世界のトップを走るNVIDIAの技術革新はどこまで進んだか。アメリカ・ラスベガスにおいて現地時間2025年1月8日から開催された「CES 2025」で、NVIDIA創業者Jensen Huang氏が基調講演に登壇。同社の歴史や方向性、最新のプロダクトなどを明かしました。AI開発における最前線はどこまで来たのか。トレードマークの革ジャンを身に着け、NVIDIAの技術の真髄を聴衆にシェアしました。
NVIDIAのCEOがおなじみの革ジャンで登場
Jensen Huang氏:CESへようこそ。ラスベガスを楽しんでいらっしゃいますか? 私のジャケット、どうでしょうか。気に入っていただけましたか? ゲイリー・シャピロ副会長とは正反対のスタイルにしようと思ったんです。なんといってもここはラスベガスですから。

もし似合わないと思っても気に入らなくても、そういうものだと慣れてください。とにかく、この格好を受け入れていただくしかありません。1時間もすればきっと、目に馴染んでくるでしょう。
さて、みなさん、NVIDIAへようこそ。ここはNVIDIAのデジタルツインの中です。みなさんをNVIDIAへご招待します。ようこそNVIDIAへ。ここにあるものはすべてAI(人工知能)によって生成されています。私たちにとって、ここまでの道のり、そしてこの1年はとてつもないものでした。すべては1993年に始まりました。
(スライドから「Ready Go!」の音声が流れる)
NV1で私たちが目指したのは、従来のコンピューターでは不可能だったことを実現できるコンピューターの開発です。
NV1によってPC内にゲームコンソールを搭載することが可能になりました。当社のプログラミングアーキテクチャーはUDAと呼ばれていました。ここに「C」の文字が加わる(注:NVIDIA社が開発した並列コンピューティングプラットフォームである「CUDA」を指す)のはもう少し後のことです。
UDA(Unified Device Architecture)は統合デバイスアーキテクチャです。そして、UDAの最初の開発者であり、UDA上で動作した初のアプリケーションは、セガの『バーチャファイター』でした。
6年後の1999年、私たちはプログラマブルGPUを発明し、ここから、GPUの驚異的なプロセッサの20年以上にわたる驚異的な進化が始まりました。この結果として現代のコンピューターグラフィックスが実現しました。
そして30年を経て、『バーチャファイター』は今や映画のような作品になっています。これが新しく発売予定の『新・バーチャファイター』ですが、待ちきれません。本当に楽しみです。1999年から6年後、当社はCUDAを発明しました。これにより、さまざまなアルゴリズムのセットに対し、GPUのプログラム可能性を説明・表現することができるようになりました。
AI分野における進化の歴史を振り返る
CUDAは当初、説明するのが難しい技術でした。実際、理解されるまで何年もかかりました。そして約6後の2012年、どういうわけかアレックス・クリジェフスキー氏とイリヤ・サツキバー氏、ジェフ・ヒントン氏(注:3人それぞれがAI分野におけるパイオニア的存在)がCUDAを見出し、AlEXNETの処理に用いたのです。その後の展開はみなさんご存知の通りです。

以来、AIは信じられないほどの速さで進化を続けています。始まりは知覚AIでした。これは画像や言葉、音を理解することができます。次の生成AIでは、画像やテキスト、音を生成することが可能になりました。そして今の段階は、AIエージェント、つまり知覚、推論、計画、行動ができるAIです。
この次の段階が、フィジカルAIですが、これについては後ほど少しお話しします。そして2018年、まるで魔法のような驚くべきことが起こりました。Google初のAIの誕生です。GoogleからTransformer(トランスフォーマー、深層学習モデル)を用いた「BERT」がリリースされました。これにより、AIの世界は大きく飛躍しました。
ご存知のように、トランスフォーマーによって人工知能の分野は大きく様変わりしました。実際、コンピューティングの分野そのものが根本から変わったのです。
私たちはAIを、単に新しいビジネスチャンスをもたらす新たなアプリケーションの1つとして理解しただけではありません。より重要なのは、トランスフォーマーによって実現される機械学習が、コンピューティングのあり方を根本から変えようとしていたということです。

私たちは、早くからこれを正しく認識していました。今日、コンピューティングはあらゆるレベルで革命的な進化を遂げています。かつては、CPUで実行する命令を手作業でコーディングして、人間が使用するソフトウェアツールを作成していました。現在では機械学習がニューラルネットワークを作成・最適化し、GPU上で処理を行って人工知能を生み出しているのです。
技術スタックのあらゆるレイヤーが一変しました。わずか12年間で驚異的な変革が起きたのです。そして現在、AIはほぼすべてのかたち情報を理解できるようになっています。みなさんもテキストや画像、音声などをご覧になったことがあるでしょう。
「GeForce」の非常に美しいグラフィック
今ではAIはこういったものを理解できるだけでなく、アミノ酸も理解できますし、物理学も理解できます。これらを理解し、変換し、生成することができるのです。応用領域はまさに無限大です。
では実際、世の中にあるたくさんのAIアプリケーションは、どのようなかたちのインプットから学習しているのでしょうか? どのようなかたちの情報に変換しているのでしょうか?
そして、どのようなかたちの情報を生成しているのでしょうか? この3つの基本的な質問を投げかければ、ほぼすべてのアプリケーションを推測できます。
ですから、AI駆動やAIネイティブのアプリケーションを一つひとつ見ていくと、その核にはこの基本的な概念があることがわかります。機械学習は、あらゆるアプリケーションの構築方法、コンピューティングの実行方法、そしてその先にある可能性を変化させました。
GeForceなどのGPU、AIを備えたものはすべて、多くの意味でGeForceが築いた家のようなものです。GeForceはAIを多くの人の手に届ける役割を果たしました。そして今、AIがGeForceに戻ってきました。AIなしでは不可能なことは本当にたくさんあります。例をいくつかお見せしましょう。
(GeForceを用いた動画が流れる)


リアルタイムのコンピューターグラフィックスをご覧いただきました。
コンピューターグラフィックス研究者やコンピューター科学者は誰も、今、ピクセルを一つひとつこのレベルで、レイトレーシングできるようになるとは予測できなかったでしょう。
レイトレーシングは光のシミュレーションです。今ご覧いただいた膨大なジオメトリの量は、まさに驚異的でした。人工知能なしでは不可能な作業です。
人工知能の驚くべきグラフィック生成能力
私たちが行ったのは基本的に2つです。まず当然ながら、プログラマブルシェーディングとレイトレース・アクセラレーションを使用して、非常に美しいピクセルを生成しました。そして2つ目にそのピクセルに人工知能を条件付けし、制御することで、他の大量のピクセルを生成させます。
単に空間的に他のピクセルを生成できるだけでなく、それがどんな色であるべきかも認識できます。NVIDIAのスーパーコンピューターでトレーニングされているため、GPU上で実行されるニューラルネットワークは、レンダリングされていないピクセルを推理・予測することができます。
これはDLSSという技術ですが、最新のDLSSはさらに、フレームを超えた生成も可能です。将来を予測することができ、計算された1フレームに付き、補完用3フレームを生成します。
ご覧になった映像の中の4フレームで考えると、その内の1フレームをレンダリングし、3フレームを生成することになるので、フルHD、4Kの解像度で4フレームの場合はざっと3,300万ピクセルになります。
この3,300万ピクセルのうち、私たちが計算したのはたった200万ピクセルです。これは実に奇跡的なことです。私たちはプログラマブルシェーダーとレイトレーシング・エンジンを使用して200万ピクセルを計算し、AIに残りの3,300万ピクセルすべてを予測させます。結果としてAIの計算量が大幅に削減されることで、非常に高いパフォーマンスでレンダリングが実現できるのです。

もちろん、それを生み出すまでには膨大な量のトレーニングが必要ですが、一度トレーニングをしてしまえば、生成は極めて効率的になります。これが人工知能の驚くべき能力の1つであり、その結果、今、驚くべきことが次々と現実になっている理由なのです。
「RTX Blackwell」シリーズの新製品を発表
私たちはGeForceで人工知能を実現し、そして今、人工知能がGeForceに革命をもたらしています。みなさん、本日、当社の次世代モデル、RTX Blackwellファミリーを発表いたします。それではご覧ください。

こちらが、NVIDIA Blackwellアーキテクチャ搭載の新製品、GeForce RTX 50シリーズです。このGPUはモンスター級に強力で、トランジスター920億個、4,000 TOPS、4 PFLOPSのAI計算能力を備え、前世代のAdaアーキテクチャーの3倍の性能を誇ります。
これはすべて、先ほどお見せしたようなピクセルの生成に必要な性能です。380 RT TFLOPSのレイトレーシング性能により、計算すべきピクセルついて、最大限に美しい画像を計算することができます。
そしてもちろん、125 TFLOPSのシェーダーもあります。これは、同等の性能を持つ2つのユニットを備えた「デュアルシェーダー」になっており、整数演算と浮動小数点演算を並列して処理しています。
また、Micron製のG7メモリを採用し、1.8TB/秒という速度を実現しました。これは前世代比で2倍の性能です。また、AIワークロードとコンピューターグラフィックスのワークロードを組み合わせて処理する能力も備えています。

そしてこの世代の特筆すべき性能として、プログラマブルシェーダーがニューラルネットワークも処理できるようになりました。シェーダーがニューラルネットワークを処理できるようになったため、ニューラルテクスチャー圧縮やニューラルマテリアル・シェーディングを開発することができました。
その結果、AIがテクスチャーを学習し、圧縮アルゴリズムを学習することで、驚くほど美しい画像を実現することができました。
「RTX Blackwell 5090」のグラフィックカードの性能
こちらが新しいRTX Blackwell 5090です。この機械設計自体も本当に秀逸です。見てください。ファンが2つ付いています。このグラフィックカード全体が巨大なファンになっているのです。

では、グラフィックカードは一体どこにあるのでしょうか?
実物はこのサイズです。電圧レギュレーターの設計は最先端で、実にすばらしい設計です。エンジニアリングチームの見事な仕事です。

これがスペックですが、性能を比較するとどうでしょう? これがRTX 4090です。みなさんの中に、すでにお持ちの方もたくさんいるのは知っています。RTX 4090は1,599ドルです。
これは間違いなく最高の投資の一つと言えるでしょう。1,599ドルで、ご自宅の10,000ドルのゲーミングPCにコマンドセンターを導入できるのです。ゲーミングPCをお持ちですよね? そうですよね? 謙遜しないでください。

液冷式で、派手なライトがあちこちについていて、そして外出するときはロックするんですよね。まさに現代版のホームシアターですから、ごく当然のことだと思います。
そして今、1,599ドルでこれをアップグレードし、劇的に性能を向上させることができます。新たなBlackwellファミリー、RTX 5070では、RTX 4090並みの性能が、549ドルで手に入ります。
これは人工知能なしでは実現不可能でした。4 TOPSのAI Tensorコアなしでも、G7メモリなしでも不可能でした。この5070では4090のパフォーマンスが540ドルで手に入ります。そしてこの製品ファミリーがこちらです。5070から最上位の5090まであります。

5090は4090の2倍の性能です。すでに生産は本格的に始まっていて、1月から販売を開始します。そしてなんと、私たちはこの極めて強力な性能を持つGPUをノートパソコンに搭載することに成功しました。このノートパソコン向け5070 laptopは、1299ドルで4090の性能を搭載しています。
人工知能とコンピューターグラフィックスが小さなデバイスで融合
実物があるはずなので、お見せしましょう。こちらです。では、想像してみてください。ここにすばらしいグラフィックカード、Blackwellがあります。

これを小さくしてこの中に搭載します。そんなことが可能でしょうか。人工知能なしではまず不可能でした。しかし私たちはほとんどのピクセルをTensorコアで生成していています。
必要なピクセルだけをレイトレースし、他のピクセルはすべて人工知能に生成させます。その結果、エネルギー効率は驚異的に高まりました。
コンピューターグラフィックスの未来はニューラルレンダリング、つまり人工知能とコンピューターグラフィックスの融合です。そして実にすばらしいのは、この中に搭載するGPUファミリーです。

5090はこの薄いノートパソコンに収まります。先ほどのノートパソコンは厚さ14.9ミリでした。この他に5080と5070 Ti、5070があります。みなさん、RTX Blackwellファミリーをご紹介しました。