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スペシャルクロージングセッション:ソフトバンクが「AI活用ノウハウ」の民主化を目指す理由(全4記事)

生成AI活用のカギは「自分を成長させるために」使うこと 使いたいけどコツがわからない人向け「AIネイティブ」への第一歩

SoftBank World 2024では、ソフトバンクが注力する、AI時代の基盤となる次世代社会インフラの構築に向けた取り組みなどを紹介しました。「ソフトバンクが『AI活用ノウハウ』の民主化を目指す理由」と題した本セッションには、深津貴之氏、鈴木祥太氏、砂金信一郎氏、瀧口友里奈氏の4名が登壇。本記事では、自分自身をAIネイティブに育てるためのヒントを探ります。

AIネイティブになるための報酬設定のポイント

瀧口友里奈氏(以下、瀧口):鈴木さんはどう思いますか? (AIの)報酬の設定に関しては「こういったものがいいんじゃないか」という。

鈴木祥太氏(以下、鈴木):そうですね。まさに今回のテーマがAIネイティブであれば、「自分自身をAIネイティブに育て上げる」というところを報酬に設定いただくと、引き出し方とか、こういうふうに振る舞うといいよという、立ち回りも教えてくれるんじゃないかなと思います。

砂金信一郎氏(以下、砂金):GPTsやGemsみたいな決まったプロンプトというよりは、そこに追加して「もうちょっとこういうふうにやっていってほしいんだ」という。これは厳密には強化学習というプロセスを踏んでいるわけではなくて、プロンプトがちょっとずつ変化していくという手法だとは思うんですが、疑似的には強化学習っぽいじゃないですか。

深津貴之氏(以下、深津):疑似的にはそうですね。

砂金:なので、AIとの対話というかコミュニケーションを通じて、「俺は本当はもっとこういうふうにしてほしかったんだよ。じゃあAIさん、次からはその体(てい)でよろしくお願いしますね」みたいなことをちゃんと繰り返していくと、使っていけば使っていくほどどんどん賢くなる。

その中で自分も成長するし、AI自体も賢くなり続けるループが回ると、「成長するためにがんばらなきゃ」というよりは、非常にストレスなく、目の前で会話をしていると自然と問いが深まるかたちになる。

深津:そうですね。英語の勉強とかも、GPTに「英語を訳して」じゃなくて、「訳と説明を通じて、私がめっちゃ英語が好きで楽しくて明日もやりたくなるようにしてね」まで設定する。

瀧口:すごい。

砂金:そういう報酬設定というか、そういうふうに振る舞ってねと(AIに指示を出す)。「今日のはすごく良かったよ」と言うと、「じゃあ、この調子でAIももっとがんばります」みたいな。

深津:そうです、そういう感じ。

深津貴之氏が教える、AIを使う際の注意点

深津:たぶんこれをやりたい、明日からチャレンジしようという方もいっぱいいらっしゃると思うんだけど、1個だけ注意しなければいけない。けっこう重要なので言っておかないとなんですが、自分に対してそれをやるのはすごくいいので、どんどんやったらいいと思います。

一方で社員が使うGPTでそれをやろうとなると、すごく厳密に解釈するとEUとかの倫理規程で言うところのマインドコントロールをするAIに抵触するので、他人に対してそれをやっちゃダメです。

砂金:なるほどね。

瀧口:そうなんですね。

深津:自分に対して、自分を成長させるためにやる感じでしないと(いけない)。あと、こっそり人の行動傾向を変えるというのは、ポジティブなものでもマインドコントロールになる。いいことと悪いことって、一瞬でひっくり返ったり表裏になっているので、そういうところは気をつけて使うと素敵かなと。

瀧口:なるほど。

鈴木:倫理観みたいなところは、人と人のコミュニケーションでも同じですよね。

深津:そうですね。

瀧口:個々の社員の方の使うAIの方針の設定も、個々に任されるべき。

深津:そう。あるいは、あっても開示されていて、自分で上書きの権限が与えられるのが理想。

瀧口:なるほど。非常に重要な部分ですね。

“独り言を聞いてもらう役割”としてAIを活用

瀧口:鈴木さんはいかがでしょうか?

鈴木:そうですね。私は在宅勤務中は1人で仕事をしているので、スマホを立てかけておいて、パッと依頼が来て困ったことがあったら、最近出た「Advanced Voice Mode」にすぐに投げるというのをやっています。

感動したのが、Advanced Voice Modeで出力されている音声が出てくる中で、ちょっとなんか違うなと思った時に「あっ、ちょっと待って。実はこうで、もうちょっとこういう視点から考えてほしい」と被せて言うと、いったん止まってくれるんですよ。これをちゃんと聞いた上で回答してくれるので、ここのやり取りがより人間らしくなったなと思います。

瀧口:困った時というのは、例えばどういう時に使っているんですか?

鈴木:基本的に困った時というのは、上司の方やお付き合いさせていただいている関連部署とか、お客さんから緊急の依頼が来た時。いったん気持ちを整理したい時は、ある種自分の独り言みたいなことを聞いてもらう役割として置いています。

別にAdvanced Voice Modeがない時も、自分で作業をしながら独り言が出るタイプだったので、それを聞いてもらって、客観的に見てメンターとして声を掛けてもらっています。

なかなか上司に自分から「1日付きっきりになってアドバイスくれ」とは言いづらいんですが、(Advanced Voice Modeは)お金さえ払っていればどんなことでも聞いてくれるし、「反論して」と言ったら反論してくれるけど、基本は肯定的に返してくれるので、心の安定的にはけっこう助かっています。

瀧口:ビジネスシーンでも、やはりメンタルは大事ということですね。

鈴木:そうですね。パフォーマンスを出す上ではメンタルは非常に大事だと思います。

瀧口:そういうところで活用されているんですね。

鈴木:はい。

砂金:でも、鈴木さんがそんなに寂しさを感じながら仕事をしているって思っていなかった。

(一同笑)

砂金:もう少し話しかけるようにします。

鈴木:出社している時はメンバーが部屋にいるので、いつでも雑談ができるんですが、私はコロナの中で入社して、けっこう在宅で1人で働いていて。チャットやZoomが2〜3時間ぐらいの時も、作業中心みたいな時もあったので、そういう寂しさを紛らわすところでも使えるのかなと思っています。

瀧口:なるほど。

ソフトバンクの社内起業制度から生まれた「Axross Recipe」

瀧口:では、ここから鈴木さんにソフトバンクがすすめるAxross Recipeのお話についてうかがいたいんですが、ご説明いただいてもいいですか?

鈴木:はい、承知しました。Axross Recipeは先ほども少しお話しさせていただいたんですが、ソフトバンクの社内起業制度、いわゆるボトムアップ型の立ち上げ。

ソフトバンクというとPayPayやGen-AXみたいな、「垂直的に会社として一気にやるぞ。リソースをガンガン割いて突き進むぞ」というタイプの起業と、ボトムアップで現場の課題感をもとに0→1の新規事業を立ち上げるような社内起業制度があります。

(Axross Recipeは)0→1型の社内起業制度から生まれた、業務に活かせるAI・DX人材育成サービスです。もともとCtoCで現場のノウハウが集まって、エンジニアが学び合うようなコミュニティを作っていたところ、さらにBtoBにも拡大させていき、人材教育を軸に企業のDXを加速させるような支援を行っております。

現在、法人のお客さま向けに「Axross Recipe for Biz」というものを提供させていただいております。大きく4つ、オンライン学習、研修・ワークショップ、社内のイベント運営。弊社でやっている生成AI活用コンテストを、お客さま先でもやってもらう支援をさせていただいているのと、あとは人材育成の伴走支援を行っております。

口頭でのやり取りをオンライン上に蓄積

鈴木:具体的なコンテンツとしては、DXからAIまで、かつレベルもリテラシーレベルから、本当にAIエンジニアの方が一線で業務でやっているようなことをコンテンツ化する。初級、中級、上級のところをコンテンツとして用意させていただいております。

こちらが、今回のセッションに参加いただいているみなさまにまさにぴったりのオンライン学習「生成AI活用プラン」というものです。

こちらは生成AIに特化したコースを我々で体系化した状態で設定しておりますので、トップ画面に表示されているものを従業員の方に「こことここは必須で学んでね」「こことここは、レベルが高い人は物足りないところをオプションで学んでね」というかたちでご案内すれば、1日目からすぐ使えるようなプランになっております。

また、自社独自のノウハウを共有できるような投稿機能。それこそ働き方の変化で、これまで口頭で済んでいたようなノウハウのやり取りを、ある種オンラインのプラットフォームに溜めておきたい。それをいつでも誰でも編集できて、いつでも誰でも閲覧することができるようなプラットフォームの機能も提供させていただいております。

こちらが業務に活かせる体験を重視した研修になっております。オンライン学習を提供して、例えば上位20パーセントぐらいの方は積極的に活用してくれていて、使用率がすごく高い。

だけど、業務で忙しくてなかなか時間が取れない中位層あたりの方々には、まずは研修で1回集まって「これから会社として生成AIをやっていくんだぞ」というところを意識付けて、その上でオンライン学習でその後のフォローをしていただくこともやっております。

こちらが特に管理者向けの方で、社員のみなさんが受講されているのか、どれぐらい業務に活用しようというマインドセットを持てているのか、気になるかと思います。そうしたところを管理者向けにも画面として、ダッシュボードとして提供させていただいております。

このようにAxross Recipeとして、総合的に生成AI、そしてDXの人材を支援するようなプラットフォームの運営を行っております。

「カリキュラムが正しすぎること」よりも重要な点とは

瀧口:砂金さん、Axross Recipeに関していかがですか?

砂金:私はいろいろ社内で議論はしているんですが、ユーザーインターフェースの専門家から、深津さんの意見をおうかがいしたい。

鈴木:ぜひお願いします。これはメンバーにフィードバックします。

砂金:そうなんですよ。これはもともとボトムアップ型みたいなところもあったと思うんですが、たぶん「生成AIをこれから学びたいんだけど、よくわからないな。どうしよう」という時に、今のところ駆け込み寺の存在になっていて。

eラーニング教材みたいにはなりつつも、それ以外のところもちょっと充足していこうというフェーズにおいて、もうちょっとこのあたりが良くなるんじゃないかみたいなものってありますか?

深津:一番大事なのは、個人的には2つ。1つはトップダウンとボトムアップのサンドイッチにちゃんとなっているか。

もう1つ、僕がわりと好みでよく言うのは、エンターテインメントで成立する「楽しい」とか「充実している」とか「己が伸びている感触があるか」を設計することが、カリキュラムが正しすぎることよりも重要なんじゃないかと思っています。

砂金:なるほどね。

深津:あとは何でしょうね。仕組み上、自動で発動せざるを得ないとか、あからさまでない強制性がある程度ちゃんとシステムの中に仕込まれているかとか。そういうものがちゃんと設計できていると強いのかな、習慣になりやすいのかなと。

瀧口:なるほど。

一人ひとり違うモチベーションに働きかける工夫

瀧口:最初の「ボトムアップ、トップダウンのサンドイッチ型になっているか」というところは?

深津:例えば、下がすごくやる気になっても、上がお金を払ったり道具を入れてくれなければ、「セキュリティでガードされた細かいところでちょっと工夫します」とかでしか使えないし。逆に上が大金を払ってすごいシステムがあっても、下が興味がなければ使ってもらえないことになるので。

それぞれ違うモチベーションを持っているんだけど、それぞれの違うモチベーションに対してつつくところを工夫して、上は上で、下は下でやる気にしてあげるのがかなり重要ではないですかね。

瀧口:そこがきちんと実装されているかというところは、鈴木さんはどうですか?

鈴木:1個目のところは十分できているかと思います。まず、特に今回のSoftBank Worldのような弊社の全社を挙げてのイベントには、特に経営層のレイヤー、ハイレイヤーの方々が中心となって来ていただいています。そこで孫(正義)の講演や宮川(潤一)の講演を聞いていただいて、一気に「やはり今、トップとしてやらねば」というマインドを整えていただく。

次にコミュニケーションとして下に降りてくる管理職の方向けには、理想も掲げながら、具体をどうやって進めていくのかも一緒に説明しないといけないので、そこを管理職セミナーで提供させていただいております。

その上で管理職の方に意思決定をいただいて、まさに先ほど説明したようなオンライン学習のプラットフォームを現場に入れていただいているという、経営層、管理職、現場の3層構造になっています。いかがでしょうか?

深津:素敵だと思います。

(一同笑)

インセンティブやエンタメ性をどう設計するか

深津:たぶん、ネタとしてはいろいろ載っけられそうなんだけど、基盤がしっかりしているので強いなと思ったので。僕の好みだと、管理職さんのダッシュボードがあったじゃないですか。

鈴木:はい。

深津:ダッシュボードの講習の部分の仕組みそのものと、現場の講習のところがくっついていてる。要はダッシュボード講習で、ハイスコアを手に入れるためには現場の子たちをうまく動かしてガンガン勉強させると、それが上司側の講習のスコアになるとか、くっついたりすると素敵だなと。

瀧口:なるほど。

鈴木:確かに、めちゃめちゃいい報酬設計。

砂金:たぶん、エンタープライズITの世界で仕様どおりに画面を作るという世界だと、モチベーションとかはあんまり気にしないじゃないですか。「使い方がわからなかったらマニュアルを読んでください」みたいな感じの作りのシステムが非常に多くある。

スマホ以降、生成AIでさらに加速されると思うんですが、「自然とすっと使い続けたくなる、なぜか?」みたいなところが、センスとかじゃなくて、もうちょっとサイエンスになっていて、それが仕組み化されている。

「どうもやり続けると自分にはいいことがあって、成長もあるし褒められるし、いいこと尽くめじゃないか」というポジティブなマインドセットの中、「使い続けられる仕組みがたくさんあるんです」というふうにコンテンツ面も仕組み面も両方あると、さらに良いツールになるかもしれないので。深津さんにタダで助言をしていただきました。

鈴木:いや、本当にありがとうございます。たぶん普通にコンサルで出したらめちゃ高いと思うんですが、役得だなと思います。

深津:ソフトバンクさん価格で見れば、誤差みたいなものだと思いますよ。

(一同笑)

瀧口:しかも公開でやっていただいて。なので今、砂金さんがおっしゃっていたのは、どうやってインセンティブを設計するかと、エンタメ性というところですかね。

砂金:そうですね。

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