AIが削除コマンドを生成したら実行するのか
佐々木:生成AIが当たり前になる中で、何を大事にしていくべきか? さっきもちらっと言ったんですが、生成AIは、まだ現時点では「これをどうやりますか?」「こうしてください」という話があって、「わかりました」という手順を踏む必要がある状態かなと思っています。
それを受け入れるかどうかだったり、「そもそもそれを今やるの?」という話は、あくまでも人間が判断するところだと思っているので、まだ生成AIに任せる感じではないかなと。
そこをしっかり、「これをやりたい。じゃあ、どうしたらいいの?」という指示を出せば、生成AIがある程度の答えを出してくれるかなと思います。けれども「そもそも今、このビジネスをやっていて、この課題感があって、何から優先的に手を付けていくんだっけ?」というところは、絶対に人間がやらなきゃいけないところだなと。なのでそこをしっかりスキルアップしていく、そこにしっかり関わっていくことが、まだまだ大切なんだろうなと思っています。
レビューなどでも「生成AIに聞いたらこう返ってきました」みたいなやりとりがたまにあるんですけど、それはあまり理由にならないなと思います。「生成AIが『rm -rf』(PC内のすべてのファイルやディレクトリを削除するコマンド)と言ったんです」「よし、実行だ」という、恐ろしい世界になってしまう(笑)。
生成AIはあくまでツールとして使うんですけど、「他にはこういう選択肢があるんだけど、こういう理由で、この場合はこれなんです」という、なぜそれを選んだのかを人間が説明できないと、生成AIに使われる感じだし、あんまり正しさもないし、危険な状態だなと思います。
やはり最後は人間がしっかり判断できるようにしないといけないんだろうなと思いました。
AIがコードを書ける時代こそ“ものづくり”の熱意が必要
成田:ちょっと前まで僕はめっちゃ悩んでいたことがあって、この3ヶ月ぐらいでAIがコードをすごく書けるようになって、「僕がICに戻ったのは、選択として合っていたのかな?」と、ちょっと思ったんですよね(笑)。AIに指示をして使いこなすマネジメントスキルを磨いたほうが、コードをまた書くよりも生産性が高いんじゃないかと思ったんです。
キャリアに悩んだわけじゃないけど、「エンジニアリングって今後どうなっていくんだっけ?」と、ちょっと道に迷っていろんな人に相談や雑談したりしました。だんだんわかってきたのは、結局何をやりたいのかを強烈に持つ人だけが生き残れる世界になりつつあるということです。というのは、みんな必死こいて生成AIでToDoリストを作っているじゃないですか。別にみんな、そんなにToDoリストを欲しくないでしょ(笑)。
でも、なんでみんながあれをやっているかというと、たぶんほとんどの人って、別に作りたいものがないんですよ。だから、作れそうなものから作るし、絵を描けそうだからといって描かせてみて、すぐに飽きるんです。でも、そんなんじゃ駄目だと思うんですよね。やりたいことがないと、AIも使えないというか。
「一発当てるぞ」「こういうものを作りたいんだよね」みたいな、そういうものづくりに燃えている人にAIを与えると、めっちゃ何かを成し遂げるんだと思うんです。やりたいことにどれぐらい情熱を持てるかが、たぶん今後の生命線の大事な分かれ目になるだろうなと思っています。
そういう自分のモチベーションコントロールというか、湧き立つクリエイティビティを自分で燃やし続けられるように持っていく能力が、けっこう大事なんだろうなと思っています。
AIによって“何をやりたいのか”へ原点回帰する
じゃが:おもしろい。ありがとうございます。ささたつさんの話にあった「AIが出したアウトプットに責任を持つ」のも、今の話で「自分がやりたいことを見つけるというか、自分が熱中できることを見つける」のも、まさにそのとおりだなと思いました。この流れで田中さんから何かありますか。
田中清氏(以下、田中):だいたいさっきしゃべっちゃったんですけど。
じゃが:(笑)。そうですね、さっきしゃべっちゃいましたね。
田中:でも、「課題発見」みたいなところはけっこうお二方の話とやはり似ているなと思います。要は「何をやりたいんだっけ?」「何のためにやるんだっけ?」という話かなと思っています。
きっとそれは、「大きく社会を変える」みたいな話ほど大きくなくても、「こういうのがあったら身近な人が助かるから、生成AIでぱぱっと作って友だちに使ってもらった」とか、本当にそういう発想がもともとのエンジニアリングのスタートだった気がするので、けっこうそこの原点に戻っていく、戻りやすくなるのかなと思っています。
いろんなことが複雑になりすぎて、たくさんの人数でやらなきゃいけなかったのが、けっこう少人数でやれるようになってきて、「じゃあ、本質は何だっけ?」という問いが生まれやすくなると思うし、その答えは人によって異なるのかもしれません。
けれども、あらためて自分の中で「どうなりたいのか」とか「どうしていくか」を個々人が考えていく過渡期の、いい機会なんだろうなと僕は捉えていますかね。
じゃが:確かに。エンジニアがエンジニアとして、「これから何をやっていくべきなんだろうか?」とか「自分が好きなものって、本当は何だったっけ?」とか、自分自身を問い直す機会を迎えているのかもしれないですね。思わずエンジニアリング以上の深い話になって、びっくりしています。
田中:ごめんなさい。イキった感がありましたか。大丈夫ですかね?
じゃが:ぜんぜん大丈夫です。いつもどおりのたなきよさんだと思います。ありがとうございます。
田中:(笑)。
「Work Is Fun」を体現する働き方を目指して
じゃが:実はこの後、事前にいただいている質問にお答えするQ&Aの時間も取ろうと思っていたんですけど、ここまで盛り上がってしまったので、ちょっとこの時間は省かせていただきます。この後の懇親会で、ぜひご本人に質問を投げていただければと思います。
じゃあ、最後に一言ということで、お三方から一言いただきたいと思っています。たなきよさんからお願いします。
田中:Nstockは今日、いろいろプレスリリースが出たんですけど、前までSmartHRさんの100パーセント子会社だったんですけど、今日をもって独立して、やっと胸を張ってスタートアップと言える状況になりました。
(会場拍手)
田中:ありがとうございます。というところなので、興味がある人、いつでもウェルカムだよという(笑)。
じゃが:ウェルカムでーす。
田中:以上です。
じゃが:すみません、ちょっとモデレーターから自我が出ちゃったんですけど、ウェルカムです。
田中:(笑)。
じゃが:じゃあ、次にささたつさんからお願いします。
佐々木:弊社MIXIも絶賛募集中です。特に「みてね」チームですね。みなさんも「みてね」を使っていただいていると思うので、それを実際に自分の手で開発するというのはいかがでしょうか? 応募をお待ちしております。今日はありがとうございました。
じゃが:ありがとうございました。
(会場拍手)
成田:IVRyの宣伝をしなきゃいけない流れだけど(笑)。IVRyの重要な価値観に「Work is Fun」というのがあって。
仕事を楽しむためには、やはりやりたいことをやるのがすごく大事で、みんながやりたいことができているのかは、会社の中でもすごく大事にされている価値観です。お客さんの仕事を楽しいものにするのもそうだし、社員にとってもそうです。
「僕はCTOじゃなくて、ICをやらせてください」というのを本当に尊重してくれています。なのでそういう、やりたいことが強くある人にとってはすごくいい環境だと思うので、ぜひ応募してください。エンジニアは積極採用中です。よろしくお願いします。
じゃが:ありがとうございました。
(会場拍手)
じゃが:というわけで、本日はありがとうございました。登壇いただいたmirakuiさん、ささたつさん、たなきよさん。お三方にあらためて拍手をお願いします。
(会場拍手)