【IVRy x MIXI x Nstock】生成AI時代にエンジニアに戻る理由(全3記事)
管理職から現場に戻る「振り子キャリア」という選択肢 元CTO3名が語る、いちエンジニアに戻った理由 [2/2]
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CTOでは掴めない“現場感”にモヤモヤ
成田:僕は「しっかり考えている」と言っていただいたんですけど、(振り子キャリアを選択した理由は)感覚的なものではあるんです。僕の前職のCTO時代の前半は、当時プレイヤーから上がってCTOをやっていたので、まだ現場感はだいぶあったんですけど、(CTOを続けていくうちに)だんだん現場感が薄れていくというか。
前職には、僕が憧れるようないろんなジャンルのスペシャリストなエンジニアがいたので、その人たちが課題や技術の意思決定を上げてくれるんですよね。「今後、こうしたほうがいい」みたいな。それが上がってくるのを見て、「うん。じゃあ、それでいこう」と言って、やるしかない。もはや詳細技術はその人たちのほうが圧倒的に詳しいので任せちゃうしかなかったというのが、CTO時代の後半にわりと起こっていて。
それでうまく回っているっちゃ回っているんですけど、それだとすごく重要な経営課題になってからしか、(現場の)課題とか、技術の意思決定の存在に気づけないんですよね。経営陣が意思決定できるサイズになってからやっと上がってくるので、時間がかかるんです。
本当は、アプリケーションを作っている日々の業務の中で、みんなうっすら気づいている技術的な課題が現場の中にあるはずなんです。だけど、そういうものがまとまって「もっと改善するべきです」になるまでにけっこう時間がかかるんですね。それが1年ぐらい熟成された後に「こういう問題があります」と言って上がってくるみたいな。
それって遅いし、解像度が足りない状態になります。本当は技術的な課題って、現場に潜っている人が一番先に気づいているはずなんです。自分がそうならないと、CTOをやり続けるにしても能力の低い、ショボいCTOになっちゃうなと思って(笑)。やはり現場に解像度をどれぐらい持てるかが、技術的な意思決定をするにも重要だなと思っていたのがきっかけです。
あとは、すごいエンジニアたちと一緒に働いていく中で、「僕はこの人たちみたいにはなれないんだろうか?」と、ちょっと思っちゃったんですよね。「僕は子どもの頃からプログラミングをがんばってやっていて、どこで道を間違えたんだろう?」みたいな(笑)。憧れの人たちみたいになれる道がどこかにあったはずだけど、そうはならなかったみたいなのがあって。
「もう1回手に職を取り戻したいな。現場の解像度を上げたいな」というのがあって、今はいちプレイヤーに戻りたいという気持ちでやっている感じですね。
あえて年齢的に難しい道を選んだ
じゃが:興味深いです。やはり目の前にあることをやっていった結果、いろんな職種をやることもあれば、CTOをやりたいんだけど、それをやるためにも、解像度を上げるためにプレイヤーをやる必要があるんだとか、お三方の考えが聞けておもしろかったです。
ということで、パネルトークに入っていきたいと思います。ちなみに今のお話の中で、「振り子キャリア」というのは、たぶん一般的な単語ではないと思います。ここで事前に話した時にそういうワードが出てきたという認識なんですけど、合っていますかね?
成田:そうかも。僕は前職で同僚と話していた時に、「『振り子キャリア』という概念があるよ」と同僚に言われて、「あっ、そうなんだ」と。一般的にググって出てくるかどうかはわからないけど、意味はわかりますよね。マネージャーをやって、プレイヤーをやって、またマネージャーをやって、みたいなことを言いたい感じです。
じゃが:なるほど。とてもわかりやすいメタファーでいいなと思っています。振り子キャリアの中で、例えばmirakuiさんの場合だと前の会社でそのままプレイヤーをやるという選択肢もあった中で、今の会社やいろんな(前職までの)会社がある中で、今の会社にいる理由をちょっとお伺いしてみたいなと思います。またちょっと順番を変えて、ささたつさんからお願いしてもいいですか?
佐々木:振り子キャリアの中で、今の会社でICをやることにした理由? 自分の場合はけっこう迷っていました。迷っていたというのは、もちろん前職ではICに1回戻ったんですけど、「このままどこまでICでやろうかな?」というのがそこまで明確にはなくて。
IC1本でやる道と、プレイングマネージャー(の道)みたいな。「マネジメントに振り切る」は無いかなと思っていたんですけど、「マネージャーもやりながらというかたちもあるかな」と、けっこう最後まで迷っていました。会社によって、両方の職種で受けていたりしました。
ただ、最終的に決めたのは、やはりICでやるほうが難しいなと思ったんですよね。経験的なこともあって、「そろそろマネージャーですよね」と言われる年齢にもなってきているので、そっちの道を求めている会社は意外と多いんだろうなと感じていました。
逆にこの年齢で、しかもしばらくエンジニアを離れていた人間を、「もう1回ICとして雇ってください」「雇ってあげますよ」というのは、けっこうハードルが高いなと思っていました。なので、その意味でこのタイミングでやるんだったらICかなと、今の会社のMIXIに決めたのが大きいところです。
自分の利益よりも“社会のためになるか”
佐々木:最終的にMIXIに決めたのは、お話しした方がすごくフィーリングが合うなというところと、自分自身、「みてね」というサービスに今関わっているんですけど……「みてね」ってご存じの方はいらっしゃいますか? (会場の参加者が挙手)わぁ、ありがとうございます。ほぼ100パーセントでした(笑)。みなさん、ありがとうございます。
もともと自分も使っていたので、そのサービスにあらためて自分がICとして関わるのは楽しそうだなという理由で、今、MIXIにICとして関わっているというのが背景です。
田中:僕も「ICをやる」「マネジメントをやろう」というより、今のNstockでやっているセカンダリー事業の立ち上げをして、一番それがやりたかったなというのがスタートでした。この中で「セカンダリー事業(未上場企業の発行済み株式を売買する事業)」という言葉をご存じの方っていらっしゃいますか? (会場の参加者が挙手)ほぼ全員ですね。ありがとうございます。
(会場笑)
やはりけっこう年齢も50歳が見えてくると、自分がガンガンがんばって稼ぐというよりも、日本全体の押し上げができないかなとか。
私と同じような同僚で年齢的にシニアと呼ばれる人らは、本当はもっといろんな活躍の場があるんだけど、やはり家庭もあってなかなか動けないので、リスクとリターンのバランスをもっと高めることが大事だよなとずっとなんとなく考えていたんです。
そこでNstockがやろうとしていることを知って、「あっ、これだ」と思って入ったんですね。特にNstockは今、マネージャーがいないので、自然とICというかプレイヤーに戻ってがんばっているところですかね。以上です。
じゃが:ありがとうございます。
前職とは異なる分野で自分をアップデートしたい
成田:僕の場合は、そのまま前職を14年間やって、最後の1年はICをやっていました。そのままやり続けていてもよかったんですけど、14年付き合ってきたプロダクトに、さらに新しい何かをユーザーのために思いつけるかというと、自分の中で「何をやれるのか」が枯渇しちゃっていたんです。それで「これは自分自身がアップデートされないと、僕は新しいことができるようにならないな」と思ったんですよね。残っていても貢献できないと(笑)。
他の優秀なエンジニアの劣化版としてそこに存在し続けるのは、自分にとっては勉強になるからいいけど、ICとしてクックパッドに何か新しい価値を貢献できる感じはあるかというと、今の自分では無理だなと思っちゃいました。「じゃあ、どうやったら自分がもっと成長できるかな?」と思った時に、ぜんぜん料理でもtoCでもないことをやってみようと思ったんですね。
IVRyを最初知った時は、「電話なんだ。そんなにシブい領域なのか」思ったけど(笑)、ちゃんと話を聞いたり調べると、電話×生成AIというもので、通話のデータをAIを駆使してお客さんに価値を返すということをやるんです。
実は、通話のデータってめっちゃいいデータなんですよね。話者分離がされているとか、ノイズキャンセリングされているとか。そういう質の良い対話のデータが集まっていて、しかも僕が転職したのが1年前なので、もう生成AIがガンガン伸びている時期でした。
生成AIと対話ってめちゃくちゃ相性がいいし、通話のデータというどこも持っていないデータがあるんですよね。それを生成AIにかけて、いいサービスを提供して、さらにまたデータがたまるという、AIのロジックがビジネスに組み込まれているのが、これからめちゃくちゃ伸びるビジネスとしてセンスがいいなと思いました。
僕がIVRyに入った時は68人目の社員だったんですけど、それぐらいの規模でした。今は1年ぐらいで200人を超えているのかな。ぎりぎり初期ぐらいのけっこういいタイミングで入れました。会社が成長していくところで自分ももっと成長していけるだろうなと思って、ここで挑戦させてもらっている感じですね。
ささたつさんと同じように、やはり「CTOとして来てくれ」というオファーはけっこう多かったし、自分の今の実力で一番価値を出せるのはやはりCTOとしてなんだと思うんですよね。ICとしてはそんなになんですけど(笑)。だから、IVRyがICとしてオファーをくれたのがめちゃくちゃありがたかったです。そういうところは貴重ですよね。なので、それに甘えてやらせていただいている感じになっています。
CTOが転職先に困るのはなぜか
じゃが:お三方、どうもありがとうございます。やはり共通していたのは、事業やプロダクトに興味があって、叶えたい世界観が一緒だからそこでやるというのがありました。あとはもしかしたら、CTOの人に「エンジニアとして来ませんか?」と言うと、興味を持つ人は意外といるのかも。
成田:いるいる! めっちゃいる! みんな困っているんですよ。けっこうCTOたちは転職先にマジで困っています。
じゃが:これはあるあるですか?
佐々木:あるあるだと思います。
田中:いろんな誘いが来るのは、やはり全部CTOやVPoE(マネジメント責任者)とかです。それは、ぶっちゃけ面倒くさい内容のものが多いです。
(一同笑)
じゃが:面倒くさいと言っちゃ何ですけど、そういうものがいろいろある中だからこそ、あえて事業にもう1回向き合いたいんですかね。ありがとうございます。 続きを読むには会員登録
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