2024.12.24
「経営陣が見たい数字」が見えない状況からの脱却法 経営課題を解決に導く、オファリングサービスの特長
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長瀬慶重氏:AIの発展が目覚ましいということで、会社の取り組みや、これからのエンジニアについてのお話をさせてもらえるといいなと思っております。私は、株式会社サイバーエージェントで技術部門の担当役員をやっております、長瀬と申します。あとは、株式会社AbemaTVという会社の取締役を兼任しております。
まずはAIの話をする前に、株式会社サイバーエージェントがどういうふうにAIを活用してるかについて、簡単にお話をしたいなと思っております。
僕らの会社は「21世紀を代表する会社を創る」と掲げておりまして、「新しい力とインターネットで日本の閉塞感を打破する」というパーパスを掲げてやっています。今年で(創業)27年目になるんですが、27年連続右肩上がりに売上を上げてきました。
実際にどういう事業をやっているかなんですが、大きくはインターネットの広告事業、メディア事業、ゲーム事業の3つの柱で事業を営んでいます。
変化が激しいインターネットの業界で、起業しても業績が伸びないとか、停滞している企業もあります。その中で、この27年間ずっと会社を伸ばし続けてきた要因の1つとしては、世の中の変化に対して先んじて先行投資をして、事業を伸ばしてきたところがあります。今現在、僕らはAIに積極的に投資をしています。
あと、実はグループに100以上の事業を抱えております。広告、ゲーム、メディア以外に、最近だとサッカーのJ1のFC町田ゼルビアのチームがグループにあったり、スポーツも含めてさまざまな事業を展開しています。
メディア事業についてはいろいろとやっているんですが、特に注力しているのがABEMAです。新しい未来のテレビということで、オリジナルの番組を作ったり、2022年には「FIFA ワールドカップ カタール 2022」全64試合無料生中継をやったり、そのようなメディアをやっています。
インターネットの広告事業においては、実はご存じの方もいると思いますが、すでにテレビを超えてインターネットの広告市場が一番になっております。そんな中でも市場成長以上の成長を継続しておりまして、日本のインターネットの広告市場で国内ナンバーワンのシェアを誇っています。
ゲーム事業は『ウマ娘 プリティーダービー』を始め、2024年だと『学園アイドルマスター』をリリースしたりと、さまざまなIPホルダーと連携しながら、ユーザーが楽しめるゲームを提供しています。
広告、メディア、ゲーム、さまざまな事業を行っている僕らサイバーエージェントが、どういうふうにAI活用をやっているか。今日はその最前線をまとめてきたので、少し見ていただきたいなと思っております。
インターネットの広告市場で、国内ナンバーワンのシェアを誇っているというお話をしましたが、実は広告のデジタルマーケティングの領域で、2016年からAIの投資を積極的に行ってきました。今日はスライドを用意してきたので、広告領域でどういうふうにAIを使っているのか、まずは具体的な事例も含めてみなさんに説明したいなと思います。
まず、この「極予測シリーズ」。広告効果を予測するAIのエンジンと、実際に広告のクリエイティブを自動で生成するエンジンという、2つのAIを組み合わせた極予測シリーズというプロダクトがあります。
このプロダクトは、すでに僕らのお取引先の8割以上のお客さまに導入させていただいています。実は今、日本を見渡しても、AIが直接的にビジネス収益につながっているような企業はまだ少ない中で、この極予測シリーズというプロダクトで売上を右肩上がりにしている状況です。
実際にどういう状況かというと、普通のクリエイターがクリエイティブを作るより、制作量が4倍から十数倍という生産性を誇っていたり、効果が良いんですね。
どういうことをやっているかというと、例えばAIを活用した広告クリエイティブ制作支援システムを提供しています。ここに「SCORE」と書いてあるんですが、これは広告予測のスコアになっていて、高いものほど広告効果が高いと判断できるものです。
素材となる画像のみだけではなく、キャッチコピーも含めて広告クリエイティブの制作支援を行い、、最終的にfacebook、Instagram、TikTokなど、さまざまなSNSやメディアに出稿して広告効果を上げていく。そういうようなことをやっています。
あとは、実際に商品画像の世界の中で自動生成を行う。AIがない時代は、当たり前のように商品を海に持っていって、気候や天候などを測りながら撮影をしていた。それが、ほとんど合成の世界、AIの世界で再現できるのは、ものすごく大きい変化です。
「デジタルツインレーベル」という、リアルな芸能人とバーチャルな芸能人を実際に生成していく取り組みも行っております。ちょっと見ていただきたい動画があります。
【動画再生】
僕らの広告クリエイティブのスタジオは、ハリウッドクオリティの3Dスキャニングの技術を導入して、高品質なモデリングをできるようなかたちにしています。将来的には、タレントさんが直接稼働することなく、広告などのクリエイティブにうまく使えていく。そういう時代を見据えながら取り組んでいるプロダクトになります。
テスト的に作った広告のCMがこちらになります。これは2022年に作ったものなので、まだ少し精度が粗い部分があるんですが、こういうことにもチャレンジしております。
【動画再生】
お台場に、高い精度でクリエイティブを作っていくスタジオを新たに作りまして、大きなLEDウォール、スキャンの技術、編集室を備えています。こちらが実際にお台場のスタジオの制作風景を動画でまとめたものになるので、これを見ると「今、広告クリエイティブはこういうふうに取り組んでるんだ」という最前線がわかるかなと思います。
【動画再生】
このお台場のスタジオには、本当に大きなLEDのウォールがあったり、AR・VRの技術者(がいて)、設備投資も含めてやっています。この広告クリエイティブを作っている最中に、広告効果の予測をしながら背景を変えたり、周りのクリエイティブを変えたりと、そういうことをやっています。
広告事業の広告効果を高めるために、2016年にデジタルマーケティングに特化したAI技術の研究組織「AI Lab」というものを新設して、今はだいたい100名ほどのリサーチャーが在籍しています。広告に関するAIの技術の研究開発、主にクリエイティブリサーチだったり、コンピューターグラフィックス、接客対話エージェント、経済学を中心に研究に取り組んでいます。
AI Labの設立が2016年なので10年弱ぐらい経っているんですが、これは少し前(のデータ)ですけれども、論文採択数は50本、産学連携においても25以上の実績があり、何より社会実装を大事にしています。先ほど紹介した極予測シリーズのプロダクトを含めて、さまざまなプロダクトで社会実装を進めてきました。
また、2023年5月に株式会社サイバーエージェント独自のLLMをリリースしました。2021年ぐらいから、日本語に特化した大規模言語モデルの独自開発をスタートして、1年半ほどかけて2023年に公開したんですが、多くの反響がありました。
2024年の7月にはバージョン3をOSSとしてリリースをしたのですが、日本製のLLMにおいて、ものすごく高い評価を受けています。また先日、日本経済新聞さんのニュースでも取り上げられていましたが、LLMのプロダクトについての診断結果の中で、日本で一番の評価を受けました。
表向きに見える事業に直結するAIのクリエイティブの投資の裏では、本当に重厚なリサーチや先行投資の技術投資を行いながら、立体的にビジネスを立ち上げて、持続的な競争力につなげています。
今、広告に関してのお話をしましたが、広告以外に僕が担当しているABEMAでのいくつかのAIの導入事例について、簡単にご紹介させていただきます。1つは、ニュースのナレーションをAIで変えました。
【動画再生】
このニュースのナレーションは、すべてAIで生成しています。だいたい月に100本弱ほどのストレートニュースを、そのように置き換えてやっているところです。
あと、ABEMAの裏では、納品された映像をAIで解析して、それを文字起こししたり、そのシーンをサジェストしてそのまま吐き出していくというようなプロダクトが動いております。こちらもイメージをお持ちしています。
ちょっと音は出ないんですが、ニュースの中でAIによる自動での文字起こしをやっていて、映像に被らないかたちで字幕を位置設定できる。
話者判定が難しかったところをうまく実現していって、こういうニュース映像やバラエティの番組だったり、納品される数多くの映像データをうまくAIで解析しながら、例えば記事に文字起こししてYahoo!ニュースに配信するとか、さまざまな宣伝活動などに活かしています。
最後にお持ちしたのがハイライトの生成のものです。相撲やサッカーとか、ABEMAもたくさんのスポーツコンテンツを扱っているので、こういった領域でもAIの活動を積極的に行っているということです。
PoCをやっている相撲の映像なんですが、お相撲さんをこのように判定してみて、実際に取り組みが始まるタイミングを、力士の骨格で自動抽出をしている。実際に、試合が終わるトリガーみたいなものをしっかり覚えています。
上のテロップがなくなると取り組みが終わるということなんですが、そのような検出すべきポイントをうまくマーキングしながら、ハイライト映像の自動生成などを行っている研究をやっています。
この他にも、株式会社サイバーエージェントではオリジナルアニメの制作を行っていたり、ゲームの開発の中でAIを使っていくPoCがたくさん動いているので、来年のこの機会にはお話しできることがまた増えるかなと思います。
そんな株式会社サイバーエージェントでは、ビジネスの中で実際にAIを活用しているんですが、会社の中では「AIを徹底的に活用しないと、3年後、5年後に会社が死んじゃう」という危機感を持って、さまざまな取り組みをやっています。
うちの藤田(晋)が2023年に社員に対して投げたメッセージを抜粋してきました。「今後はAIを徹底的に活用した会社が、活用が遅れた会社に大きな差をつける時代になる」ということで、2023年はさまざまな取り組みをやってきました。
いろんな取り組みをやったんですが、簡単にご紹介します。2023年の4月にGitHub Copilotの全社導入をしました。当時は日本のインターネット業界の中でも、全社導入をしたというのは少なかったんですね。そういう取り組みもあって、2024年5月のGitHub Galaxyの講演で話をしてきたんですが、そのスライドをお持ちしています。
2023年11月時点でアカウント数が1,000を超えて、GitHubさんから「アクティブユーザーが日本で一番ですよ」というお話をいただいたりしました。2024年頭の時点で、Copilotによる生産性がだいたい10パーセントは改善したという実績が出ている。これからも、エンジニアリングの領域で積極的に使っていきたいと思っています。
あと、やっぱりみんなでアイデア考えたほうがいいので、コンテストをやろうということで、1,000万円の賞金の生成AIのコンテストを実施しました。業務効率やサービス提案だったり、さまざまな提案募集をしました。
約2,000以上の応募が社内から集まって、結果的にはエンジニアが多かったんですが、最終的にこのようなかたちでみんなでプレゼンテーションして会が盛り上がった。今現在、このコンテストで提案されたアイデアを一生懸命に実装している状況になっています。
最後は、リテラシーの向上や専門人材の育成ということで、3つのリスキリングを社内で実施をしました。
1つは、そもそもセキュリティやいろんなリスクも含めてみんなで勉強しようということで、全社員が行ったものです。この教材は自分たちでeラーニングで作っていまして、役員、社長含めて、最終的にショートテストを受けて合格しなきゃいけないということで、2023年12月に全社員の合格が終わりました。
その他、いわゆるソフトウェアエンジニア向けのLLMを活用して、プロダクト開発に組み込むための勉強、リスキリングも行っています。ちょうど第一弾が2024年の3月に終わって、第二弾は2024年の12月にやっていきます。ここから数年かけて、全ソフトウェアエンジニアに生成AIを普通に使えるような状態を目指して、教育を進めているということです。
最後に、より高度なLLMのモデルの構築やチューニングができるというところについては、(2024年)7月から9月末まで3ヶ月かけて勉強をやっています。
中期の計画で、今はだいたい全社員の25パーセントがAIを活用できる技術者の割合なんですが、2025年度末にで50パーセント、3年後にはほとんどの人が使えるところまでを育成計画として掲げて取り組んでいます。
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