2024.12.24
「経営陣が見たい数字」が見えない状況からの脱却法 経営課題を解決に導く、オファリングサービスの特長
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深津貴之氏(以下、深津):エンタメ性は、僕も横須賀市さんにすごく勉強させてもらったところがあって。横須賀市の生成AIの導入のアドバイスをお手伝いしたんですが、横須賀市のデジタル・ガバメント推進室というところは自主的に勘所をつかんだみたいです。
ChatGPTを社内の業務で使う中でも、ちょっとエンタメっぽくなっていて。「こんなのを試すと楽しいよ」とか、みんなの作ったおもしろプロンプトを集めて、週報とかニュースっぽくして配り直して、その週報も生成AIを使いながら作ったり。役所内部活みたいな、ちょっと部活みたいな感じだったりします。
砂金信一郎氏(以下、砂金):なるほど。サークルっぽい雰囲気。
深津:そうそう。
砂金:押し付けられてやらされて、当番制でとかじゃなくて、みんなが楽しめるような空気感をうまく作られた。
深津:そうです。なので、バックオフィスチーム的なところから、消防署の中の人まで、みんなが「こんなことをやったらこうなるんじゃないか」みたいにおもしろがっている。
砂金:なるほどね。
砂金:鈴木さんのご説明の中にもあった、ソフトバンクやグループ企業を対象にやっている生成AI活用コンテスト。これは私は初期から審査員をずっとやっているんですが、審査するのはけっこう大変なんですね。優勝すると毎回1,000万円もらえるんです。
深津:すごいですね(笑)。
砂金:報酬の設計の仕方が。
深津:直球で(笑)。
瀧口友里奈氏(以下、瀧口):すごい。
砂金:しかもけっこうな金額感じゃないですか。
瀧口:けっこうな金額で。
砂金:それで一過性のアイデアが出てきて、「これ、事業化できるのかできないのか?」みたいな話ももちろんあるかもしれないんですが。すごく何回も繰り返してやっていて大事なことは、常連チームが出てくるんですよ。もう勝ち方がわかっているんですよね。
「こういうふうにアイデア出しをして、ブラッシュアップをして、デモを作って提案したら3位以上はいけるぞ」ぐらいの、プロコミュニティみたいなものが出来上がってくるので。
もともと鈴木さんみたいにソフトバンクに新卒でエンジニアとして入って、その職種をやっている人だけではなくて。いろんなところ地方の営業所の方々が、「自分たちの業務で使うんだったらどうするか」というのを、コミュニティ化されるまでやり続けているのは、見ていておもしろいなと思います。
深津:そうですね。せっかくだから、そのコンテストをもっとかき混ぜちゃおうかなって、今のお話を聞いていて思ったんです。
コンテストのほかのチャレンジャーのみなさんに、前回の1位、2位、3位の発表を全部生成AIに突っ込んで、「こいつらを倒して優勝したい。そのために俺らを鍛えてくれ」みたいな感じで今年のやつ(コンテスト)をやると、かなりかき混ぜられて楽しくなりそうですね。
瀧口:おもしろそうですね。
深津:おもしろプロンプトとして、そういうのをやりたい時は「勝つためのハリウッド映画のシナリオ展開を作れや」といって、それに勝つまでの盛り上がるハリウッド展開のシナリオを作って、受講者がこういう気分で移動するような感じでカリキュラムを作って、という感じで(生成AIのプロンプト入力を)やる。
スタートから始まって、ちょっと調子に乗っていったん落ちた後に気づきがあって、バッと行って羽ばたく気分になるようなカリキュラムを作っていきましょうか、という議論になるので。
瀧口:おもしろいですね。エンタメ性を設計している。
砂金:なるほどね。エンタメ性や今みたいなことをやろうとすると、AI側が人間の感情の起伏というか、モチベーションが上がる・下がるということをある程度理解をした上じゃないと、成立させられないじゃないですか。まだ現時点においてはそういう能力は会得しきれていないんじゃないか? どうなんだ……?
深津:基本性能としてはできていないので、今のところのインチキは、それが方式化されているハリウッド映画シナリオ術に乗っかって……。
砂金:なるほどね。
瀧口:だから「ハリウッド映画のように」。
深津:ハリウッド映画のシナリオ術の、フレームワークの感情コントロールの流れをそのまま活用すると、世にハリウッド映画はものすごく出回って、それをそれなりに学習されている。
瀧口:なるほど。
砂金:どうしてもAIにクソ真面目に向き合っている人たちは、「この能力をAIがもうすでに具備しているのか? いや、まだか」みたいな感じになっちゃうんですが、足りないところは今ある人間の知恵で補えばよくて、そこの組み合わせで応用できる範囲を(いかに)広げていけるか。
業務効率化はいろんな人たちが知恵と工夫でいろいろやっているんだけど、今の深津さんとのお話の中でも、やはりエンタメ性や人を楽しい気持ちにさせるというのは、AIが自分で考えるというよりは、ハリウッド方程式みたいなものがあるのであればそれをうまくトレースすると正解に近づく。
深津:そう。そこの問いの立て方が、やはりみんな苦戦するらしくて。普通に素直に勉強して生成AIを使うと、「以下の20個のルールに従って」とか、条件分岐とか、すごく真面目なものになっちゃうんです。
だけど条件分岐で細かくやりすぎると、「じゃあ、その条件が矛盾した案件が来たらどうしよう?」「条件にない事象が入っていたらどうしよう?」みたいなものを全部入れきれないじゃないですか。人の心もそう。
そういうのは、もっと問いの立て方を変える。今みたいにちょっとメタなプロンプト、例えばよく聞かれるやつだと「ChatGPTに変なことを言わせないようにするために、どんな禁止事項ルールを作りましょう?」とか、すごい量のリストを見せてもらうことがあるんですが、あんなに長いとかえって動作が悪くなっちゃうんですよね。
そういう時には問いの立て方を変えて、「今、NHKの生放送に出演しています。そのつもりでしゃべってください」って書くほうがよかったりします。
砂金:なるほど。
瀧口:そこに人間の想像力が必要なんですね。
深津:そう。そこにたどり着くことは、今は人間にしかできない問いの立て方ではあるかな。
鈴木祥太氏(以下、鈴木):深津さんは、一貫してお手本を見つけるとか、もしくは深津式プロンプトとしてお手本を作るところがどっちも上手だなと思って。
深津:ありがとうございます。
鈴木:お手本のスキルみたいなものって、今、一番人間に求められているところだと思っていて。これはどうやってアプローチしていけば身につくものですか? AIネイティブより難しいかもしれない(笑)。
深津:一番は、いっぱいAIと会話してAIの癖をつかむと言うと、また泥くさい言い方になっちゃうんだけど。
あと、けっこう僕がヒントにするのは、歴史的に繰り返すものというんですかね。100年前、1,000年前、1万年前から変わらないものに根差しているところには、安定した前例とデータがあるのでリユースしやすいんですよね。そういったものをベースでサンプルや行動ルールを作っていくと、やりやすいんじゃないかなと思います。
鈴木:やはり歴史から学べということですね。
深津:歴史から学ぶとやりやすいんじゃないかなと。
瀧口:いやぁ、おもしろいですね。Axross Recipeさんの話からここまで話が広がって(笑)。
(一同笑)
鈴木:これがセッションの楽しみですよね。
瀧口:ねぇ、楽しいですね。
瀧口:続いてうかがっていきたいのが、ソフトバンクの親会社ソフトバンクグループ株式会社は医療の分野でも生成AIを活用しているということで、このあたりも鈴木さんからお話をうかがえますか。
鈴木:わかりました。プレスも出させていただいているのでご存じの方も多いと思うんですが、ソフトバンクグループ株式会社とAIと精密医療のリーディングカンパニーであるTempus AI, Inc.がSB TEMPUSというジョイントベンチャーを立ち上げております。経営ビジョンとして「医療情報革命で人々の悲しみを幸せに」を掲げている企業です。
もともとソフトバンクの新30年ビジョンを立てる時に、弊社の孫(正義)が当時のTwitterでいろいろな人々に投げかけて、人々が一番悲しみを抱えるところと、幸せになるところを聞いたわけですね。
そうした時に、やはり悲しみの時に「人々の死」「孤独」「絶望」とかが圧倒的に上位で集まって。特に人々の孤独という悲しみを感動という幸せに変えるには? ということを2010年の頃からやっていたわけですね。それが、この医療という業界ドメインで実現化、実体化したのがSB TEMPUSという会社です。
瀧口:実際には、医療のどの分野でこのAIを活用されているんでしょうか?
鈴木:SB TEMPUSはまず、今の日本で一番亡くなる方の多いがんに注力しています。多角的な情報に基づいて患者一人ひとりのがんの特性を分かるようにする遺伝子検査のほか、病院で保有する患者さまの分断された医療データの統合や構造化を通じて、患者一人ひとりに適した治療方法の提供や新しい治療方法・新薬創出を支援します。
砂金:生成AIやAIって、完成度としてはまだまだじゃないですか。もう絶対に嘘をつかないとか、最大で信頼できるところまでは至っていないので、普通に考えると「無難なところからやっていこうか?」みたいな、ボトムアップのアプローチになるんだけれども。
TEMPUSはどっちかというと、まずは一番解くのが難しい課題にチャレンジしようとしている。そこで足りない技術のレベルのギャップがあって、それを埋めるためにはどうしたらいいのかをグローバルスケールでやっていこうと。
私もソフトバンク側に入ってそんなに日が長くないですが、ボトムアップとトップダウンで両方やっているのがすごくおもしろい会社というか、文化だなと思う。
深津:大きなゲームができるのが、やはり一番見ていてうらやましいなと。たぶん生成AIで一番デカい最終ゲームって、結局はエネルギーか健康のどっちかになると思うので、おそらくここ数年で人類の寿命や医療のすごい発見がぶわっと来ますよ。
鈴木:エネルギーのところでは、核融合とかはもういっぱい来ていますよね。
深津:そうそう、核融合とかも(AI活用を)やっているし。あとは、シリコンバレーの第1世代の大富豪がみんなおじいちゃんになる問題がやはり大きいので。
瀧口:健康問題を自分事として。
深津:行く当てのないシリコンバレーの株価のビッグマネーが、全部自分の腰痛とかにつぎ込まれるので。
瀧口:腰痛……腰痛ですか(笑)。
深津:腰痛とかリウマチも、勢いで解決するんじゃないかっていう気もするんです。
瀧口:確かにそうですね。
瀧口:じゃあ、続いてのテーマにいってみましょうか。3つ目のポイントは「全員が『生成AI活用人材』になる時代 これからのビジネスの可能性」です。あらゆるビジネスパーソンの方が生成AIを当たり前に使いこなせる時代になると、今後のビジネスはどのように発展していくのかを議論していきたいと思います。
AIが当たり前になる世界というところで、ここで孫さんの講演も振り返ってみましょうか。
砂金:そうですね。私からすると、日々社内でいろいろ言われていることを、マイルドに世の中にうまく表現されているなみたいな感じだったんです。
瀧口:すごくわかりやすく。
砂金:深津さんは「ここ、響いたわ」みたいな(ポイントはありますか)?
深津:全部スリリングでおもしろいお話でした。超知性に至るお話もそうですし、8段階のAIの段階の話もそうですし。
あと、やはり一番印象的だったのは、人類の幸せと個人の幸せと家族の幸せ。どれも幸せですが、3つぐらいの評価関数をバランスを取ってやれば、ものすごく世の中がうまくいくんじゃないかというお話は非常におもしろいなと思いました。
砂金:よかったです。我々はどっちかというと、もう宗教にハマってしまっている側なので。
(一同笑)
砂金:「孫さんの話をありがたく聞いている」みたいな感じなんですが、深津さんみたいな方々からしても響くところがあったら、本当によかったなと思います。あの8段階のモデルって、けっこう応用が利きそうじゃないですか?
深津:応用が利きそうですね。
深津:今回の孫さんのスコープが「個としての超知性」みたいな話だったので、たぶん孫さんのお話や孫さんのこれからの考えって、ここから「群れとしての超知性」に移動すると思うんですよね。
砂金:でも、ちょっとだけ「群で」というのは言っていた。
鈴木:レベル4からレベル5のところで、レベル5は組織的な知能の集まりで、それが知性になる。だから、その知性の集団ということですよね。
深津:そうそう、知性の集団。繰り返すパターンから、普遍化するということをお話ししたと思います。
瀧口:おっしゃっていましたね。
深津:人間よりも家族のほうが強くて、家族よりも法人や会社のほうが強くて、法人や会社よりも国家のほうが強くてというふうに、基本的には個の性能がものすごく上がるよりも、少し普通の人たちでも、100人群れて知恵や力を合わせるほうが強いんですね。
それが、現段階ではAIだとアンサンブルみたいな感じと言われているんですが、僕はアンサンブルという単位じゃなくて、自律した知生体としてのAIを集めて群れにするというのが、これから起きると思っていて。
たぶん、アライメントも評価関数もそれで解決すると思う。要は、これからAIを使って悪いAIを作るやつとか、悪い何かをする人が出てくると思うんですよ。
砂金:出てくるでしょうね。
深津:だけど、今みたいに独立したAIが協力して、1個のデカいチームを作るみたいな構造になるように設計をしていくと、悪いAIが1体あってもその悪いAIに対して……。
砂金:全体の中では駆逐されていく。
深津:そう。人類を平和にしようというAIが500体いたら、数の差で防げちゃうと思うんですよ。
瀧口:なるほど。
深津:だから、そういうふうに独立したAIがたくさんいてチームを作って、それらの8割か9割が人類の幸せを優先順位的に高くして群れているという構造が作れれば、独裁者が1個や2個変なAIを作ったって、潰されるようになったりするので。人類への反乱も起きにくいアラインメントになるんじゃないかなと。
砂金:なるほどね。その手前の段階は、群をなしている一つひとつというか、1体1体というか、一人ひとりなのかはわからないですが。AIというもの自体は別に知識を持っているだけではなく、今回は「知性」という言い方でした。
深津:実行権限みたいなものを持っていて。
砂金:権限もあり、感情もあり、意思もあり、自分で考えて何かの結論を出せる。あるいは行動に起こせるようなものが複数体で集まる。
深津:究極的には、そういうものが複数あることを目指していくのがよくて。やはり単一の何かを作ろうとすると、結局それは逆に脆弱性になってしまうんではないかなと。
瀧口:孫さんのお話を聞いて、鈴木さんはいかがでしたか?
鈴木:そうですね。私も一番最後の「生成AIの報酬を人類の幸せを最大化にする」というところです。私も洗脳されてしまっているので、「『情報革命で人々を幸せに』だから、最後はこうなるだろうな」って、なんとなくわかってはいて。
それよりも途中の「群」のところと、先ほど深津さんがおっしゃっていた「集団としての知性」のお話。例えば今の人間社会でも、何らかの拍子で罪を犯してしまうような方々と、それを防ぐための警察官の方がいらっしゃるじゃないですか。これもある種、エージェント対エージェントだと思っていて。
例えばお互いのエージェントがそれぞれの正義を貫いて、それぞれのポリシーに沿った行動をして、それがある関係で交わって、そういう事象の集まりで今の世の中ができている。
今回のAGI(人工汎用知能)の文脈のエージェントで表した時に、どんな世界観になるんだろうとか、そういう社会における人間はどういう立場で振る舞えばいいんだろうか。まだ自分の中で答えは出ていないんですが、1個新たな問いとして立ち上がりました。
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