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この人、未踏だったんだ(全4記事)

「絵が動いたら楽だなと思って」 『ウゴウゴルーガ』作者が語る、ITを駆使した制作秘話 [2/2]

未踏に採択されるメリットとは

久代:いいですね。さあ、ということで、そんなうるまさんを交えまして、ここからは4人の未踏修了生の方々とたっぷりとお話をしていただければと思います。

まず、では最初にみなさんにお聞きしたいんですが、未踏に参加してよかったことは何でしょうか。

野田:知りたいです!

久代:まずは髙橋さん、お願いします。

髙橋征資氏(以下、髙橋):先ほどもお話があったんですけど、吉本の偉い方にスーパークリエータ顔をして。そうすると「なんかすごいやつが来たぞ」ってなるんですよ。未踏修了生ということが最初のきっかけになりますよね。

野田:あいつら、すぐ騙されますもんね。

(会場笑)

久代:スーパークリエータって名前がいいですもんね。

野田:とにかく引きの強い言葉がいいですね。うちの会社、誘われちゃうから。

髙橋:本当に役立ってます。

久代:なるほど。ありがとうございます。続いて青木さん。

青木俊介氏(以下、青木)::一番良かったのは、やっぱり採択して選ばれると指導者の先生がついてくれるところです。私の場合は、1回目の時はコーエーというゲーム会社の、当時の社長の松原(健二)さんが、一対一で毎月アドバイスをくださって。

野田:えっ!

青木:もうフラットな関係で、一緒にこうやったらもっとおもしろいんじゃないかとかアドバイスしていただいたり。

野田:そういう世界、欲しい~。

久代:すごい。

青木:2回目にロボットを作っていた時は、「マツコロイド」とかで有名な、大阪大学の石黒(浩)先生にビシバシと、毎月いろんな宿題を渡されてひいひい言ってましたけれども、すごく勉強になりました。

久代:未踏にいないと、そんな機会なかなかないですからね。

青木:いや、本当にそうだと思います。

野田:確かに結局のところ、すごい人に教わるのが一番手っ取り早いですもんね。

技術者同士で切磋琢磨できる環境

久代:続いて中城さん、お願いします。

中城哲也氏(以下、中城):うちの美馬PMが、人とのつながりを大事にする方で、合宿に集まって発表会とか、けっこう多くて。

そこで、すごいクリエイターとか技術者の方がいっぱいいる中で、「次の発表までにすごいものを作って驚かせてやるんだ!」みたいな、たぶんお互いにそういう思いで、作っては見せていて。

一人で創業して寂しかったのですが、ライバルと一緒にやってるぞっていう感じですごく加速したと思うし、今でも時々会ったりするような、かけがえのないつながりができたのはすごくありがたかったですね。

野田:合宿というのがすごく気になるんですけども、どういう内容なんですか。

中城:たしか、有馬温泉に行ったり。未踏が終わってから十何年も経つんですけど、最近だと北海道の函館に行ったりとか。

野田:めちゃめちゃ楽しそうじゃないですか。

中城:楽しいですね。はい。

久代:今でもつながりがあるんですね。

中城:そうですね。5年に1回ぐらい会ったりしています。

まるで「大人の青春」

久代:仲間ができるっていいですよね。では、うるまさん、お願いします。

うるま:僕らのPMは中島(秀之)先生でした。(当時の所属が)はこだて未来大学だったので、いつも函館でミーティングをやるんですよね。そうすると、みんなで観光気分でそこへ行って。

野田:合宿とか、函館とか、さっきからずっと楽しそうなこと言うんだよな~。

(会場笑)

うるま:でもまぁ、そのあときっちりやることはやるんですけど、あんまりそっちの記憶がなくて。

野田:そうですか。じゃあもう観光ですね。

うるま:そうです。函館の観光しか記憶にないです。

野田:うまいもん食べて。本当にただ楽しそうなだけかもしれないです。

久代:でもきっと、そこから何か新しい発想も生まれてますから。

うるま:そうです。もちろん、きちんとやるんですよ。

野田:大人の青春って感じっすね。

未経験の分野に挑戦できるチャンス

久代:本当にそうですね。では、続いての質問に参りましょう。「未踏に参加して、その後のキャリアにどのような影響がありましたか?」髙橋さん。

髙橋:さっきしゃべっちゃったかな。吉本の仕事につながりました。確か、スーパークリエータの前って、天才プログラマーっていうネーミングだったと思うんですよ。

もともと僕が行っていた大学の教授が、天才プログラマーの時代に取得していたので、ずっと学生に「俺は天才だぞ」って、ずーっと使ってたんですよ。「いいな〜、羨ましいなぁ」って。もういろんな意味で、国が認めた天才とか、いろんないいワードを胸を張って言えるのがいいんじゃないかなという。

野田:肩書きってある種、一番大事っすからね。

髙橋:きっかけになります。

久代:ありがとうございます。青木さん。

青木:僕の場合、未踏をやるまではロボットを作った経験がなかったので、未踏を通じて実際にハードウェアを組み立てて、いろんなセンサーとかを組み込んで……という、ロボットの作り方を学ばせていただいて。

その後、実際にロボットの会社を事業化することができたので、もう未踏なしでは実現できなかったなぁと思います。

野田:え、ロボット関係の専門学校とか行ってたわけじゃないんですか?

青木:大学ではどちらかというとソフトの開発、プログラミングのほうだったので、ロボットを作る経験はなかったんです。

未踏修了生は「M-1王者」に似ている?

久代:ありがとうございます。続いて中城さん。

中城:さっきも話がありましたけど、未踏のスーパークリエータということで、資金調達とか、お金を借りたりとか、そういった時はすごく有利に働いてたかなと。

お客さんが買ってくれるかどうかにはほとんど影響はないんですけど、やっぱり箔がついたことで、法人とか融資とかには影響があって良かったなと思います。

久代:やっぱりクリエイターとして尊重されるいい機会ってことですよね。

野田:そうですね。僕、そんなん何もないから、ぜんぜんお金出してくれないですもん。

久代:ね、スーパー芸人みたいな肩書きが欲しいですよね。

髙橋:でも「『M-1』優勝」に近いんじゃないですか。

野田:確かに『M-1』で優勝した時はいろいろ作らせてもらったから、それに近いのかもしれないです。

久代:なるほど。さあ、では最後にうるまさん。

うるま:スーパークリエータってけっこう名が通ってて、どこの会社へ行っても就職ができるという噂があったんですね。それからお金も借りれるし。

野田:すごい(笑)。どんどんスーパークリエータになりたくなってきましたもん。

久代:でも、それぐらいの信頼があるってことですよね。

うるま:だから、この業界にそういうランク付けがあまりないので、けっこういいんじゃないんですかね。

野田:そっか。逆に言うと、肩書きがスーパークリエータぐらいしかないんですね。

久代:じゃあ、この業界を極めたいならもうおすすめってことですね。

うるま:そうですね。だからいいと思いますよ。はい。

久代:それはいいこと聞きましたね。そう簡単になれるものでもないのかもしれないですけれども。

うるま:人がやらないことを見つけ出して最後までやるっていう、それだけでいいんじゃないですかね。

野田:なれないかなぁ……。

久代:入る側で検討してます?

野田:してますね……。

未踏挑戦者へのメッセージ

久代:じゃあ最後に、未踏に応募を考えている人へメッセージを、お一人ずついただければと思います。髙橋さん。

髙橋:ITだったり開発だったり、作るのが好きでしょうがない、極めた方々が集まるんですよ。ふだんだと「あいつすげえ」みたいな、何人かしかいない人が一気に集まって、発表しあって切磋琢磨して。こんな機会自体がそもそもあまりない。

そういう意味では、スーパークリエータを置いといても、参加することにすごく意味がありますし、成長の機会になるんじゃないかと思いますので、ぜひやってみてはいかがかなと思います。

もうすごい人だらけで、僕も「自分はここじゃないかな」ぐらい思ってましたけど、本当にいい経験になると思います。

野田:競争ではないっすもんね。お互いがみんな未踏だから、別に足を踏みあってるわけじゃないですもんね。

髙橋:足を踏みあわないです。なんか、みんな人に興味ない、すごい人たちなんですよ。

(会場笑)

野田:人に興味ない集団にすごく興味ありますね。

髙橋:(笑)。「あいつら、(なにか)やってるな」っていう。 

野田:いいですねぇ。

久代:すてきな集団だと思います。続いて、青木さん、お願いします。

青木:物を形にするプロセスを、未踏のプログラムを通じて経験できますし、さらに、「それを使って何か事業をしよう」と、指導者の先生だったりスタッフのみなさんがすごくサポートしてくださるので。

いろんな展示会に出して、「いくらぐらいだったら売れそうか」といったフィードバックをもらえたり。あとは記者会見をやっていただいて、プレスの方々との付き合い方を学んだりとか。

野田:PRのほうもやってるんですね。へぇ~!

青木:なので、ただ作るだけじゃないところもすごく魅力だと思います。

久代:そのあたりも大事な能力ですもんね。

野田:むしろ、作った後がすごく大事ですもんね。

未踏修了生の活躍が、挑戦者の応援につながっていく

久代:すごい。ありがとうございます。続いて中城さん。

中城:やっぱり若い時期の、熱意と時間はあるけどあまりお金がない状況の中で、ちょっと変なものを作ろうと思ってもわりと支援してくれる。

若いうちにお金もちゃんと得て、その熱意と絡めて一緒にすごいもの作ることにチャレンジできるのは、すごくいい機会になると思うので。できればもう「変なものだけど世の中を変えてやるんだ!」みたいな気持ちを持って取り組んでもらえたらと思っております。

野田:そりゃそうですよね。やっぱり前例のあるものじゃないと会社はお金を出さないですもんね。

中城:そうですよね。そこで本当に苦労したんですけど、実績作りというか、未踏は実績がないところでも本当に、変なものほど資金を出してもらえるのがすごくいいなと思っています。

久代:「作りたい」という熱意があれば届くということですよね。

野田:未踏の人が活躍してるから、未踏自体が前例になってるのかもしれないですよね。

中城:そうですね。本当に、後輩のためにすごくがんばって予算が増えるようにしなきゃいけないなぁと思って取り組んだりもしてます。

久代:はい、ありがとうございます。では、うるまさんお願いします。

うるま:未踏っていう言葉がまず珍しいですよね。もう全部言われちゃったんですけど、お金は集まるっていうか、最初はけっこう高額の助成が年単位で出る。それから会社を作ろうと思ったら、会社を作るためのお金のサポートがつく。名前を発表する機会ももらえる。

あと何があるかな。それが続けば、めげずにがんばれば最後までできるんじゃないかと。これはとてもいいことだと思います。

久代:ありがとうございます。さあ、ここまでお話をうかがって、野田さん、いかがですか。

野田:はい、ようやく、本当にようやく理解できました。

久代:未踏とは。

野田:どういうことをしようとしているのか。確かに、みんな「新しいものに挑戦したい」とは言うけども、じゃあその新しいものに成功する保証はあるのかい? って話じゃないですか。

だからみんなサポートを受けられないけども、そこをサポートする。なぜなら、それを成功させてきた方々がいるからですよね。これ、すばらしいですよ。

久代:力強いバックアップがたくさんありますからね。ぜひみなさま、今のお話をもとに未踏に応募することを検討していただければと思います。

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