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CalTa株式会社 高見澤 拓哉氏ピッチ(全1記事)

大変な現場作業も「動画を撮るだけ」で一瞬で完了 労働者不足のインフラ管理を変える、急成長スタートアップの挑戦 

新しい未来の実装に挑むエンジニアのためのピッチコンテストStartup CTO of the year 2024。スタートアップCTOによるピッチコンテストを実施し、事業成長に連動した技術戦略を実現する経営インパクトや組織開発力などを評価指標に、2024年最も輝いたCTOの挑戦を讃えました。本記事では、CalTa株式会社 CTOである高見澤拓哉氏の6分間のプレゼンテーションの模様をお届けします。

労働者不足が大きな課題となっているインフラ管理

司会者:高見澤さん、持ち時間は6分間です。どうぞよろしくお願いいたします。

高見澤拓哉氏(以下、高見澤):お願いいたします。それでは「持続可能なインフラ管理の実現」ということで、CalTa株式会社の高見澤からご紹介させていただきます。

みなさん『線路は続くよどこまでも』という童謡をご存じでしょうか? 線路は野を超え谷を越えて続いていきますが、この線路を管理するのは非常に大変です。私自身、もともとJR東日本で働いておりまして、過酷な現場、危険な現場に多く赴いておりました。

その検査には多くの人材が必要であり、この検査結果を残すためにも非常に大量の書類が必要になってきます。一方でインフラ管理に関しては、少子高齢化に伴う労働者不足が大きな課題となっておりますし、高度経済成長期に作った構造物はどんどん老朽化を迎えています。

さらには最近ですと、自然災害の激甚化などが挙げられて、インフラが非常にダメージを受けております。

このままですと、子どもたちが当たり前にインフラを利用できる社会を未来に残せるでしょうか? 私は未来の子どもたちに自由に使えるインフラを当たり前に残してあげたい。そういった気持ちを持って、2021年にCalTa株式会社を設立。2022年に「TRANCITY」というサービスをローンチさせていただいております。

このTRANCITYは動画から3次元データを生成して、現実空間の現場をデジタル空間の中に再現するアプリケーションになっております。さらに、いつ、どこが、どうなっているかというのが、このソリューション1つで管理できるところがポイントになっています。

専門的な機器は一切不要で、動画データであればなんでも3次元化できますし、どんなデバイスでも簡単に使えて、誰でも直感的にすぐに使えるようなソリューションを目指しました。

今までの大変な現場作業は大幅に省略でき、動画を撮るだけでインフラ管理を可能にしていきます。

災害現場でもドローンを使って現地の状況を把握

高見澤:具体的な事例でございます。今まで橋梁の検査は、夜間の終電が行ったあとに足場を立てて行っておりました。非常に多くの時間がかかります。これをTRANCITYを使って動画を撮るだけで、一瞬で終わりにする。こういったことができるようになっていきます。

さらに、こちらは福井県さんの事例ですが、能登半島の地震でも使っていただきました。今までは地震の被害を調べに行っても、それを定量的に把握するのは非常に大変です。さらには長い時間もかかりますし、二次災害の危険性もあります。

TRANCITYを使うことで、ドローンを飛ばして3次元化して、そこに行かなくてもデジタルの空間を見ることで現場を把握して、二次災害の予防にもつながりますし、早期復旧も可能となります。

このようなTRANCITYですが、実現には大きな課題がありました。1つはIT技術やインフラ管理の技術といった、必要な技術が多岐に渡ること。もう1つは、現状の仕組みがすべて2次元データベースなので、運用やルール変更まで含めてやっていかないといけないということでした。

当時、お客さまからは「手間を取らせるなよ」「今までのやり方でいいんだ」といった声も聞かされ、非常に開発が難航し、何度も何度も諦めようと思いました。そのたびにチームメイトに励まされ、なんとか熱い情熱を持って走り続けることができました。

課題を克服するチームに必要な「3つの能力」

高見澤:私はこの課題を克服するために、会社のチームをユニークな3つの能力を持つように育ててきました。1つは多様な専門性です。私自身も鉄道技術者であり、さらに建設部門の技術士を持っております。さらにはソフトウェアも開発できるような、さまざまな知識を持った人間が弊社には多く在籍しております。

さらには企画提案力です。お客さまの実際のルール変更までどうやっていくんだ? というところを話せるような社員を多く集めることで、ルール変更まで成し遂げてきました。

次がオープンイノベーションです。使いたくないと思うようなソリューションじゃなく、さまざまな優秀な技術をすべて取り入れることで、お客さまに使いたいと思わせる。こういったところに取り組んできました。

このような多様な専門性を追求した結果、例えば寸法検査では寸法、面積、体積などの検査に必要な技術。さらにはお客さまが「昨日と今日で現場のどういうところが違っているかを確認したい」といった技術を踏襲してきました。お客さまとさまざまなお話をさせていただいて、お客さまがどういう機能がほしいのか、アップデートを重ねてきております。

また、企画提案力として、お客さまのルールをよく確認して、「どういった機能がTRANCITYにあると今までの仕事が変わるんだ?」といったものを実装することで、ルール化を成し遂げてきました。

さらには人の手で届かないような(場所を)例えばドローンや水中ドローンで、今まで3次元化できない世界を3次元化することで、もっと使いたいと思わせる。

例えばGoogleのソリューションと連携して、このへんを使ったら非常にワクワクした体験ができるんじゃないか? ということをお客さまに思わせて、一緒にルール変更を成し遂げてきたところでございます。

ローンチから2年でユーザー数10,000人突破

高見澤:このような結果、2022年にローンチしたソリューションでございますが、インフラDX大賞、先日のCEATEC AWARDのデジタル大臣賞を受賞させていただき、現在ユーザーは10,000人を超えております。

先日はTRANCITYのファンのカンファレンスを行って、新しいインフラ管理をみんなで盛り上げていこうということで、新しいムーブメントを起こしております。

このように動画やドローン、またはロボットで撮るだけでデジタル空間を作り、それを現場に行かなくてもどこでも管理できる。こんなソリューションを作っております。ゆくゆくは、例えば仕事から一線を退いたOBや主婦といった方々をインフラ管理に取り入れていくことで、労働力不足を解決していきたいと思っております。

「たのしい旅の夢つないでいる」というのが、冒頭の歌(『線路は続くよどこまでも』)の歌詞にありますが、子どもたちの楽しい夢がずっと続いていくように、私は人生をかけて挑みたいと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)

司会者:高見澤さん、ありがとうございました。ぜんぜん緊張していなかったですか?

高見澤:いやぁ、緊張しましたよ。

司会者:そうでしたか!

高見澤:本当に。

司会者:失礼しました。

高見澤:いやぁ、緊張しますね。

司会者:本当にすばらしかったです。ありがとうございます。

高見澤:ありがとうございます。

JR勤務時代から感じていた現場の課題

司会者:それでは審査員の方から質問をいただきましょう。質問のある方? すぐに(手が)挙がりました。塚田さん、お願いいたします。

塚田朗弘氏(以下、塚田):プレゼンありがとうございました。

高見澤:ありがとうございます。

塚田:もともと高見澤さんもJRですかね? 線路の周りで作業やお仕事をされていたと。

高見澤:そうです。

塚田:今日のプレゼンにあるように非常に多様な専門技術とか、おそらくもうエキスパートになられていて。あとは、お名前をググるとグッドデザイン賞を(受賞されている)。

高見澤:ありがとうございます。

塚田:ディレクターでもあり、デザイナーでもあるということなんですが(笑)。

高見澤:(笑)。

塚田:高見澤さんのバックグラウンドとか、JR時代から今に至るまでの変遷って、なんでそうなったんでしょう?

高見澤:ありがとうございます。一番最初、私は北陸新幹線の現場監督をやっていて、構造物を作る仕事を2年間やっていました。図面に書いてある鉄筋を1本ずつ数える仕事をずっとやっていたんですが、「なんでこの会社に入って、今までどんな勉強をしてきたんだろう?」と、非常に課題感を持っていました。そんな中で、同期とかがどんどん辞めていく。

「このままで、本当に今のJR東日本の人間がインフラを支えられるのか?」というのが、非常に課題に思っていたところです。そのため、東日本の中で技術開発や、さまざまな視点運用を行わせていただいて、JR東日本の中にいる時からシステム開発を少しずつ自分に取り入れていった。そんな感じです。

塚田:ありがとうございます。

司会者:よろしいでしょうか。

撮影した3Dデータの精度はどのくらい?

司会者:小野さんが挙げていますね。小野さん、お願いいたします。

小野和俊氏(以下、小野):プレゼンありがとうございました。いちいち現場に行かなくても、リモートで、撮影した3Dのデータで参照したい場所から参照できるというのは、明らかにメリットだとは思うんです。

例えば、映像データからどれぐらい老朽化したデータかをよろしく判定してくれるとか、そういった付加価値的な機能があるのかを教えてもらっていいですか?

高見澤:ありがとうございます。損傷をちゃんと判定するというのは、まだ非常に難しいんですが、例えば3Dの空間のどこに損傷があるのか(の判定)は、弊社でもかなりできてきております。

損傷の情報をAIに食わせて、動画から3次元化しているわけですから、動画の中のどこにその損傷があるのかは一般的な画像認識AIでできますので、それを3次元空間にフィードバックする。こういったかたちで、3次元空間の中からAIで物を見つけるところまではできております。

小野:ありがとうございます。

高見澤:ありがとうございます。

「TRANCITY」の課題と今後の展望

司会者:澤山さん、お願いいたします。

澤山陽平氏(以下、澤山):ありがとうございました。(プレゼンの)最初のあたりでは、「撮影は簡単にできます。動画で撮るだけですぐにそれを3D化できる」というところをアピールされていたと思うんですね。これはすごく良いんですが、精度とかを考えると、どうしてもトレードオフなのかなというふうに想像しています。

例えば分析をする人や老朽化の話をする人から見ると、必要な精度に足りないとか、これだとちょっとわからないとか、そういうギャップが生じてしまうんじゃないかと思うんです。そのギャップは技術だけでカバーできるものなのか、どういうふうにギャップを埋めているのか、そこをちょっと聞かせてください。

高見澤:ありがとうございます。まさに精度は非常に重要なところだと思っており、どうやって精度を高めていくかは、弊社も非常に力を入れている部分ではございます。

ただ、今の検査は、JR東日本としても営業キロが7,000キロメートルもあるところを見ていくので、目で見て検査をする部分がかなりのウェイトを占めています。なので、まずはこういったところを置き換えていく。

さらにTRANCITYでは、1センチぐらいの精度だったら簡単に出るようになっていますので、その領域までは全部変えていく。ミリとか0.Xミリみたいなケースもあるんですが、こういったところはTRANCITYがいろんなソリューションと連携することで、例えばレーザースキャナーを使ってミリの精度を求めたりして可能にしていく。このようなかたちで今は進めております。

澤山:なるほど。ありがとうございます。

司会者:よろしいでしょうか? 以上、質疑応答の時間は終了でございます。審査員のみなさん、高見澤さん、ありがとうございました。

高見澤:ありがとうございました。

(会場拍手)

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