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スペシャルオープニングセッション :「AX時代」目前。ソフトバンクが描くビジネス変革(全5記事)

ビジネスパーソンの仕事の3割〜4割はファイルなどの「探し物」 澤円氏が語る、無駄を省き業務効率を上げるAIの技術

SoftBank World 2024では、ソフトバンクが注力する、AI時代の基盤となる次世代社会インフラの構築に向けた取り組みなどを紹介しました。『「AX時代」目前。ソフトバンクが描くビジネス変革』と題した本セッションでは、株式会社圓窓代表の澤円氏、Gen-AX代表の砂金信一郎氏、ソフトバンクiPaaS事業開発本部の平岡拓氏が登壇。本記事では、AIを敵ではなくパートナーとして捉えるメタ思考の重要性を語りました。

仕事の3割〜4割はファイルなどの「探し物」をしている

瀧口友里奈氏(以下、瀧口):澤さんは、今のGen-AXさんの事業の可能性についてはどうですか。

澤円氏(以下、澤):これは通訳がすごく大事なんですよね。特に僕は情報共有系のITコンサルを長年やっていて、「業務改善をしましょう」と言っていたんですけど。ビジネスパーソンの仕事をつぶさに観察すると、だいたい3割から4割はひたすら探し物をしているんですね。

例えばパソコンを使っている時間を調べてみると、当時、1割くらいはエクスプローラーを見ていたんですね。いわゆるブラウザじゃなくて、「あれ、どこへやったっけ?」とファイルを探しているんですね。それにワークタイムの1割を取られちゃっている。

他にもミーティングやメールとか、「あれはどこへやった?」「これ知ってる?」と探しているんですね。探す時間で3割、4割取られちゃうっていうのがずっと続いている。今の話を聞いていると、AIありきで、ここの部分がごそっとなくなる印象なんですね。

手段を目的化すると、「それをうまくやるための手段を考える」みたいになって、こねくり回し始めるんだけど。それをとっとと(AIに)任せて、本業に割く時間を最大化するには、まさにこのブリッジをする仕事がすごく重要だなと思いますね。

AIで業務の属人化を解消

瀧口:なるほど。自分自身の仕事を振り返ってみても、本当に探しているなと思いました。

澤:「合っているんだっけ? 間違っているんだっけ?」といった時に、先ほどのテンプレートから引っ張ってきて、問答集みたいなものを見られる。なので「これは正しいんですよ」というお墨付きが付いているものであれば、コピペして使えると思うんですけど。

前はお墨付きがあるかどうかわからないから、属人的になっちゃっていると。「これ、出していいですか?」とかが絶対あるわけですね。そこでまた探す作業があったのが、AIがお墨付きをちゃんと出してくれた状態で使えると、ものすごく効果がありますね。

砂金信一郎氏(以下、砂金):ちなみに、澤さんと砂金の初対面・初対戦は、(澤氏が)SharePointの営業をやられていた。その時に、私はLotus Notes側に付いてコンサルをやっていたんですけど。

澤:そうそう。ガチ競合だったの。

砂金:たぶんIT業界が長い方からすると、SharePointやLotus Notesは懐かしいみたいな感覚で、やっていることは一緒なんですね。今回は道具立てがだいぶアップデートされているので、今度こそは昔からやりたかったことが実現できるんじゃないかというワクワク感がある。

澤:それはあるな。「これが何十年前にあったら」と思っちゃう感じのワクワク感。だから「現役で良かった」と思いますね。

瀧口:(笑)。ずっと走り続けてきて良かったと。平岡さんは、Gen-AXさんのお話はいかがですか? 

平岡拓氏(以下、平岡):事前にも何度かご説明をうかがっていたので、すごく進化していて感動しました。まさに先ほど「Agent to Agent」というお話をしましたけど、僕はどちらかというと利用者側のエージェントを作ろうとしていて。(Gen-AXは)企業側のエージェントを作ろうとしてくれている。sattoがGen-AXによって作られた企業エージェントと個人をつなげるみたいなことができるとすごい。



砂金:AtoAですね。

平岡:まさにここでAtoAができるんじゃないかと思って、すごくワクワクしています。

澤円氏がイギリスで見た第1次産業革命の記録

瀧口:なるほど、ワクワクしますね。ありがとうございます。さあ、ここからはちょっと空気を変えまして、AIに関わる9つのキーワードをもとに、みなさんとセッションをします。題して「9セッション」ということですね。こちら(スライド)をご覧いただきましょう。

9つのお題を準備いたしました。この中から選んでいただいて、みなさんで議論をしていけたらと思うんですけれども。どうしましょうか。まず、澤さん、選んでいただけますか。

澤:「メタ思考」というのがあるんですけど、いい言葉が書いてありますねぇ。

(一同笑)

瀧口:澤さんのご著書も『メタ思考 「頭のいい人」の思考法を身につける』ですからね。

澤:そうですね。僕の著書のタイトルなんですけど。「メタ思考で読み解く生成AIブーム」と「AIは人の仕事を奪うのか?」の2つを、絡めてお話ししたいと思います。僕は8月の頭にイギリスに旅行に行ったんですね。

ロンドンとマンチェスターに行って、マンチェスターはカミさんが「どうしても行きたい」「あそこはUKロック聖地だ」と言うので行ったんですけど。

そこで科学産業博物館に行って、第1次産業革命の記録を見たんですよ。実際、そこに第1次産業革命の主役だった蒸気機関による紡績機械が置かれていたんですね。

綿花から最終的にコットンの布を作るところまでをずっと自動化した機械がどーんと置いてあって、「あ、これか!」とちょっと感動したんですけど。そこにエピソードがいろいろ書いてあるんですね。まさに「AIは人の仕事を奪う」というところにもちょっとつながるんですけど。それが起きたことによって、当然機械化をすると、それをやっていた人の仕事はなくなるんですけど。

産業革命の背景にあった労働人口の減少

澤:じゃあなんでその機械を作ろうとなったかというと、これは順番が逆で、労働人口の減少のほうが先に来ていたんですよ。人手が足りなかったんです。マーケットがどんどん大きくなっているのに対して、人手が追いつかない状態になった。人はそう簡単には何倍にはできないですからね。

なので、さあどうしようという時に、蒸気機関を使うと自動化できるんじゃないかってことで、生まれてきたのがそれだったという話なんですよ。確かに仕事はなくなったんだけれども、それよりも解決される課題がすごく大きかった。なんなら、いいクオリティのものが大量に短期間でできるようになったということで、みんな喜んだんですが。

その機械から遠いところ、要するにマンチェスターでも仕事を奪われたと騒いだ人はいるんですけど、隣町以降のちょっと離れた人たちが、急に機械に仕事を奪われたとショックを受けて、ラッダイト運動、つまり機械打ち壊し運動を始めたんですね。

要するに「この機械があるから、自分たちの仕事が奪われたんだ。けしからん」とぶっ壊すんです。あっという間に警察と軍隊に制圧されたんですけどね。本当は憎むべきはその機械じゃなかったはずなんだけれども、それに矢印が向いちゃった途端に、今度は制圧される側になって貧乏くじを引いちゃったんですね。

余暇が生まれ、サッカー人口が増えて強豪国に

澤:じゃあ、当のマンチェスターでは何が起きたかというと、マンチェスターといったら何を思い浮かべます?

瀧口:サッカー。

澤:サッカーですよね。チーム名は?

瀧口:マンチェスター・ユナイテッド。

平岡:シティ(マンチェスター・シティ)。

澤:マンチェスターって、2つあるんですよ。まず、1つの都市に2つのプロリーグのチームがあることも驚きなんだけど、さらに言うと、2つとも世界のサッカーの名門チームトップ10の中に入っているんですね。

それがなんで生まれたかというと、産業革命なんですよ。産業革命によって余暇が生まれて、「サッカーでもやる?」となって、サッカーをやり始めた連中の人口がばっと増えて、その中にうまい人たちがいて。

なおかつ町が潤っているから、どんどんそこにいろんなものが投入されて強くなっていったと書いてありました。僕が言っているんじゃなくて、そこに書いてあったので、受け売りです。

(一同笑)

メタ思考で考えれば、AIは敵ではなくパートナーになる

澤:「なるほどな」と思って。まさに、機械というもので人が幸せになったということなんですね。要するにメタで考えましょうねということなんですけど。俯瞰して見ると、自動化されると時間が生まれる。時間が生まれたら、それを別のことに使えるってすぐに思いつくはずなんだけど、これを短視眼で見ると、そう思えないですよ。「俺の仕事が(なくなる)」となってしまう。



だから、まず俯瞰しましょうということですね。AIによって、自分の自由時間ややりたいことがもっとできるようになるという発想になると、AIは絶対に敵対視するものじゃなく、パートナーになると思うので。やはりここは、メタに考えるのがめちゃくちゃ重要だなと。

砂金:戦略コンサルをやった時に身に付けた特殊技スキルで、幽体離脱的なやつなんですけど。当時はまだ私は30(歳)前後くらいだったので、自分の現場での目線で、これはすごく大事だという話と。

経営者のみなさんに助言をしなきゃいけないので、メタ思考で俯瞰をすると、経営者の方々から今の課題ってどう見えているんだろうと。それを周りで支える部長・本部長のみなさんは、この課題をどう見ているのか、視点を行ったり来たりして考えることを(やっていました)。

戦略コンサルみたいな会社で、無理くりその環境にぶっ込まれると、やらなきゃいけないから自然とメタ思考が身に付く感じになるんですけど。一般の人にどうやってその大事さをわかってもらえるかっていう時に、「澤さんの本をみんな読んだらいいのに」と思います。

AIは人生を楽しむためのパートナー

澤:ありがとうございます。まさにズームイン、ズームアウトの話なんですが、デッサンってやったことあります?

瀧口:ないです。

平岡:下手くそです。

澤:カミさんが武蔵野美術大学出身で、デッサンがすごく得意なんですけど。カミさんにいろいろ教えてもらったら、例えばソクラテスの胸像があるじゃないですか。白いやつです。あれをポンと置いて、デッサンで描く。あれがおもしろかったんですよ。白いものを黒い鉛筆で描くんですよ。

まず、そこの時点である意味ジレンマみたいなパラドックスがあるんですけど。その時に何を描くかというと、みんなソクラテスを描こうとすると、よく罠に陥るんですね。「あれはソクラテスの像である」と言われると、それを脳内にプリントしちゃって、脳内のソクラテスを描き始めるんですよ。

だけど、先ほど言ったように鉛筆って黒。黒で白いものを描く。その時、実は何を描けばいいと思います? 

平岡:境界とか。

澤:境界。いいですね。

砂金:影。

澤:そのとおりなんです。境界は影で生まれるんですよ。世の中って、輪郭がないんですよ。(椅子やテーブルを指して)こういうものって輪郭がなくて、全部影なんですね。だから影を描く。影は、その空間にしかなくて、脳内にないんですね。その空間でどう光が当たっているかを描かなきゃいけない。だから、空間を見なきゃいけないんです。

だから、生成AIで、「AI」「自分の仕事」というふうに見たら駄目なんですよね。自分の仕事にAIが入ってきたら、「あ、これは大変だ」となるのではなくて、ぱっと目を上げて、「マーケットはどうなっているんだ」とか、「社会ってどうなっているんだ」「自分のキャリアはどうなっているんだ」と見ると、その中にAIというパーツが入ってくると思うんですね。

じゃあAIが、自分のビジネスパーソンとしての人生、あるいはプライベートの人生を楽しむために、「こいつは何をしてくれるんだっけ?」というと、見え方がぜんぜん変わってくると思うんですよ。

先ほどのズームイン、ズームアウトの考え方を入れると、AIはいろんな場面で絶対にパートナーになるはずです。

生成AIの進化でメタ視点で考えることも容易に

砂金:壁打ちで使う時って、ChatGPTやClaude、Geminiも、すごく優秀じゃないですか。「もっと具体化してくれ」とか「構造的に考えてくれ」とか「抽象的に戻してくれ」というのを、すごく完璧にやりますよね。

澤:そうそう。生成AIって、同じお題でしつこく言っても怒らないじゃないですか。人間にやると、「もういいかげんにしろよ」とか「もう忙しいんだよ」と言われるけど、今のところ、僕は一度も言われていないですからね。ChatGPTに「もういいかげんにしてください」と言われたら、僕はコンピュータ業界から足を洗おうと思っているんですけど。その機能を入れないでくださいね。

平岡:わかりました(笑)。

砂金:たぶんズームイン、ズームアウトもそうだし、視点を変えてメタ思考で考えるみたいのは生成AI時代で大事というのもあるけど、それを実現する文房具みたいなのも身近にあるから、以前よりそんなに肩肘張らなくても普通にできるように(なった)。

瀧口:文房具というのは、生成AIだとどういったことを指しているんでしょうか?

砂金:具体化・抽象化の作文のさせ方。これは別にそんな難しいプロンプトは要らないですよね。「要するに、まとめるとこういうことです」「具体的にもっと深掘りするように教えてください」という聞き方だけでもだいぶ違うんじゃないかなと。

澤:文房具的に言うと、物理で言うとスマートフォンとかパソコンだし、さらに言うとプロンプトって何を入力するかで、それを自然言語でできるところがポイントですね。以前だったらコンピュータのプログラミング言語だったり、何かしらの関数の知識がなきゃいけないところが、自然言語でできるっていうのが一番大きいですよね。

プロンプトを書ける人・書けない人の違い

平岡:でも、例えばプロンプトを書ける人と書けない人がいらっしゃるじゃないですか。どっちが悪いとかじゃないですけど。そもそも自分の思考が、今具体的なことをしゃべっているのか、抽象的なことを言っているのかを一歩引いて考える習慣がない人は、たぶんそれをプロンプトに表現することもできないんですよね。

だから、今が各論の話をしているのか、外形の話をしているのかわからないから、「解像度を上げろ」とか「抽象的にしてまとめろ」とか言えないんですよ。

こういうのはもっと教育とか、あるいは家庭環境とか、それ以前のどこかで、対立意見をぶつけたことがあるとか、何かしらメタ認知を強制させられるような環境に触れたことがあるかどうかみたいなのが、すごくティッピングポイント(転換点)な感じがしていて。僕はそれをどうすればできるんだろうというのがすごく気になります。

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