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AIの進化とビジネス革新:サイバーエージェントが描く「未来のエンジニア像」(全2記事)

今までとこれからで、エンジニアに求められる「スキル」の違い AI時代のエンジニアの未来と生存戦略のカギとは

株式会社サポーターズによる運営で行われた「技育祭2024【秋】」。本記事では、株式会社サイバーエージェントの専務執行役員である長瀬慶重氏による「AIの進化とビジネス革新:サイバーエージェントが描く『未来のエンジニア像』」のセッションの模様をお届けします。後編では、これからの時代のエンジニアに求められるスキルについて解説しました。

エンジニアの未来は明るいのか?

長瀬慶重氏:長々と僕らの取り組みをお話ししたんですが、とにかく生成AIにしっかり向き合って、変革に付き合っていかなきゃいけない状況の中で、学生のみなさんに伝えたいなと思うことを簡単にまとめてきました。

ちょうど2023年3月の技育祭でのスライドがあったので、それを持ってきたんですが、「エンジニアの未来は明るい」という話をしたんですね。ただ、2023年の4月、5月から生成AIが一気にブレイクして、ちょっと世の中の空気が変わった状況になります。

Gensparkに「これから10年間のAIの発展のロードマップをわかりやすくまとめてくれ」と聞いたところ、このようなロードマップが出てきたんです。特によく言われているのが、「2030年前後にシンギュラリティになる」。

AIが人間の知能を超えると言われていて、これから一気にいろんなところに普及していく状況で、人材の不足自体もAIで代替される時代になってくる。ということで、本当にエンジニアの未来は明るいのか? というところを、生成AIをきっかけにあらためて考えてみました。

これは、僕が2023年に会社の役員に対して提言したものから一部抜粋してきたものです。ソフトウェア開発の工程において、30パーセントから50パーセントぐらいはAIが補完する。特に、補完する可能性は下流工程ほど高くて、ジュニアグレードのエンジニアほど相対的に価値が低下するんじゃないかと思っています。

あと、もう1つが日本のIT業界の構造です。内製開発をしている会社に行きたいと思っている人もいれば、コンサル企業だったり、SI、受託の会社に行きたいとか、いろんな人がいると思います。まず、欧米と違って日本は受託開発の比率が異常に高い構造になっている。多重下請けの構造が一般的で、IT人材の7割ぐらいがそのような企業に所属しています。

先ほど申したとおり、生成AIの発展によって下流工程や中流工程が置き換わっていくところもありますので、日本のIT業界の構造自体もけっこう影響を受けるんじゃないかなと思っています。

「エンジニアの2極化」が進む見通し

この写真は、僕が毎年小学生のプログラミングコンテストの審査をやっていて、参加しているんですが、ここ数年間でプログラミングコンテストに応募する子どもたちが年々すごい勢いで増えています。

プレゼンする子どもたちは、普通にAIを活用したiPhoneアプリを発表したり、高度なゲームを作ったりと、教育の発展によって技術がより身近なものになった。これから5年、10年先でいうと、AIネイティブな子たちが続々と世の中に出てくるという状況であります。

「エンジニアの未来は明るいのか?」というところにおいて、すべての産業の発展にITの技術は不可欠なので、この事態は加速すると思います。エンジニアが求められる時代はまだまだ続くと思うんですが、それと同時に、残酷なぐらいエンジニアの2極化が進むんじゃないかと思っています。

みなさんがこれからエンジニアを目指していく上で、どういうポジショニングで、どういう役割を担ってやっていくのか。こういうものがけっこう大事なのかなと思っています。

「どういうエンジニア(になるか)」というのは、すごく抽象的なことではあるんですが、今までもこれからも高度な問題を解決できるエンジニアの市場価値は高いですし、それが相対的にこれまで以上に高くなるんじゃないかと僕自身は思っています。

実際にサイバーエージェントの中でも、エンジニアと一緒に事業やサービスをやっている中で、「この機能をリリースしたら確実に収益が上がったり、ユーザーの支持を得る」というようなものがない中で、とにかく試行錯誤しながら価値を発揮し続ける。そういうエンジニアが、やっぱり僕らの会社でもすごく大事なんです。

彼らに共通することを言葉に落とすと何だろう? と思うと、「変化対応力」がすごく高い技術者に価値が残っていくんだなと思っています。

これからの時代のエンジニアに求められるスキル

そのような技術者が持っているスキルを言葉に落とすと、今まではエンジニアの基礎力があって、プログラムが書ければ、600万円、700万円、800万円の年収がもらえた。そういう時代だったんだと思うんですね。

あとは全体のアーキテクチャが描けて、プロジェクトをリードすることができれば、それよりも高い年収がもらえて活躍する時代だったんです。ただ、これまで以上に(スライド)右側にあるような「ソフトスキル」がすごく大事です。

ビジネスサイドの人と対等に話せることだったり、チームで引っ張っていくこと。世の中の技術がどんどん変化する中で、柔軟な思考や学ぶ意欲がものすごく求められる時代になってきます。

本当にエンジニアが大好きでずっとやっていきたいという人や、いつも組織を引っ張っていきたい、チームを引っ張っていきたいという人間力がある人。そういう人たちも、これからすごく活躍していくんじゃないかなと思っています。

僕らの会社のエンジニアにはグレードが13段階あるんですが、右側にあるのが「職能」です。いわゆる能力や技術的なスキルなんですが、グレードが高くなればなるほど、このスキルの評価の割合はグンと減っていきます。「職務」と書いているんですが、どういう役割で、どういう大きい仕事をしたかというところで、実際に僕らの会社も評価をしています。

どういうことが求められるかというと、ロジカルシンキング、チームリーディングなどがすごく求められるようなかたちになっています。キャリアの広げ方については、よく世の中に出ている「T型人間」とか「H型の人間」というふうにありますが、単一の特定領域からどんどん増えていくことが、より求められるような時代になってきました。

あとは職務の広げ方でいうと、今まではエンジニアがエンジニアだけをやっていればよかった時代から、組織、プロダクト、専門知識だったり、自分がどういうところに道を開いていくのかをちゃんと考えていくことが大事かなと思います。

“最速で一人前になること”がエンジニアの生存戦略

エンジニアの生存戦略で僕が若い学生によく言っているのは、「とにかく、まず最速で一人前になったほうがいいよ」ということと、「足腰の強いエンジニアになって」ということです。

AIがエンジニアを支援してくれると、本質的なことがわからぬまま、なんとなくいろんなアウトプットを作っている技術者が増えてくるんです。(今後は)本当に足腰の強いエンジニアしか残れない時代になってくるので、しっかり若いうちに勉強する。これがすごく大事だと思っています。

あともう1つ、いろんな経験を通して「なりたい自分」を見つけることが大事だと思っています。昔はエンジニアの延長で、上級SE、テックリードとか、上位互換の職務ばかりキャリアの型としてあったんです。実際はもうそんな時代じゃなくなっていて、例えばプロダクトで社会を変えたいと思っている人もいれば、チームで何かを成し遂げたいと思っている人もいます。

なので、自分の中での「なりたい自分」みたいなものをうまく言語化していくと、結果的にエンジニアからプロダクトマネージャーになっていったり、チームを引っ張っていくエンジニアリングマネージャーになる。そういうキャリアが見えてくるのかななんて思います。

なりたい自分を実現していく上で、ちょうど本田圭佑さんの良い動画があったので、ちょっと聞いていただきたいなと思います。

【動画再生】

これは僕自身もすごく認識していることで、誰と一緒に一生懸命がんばるかで、自分の成長角度が変わってくると思っています。

キャリア選択のカギは「一番成長できる環境を選ぶこと」

うちの代表の藤田(晋)も学生向けによく言っている話なんですが、「成長産業に身を置こう」という話をしています。

成長産業に身を置けばさまざまなチャンスがあるし、うちの会社も気がついたら100以上の事業があって、20代で開発責任者やCTOに抜擢されるような事例もあります。高いレベルの技術者、いろんな人たちとチームを組んでやることで、他の会社では経験できない太い成長ができる。

もちろん「高い報酬の良い会社に入ったほうがいい」とか、いろんな価値観があると思うんですが、20代は一番成長できる環境を選ぶことが何よりも大事なのかなと思っています。

今日は何をお話ししたいかということなんですが、エンジニアの未来は、僕は本当に明るい楽しい仕事だと思っております。ITの技術が本当にさまざまな産業に入っていって、今までIT業界と言われていなかった小売などにテクノロジーの進歩が入っていくので、活躍できる環境が数多あると思います。

その上で、実力をつけて真の意味で高いレベルの技術力を持っていくことと、技術以外の領域に広げていくことがすごく大事だと思っています。将来、自分がなりたいものを実現するためには、どこで働くか、どういう環境に身を置くかに徹底的にこだわってもらえるといいかなと思います。

みなさんも就職活動をしていくと、会社の人と話をする機会があると思います。本当にたくさんの社員と話をして、「この人かっこいい」と尊敬できる人たちがいっぱいいるような会社をぜひ選んで、そのような人たちと切磋琢磨できるような環境を見つけてもらえるといいのかなと思います。

技術力以外に求められる要素とは

最後におまけを持ってきております。毎年ずっと新卒採用をやってきているんですが、2025年以降の新卒採用(エンジニア職)は、実はこれまでと比べて4割近く採用人数を削ることにしました。AIの台頭によって、頭数というよりは、より質が大事になってくるということなんです。

ただ、質の見極めや、どういう学生がいいかなと思った時に、いわゆる技術力があるということ以外に知的好奇心がすごく高いとか、行動力があるとか、オーナーシップやリーダーシップを持っているとか。そういう、より人としての魅力をすごく意識して採用するように、この1年で変えてきたかたちになっています。

あとはちょっとおまけで、会社の宣伝みたいにはなるんですが、僕らの会社でやっている人材育成の取り組みです。真ん中が藤田なんですが、役員に新規事業や技術課題を提案する「あした会議」があります。2024年もこのような社員が集まって、役員に対して「会社をもっとこうしたほうがいい」という提案をして、14案ほど決議がありました。

あとは主席の認定制度があったり、次世代のCTO、経営人材を育成するプログラム「TAP」というものをやりまして、藤田や私も含めて、20代の技術者の技術以外の領域を伸ばしていくプログラムをやっています。

エキスパートの制度もあります。これは2025年度版で、サイバーエージェントが特に注力する技術領域において、社内からエキスパートを募って彼らの後方支援に取り組んでいます。

あと、実はエンジニアは働いていると悩むことが多いんですが、専属のキャリアエージェントがおりまして、日々悩んでいたり「こうしていきたい」ということに対して、支援をするような体制も整っています。ちょっとおまけで告知をしてしまいました。

サイバーエージェントではインターンシップも受付中

最後に会社の採用のお知らせにはなるんですが、今、インターンの案内をしております。トレーナーの指導のもとで、サイバーエージェントでスキルや考え方を学ぶことができます。

先ほど言ったとおり、うちの会社がエンジニアが働く環境として、切磋琢磨、成長できる環境なのかを見極めるためにインターンシップはすごくいいので、ぜひ参考の機会に活かしていただけるとうれしいなと思います。エントリーも受け付けておりますので、ぜひよろしくお願いします。

そういうわけで僕自身は、エンジニアの未来は「すごく明るい」というふうに常日頃言っています。AIによって世の中が大きく変革していくような時代ですが、その波を楽しんで、みなさんに大いに活躍してもらえるといいなと思います。私のお話は以上です。ありがとうございます。

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