2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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片山俊大氏(以下、片山):と言いながら、次はJAXAの内木さんにバトンタッチ。今度はリアルな宇宙の重要人物ということで、よろしくお願いします。
内木悟氏(以下、内木):はい。今はJAXAの宇宙戦略基金の事業部長と新事業促進部長をしている内木といいます。よろしくお願いします。宇宙の話をする代表の人は、東大の航空宇宙工学科のバリバリのドクターの人みたいなイメージがあるのかもしれませんが、私は文系です。今日はまったく難しい話はしませんので、ご安心ください。
今日のこの登壇の打診をいただいたのがだいぶ前だったので、実はこの日付けを聞いてちょっとドキドキしていたことが2つあります。1つは、もともと予定していたH3の2号機の打ち上げが6月30日で「大丈夫かしら」と思ったんですが、おかげさまで7月1日に無事に打ち上げられました。
(会場拍手)
内木:晴れて気持ちよく登壇できてよかったなというのが1つです。もう1つは、新事業の他にこの2024年の7月から始めた宇宙戦略基金の事業部というのがあります。これはあとで少しご紹介しますけど、政府から10年で1兆円という規模のお金を託されて、民間主体の宇宙事業に対して資金提供をしてサポートをする仕事なんですけど。「7月の初めからスタートします」と宣言して準備してきたんですが、「本当に間に合うかしら?」という状況で、実は昨日も夜中までやっていました(笑)。
おかげさまで今日、実は午前中に最初の5テーマの募集が開始できて、これは気持ちよく登壇できたということで、本当に安心して今日という日を迎えていますので、ドキドキが晴れてよかったなと思っています。
ちょっとだけ仕事の紹介をしますと、最初のスライドは2つのビジネスの図があって、「新事業って何?」とか「基金って何?」というのを説明した絵を書いています。右の上のほうが新事業促進部という名前の部がやっている仕事なんですけど。宇宙の開発で、基本的にJAXAは自分で研究開発をして、いろいろ実証して、社会実装化していくことを目指しているんです。
ですが、そうじゃなくて民間の人たちが自分の力で宇宙に挑戦するとか、あるいは宇宙の技術を使って地上でビジネスをするとかいう時に、どんなサポートができるかというのをやっているのが新事業促進部です。右上の図は、例えばスタートアップがいろんなステージでフェーズアップをして、社会実装でビジネスを成功させるという流れを考えた時に、国もそうですけどJAXAもいろんなステージで支援策を打ってきますよということを示した図ですね。
すごくビジーなので一個一個は紹介しませんが、最近は出資もできるようになりまして、企業に直接出資をしたりとか、あるいはGP(General Partner:無限責任組合員)、LP(Limited Partner:有限責任組合員)として参加して一緒に投資をしていくということもできるようになったので、そういったところでいろんな企業の活躍を支援していくような仕事をしています。
内木:もう1つの左の下のほうが新しく始まったもので、これは政府の肝いりで始めたテーマです。先ほどからいろいろと話になっていますが、宇宙はもう国や官が開発をします、よかったねという時代は終わりつつあって、今はビジネスの世界でどれだけ利益を生む企業が出ているかというのが、非常に大事だと思います。
日本でも宇宙ビジネスを始めた企業が80社ぐらいあると言っていますが、もう世界ではこういう企業がどんどん出てきています。先ほども言いましたけれども、それをどんどん増やして成功させていくために政府は、10年で1兆円という資金を作って、それをJAXAではなく民間の方たちが自分でやる事業に対して支援していく事業を始めたのが、この宇宙戦略基金です。
JAXAは、これをお金として託されて、国が掲げたいろんなテーマに対して「やりたい」という企業を集めて、選んで、支援していく仕事を新しく始めることになりました。というのが、今日ご紹介する2つのお話です。
まず新事業でやっている民間支援というのは、(スライドには)6シートありますけどちょっといろいろあって全部は紹介しないですが、大きくはJAXAが今後やりたいけど自分たちの力だけじゃなくて、民間の力を使って「一緒にブレイクスルーを作っていきませんか?」というような活動がある。それからもう1つは、民間が「こんなことができるんじゃないか、と思って取り組もうと動いている。だけど宇宙の技術がよくわからないので手伝ってくれ」ということに対して「一緒にやりましょう」という事業、この大きく分けて2つのテーマについて今は力を入れてやっています。
内木:このスライドで言うと、左上の「J-SPARC」というのが、民間からいろいろとアイデアをもらって、「こんな事業をやりたい」というのに対して、「じゃあ一緒にやりましょう」という共創……共に創るという字を使うんですけど、共創活動をしてビジネスを立ち上げていきましょう。というようなものを、次のスライドで詳しく話していきます。
真ん中のところは数字だけなんですけど、J-SPARCという共創活動が2018年から始まっているんですが、これまでに300ぐらいのアイデアをいただいています。これはアイデアをいただくと、一緒に「うーん……」と唸りながら、「これはできるかな?」「いや、ちょっと難しいかな?」みたいな話をして、できそうなところについては「じゃあ、この知見を持っている人たちと一緒にやりましょう」ということで始めているのが48事業あるんですよ。
そのうち、もうすでに11は実際に事業化を果たしています。事業化というのは、例えば民間が自分の力で会社を作って、実際のビジネスに参画していくということ。もうすでに11の事業がそこにたどり着いていますし、残りの中でも今は18ぐらいが継続して進んでいます。この取り組みによって民間も本気でやっていて、JAXAが自分たちの協力のために使っているお金の何倍ものお金をコミットしてやってくれています。
ですので、途中で止めちゃうということがあまりなくて、ほとんどのものが事業化したり独自活動になったりして続いている状況です。これは中身を見てみると、左のほうにあるナンバーですけど、JAXAがふだんやっている宇宙開発、研究開発の領域とは違う領域で「こんなことをやりたいです」というものもいっぱい出てきています。
内木:すごくおもしろいのは、例えば着るものや食べるものなどの衣食住。あまり普通は宇宙では考えないものがきっかけで、宇宙を使って何ができるかみたいなことをやるようなものも出てきています。それから下のほうの、我々が最初に思いつきもしないような新しい異業種の人がたくさん参画してくれています。
おもしろいもので言うと、例えばエンタメ業界とか、教育業界とか。衣食住で言うと食品メーカーとか、衣料品メーカーとか、そういうところもどんどん入ってきています。わかりやすい例でいくと、例えば宇宙飛行士が宇宙ステーションの中で着ている洋服があります。宇宙飛行士は宇宙に持っていけるものの量がすごく限られちゃって、毎日着替えをしていると着替えるものがなくなっちゃうので、けっこう長い間同じものを着ているんです。
そうすると汗をかいたりして臭くなっちゃったりすると迷惑なので、どうやって臭くなりにくい洋服が作れるかという研究テーマがあるんです。それは実はJAXAがやってもあまり答えが見つからなくて、それで「衣料品メーカーとタッグを組んでやりましょう」という話をするんです。そうすると宇宙でできた宇宙飛行士が着る洋服が、実はみなさんが夏場に着る洋服としてすごくいいよね、となる。というかたちで、実は宇宙と一緒にやることで地上でビジネスが発展する、みたいなことが起こり始めているんです。もうそういうのがどんどん業種が広がっているという状況です。
右側のナンバーは、この活動にこれまで参加してくださった事業者の数が200を超えてきている。その中の75パーセントは宇宙をやったことがない事業者なんですよ。なので今日おそらく先ほどのアンケートにも、「宇宙に参画しますよ」という人がほとんどいなかったんですけど、そういう方たちがこれからの宇宙関連の事業を生み出していく可能性が十分にあるなと思っています。
内木:それからもう1つが、先ほども言いましたけど政府が宇宙に1兆円というお金を出して民間の活動を支援していく宇宙戦略基金というものです。ビジーで中は見られないと思うので、ぜひホームページを見ていただきたいんですが。テーマとしては、大きくはロケットみたいな宇宙輸送と言われるものと、それから人工衛星みたいなもの。
それから、先ほどispaceさんもいらっしゃいましたが、これから月や火星に探査に行くぞという分野。こういった分野に対して世界と戦っていく上で「これができると勝負になるぞ」みたいなところを民間の力でやっていこうということで、政府がテーマを決めて、それに対して募集をして提案をもらって一緒にやっていきましょうというようなものです。
その最初が今年度は総額3,000億円というお金が来ていまして、その3,000億円でこれから22テーマを募集していきます、ということになります。細かい話をここでするととても時間が足りないので、ぜひホームページを見ていただきたいんですが。先ほども言いましたように、今日は最初の5テーマの募集が始まっています。
なので、興味のある方はホームページを見ていただいて、「これってもしかして、うちが持っているこんな技術が役に立つんじゃないの?」みたいなやつは、ぜひどんどん提案をしていただければと思いますので、ご検討ください。
こういう時代になって、私は両方見ているのですが、宇宙戦略基金というすごく大規模な民間活動をやっていきますよというものができたことで、今までJAXAとしてやってきた民間支援というのも、どこをやるのが全体としてうまくいくのかなというのを今一生懸命考えています。そこにあるように民間が自分で、なんの支援もなくできるものから、JAXAが国から委託されてJAXAとしてやるべきもの。
それとJAXAが協力をして民間の力を倍増させて、それによって実現していくものみたいなことがきっとあると思っています。それをうまくミックスさせながら、どうやって日本の産業を活性化させて世界と戦っていけるようにするかというのが私のテーマなので、ぜひみなさんと一緒に考えながらやっていきたいなと思っています。よろしくお願いします。
片山:ありがとうございました。自己紹介およびJAXAの取り組みをいろいろとご紹介いただきました。そもそもSpaceXとかアメリカで宇宙ビジネスの民間企業がすごいみたいな話をよく聞くと思うんですけど、基本的にはSpaceXは、政府がサービスを買うというかたちでものすごくたくさんのお金がいっていますからね(笑)。
内木:もともとアメリカが使っている宇宙予算って、先ほどもちょっとありましたけど防衛というバックボーンがあって、防衛という名の下にやっている宇宙活動もあって、NASAもNASAだけでJAXAの十数倍の予算を持っているという状況なので、使えるお金の規模はまったく違う。というのと、みなさんご存じだと思いますが、SpaceXはイーロン・マスクの莫大な個人資産があって、それをどんどん投入する相乗効果でやっていることがミソなので、あのモデルを同じだと思うのはなかなか難しい。
ただ、実はあまり知られていないんですけど、SpaceXに対してもNASAの技術者のサポートがすごく入っています。それが実はSpaceXが自分独自でできるようになったという大きな部分を支えているので、それに近いところを政府やJAXAがどれだけできるかというのは我々の課題だなと思っています。
片山:そうですね。本当にこれからは民間ビジネスといっても官と民が連携しながら徐々に民間が広がっていく。インターネットもね、もともと国防目的で、のちに民間に開放したものですから、そうやってビジネスの花が開くっていうことで。それも流れの1つなのかなと考えています。ありがとうございました。
(次回へつづく)
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