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AIについて小説家は何を語る? 人を幸せにするAI(全3記事)

“AIが95%書いた小説”に挑戦した芥川賞作家 人間に「忖度しないAI」がもたらす可能性 [2/2]


お笑いのネタ作りにAIは使えるのか?

九段:又吉さんはお笑いのネタを書く時に参考にできるようなことってあるんですか?

安野:それは気になりますね。

又吉:いや、今はないような気がしますね。

九段:ほぼない? 聞いてみたこともないですか? 「この場面、どうしよう?」とか、「最後、オチどうしよう?」みたいな。

又吉:ないですね。大喜利のお題を考えてもらって、それに僕が答えるっていう遊びはたまにやるんですけど、大喜利のお題を作るのがけっこう苦手なんですよ。

九龍:お題のセンスは要りますもんね。

又吉:はい。「いや、そうじゃなくて」って、5つぐらい「こういうことですよ」というサンプルのお題を僕がAIのために作って、AIが勝手に答え始めて、「いや、お前は答えんでええねん」みたいな。

(会場笑)

九龍:それはちょっと、ボケじゃないですか(笑)。

又吉:「僕が答えるので、あなたはこれを参考にお題を作ってください」みたいなやり取り自体がお笑いっぽくなることはあるんですけど。

安野:確かに、確かに(笑)。

又吉:やはり回答とかも、ちょっと見たことあるなっていうものが多い。

九段:でも、AI太宰と又吉さんの漫才、見てみたい(笑)。

又吉:ちょっと完成させておきます。

(会場笑)

九龍:でも芸人の方でもAIを活用する際に、活用の仕方もバックグラウンドで使っているのか、むしろAIというものをテクノロジーネタとして入れてくるのかというところもあると思いますが。そのあたりの芸人の温度感って今どんな感じなんですかね? 人にもよるとは思いますけど。

又吉:人によって設定とかをAIに振ってみて、答えてきたものをアレンジして、というのはたぶんいると思いますよ。でもそれはもともと会議の時に構成作家の人がいて、芸人と一緒にディスカッションしながら「最近こんなん流行っているな。じゃあ、こうこうこう」って作っていくネタのプロセスとけっこう近い。それがAIに代替されたってことかなとは思いますけどね。

AIで「知性とは何か」を問い直す

九龍:なるほど。安野さんはこの社会課題とかに対してもAIというものと、この可能性みたいなところが、もちろん都知事選のこともありましたが、いろいろ本の中にも書かれたりしていると思うんですけども。AIってちょっと抽象的なテーマではあるんですが、これをどういうものだと現時点では捉えていらっしゃいますか?

安野:そうですね、私はこれで、「AIっていうのはArtificial Intelligenceであると同時にAlien Intelligenceなんだ」ってよく言われるんですよね。

それは何を言っているかというと、人間の知性の形って、言うてまあまあ似通っているんですけど、(AIは)それとまったく違う形をしていると。ここがめちゃめちゃ人間と比べてものすごく得意なのに、この部分はめっちゃ苦手っていうレーダーチャートのデコボコ感がマジで違うんですよね。

なので「知性ってそもそも何なんだろう?」みたいな問い(に対して)、今までは「ざっくり言うとIQだ」みたいな、1次元の数字で測れるみたいに思われていたかもしれないんですけど。

実は知性ってもうちょっと複雑な尺度があって、例えば新しいモデルが出てきた時に、ベンチマークといってテストをいっぱい解かせて、そのテストの結果が、「うちの新しいモデルがこれくらい高かったんだよ」というのを宣伝したりするんですけど。

九龍:やりますね。

安野:そのベンチマークスコアと呼ばれる点数がペーパーテストの点数より低くても、「こいつ、めっちゃ賢いじゃん」っていうモデルとかがあったりするんですよ。そういう「知性って何だろう?」というのをあらためて問い直すツールとしてめっちゃおもしろいなと思って見ていますね。

AIを大喜利に使うとしたら

九龍:そうですよね。さっきは大喜利では(人間が)まだまだ勝てるという話をされていましたけど、本当に「AlphaGo」とかだったら……AlphaGoで棋士とAIが対決して、名人がついにAIに負けたみたいなことがあると思うんですけど。大喜利の勝ち負けとかになってくると、なんか負けない気が(笑)。

又吉:難しいですよね、「誰がジャッジすんねん」の問題もあるし。もっと言うと、AIが考えてシステムに則っておもしろい回答を導き出そうとするよりも、AIがランダムにお笑いの文脈じゃないフレーズを100個持って来て、それをランダムで出したほうがたぶんおもしろい回答になっちゃうと思うんですよ。

人間ってそこまで無関係のことをポンッて出せないので。AIがそこまで割り切ったら偶然性がそこで生まれるので、そっちのほうが圧倒的に脅威やなっていう。

九龍:確かにそうですよね。それが来るとかなりおもしろい。

又吉:そうですね。ただ、僕が半年ぐらい使った感覚でAIの成長を見ていると、そんなものは軽々と乗り越えていきそうな速度感なんですよね。「あれ、前より読む力が圧倒的に上がっている?」みたいなのを感じるので。

だからここでしゃべっていたことを1、2ヶ月後に流された時に、「こいつ、ぜんぜんわかってないのにしゃべっているな」ってなることは十分にあるので。

安野:あり得ますね。

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