきたのが現在地ですね。
木嵜:松尾さん、今おっしゃっていたように、「ここまで行政ががんばっているのに、企業が……」という話があったじゃないですか。企業のAIはどう見られていますか?
松尾:そうですね。まず今、平さんがおっしゃったあたりのことは、やはり大変だと思うんですけども、それをすごく着々と進めておられるなと。
あとサイバーのあたりもちゃんとやっていかないと、後々困りますし。しかもそれをその場で、反射神経だけで解決しようとすると変なことになるので、順序立ててやらないといけないんですけども、そういうところがちゃんと進んできているのはすごくいいと思います。